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16.完敗
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「はぁ……」
アーロンはお茶会の前日に深いため息をついていた。
マリルをお茶会に誘ったあの日からマリルに一度もゆっくりと会えていなかった。
屋敷ですれ違っても忙しそうで話す暇もない。
どうにかお茶会に連れていこうとしていたのに、さすがに無理やり連れて行く訳にはいかないから泣き落としでもして同行を頼もうと思っていたのにその隙もなかった。
グランドやマリエルに聞いてもマリルは少し勉強で忙しいからと呼んでもらえず、とうとうお茶会の前日になってしまっていた。
「はぁ……」
もう一度深いため息をつくとグランドがやってきた。
「アーロン様どうかされましたか?」
「どうかって……マリルに全然会えないんだ」
グランドはなるほどと苦笑して納得する。
「お茶会は俺一人でいいよね。パートナーいなくてもいいんだろ?」
「まぁ構いませんが、私がアーロン様にピッタリのお相手をご用意致しましたが……」
「嫌だ!いくらグランドの頼みでもマリル以外の女性は考えられない」
俺は断固拒否した。
「まぁそう言わず会うだけでもどうですか?私の顔に免じて」
グランドのしつこい頼みに渋々了承する。
「気に入らなければすぐに帰ってもらうよ」
「はい、もちろんです」
グランドは嬉しそうに了承した。
グランドもマリルを気に入っていると思っていたのに違う女を連れてくるなんて……
裏切られた気分に気持ちは沈んでいた。
嫌な女が来たらそれを理由にお茶会を欠席しよう。
そう思っているとマリエルがその女性を連れてきた。
「私の孫になる子なのよ。アーロン様とは歳も近いし気が合うはずよ」
なんとマリエルまで噛んでいたとは……
一体二人が気に入る女とは誰だと後ろに隠れていた女の子に視線を向ける。
すると恥ずかしそうにマリエルの陰から顔を出した。
「マ、マリル?」
「アーロン様、ご無沙汰しております」
マリルは薄い水色の可愛いドレスに身を包み、うっすらと化粧をされて可愛らしく髪を整えていた。
どっからどう見ても完璧なご令嬢に見えた。
「え?これって……」
グランドとマリエルを見るとニコニコと笑っている。
どうやら俺はこの二人にすっかり騙されたようだ。
「マリエルの孫だって?」
「はい、私の息子ミコラスの養子になりましたの本当の孫ですよー」
マリエルは可愛いとマリルの頬に頬ずりをする。
「ってことはマリルは貴族になったのだな?」
「は、はい。マリル・ジェイコブとなりました……アーロン様黙っていて申し訳ありません」
マリルは本当に申し訳なさそうに謝る。
きっと彼女は嘘をつくことに抵抗があっただろうそれを口止めしてたのはグランドとマリエルだろう。
でも……こんなサプライズなら大歓迎だ!
「マリル嬢」
俺はマリルの手をそっと掴んで瞳を見つめた。
「明日のお茶会、どうか私と一緒に行ってくださいませんか?」
手にキスをしてマリルの返事を待った。
「はい、よろしくお願いいたします」
マリルは可愛らしく頬をピンクに染めて微笑んだ。
マリルのこの顔が見れただけで俺は大満足だった。
「グランド急いでマリルの為にドレスを……いや、間に合わないな……なら宝石だけでも」
「アーロン様、抜かりありません。ちゃんとマリル様の為に青いドレスと宝石を用意しております」
「ええ、うちの孫達と喧嘩になりましたがどうにかアーロン様の瞳の色にしましたから大丈夫ですよ」
マリエルの言葉にほっとしながらも気になる事があった。
「うちの子達と喧嘩とはどういうことだ?」
嫌な予感に聞いてみると、案の定マリルの新しく家族になった兄達が自分がドレスをプレゼントすると譲らなかったらしい。
最後はマリルに説得された渋々に身を引いたそうだ。
油断も隙もありゃしない。
マリルが自分以外の男の色の宝石を付けるなんて考えられなかった。
俺はマリルを引き寄せるとそっと耳打ちする。
「今日も可愛いけど、明日はもっと素敵だろうね。マリルのおかげでお茶会が楽しみになったよ」
マリルの恥ずかしがる顔が見たくて甘く囁いてみる。
父上が好きな子にはこうしろと教えてくれた事を実践してみた。
しかし帰ってきたのはマリルの本当に嬉しそうな顔だった。
「それなら良かったです」
「くっ……負けた」
「はい?」
マリルの笑顔に俺は耐えきれずに顔をそらす、純朴な思いに完敗したのだった。
アーロンはお茶会の前日に深いため息をついていた。
マリルをお茶会に誘ったあの日からマリルに一度もゆっくりと会えていなかった。
屋敷ですれ違っても忙しそうで話す暇もない。
どうにかお茶会に連れていこうとしていたのに、さすがに無理やり連れて行く訳にはいかないから泣き落としでもして同行を頼もうと思っていたのにその隙もなかった。
グランドやマリエルに聞いてもマリルは少し勉強で忙しいからと呼んでもらえず、とうとうお茶会の前日になってしまっていた。
「はぁ……」
もう一度深いため息をつくとグランドがやってきた。
「アーロン様どうかされましたか?」
「どうかって……マリルに全然会えないんだ」
グランドはなるほどと苦笑して納得する。
「お茶会は俺一人でいいよね。パートナーいなくてもいいんだろ?」
「まぁ構いませんが、私がアーロン様にピッタリのお相手をご用意致しましたが……」
「嫌だ!いくらグランドの頼みでもマリル以外の女性は考えられない」
俺は断固拒否した。
「まぁそう言わず会うだけでもどうですか?私の顔に免じて」
グランドのしつこい頼みに渋々了承する。
「気に入らなければすぐに帰ってもらうよ」
「はい、もちろんです」
グランドは嬉しそうに了承した。
グランドもマリルを気に入っていると思っていたのに違う女を連れてくるなんて……
裏切られた気分に気持ちは沈んでいた。
嫌な女が来たらそれを理由にお茶会を欠席しよう。
そう思っているとマリエルがその女性を連れてきた。
「私の孫になる子なのよ。アーロン様とは歳も近いし気が合うはずよ」
なんとマリエルまで噛んでいたとは……
一体二人が気に入る女とは誰だと後ろに隠れていた女の子に視線を向ける。
すると恥ずかしそうにマリエルの陰から顔を出した。
「マ、マリル?」
「アーロン様、ご無沙汰しております」
マリルは薄い水色の可愛いドレスに身を包み、うっすらと化粧をされて可愛らしく髪を整えていた。
どっからどう見ても完璧なご令嬢に見えた。
「え?これって……」
グランドとマリエルを見るとニコニコと笑っている。
どうやら俺はこの二人にすっかり騙されたようだ。
「マリエルの孫だって?」
「はい、私の息子ミコラスの養子になりましたの本当の孫ですよー」
マリエルは可愛いとマリルの頬に頬ずりをする。
「ってことはマリルは貴族になったのだな?」
「は、はい。マリル・ジェイコブとなりました……アーロン様黙っていて申し訳ありません」
マリルは本当に申し訳なさそうに謝る。
きっと彼女は嘘をつくことに抵抗があっただろうそれを口止めしてたのはグランドとマリエルだろう。
でも……こんなサプライズなら大歓迎だ!
「マリル嬢」
俺はマリルの手をそっと掴んで瞳を見つめた。
「明日のお茶会、どうか私と一緒に行ってくださいませんか?」
手にキスをしてマリルの返事を待った。
「はい、よろしくお願いいたします」
マリルは可愛らしく頬をピンクに染めて微笑んだ。
マリルのこの顔が見れただけで俺は大満足だった。
「グランド急いでマリルの為にドレスを……いや、間に合わないな……なら宝石だけでも」
「アーロン様、抜かりありません。ちゃんとマリル様の為に青いドレスと宝石を用意しております」
「ええ、うちの孫達と喧嘩になりましたがどうにかアーロン様の瞳の色にしましたから大丈夫ですよ」
マリエルの言葉にほっとしながらも気になる事があった。
「うちの子達と喧嘩とはどういうことだ?」
嫌な予感に聞いてみると、案の定マリルの新しく家族になった兄達が自分がドレスをプレゼントすると譲らなかったらしい。
最後はマリルに説得された渋々に身を引いたそうだ。
油断も隙もありゃしない。
マリルが自分以外の男の色の宝石を付けるなんて考えられなかった。
俺はマリルを引き寄せるとそっと耳打ちする。
「今日も可愛いけど、明日はもっと素敵だろうね。マリルのおかげでお茶会が楽しみになったよ」
マリルの恥ずかしがる顔が見たくて甘く囁いてみる。
父上が好きな子にはこうしろと教えてくれた事を実践してみた。
しかし帰ってきたのはマリルの本当に嬉しそうな顔だった。
「それなら良かったです」
「くっ……負けた」
「はい?」
マリルの笑顔に俺は耐えきれずに顔をそらす、純朴な思いに完敗したのだった。
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