貧乏庶民に転生!?将来楽しみな子を見つけたので私が守ります!

三園 七詩

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1.最悪な転生

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「てめぇ!ふざけんな!」

上から怒鳴られる声と共に大きな手が頬を目掛けて飛んできた。

私はギュッ目を閉じて全身に力を込めた。

そうしないと痛みがさらに感じるからだ、でも今回は当たりどころが悪かった…私は小さい体を吹き飛ばし机の足に頭を強く突きつけた。

泣くことも叫ぶ事も出来ずに私は意識を失った。


マリルはアスラン国の庶民中の庶民の家に生まれた。
父と母、兄が3人に姉が2人6人兄妹の末っ子に生まれた。

私は望まれない子供だった。
ただでさえ子供達の食費にお金がかかるところに私が生まれてしまい家計はどんどん苦しくなり父はお酒と賭博にハマり母は浮気相手と遊びまくり。

兄や姉達が稼いできたお金を使いこみ見限った兄達は幼い私を置いて出てってしまった。

まだ一人で生きて行けなかった私は道端でお金を恵んでもらう生活。
少しもらったお金も母に取られていた。

「あんたはこれでも食べてな」

そう言ってもらった物はカビたパン。
それでも私は嬉しくて大事に食べていた。

ある日お金が貰えない日が続いた、夕方になっても手に入れることが出来ずにとぼとぼと家に帰ると家では父と母が珍しく一緒にいた。

そして外にも聞こえる声で大喧嘩をしていた。

「た、ただいま…」

そっと家に帰ると2人から凄い形相で睨みつけられる。

「おい!金をよこせ!」

父は私の腕を掴み金を出せと脅してきた。

「そいつの金は私のよ!」

母も自分に寄越せと詰め寄ってくる。

「ご、ごめんなさい…お金…貰えなかった」

私はガタガタと震えて2人に謝った。
すると2人は唾を吐き出しながら私を罵倒する。

父は目に血走らせながら私に向かって拳をあげたのだった。


私は気がつくとベッドの上にいた。

見慣れない天井、ここは何処だと動こうとするが体が痛みで動けなかった。

特に頭が痛かった。

「なにこれ、二日酔いみたい…」

ボソッ呟いた言葉に寒気が走った。

二日酔い?なんでそんな事知ってるの?

「うっ!」

すると頭の痛みがさらに酷くなる。
ベッドの上でのたうち回っているとここではない記憶が蘇ってきた。

自分が何で誰だったのかは思い出せないが私はここでない世界を知っていた。

その世界はもっと裕福で子供が保護されるような世界だった。

「これって…前世の記憶?」

明らかに今ではない知識を得ていた。

「待って、落ち着け」

バクバク言う心臓を落ち着けようと深呼吸する。
しかし体はガタガタと震えていた。

すると部屋の扉が開いておじいさんが入ってきた。
おじいさんは白衣のようなものを来ていて医者のように見えた。

「気がついたんだね、大丈夫かい?」

優しく話しかけてくれて私の背中を撫でた。

「あっ、あっ」

私は上手く喋れずにいた、声を出そうとすると涙がこぼれてくる。

おじいさんはそんな私を泣き止むまで抱きしめていてくれた。

いっぱい泣くと少し落ち着いてきた。

するとおじいさんは少し離れて話をしてきた。

「君は何処まで覚えているかな?」

「お、覚えて?」

「ここは病院だよ、ここに運ばれた理由はわかるかな?」

おじいさんの視線は私の頬と頭に向いた。

それを見て直前の記憶を思い出した。

「はい、父と母に殴られました」

「うん、君の両親は捕まってしまったよ…それで他に頼れる人はいるかな?」

あ、私は今一人になったのだ。

頼る人もいない状況に自然と視線が下に向いた。

「病院の治療費もあるし…どうしたもんか」

おじいさんは困った様に呟いた。

「お、おじいさん!私働けます!ここで仕事ください、なんでも出来ます!」

「いや、君みたいな小さい子に…」

おじいさんは同情的だったが私に何が出来るかと困惑する。

「じゃ、じゃあ最初の1週間だけ置いてください。お金は治療費の返済に使ってもらって構いません。それで使えなかったら捨ててくれていいですから」

私がまくし立てるとおじいさんは驚いた顔をする。

「小さいのに難しい言葉を知ってるね」

フッと笑うと優しく頭に手を置いてくれた。

「じゃあ頑張ってみなさい。でも使い物にならなかったはワシだって嫌だが庇いきれないからね」

「はい!」

私は深々とお辞儀をした。

さすがに仕事は次の日からでいいとその日ベッドでゆっくりと休ませてくれた。

条件は下働き、掃除洗濯なんでもやる。
その代わり食事だけは1食だけ用意してくれる事になった。

まだ頬と頭は痛むが気持ち悪さなどはなかった。

しかしいきなり動くのは怖いのでまずは洗濯物を畳む仕事をさせてもらった。

大量にくる洗濯物を綺麗に畳む、端も揃えて収納しやすいような形に畳んで積んで置いた。

「出来たかな?」

おじいさんが私の様子を見に顔を出した。

おじいさんはこの病院の医師でラジェット先生と言う。

看護師のような役割の助手が2人と雑用係が2人、その下に私がつくことになった。

「はい、出来ました!」

私が畳んだものを見せるとラジェット先生はほぉ!と驚き嬉しそうな顔をする。

「仕事は出来るみたいだね、その調子で頑張るんだよ」

「はい!」

私はお辞儀してもっと仕事を下さいと頼んだ。
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