強くてニューゲーム!

なな

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第七話 冒険者ギルド(4)

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「だったら、ナナ!俺たちのパーティーに入らないか!」

 なんでだよ。

 たぶん善意からの言葉なんだろうけど、間に合ってるので結構です。
 そういえば、最初の頃も私の面倒を見てやるとかそんな事言ってたね。

「そうだな!色々誤解はあったけど、嬢ちゃんが親のいない孤児なのは違ってないんだろ?ならこの先色々と困る事も出てくるだろうし、俺たちと一緒なら安心だぜ!」

 今までのやり取りを見てどこに安心出来る要素があるっていうんだろう。
 何故かマリさんもその隣で深くうなづいている。
 もう、不安しかないよ。

「いいだろう!ギルマス!」
「いや、俺に言われても」

 まずいなあ。
 今度はギルマスを巻き込んで不思議なコントが始まりそうになってる。
 ギルマス!もっと頑張って!

「そういうのはお前ら達で勝手に決めろ。俺は知らん」

 ギルマス!逃げないで!

「それよりお前ら、例の件はどうするんだ。受けるんなら今回の騒ぎは大目に見てランクを下げるのは勘弁してやるが」
「いやそれ、脅迫だよね」
「ひでー」

 またなんか始まった。
 もう勝手に帰っちゃおうかな。

「相手はヒポガントだろ?さすがにリスクが高過ぎるって!」
「そうだぜ、俺やマリならともかく、クロイスまで無理だっていうんだから俺たちには手に負えないぜ!」

 そういえばさっきのマリさんとの会話で、ギルドからヒポガント討伐の依頼が来てたって言ってたっけ。

「お前らのパーティーならヒポガント討伐くらいそれほど難しい事もないだろう」
「そりゃ出来るけど、そういう問題じゃないんだって」

 確かにヒポガントは、攻撃パターンとかをちゃんと理解していれば、高レベルでなくてもある程度のレベルが複数人いれば普通に倒せる程度の魔物だ。
 ただし、高ランクの魔物と言われるだけあって、一撃の重さはなかなかのもので、不意の事故死は割とある。
 もし、パーティーメンバーの最大HPがその一撃のダメージを上回っていない状態での戦闘だとすれば、脱落者なく無傷での勝利の確率は、思った以上に高くない。

「しかし、あれを倒せる冒険者パーティーなんてこの町じゃお前らくらいだろ。このままじゃ被害者が増え続けるし、討伐されるまでは町から外に出る事もままならん。だからなんとか頼めないか」
「だから無理だって。というか、領主様に派兵を頼むんじゃなかったのかよ」
「そのつもりだったが訳あって駄目になった。こっちにも色々とあるんだよ」
「それこそ知らねえよ」

 今回ばかりはクロイスとファイの意見に賛成だ。
 おそらく、彼らの実力的にはヒポガントの討伐は可能な水準にいるんだろうが、メンバーがヒポガントの一撃を受け切れるだけのHPを持っていないんだと思う。

 冒険者は依頼を受けるも受けないも自由なはず。
 ギルドやら領主やらの都合で無理矢理依頼を押し付けるのは良くない。

 でも、どうしたもんかなあ。
 そのヒポガントは既に私が倒しちゃってるんだよね。
 とてもじゃないけど言い出せる雰囲気じゃないけど、言わない訳にもいかないよね。

 こんな事になるんだったら死体は置いてくればよかった。
 そうすればヒポガントの死体を誰かが見つけて、騒ぎも無事に収まったはずなのに。
 だったら今から戻しに行こうかな?でも、さすがに町から出してもらえなさそうだしな。うーん、参った。

 私がそんな事を考えていると、一人の男性ギルド職員が血相を変えてこちらに向かって走って来た。

「ギルマス!!大変です!!」
「どうした」
「ヒポガントです!調査を依頼していた冒険者が大怪我を負って町に戻って来ました!」
「何だと?!すぐに案内しろ!」

 そう言うや否や、ギルマスは男性職員と共に大急ぎでギルドを出て行った。

 どうやらヒポガントは私が倒した一体だけじゃなかったらしい。流石にこれは予想外だった。
 でも、とりあえずこれで私がヒポガントを倒したって事を黙っていても問題はなくなったけど、もっと面倒な別の問題が出来てしまったみたい。

「うーん、こりゃ最悪の展開も考えられるな。念のため一応俺たちも向かった方がいいか。ファイ、マリ。行くぞ!」
「おう!」
「はいはい。あ、ナナちゃんごめんね。話の続きはまた今度しましょ」
「え、あ、はい」

 そう言ってクロイス達三人は、ギルマス達を追うように駆け出して行った。

 急な展開に一瞬キョトンとしていた私だったが、やがて今の状況を把握する。

「私も行くか」

 当然のように3人の後を追いかける私。
 好奇心の塊である私が大人しくしていられるわけがない。
 まあ、ただの野次馬とも言えるけど、ヒポガントに関しては私も多少絡んでいるだけに、色々と気になるからね。

 外はすでに日が落ちており、私がこの世界に来て初めての、
 とても長い夜を迎えようとしていた。
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