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などとメスお兄さんは供述しており
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静かな教室に鉛筆を走らせる音だけが響いている。
昼食の後、最初の授業ではうとうとと船をこぎかけている生徒も少なくない。教師――岡山もそれは承知していて、毎週この時間は教科書を進めるというよりこれまでの授業のまとめに当てることが多かった。
今日ものんびりと配布したプリントの問題を解かせていたところだ。教科書を見ていいと指示をしているから、要領の良い生徒は既に全て解き終わっている頃だろう。
生徒たちの間を回り、進行具合を確認しながら岡山は腕時計を見た。答え合わせの時間まではまだだいぶある。少し退屈かもしれないな、と考えたところで視線を感じて顔を上げた。目線の先にいた生徒は、岡山が顔をあげると慌てた様子でプリントに向き直ってしまう。
またか、と岡山は首を傾げた。――もうこれで三度目だった。
岡山を見つめていた生徒は、久我山奏汰という。クラスの中心人物というわけではないが決して気弱なわけでもない、成績も優秀というほどではなく常に学年平均程度、ただ勉強が嫌いというわけではないようで意欲・関心は教師という立場から見て充分すぎるほどにある。
飛び抜けて優れた部分こそないものの、教師受けはいい――岡山から見た奏汰という生徒の評価はそんなものだった。
そんな彼が、今日の授業に限ってはどうも様子がおかしい。
生徒が教師の方を見るのは別におかしなことではない。普段の授業なら、話者に注目するのは当然のことだ。
けれど今日はプリントの問題を解くことが中心で、寝ている者も含めてほとんどの生徒はじっと下を見つめている。教師を見る必要なんてない。せいぜいが、時折問題の意図がわからず説明を求める生徒がいるくらいで、奏汰の様子はそういう種類のものではない。
何せ、岡山が奏汰の方を見ると彼は視線を逸らしてしまうのだ。まるで岡山のことなど見ていませんでした、というふうな態度を取る。
はじめこそ気のせいかと思っていたが、こうも繰り返されるとさすがに不審に思えてくる。奏汰はいったい何を考えているのだろうか。とはいえ、こちらから何かあったのかと尋ねるのもどうなのだろうと考えてしまって、岡山はただ首を捻るばかりなのだった。
その後も何度か奏汰からの視線は感じていたが、だんだんといちいち反応するのも面倒になって、最後は気づいていない振りを努めていた。そしてそうこうしているうちに答え合わせの時間になった。
そこまで、と生徒の手を止めさせて、答え合わせに入る。いつもなら日付と同じ出席番号の生徒から席順に、とかいう順番で当てていくのだが、ふと悪戯心が湧いてくる。
「それじゃあ、今日は――奏汰くんから。問一を答えてくれるか」
「――え、あ」
「奏汰くん?」
今も自分を熱心に見つめている奏汰を素知らぬ顔で指すと、彼は見るからに戸惑っている様子だった。微笑みを浮かべて彼の名前をもう一度呼ぶと、ようやく理解が追いついたというふうにプリントに目を落とす。その顔はリンゴのように赤く染まっていた。
おや、と岡山は目を瞬かせた。彼の知る限り、奏汰という生徒は授業中に指される程度で赤面するタイプではなかったからだ。これはいよいよ様子がおかしい。彼の担任にそれとなく伝えた方がいいだろうか――などと考えているうちにその日の授業は終わった。
「河野先生」
「岡山先生」
岡山が廊下ですれ違った奏汰の担任に声をかけると、なにやら神妙な顔をされてしまった。
「…なんだ」
「……いえ。あなたに先生と呼ばれるのがどうも…」
「安心しろ、お互い様だ」
大学時代からの付き合いでもある河野と岡山がこの学校で再開して二年になるが、どうもお互い「先生」と呼ばれるとくすぐったいようなぞわぞわするような感じがしてしまう。
「それで、何か用事でも?」
同窓生としての顔はそこまでで、教師としての顔を作って河野が尋ねる。岡山は手短に授業中の奏汰の様子について話した。河野は少々驚いた様子で、「HRではそんな様子はありませんでしたが」と口にする。
「なんだろうな。体調が悪いわけでもなさそうだったが」
「どうしたんでしょうね。気にしてはおきます」
「ああ、そうしてくれ」
そこまで話して河野とは別れた。
放課後、職員室にいた岡山を奏汰が訪ねてきた。
「あの、岡山先生」
「奏汰くん?」
奏汰はそわそわと落ち着かない様子だったが、岡山に「先生にだけ話があるんだ」と言うのでふたりで生徒指導室に向かった。
生徒指導室とは名ばかりでほとんど物置のようなものだ。空いたスペースに申し訳程度に古いソファとローテーブルが置かれている。
狭苦しいスペースに身体を押し込むようにテーブルを挟んでふたり、向かい合って座り、さて、と岡山は奏汰の様子を観察した。
そわそわしているのは先ほどから変わらない。加えて、緊張しているのかうっすら汗をかいているようだった。どう話を切り出したものかなと岡山が考えている間に、奏汰が先に口を開く。
「先生」
「うん。何かな」
「あの――、えっと」
しかし、それきりもごもごと言葉を濁らせてしまう。おそらくは岡山に――担任ではなく岡山に、でなければできない相談事があるのだろう。プライベートな、簡単に口にするのが憚られる種類の。
奏汰は依然あの、とかえっと、とか繰り返している。これでは埒があかないなと考えて、穏やかな口調を努めて尋ねた。
「相談かな」
「えっと――はい」
「どうして俺に? 河野先生でなくてよかったのかな」
「それは……、先生でなきゃ、だめだから」
「そうなのか」
自分でなければ駄目、とはずいぶん信用されたものだ。奏汰は続けて訊いた。
「先生、あの……今から話すこと、誰にも言わないでくれるか?」
「ああ、約束する」
とはいえ、相談の種類によっては当然然るべき場所に連携しなければならない。もちろん悪戯に吹聴するつもりはないが――と大人の汚さを笑顔で覆い隠して岡山は答える。そもそも、誰にも言わないと約束しなければ奏汰はこれ以上何も話そうとしないだろう、という打算もあった。
奏汰は案の定、ほっとした顔をすると、ようやく「相談事」を話しだした。
「えっと、それじゃあ……、先生は、夢って見るか?」
「夢? それはまあ……」
いったいどうして夢の話になるのだろう、と思いつつ、そういえば最近夢を見ていないな、と記憶を反芻して岡山は思った。仕事に忙殺されているせいかもしれないな、とも。
「いや、その。普通の夢じゃなくって、なんていうか……」
「悪い夢、とか?」
「そういうんじゃ……ええと……」
口ごもりながらも奏汰はほんのりと頬を染めている。その様子を見て、岡山はなんとなく奏汰が言いたいことの想像がついた。
「…もしかして、いやらしい夢とか」
「っ…!」
真面目な口調を取り繕いながら尋ねてみると、奏汰の顔がみるみる真っ赤に染まった。図星のようだ。
「あの、えっと、」
「いや、うん。何もおかしいことではないよ。先生だってたまにはそういう夢を見ることもあるし」
しどろもどろになっている奏汰がなんだか可愛そうになってきて、慰めるような言葉が口をついたが彼が求めているのはそういう言葉ではない気もする。だいいち自分はここ半年ほど淫夢どころか夢らしい夢を見ていないのだ。
「君くらいの歳になれば、そういう夢を見るのも当たり前だよ。他の皆も多かれ少なかれそういう経験はあるさ」
「でも――でも、先生」
にこり、と笑みを絶やさず言うが、奏汰は妙に食い下がってきた。
「その、夢に出てきたのが男の人でも、か?」
「……」
ぱちり、岡山は大きく目を瞬かせた。
そして同時に理解してしまう。奏汰が、どうして担任である河野ではなく、自分に相談したのか。
「もしかして……河野先生だったとか?」
なるほどそれなら自分にだけ話そうというのも納得がいく。河野はガタイはでかいしどう見ても男だが、物腰の柔らかさやよそ行きの口調の穏やかさは女性的と言ってもまあおかしくはないし、何より身近な大人だ。健全な青少年の性欲の発露される相手として、そこまでおかしなものでもあるまい――と、そこまで考えたところで奏汰の悲痛な叫びが飛んだ。
「ちっ、違う! オレが見たのは、先生の――」
「…え」
「――あ」
既に真っ赤になっていた奏汰の顔がいっそう朱に染まった。
人間ここまで赤面できるのだなぁと岡山が妙な感慨にふけっていると、奏汰はやけになったように言葉を続ける。
「そっ、そうだよ、先生の夢、見たんだ。先生と、その、やらしいこと、する夢」
俯いて、決して岡山の方は見ないで奏汰は告白する。いったいどんな表情をして話しているのだろうかと思った。
「だから……授業中も、先生のこと見てたのかな」
「っ……う、ん」
「先生を見て、いやらしことを考えてた? 授業中なのに」
「…ごめんなさい」
「ああ、いや、怒ってるわけじゃない。……ねえ、奏汰くん」
「?」
奏汰がおそるおそるこちらを見る。その顔は泣きそうで、けれど瞳の奥に隠しきれない情欲を宿している、気がした。
「どんな夢だった? 先生と、どんなことをしたのかな?」
そう言って微笑む自分は、果たして教師の顔をしているのだろうか。きっと違うだろう。そうでなければ、眼の前の奏汰がこんな、欲を露わにした顔をしているわけがないし――こんな問いかけが、そもそも出てくるわけがなかった。
「先生に、教えてほしいな」
手を伸ばし、奏汰の唇に触れる。奏汰は小さく、こくりとうなずいた。
ちゅぷ、と可愛らしい音を立てて唇が離れる。目を開けて見た奏汰の唇はどちらのものとも知れぬ唾液に濡れていて、ひどくエロティックだ。おそるおそる、奏汰がぎゅっと閉じていた瞼をそろそろと持ち上げる。――そのタイミングでまた唇を重ねる。慌てたように目を閉じるのが可愛らしい。ぺろりと舌先でつついた唇がわずかに開かれて、すかさず潜り込ませた。
「んぐ、うっ」
「ん、ふ……っう、ん…」
こぼれる声がまた、奏汰の初心さを証明するようで愛しくなる。対して岡山は、艶めいた吐息を惜しげもなく溢れさせて、ソファについていた掌をゆっくりと奏汰の腿に這わせた。少年らしい細く引き締まった肉の感触を制服のスラックス越しに感じる。
膝頭から、足の付け根のきわどいラインを描きながら、岡山はこっそり笑みを浮かべた。目を閉じている奏汰には見えていない、とても見せられない、悪い大人の笑み。
岡山の指先は、奏汰の股間をかすめている。興奮に膨らみきっているそこを、爪の先で、衣服の布越しにかりかりと引っ掻いた。びくりと震える肩が可愛らしい。
舌先を弄ぶ程度の口付けから奏汰を解放すると、彼は大きく深呼吸した。息を止めていたのかと気づいてまた笑みが零れてしまう。
「…せん、せ」
「ずいぶん大きくしているな。夢を見たときもこうなった?」
「それは……」
口ごもる奏汰の耳元に唇を寄せる。くすぐったそうに肩を竦める彼に構わず、たっぷりと色を含んだ声で囁いた。
「教えて」
指先が触れている雄がいっそう昂ぶっていくのを感じる。はあ、と彼が吐き出した吐息すら、彼自身の興奮を示しているようで、岡山は背筋をぞくぞくと這い上がっていくものを感じた。
「…わ、わから、ない。……起きたときには、その…」
「夢精していた?」
耳元で囁く。こくりと頷く。素直でよろしい、と褒めるように、岡山はほんの爪先だけで触れていた奏汰自身を、指先でつついた。
「あっ!」
「それで、どういう夢を見ていたんだい?」
張り詰めてテントを作っている、その輪郭をなぞるように指の背で触れていく。奏汰の目は岡山の指の動きを追うばかりで、それ以外のものなど見えていないかのようだ。そんな従順さが可愛らしく、だからこそ意地の悪いこともしたくなる。すりすりと股間をなぞっていた手を離し、また耳元で囁いた。「答えて」と。
「せん、せいと……」
「先生と?」
「…先生が、裸で……、オレは、寝転がってて……」
「うん、それで?」
相槌を打ちながら、奏汰の耳朶を舌でなぞった。唇で食めばますます大きく肩を震わせて、喉の奥で喘ぎを噛み殺している。
「先生が、オレの、上に乗ってて、それで……」
「…それから?」
耳介を唇で挟んだまま尋ねれば、奏汰は「ひ、」と小さく声をあげる。悪戯をしすぎたかと唇を離して奏汰の顔を見てみると、頬は真っ赤なまま、瞳を潤ませて息を荒らげて、まるで射精したかのようだった。―ーいや。
「……奏汰くん」
「っ…」
名前を呼びながら、岡山の手は奏汰の股間を――今度は指先だけでなく、掌全体で触れていた。さっきまであれほど張り詰めていたそこは、今はずいぶん大人しいものだ。それに、濡れたような感触と音が伝わってくる。
「…あ、あの、せん、」
「射精してしまったのか」
思ったことをそのまま口にすると、奏汰は叱られた子供のようにびくりと震えた。その顔には恥ずかしさと申し訳なさ、それから――何より、未だ醒めない興奮の兆しが綯い交ぜになっている。
直接触れられもせず、それも人前で達してしまったのだ。今奏汰の中では様々な感情が渦巻いていることだろう。岡山は奏汰を抱きしめると、頭を撫でながら努めて優しい口調で慰めた。
「ああ、大丈夫だ。君を叱ろうというわけではないんだ。ただ少し、びっくりしてしまって」
君もそうだろう、と耳元に注ぎ込むように囁きかけると素直に頷く。
「…それで――先生が、君の上に乗っていて、だったか」
「え、あ」
先ほどの奏汰の言葉を繰り返しながら、ソファに奏汰の体を横たえると、彼は明らかに動揺したようだった。とはいえ既に動揺しっぱなしのようなものだったのだから今さらだ。
押し倒した奏汰の、ちょうど腿の上に跨って、岡山は奏汰のベルトに手をかけた。前を緩め、下着に手を入れると、ぬちゃりと濡れた感触がある。そこから取り出したペニスもまた白く汚れていた。
「濡れたままでは気持ち悪いだろう?」
「え、あ、ひッ、」
驚きに見開かれた奏汰の目を見つめたまま、岡山はぱくりと彼のペニスを頬張った。精液の苦味が舌を刺激する。奏汰はというと、瞬きをすることも忘れて岡山を、岡山が自分の性器を咥えているのを見つめている。わかりやすい反応に気をよくして、奏汰自身を咥えたまま岡山は微笑んだ。
奏汰のペニス全体にまとわりつく精液をこそぎ落とすように舌を這わせる。口腔に溜まる精液は唾液と混ぜ合わせて飲み下す。皮の中に入り込んだ精液を恥垢ごと舐め取っている間に、奏汰自身は再び大きく膨らんでいた。
「んっ……、ぷ、ぁ」
一度ペニスから口を離すと、その大きさがよくわかる。咥えているだけでも少々苦しいくらいだったそれは、どちらかというと華奢な奏汰の体格には不似合いといえるサイズをしていた。
鼻先にそびえるペニス越しに、奏汰がこちらを見ているのがわかる。岡山がぺろりと唇を舐める舌の動きにさえ、奏汰の視線が捉われているのがわかる。すべてわかっているから、岡山はゆっくりと体を起こした。
「せんせい…?」
奏汰が訝しげに声をかけてくる。岡山はそっと、その唇に人差し指を当てた。
「……これから先生とすること、皆には内緒にできるか?」
ああ、なんてひどい問いかけだろう!
必死に頷く少年の姿を見下ろしながら、岡山は背徳感でいっそ射精してしまいそうだった。
自分は何てひどい、わるい大人だろうか。そしてそんな大人の魔手にかかってしまった久我山奏汰という少年は、なんて哀れなのだろう。
にっこりと笑みを浮かべて奏汰の頭をひと撫でして、岡山は再び奏汰の股間に顔を埋める。そして片手を、自分の下肢へ。
「んぅ、む…っん、んちゅ…っ」
「あ、あっ…!」
奏汰自身を中ほどまで咥え込み、先端を舌の腹で愛撫すると可愛らしい声で喘ぐ。その声を聞きながら、岡山はおもむろに自分の下着の中、奥まった部分に手をやった。
濡らした指先が触れた窄まりはまだ固く閉じている。構わず中指を突っ込むと引き攣れるような痛みがわずかに走るが、苦痛よりも興奮が勝っていた。快楽を求めるのではなく孔を拡張するために指を激しく動かす。
早く、はやく、奏汰を自身の体内に迎え入れたかった。彼の熱い肉棒をこの身のうちにすべて収めてしまったら、いったいどれほどの快楽が待ち受けているのだろうという想像だけで果ててしまいそうだった。
脈打ちながら膨らんでいく奏汰自身を喉奥まで咥え込んで、舌で、口蓋で、頬裏で、歯茎で、口の中の粘膜全体で愛してやりながら、この昂ぶりで貫かれることを妄想しながら、ぐちゅぐちゃと淫猥な水音を立ててアナルを拡げていく。
二本の指が抵抗なく抜き挿しできるようになった頃にはもう、岡山の我慢も限界を迎えていた。
もう少し拡張しなければ、年のわりにはという枕詞をつけるまでもなく立派な奏汰自身を挿入するのに充分でないかもしれない、という考えも頭を過ぎるのだけれど、でも、もう、これ以上のお預けなんて耐えられない。
奏汰の腹の上に跨り、はちきれんばかりの奏汰のペニスを片手で支えて、岡山はゆっくりと腰を落としていく。
奏汰の目は、岡山の体内に呑まれていく自分自身にだけ注がれていて、そしてそんな少年の必死さが、岡山の胸をいっそう熱くさせた。
今この瞬間、久我山奏汰という少年は岡山の虜になっている。
快も不快も岡山に支配されて、そしてそれに、気づいていない。
なんてかわいい、いとしい、おろかしい生き物だろうか。
「…んっ……、はぁ、ぁ……、はい、った…っ」
「あ、あ…! せんせ、…先生…!」
岡山の尻がぺたりと奏汰の下腹にぶつかると、奏汰は腰をびくびくと跳ねさせた。やはり拡張が足りなかった岡山の後孔は若い雄をきゅうきゅうと締め付けている。何の技巧もない、ただ生理現象としての蠕動であっても、少年には刺激が強すぎるくらいだろう。
岡山は奏汰の腹についていた手をするすると上へ上らせていく。脇腹を、胸を、鎖骨を、首を、指先でなぞりながら、ゆっくりと体を倒した。
「っ……、そうた、くん」
「あ…っ! せ、んせ、」
喘ぐ奏汰に合わせて体内のペニスも大きく脈打っている。限界が近いことはすぐに見て取れた。だから岡山は、奏汰の頬を両手で包み、くちびるが触れ合うほどの距離で囁いた。
「――先生の、中に、出して」
「っ…あ、あぁっ、せんせ、…ああぁっ!」
腹の奥にじんわりと熱いものが広がっていく。奏汰は全身を震わせて息を詰めたあと、大きく呼吸を繰り返す。
絶頂の瞬間、ぎゅっと硬く閉じていた目がぼんやりと開かれて、目の前の岡山を映し出した。琥珀色の瞳の中にいるのは岡山だけだ。
呆然としたまま、奏汰がせんせい、と呟いた。今、彼の中にいるのは自分だけなのだ。
この少年のすべてを、今このときだけは、自分が支配しているのだ。
たまらなくなって岡山は目の前にある半開きの唇にキスをした。舌を差し入れれば抵抗なく受け入れて、どころか控えめに絡めようとさえしてくる。差し出された舌を吸い、唇を食み、歯列をなぞり、口腔でセックスをするかのように交じり合う。すると快楽に従順な少年のペニスはたちまち力を取り戻していくのだ。
口の周りが唾液で濡れ光るほどになって、ようやく岡山は唇を離した。物欲しげな奏汰の視線が追いかけてくるので、くすりと笑みを浮かべて腰を揺らしてやる。
「あ……」
「んっ…、こちらも、そろそろ、いいだろう?」
円を描くように腰を動かし、ゆっくりと引き上げて、そして下ろす。体の横に力なく下ろされていた奏汰の腕が、おずおずと岡山の腰に回された。
「っ、はぁ…、先生に、合わせて……、動いてごらん、…できるか?」
「…っ、う、ん……」
いい子だ、と奏汰の鼻先にキスを落として、岡山はゆっくりと腰を上下させる。ずるずると竿の半ばほどまで引き抜いて、それから奏汰の腹の上にぺたりと尻を落とす。それに合わせて奏汰が拙く腰を使う。
はじめこそセックスというよりは何かの準備運動のような動きだったけれど、次第に岡山の身体は快楽を拾い始める。
そしてそれは――奏汰にとっても同じことだった。
「んっ、…はぁっ、はー…っ、…っあ、あっん…」
「せ、せんせい…っ、せんせい…!」
「っえ、…あっ!? あ、ぁ、そうた、くん…!」
ほとんど添えられているだけだった奏汰の手が、岡山の腰をぐっと掴む。
かと思うと、無意識に自分の感じる場所を掠めるよう動いていた岡山の動きなど無視して、身勝手ともいえる強さで腰を打ち付けてきた。
「ぁっ、あっ! や、だめ、そんな、いきなり…っ!」
「せんせいっ、ここ、ここだろ? ここ、好きなんだろ…っ? さっきから、ずっと、ここに当ててる…っ」
「やぁ、だっ、だめ、だめぇっ…!」
互いの肌がぶつかる音と喘ぎ声が部屋中に響く。岡山の身体は奏汰の上に倒れこんでいて、尻だけが奏汰の動きに合わせて上下している。ペニスを咥え込んだアナルはペニスが引き抜かれようとするたび追い縋るように粘膜をさらけ出してひどくいやらしい。
「はぁっ、あっ…! せんせい、オレ、また出る…っ!」
「あ、あっ! だして、なかっ、せんせいのなか、にぃっ…!」
絶頂に向けていっそう激しく腰を突き上げながら、奏汰の唇が岡山のそれを塞いだ。呼吸を奪われた岡山の目には奏汰の欲にまみれた瞳だけが映っていて、そしてそれは、奏汰にとっても同じことだった。
「んッ! んんーっ!」
「……っ!」
岡山の胎の中で再び奏汰が射精する。
ほとんど同時に岡山も絶頂して、互いの腹の間を白濁で汚した。
荒い呼吸を繰り返して、奏汰の上にぐったりと横たわっていた岡山がのそりと起き上がる。
腰を浮かせてペニスを抜き出そうとした彼の腕を、奏汰が強く掴んだ。
「……奏汰くん?」
情事の余韻を残す吐息混じりの声で生徒の名前を呼ぶ岡山はしかし、教師の顔をしていない。
「先生……」
奏汰の目には未だ情欲の炎が灯っている。消える気配などまるでない、むしろいっそう燃え上がらんとするほどの。
岡山は、その目を見て、そしてふいと視線を逸らし、それから呟いた。
「そんな…、だめだ、ここでは……」
「じゃあ」
ここじゃなきゃ、いいのか。
岡山の腕を引き、浮きかけた腰を押さえつけ、二度射精してなお熱を持ったままの自身で岡山の胎内を掻き乱しながら奏汰は問う。
岡山はかすかに喘ぎながら、そしてその瞳を情欲で濡らしながら答えるのだ。
「だれにも、内緒にできるなら……」
その表情は既に、少年の雌に堕とされていた。
昼食の後、最初の授業ではうとうとと船をこぎかけている生徒も少なくない。教師――岡山もそれは承知していて、毎週この時間は教科書を進めるというよりこれまでの授業のまとめに当てることが多かった。
今日ものんびりと配布したプリントの問題を解かせていたところだ。教科書を見ていいと指示をしているから、要領の良い生徒は既に全て解き終わっている頃だろう。
生徒たちの間を回り、進行具合を確認しながら岡山は腕時計を見た。答え合わせの時間まではまだだいぶある。少し退屈かもしれないな、と考えたところで視線を感じて顔を上げた。目線の先にいた生徒は、岡山が顔をあげると慌てた様子でプリントに向き直ってしまう。
またか、と岡山は首を傾げた。――もうこれで三度目だった。
岡山を見つめていた生徒は、久我山奏汰という。クラスの中心人物というわけではないが決して気弱なわけでもない、成績も優秀というほどではなく常に学年平均程度、ただ勉強が嫌いというわけではないようで意欲・関心は教師という立場から見て充分すぎるほどにある。
飛び抜けて優れた部分こそないものの、教師受けはいい――岡山から見た奏汰という生徒の評価はそんなものだった。
そんな彼が、今日の授業に限ってはどうも様子がおかしい。
生徒が教師の方を見るのは別におかしなことではない。普段の授業なら、話者に注目するのは当然のことだ。
けれど今日はプリントの問題を解くことが中心で、寝ている者も含めてほとんどの生徒はじっと下を見つめている。教師を見る必要なんてない。せいぜいが、時折問題の意図がわからず説明を求める生徒がいるくらいで、奏汰の様子はそういう種類のものではない。
何せ、岡山が奏汰の方を見ると彼は視線を逸らしてしまうのだ。まるで岡山のことなど見ていませんでした、というふうな態度を取る。
はじめこそ気のせいかと思っていたが、こうも繰り返されるとさすがに不審に思えてくる。奏汰はいったい何を考えているのだろうか。とはいえ、こちらから何かあったのかと尋ねるのもどうなのだろうと考えてしまって、岡山はただ首を捻るばかりなのだった。
その後も何度か奏汰からの視線は感じていたが、だんだんといちいち反応するのも面倒になって、最後は気づいていない振りを努めていた。そしてそうこうしているうちに答え合わせの時間になった。
そこまで、と生徒の手を止めさせて、答え合わせに入る。いつもなら日付と同じ出席番号の生徒から席順に、とかいう順番で当てていくのだが、ふと悪戯心が湧いてくる。
「それじゃあ、今日は――奏汰くんから。問一を答えてくれるか」
「――え、あ」
「奏汰くん?」
今も自分を熱心に見つめている奏汰を素知らぬ顔で指すと、彼は見るからに戸惑っている様子だった。微笑みを浮かべて彼の名前をもう一度呼ぶと、ようやく理解が追いついたというふうにプリントに目を落とす。その顔はリンゴのように赤く染まっていた。
おや、と岡山は目を瞬かせた。彼の知る限り、奏汰という生徒は授業中に指される程度で赤面するタイプではなかったからだ。これはいよいよ様子がおかしい。彼の担任にそれとなく伝えた方がいいだろうか――などと考えているうちにその日の授業は終わった。
「河野先生」
「岡山先生」
岡山が廊下ですれ違った奏汰の担任に声をかけると、なにやら神妙な顔をされてしまった。
「…なんだ」
「……いえ。あなたに先生と呼ばれるのがどうも…」
「安心しろ、お互い様だ」
大学時代からの付き合いでもある河野と岡山がこの学校で再開して二年になるが、どうもお互い「先生」と呼ばれるとくすぐったいようなぞわぞわするような感じがしてしまう。
「それで、何か用事でも?」
同窓生としての顔はそこまでで、教師としての顔を作って河野が尋ねる。岡山は手短に授業中の奏汰の様子について話した。河野は少々驚いた様子で、「HRではそんな様子はありませんでしたが」と口にする。
「なんだろうな。体調が悪いわけでもなさそうだったが」
「どうしたんでしょうね。気にしてはおきます」
「ああ、そうしてくれ」
そこまで話して河野とは別れた。
放課後、職員室にいた岡山を奏汰が訪ねてきた。
「あの、岡山先生」
「奏汰くん?」
奏汰はそわそわと落ち着かない様子だったが、岡山に「先生にだけ話があるんだ」と言うのでふたりで生徒指導室に向かった。
生徒指導室とは名ばかりでほとんど物置のようなものだ。空いたスペースに申し訳程度に古いソファとローテーブルが置かれている。
狭苦しいスペースに身体を押し込むようにテーブルを挟んでふたり、向かい合って座り、さて、と岡山は奏汰の様子を観察した。
そわそわしているのは先ほどから変わらない。加えて、緊張しているのかうっすら汗をかいているようだった。どう話を切り出したものかなと岡山が考えている間に、奏汰が先に口を開く。
「先生」
「うん。何かな」
「あの――、えっと」
しかし、それきりもごもごと言葉を濁らせてしまう。おそらくは岡山に――担任ではなく岡山に、でなければできない相談事があるのだろう。プライベートな、簡単に口にするのが憚られる種類の。
奏汰は依然あの、とかえっと、とか繰り返している。これでは埒があかないなと考えて、穏やかな口調を努めて尋ねた。
「相談かな」
「えっと――はい」
「どうして俺に? 河野先生でなくてよかったのかな」
「それは……、先生でなきゃ、だめだから」
「そうなのか」
自分でなければ駄目、とはずいぶん信用されたものだ。奏汰は続けて訊いた。
「先生、あの……今から話すこと、誰にも言わないでくれるか?」
「ああ、約束する」
とはいえ、相談の種類によっては当然然るべき場所に連携しなければならない。もちろん悪戯に吹聴するつもりはないが――と大人の汚さを笑顔で覆い隠して岡山は答える。そもそも、誰にも言わないと約束しなければ奏汰はこれ以上何も話そうとしないだろう、という打算もあった。
奏汰は案の定、ほっとした顔をすると、ようやく「相談事」を話しだした。
「えっと、それじゃあ……、先生は、夢って見るか?」
「夢? それはまあ……」
いったいどうして夢の話になるのだろう、と思いつつ、そういえば最近夢を見ていないな、と記憶を反芻して岡山は思った。仕事に忙殺されているせいかもしれないな、とも。
「いや、その。普通の夢じゃなくって、なんていうか……」
「悪い夢、とか?」
「そういうんじゃ……ええと……」
口ごもりながらも奏汰はほんのりと頬を染めている。その様子を見て、岡山はなんとなく奏汰が言いたいことの想像がついた。
「…もしかして、いやらしい夢とか」
「っ…!」
真面目な口調を取り繕いながら尋ねてみると、奏汰の顔がみるみる真っ赤に染まった。図星のようだ。
「あの、えっと、」
「いや、うん。何もおかしいことではないよ。先生だってたまにはそういう夢を見ることもあるし」
しどろもどろになっている奏汰がなんだか可愛そうになってきて、慰めるような言葉が口をついたが彼が求めているのはそういう言葉ではない気もする。だいいち自分はここ半年ほど淫夢どころか夢らしい夢を見ていないのだ。
「君くらいの歳になれば、そういう夢を見るのも当たり前だよ。他の皆も多かれ少なかれそういう経験はあるさ」
「でも――でも、先生」
にこり、と笑みを絶やさず言うが、奏汰は妙に食い下がってきた。
「その、夢に出てきたのが男の人でも、か?」
「……」
ぱちり、岡山は大きく目を瞬かせた。
そして同時に理解してしまう。奏汰が、どうして担任である河野ではなく、自分に相談したのか。
「もしかして……河野先生だったとか?」
なるほどそれなら自分にだけ話そうというのも納得がいく。河野はガタイはでかいしどう見ても男だが、物腰の柔らかさやよそ行きの口調の穏やかさは女性的と言ってもまあおかしくはないし、何より身近な大人だ。健全な青少年の性欲の発露される相手として、そこまでおかしなものでもあるまい――と、そこまで考えたところで奏汰の悲痛な叫びが飛んだ。
「ちっ、違う! オレが見たのは、先生の――」
「…え」
「――あ」
既に真っ赤になっていた奏汰の顔がいっそう朱に染まった。
人間ここまで赤面できるのだなぁと岡山が妙な感慨にふけっていると、奏汰はやけになったように言葉を続ける。
「そっ、そうだよ、先生の夢、見たんだ。先生と、その、やらしいこと、する夢」
俯いて、決して岡山の方は見ないで奏汰は告白する。いったいどんな表情をして話しているのだろうかと思った。
「だから……授業中も、先生のこと見てたのかな」
「っ……う、ん」
「先生を見て、いやらしことを考えてた? 授業中なのに」
「…ごめんなさい」
「ああ、いや、怒ってるわけじゃない。……ねえ、奏汰くん」
「?」
奏汰がおそるおそるこちらを見る。その顔は泣きそうで、けれど瞳の奥に隠しきれない情欲を宿している、気がした。
「どんな夢だった? 先生と、どんなことをしたのかな?」
そう言って微笑む自分は、果たして教師の顔をしているのだろうか。きっと違うだろう。そうでなければ、眼の前の奏汰がこんな、欲を露わにした顔をしているわけがないし――こんな問いかけが、そもそも出てくるわけがなかった。
「先生に、教えてほしいな」
手を伸ばし、奏汰の唇に触れる。奏汰は小さく、こくりとうなずいた。
ちゅぷ、と可愛らしい音を立てて唇が離れる。目を開けて見た奏汰の唇はどちらのものとも知れぬ唾液に濡れていて、ひどくエロティックだ。おそるおそる、奏汰がぎゅっと閉じていた瞼をそろそろと持ち上げる。――そのタイミングでまた唇を重ねる。慌てたように目を閉じるのが可愛らしい。ぺろりと舌先でつついた唇がわずかに開かれて、すかさず潜り込ませた。
「んぐ、うっ」
「ん、ふ……っう、ん…」
こぼれる声がまた、奏汰の初心さを証明するようで愛しくなる。対して岡山は、艶めいた吐息を惜しげもなく溢れさせて、ソファについていた掌をゆっくりと奏汰の腿に這わせた。少年らしい細く引き締まった肉の感触を制服のスラックス越しに感じる。
膝頭から、足の付け根のきわどいラインを描きながら、岡山はこっそり笑みを浮かべた。目を閉じている奏汰には見えていない、とても見せられない、悪い大人の笑み。
岡山の指先は、奏汰の股間をかすめている。興奮に膨らみきっているそこを、爪の先で、衣服の布越しにかりかりと引っ掻いた。びくりと震える肩が可愛らしい。
舌先を弄ぶ程度の口付けから奏汰を解放すると、彼は大きく深呼吸した。息を止めていたのかと気づいてまた笑みが零れてしまう。
「…せん、せ」
「ずいぶん大きくしているな。夢を見たときもこうなった?」
「それは……」
口ごもる奏汰の耳元に唇を寄せる。くすぐったそうに肩を竦める彼に構わず、たっぷりと色を含んだ声で囁いた。
「教えて」
指先が触れている雄がいっそう昂ぶっていくのを感じる。はあ、と彼が吐き出した吐息すら、彼自身の興奮を示しているようで、岡山は背筋をぞくぞくと這い上がっていくものを感じた。
「…わ、わから、ない。……起きたときには、その…」
「夢精していた?」
耳元で囁く。こくりと頷く。素直でよろしい、と褒めるように、岡山はほんの爪先だけで触れていた奏汰自身を、指先でつついた。
「あっ!」
「それで、どういう夢を見ていたんだい?」
張り詰めてテントを作っている、その輪郭をなぞるように指の背で触れていく。奏汰の目は岡山の指の動きを追うばかりで、それ以外のものなど見えていないかのようだ。そんな従順さが可愛らしく、だからこそ意地の悪いこともしたくなる。すりすりと股間をなぞっていた手を離し、また耳元で囁いた。「答えて」と。
「せん、せいと……」
「先生と?」
「…先生が、裸で……、オレは、寝転がってて……」
「うん、それで?」
相槌を打ちながら、奏汰の耳朶を舌でなぞった。唇で食めばますます大きく肩を震わせて、喉の奥で喘ぎを噛み殺している。
「先生が、オレの、上に乗ってて、それで……」
「…それから?」
耳介を唇で挟んだまま尋ねれば、奏汰は「ひ、」と小さく声をあげる。悪戯をしすぎたかと唇を離して奏汰の顔を見てみると、頬は真っ赤なまま、瞳を潤ませて息を荒らげて、まるで射精したかのようだった。―ーいや。
「……奏汰くん」
「っ…」
名前を呼びながら、岡山の手は奏汰の股間を――今度は指先だけでなく、掌全体で触れていた。さっきまであれほど張り詰めていたそこは、今はずいぶん大人しいものだ。それに、濡れたような感触と音が伝わってくる。
「…あ、あの、せん、」
「射精してしまったのか」
思ったことをそのまま口にすると、奏汰は叱られた子供のようにびくりと震えた。その顔には恥ずかしさと申し訳なさ、それから――何より、未だ醒めない興奮の兆しが綯い交ぜになっている。
直接触れられもせず、それも人前で達してしまったのだ。今奏汰の中では様々な感情が渦巻いていることだろう。岡山は奏汰を抱きしめると、頭を撫でながら努めて優しい口調で慰めた。
「ああ、大丈夫だ。君を叱ろうというわけではないんだ。ただ少し、びっくりしてしまって」
君もそうだろう、と耳元に注ぎ込むように囁きかけると素直に頷く。
「…それで――先生が、君の上に乗っていて、だったか」
「え、あ」
先ほどの奏汰の言葉を繰り返しながら、ソファに奏汰の体を横たえると、彼は明らかに動揺したようだった。とはいえ既に動揺しっぱなしのようなものだったのだから今さらだ。
押し倒した奏汰の、ちょうど腿の上に跨って、岡山は奏汰のベルトに手をかけた。前を緩め、下着に手を入れると、ぬちゃりと濡れた感触がある。そこから取り出したペニスもまた白く汚れていた。
「濡れたままでは気持ち悪いだろう?」
「え、あ、ひッ、」
驚きに見開かれた奏汰の目を見つめたまま、岡山はぱくりと彼のペニスを頬張った。精液の苦味が舌を刺激する。奏汰はというと、瞬きをすることも忘れて岡山を、岡山が自分の性器を咥えているのを見つめている。わかりやすい反応に気をよくして、奏汰自身を咥えたまま岡山は微笑んだ。
奏汰のペニス全体にまとわりつく精液をこそぎ落とすように舌を這わせる。口腔に溜まる精液は唾液と混ぜ合わせて飲み下す。皮の中に入り込んだ精液を恥垢ごと舐め取っている間に、奏汰自身は再び大きく膨らんでいた。
「んっ……、ぷ、ぁ」
一度ペニスから口を離すと、その大きさがよくわかる。咥えているだけでも少々苦しいくらいだったそれは、どちらかというと華奢な奏汰の体格には不似合いといえるサイズをしていた。
鼻先にそびえるペニス越しに、奏汰がこちらを見ているのがわかる。岡山がぺろりと唇を舐める舌の動きにさえ、奏汰の視線が捉われているのがわかる。すべてわかっているから、岡山はゆっくりと体を起こした。
「せんせい…?」
奏汰が訝しげに声をかけてくる。岡山はそっと、その唇に人差し指を当てた。
「……これから先生とすること、皆には内緒にできるか?」
ああ、なんてひどい問いかけだろう!
必死に頷く少年の姿を見下ろしながら、岡山は背徳感でいっそ射精してしまいそうだった。
自分は何てひどい、わるい大人だろうか。そしてそんな大人の魔手にかかってしまった久我山奏汰という少年は、なんて哀れなのだろう。
にっこりと笑みを浮かべて奏汰の頭をひと撫でして、岡山は再び奏汰の股間に顔を埋める。そして片手を、自分の下肢へ。
「んぅ、む…っん、んちゅ…っ」
「あ、あっ…!」
奏汰自身を中ほどまで咥え込み、先端を舌の腹で愛撫すると可愛らしい声で喘ぐ。その声を聞きながら、岡山はおもむろに自分の下着の中、奥まった部分に手をやった。
濡らした指先が触れた窄まりはまだ固く閉じている。構わず中指を突っ込むと引き攣れるような痛みがわずかに走るが、苦痛よりも興奮が勝っていた。快楽を求めるのではなく孔を拡張するために指を激しく動かす。
早く、はやく、奏汰を自身の体内に迎え入れたかった。彼の熱い肉棒をこの身のうちにすべて収めてしまったら、いったいどれほどの快楽が待ち受けているのだろうという想像だけで果ててしまいそうだった。
脈打ちながら膨らんでいく奏汰自身を喉奥まで咥え込んで、舌で、口蓋で、頬裏で、歯茎で、口の中の粘膜全体で愛してやりながら、この昂ぶりで貫かれることを妄想しながら、ぐちゅぐちゃと淫猥な水音を立ててアナルを拡げていく。
二本の指が抵抗なく抜き挿しできるようになった頃にはもう、岡山の我慢も限界を迎えていた。
もう少し拡張しなければ、年のわりにはという枕詞をつけるまでもなく立派な奏汰自身を挿入するのに充分でないかもしれない、という考えも頭を過ぎるのだけれど、でも、もう、これ以上のお預けなんて耐えられない。
奏汰の腹の上に跨り、はちきれんばかりの奏汰のペニスを片手で支えて、岡山はゆっくりと腰を落としていく。
奏汰の目は、岡山の体内に呑まれていく自分自身にだけ注がれていて、そしてそんな少年の必死さが、岡山の胸をいっそう熱くさせた。
今この瞬間、久我山奏汰という少年は岡山の虜になっている。
快も不快も岡山に支配されて、そしてそれに、気づいていない。
なんてかわいい、いとしい、おろかしい生き物だろうか。
「…んっ……、はぁ、ぁ……、はい、った…っ」
「あ、あ…! せんせ、…先生…!」
岡山の尻がぺたりと奏汰の下腹にぶつかると、奏汰は腰をびくびくと跳ねさせた。やはり拡張が足りなかった岡山の後孔は若い雄をきゅうきゅうと締め付けている。何の技巧もない、ただ生理現象としての蠕動であっても、少年には刺激が強すぎるくらいだろう。
岡山は奏汰の腹についていた手をするすると上へ上らせていく。脇腹を、胸を、鎖骨を、首を、指先でなぞりながら、ゆっくりと体を倒した。
「っ……、そうた、くん」
「あ…っ! せ、んせ、」
喘ぐ奏汰に合わせて体内のペニスも大きく脈打っている。限界が近いことはすぐに見て取れた。だから岡山は、奏汰の頬を両手で包み、くちびるが触れ合うほどの距離で囁いた。
「――先生の、中に、出して」
「っ…あ、あぁっ、せんせ、…ああぁっ!」
腹の奥にじんわりと熱いものが広がっていく。奏汰は全身を震わせて息を詰めたあと、大きく呼吸を繰り返す。
絶頂の瞬間、ぎゅっと硬く閉じていた目がぼんやりと開かれて、目の前の岡山を映し出した。琥珀色の瞳の中にいるのは岡山だけだ。
呆然としたまま、奏汰がせんせい、と呟いた。今、彼の中にいるのは自分だけなのだ。
この少年のすべてを、今このときだけは、自分が支配しているのだ。
たまらなくなって岡山は目の前にある半開きの唇にキスをした。舌を差し入れれば抵抗なく受け入れて、どころか控えめに絡めようとさえしてくる。差し出された舌を吸い、唇を食み、歯列をなぞり、口腔でセックスをするかのように交じり合う。すると快楽に従順な少年のペニスはたちまち力を取り戻していくのだ。
口の周りが唾液で濡れ光るほどになって、ようやく岡山は唇を離した。物欲しげな奏汰の視線が追いかけてくるので、くすりと笑みを浮かべて腰を揺らしてやる。
「あ……」
「んっ…、こちらも、そろそろ、いいだろう?」
円を描くように腰を動かし、ゆっくりと引き上げて、そして下ろす。体の横に力なく下ろされていた奏汰の腕が、おずおずと岡山の腰に回された。
「っ、はぁ…、先生に、合わせて……、動いてごらん、…できるか?」
「…っ、う、ん……」
いい子だ、と奏汰の鼻先にキスを落として、岡山はゆっくりと腰を上下させる。ずるずると竿の半ばほどまで引き抜いて、それから奏汰の腹の上にぺたりと尻を落とす。それに合わせて奏汰が拙く腰を使う。
はじめこそセックスというよりは何かの準備運動のような動きだったけれど、次第に岡山の身体は快楽を拾い始める。
そしてそれは――奏汰にとっても同じことだった。
「んっ、…はぁっ、はー…っ、…っあ、あっん…」
「せ、せんせい…っ、せんせい…!」
「っえ、…あっ!? あ、ぁ、そうた、くん…!」
ほとんど添えられているだけだった奏汰の手が、岡山の腰をぐっと掴む。
かと思うと、無意識に自分の感じる場所を掠めるよう動いていた岡山の動きなど無視して、身勝手ともいえる強さで腰を打ち付けてきた。
「ぁっ、あっ! や、だめ、そんな、いきなり…っ!」
「せんせいっ、ここ、ここだろ? ここ、好きなんだろ…っ? さっきから、ずっと、ここに当ててる…っ」
「やぁ、だっ、だめ、だめぇっ…!」
互いの肌がぶつかる音と喘ぎ声が部屋中に響く。岡山の身体は奏汰の上に倒れこんでいて、尻だけが奏汰の動きに合わせて上下している。ペニスを咥え込んだアナルはペニスが引き抜かれようとするたび追い縋るように粘膜をさらけ出してひどくいやらしい。
「はぁっ、あっ…! せんせい、オレ、また出る…っ!」
「あ、あっ! だして、なかっ、せんせいのなか、にぃっ…!」
絶頂に向けていっそう激しく腰を突き上げながら、奏汰の唇が岡山のそれを塞いだ。呼吸を奪われた岡山の目には奏汰の欲にまみれた瞳だけが映っていて、そしてそれは、奏汰にとっても同じことだった。
「んッ! んんーっ!」
「……っ!」
岡山の胎の中で再び奏汰が射精する。
ほとんど同時に岡山も絶頂して、互いの腹の間を白濁で汚した。
荒い呼吸を繰り返して、奏汰の上にぐったりと横たわっていた岡山がのそりと起き上がる。
腰を浮かせてペニスを抜き出そうとした彼の腕を、奏汰が強く掴んだ。
「……奏汰くん?」
情事の余韻を残す吐息混じりの声で生徒の名前を呼ぶ岡山はしかし、教師の顔をしていない。
「先生……」
奏汰の目には未だ情欲の炎が灯っている。消える気配などまるでない、むしろいっそう燃え上がらんとするほどの。
岡山は、その目を見て、そしてふいと視線を逸らし、それから呟いた。
「そんな…、だめだ、ここでは……」
「じゃあ」
ここじゃなきゃ、いいのか。
岡山の腕を引き、浮きかけた腰を押さえつけ、二度射精してなお熱を持ったままの自身で岡山の胎内を掻き乱しながら奏汰は問う。
岡山はかすかに喘ぎながら、そしてその瞳を情欲で濡らしながら答えるのだ。
「だれにも、内緒にできるなら……」
その表情は既に、少年の雌に堕とされていた。
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