闇より出し者共よ

文月 澪

文字の大きさ
上 下
7 / 48
継承の章

第七話 幽玄の女

しおりを挟む
 同日深夜。
 禁忌の地に足を踏み入れようとする人影がひとつ。

 その姿は逞しいものの、どこか幼さを残した少年だった。

 暗く細い道を照らすのは懐中電灯の光のみ。
 森の中はしんと静まり、少年の足音だけが響く。

「ふん。何が禁忌の森だよ。誰も彼も怖がりやがって。見てろよ。オレが暴いてやる」

 少年は学校で流行りの怪談話を笑い飛ばした。ここは昔から入らずの森として地元では有名な場所だ。神社の裏側に位置し、広大な土地に木々が生い茂っている。
 
 しばらく進むと開けた場所に出た。
 一基の赤い鳥居があり、そこに人を拒むように注連縄しめなわが張られている。それをくぐると円形の広場に岩が佇む以外何も無い。

 少年は懐中電灯を動かして辺りを見回す。

「はっ、やっぱり何もねぇじゃねぇか。馬鹿らしい。ぇんべ」
  
 そう言って引き返そうと踵を返した時、背後に人の気配を感じて振り返る。
 そこには岩の上に座る一人の女がいた。

「え……、さっきは誰も……」

 訝しがりながらも懐中電灯を向ける。

 それは世にも美しい女だった。
 白い肌は光を放つように滑らかで、濡れるような艶を持つ長い黒髪が背に流れる。身に纏うのは白いしゃの薄絹一枚。乱れた襟元からは豊満な双丘が露わになり、薄く色づく果実が透けて見えた。

 少年はその美しさに息を呑む。
 静かに女が顔を上げれば赤い瞳が少年を捉えた。

 そっと手を伸ばす女に導かれるように少年は一歩一歩近づいていく。その顔はうっとりと夢を見ているようにだらしがなく、体からも力が抜けていく。懐中電灯を取り落とした少年はそれにも気付かずに女に惹き寄せられた。

 その下半身はズボンを張り裂かんばかりに猛りきっている。

 岩の元まで辿り着くと、女がしなだれかかり、細い指を少年の頬に沿わせ唇を重ねた。少年がゆるゆると胸を揉みしだけば短い嬌声が上がり、その声に少年の体は更に熱を帯びる。

 女が足を絡めると、少年はその肢体に覆いかぶさり貪るように指を這わせていく。

 そして、辺りに淫靡いんびな水音が響いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

嫌われ者の僕

みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈学園イチの嫌われ者が総愛される話。嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。 ※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。改行多めで読みにくいかもです。

ヤンデレでも好きだよ!

はな
BL
春山玲にはヤンデレの恋人がいる。だが、その恋人のヤンデレは自分には発動しないようで…? 他の女の子にヤンデレを発揮する恋人に玲は限界を感じていた。

彼者誰時に溺れる

あこ
BL
外れない指輪。消えない所有印。買われた一生。 けれどもそのかわり、彼は男の唯一無二の愛を手に入れた。 ✔︎ 四十路手前×ちょっと我儘未成年愛人 ✔︎ 振り回され気味攻と実は健気な受 ✔︎ 職業反社会的な攻めですが、BL作品で見かける?ようなヤクザです。(私はそう思って書いています) ✔︎ 攻めは個人サイトの読者様に『ツンギレ』と言われました。 ✔︎ タグの『溺愛』や『甘々』はこの攻めを思えば『受けをとっても溺愛して甘々』という意味で、人によっては「え?溺愛?これ甘々?」かもしれません。 🔺ATTENTION🔺 攻めは女性に対する扱いが酷いキャラクターです。そうしたキャラクターに対して、不快になる可能性がある場合はご遠慮ください。 暴力的表現(いじめ描写も)が作中に登場しますが、それを推奨しているわけでは決してありません。しかし設定上所々にそうした描写がありますので、苦手な方はご留意ください。 性描写は匂わせる程度や触れ合っている程度です。いたしちゃったシーン(苦笑)はありません。 タイトル前に『!』がある場合、アルファポリスさんの『投稿ガイドライン』に当てはまるR指定(暴力/性表現)描写や、程度に関わらずイジメ描写が入ります。ご注意ください。 ➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。 ➡︎ 作品は『時系列順』ではなく『更新した順番』で並んでいます。

ヤンデレ蠱毒

まいど
BL
王道学園の生徒会が全員ヤンデレ。四面楚歌ならぬ四面ヤンデレの今頼れるのは幼馴染しかいない!幼馴染は普通に見えるが…………?

私立明進学園

おまめ
BL
私立明進学園(メイシン)。 そこは初等部から大学部まで存在し 中等部と高等部は全寮制なひとつの学園都市。 そんな世間とは少し隔絶された学園の中の 姿を見守る短編小説。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学園での彼らの恋愛を短編で描きます! 王道学園設定に近いけど 生徒たち、特に生徒会は王道生徒会とは離れてる人もいます 平和が好きなので転校生も良い子で書きたいと思ってます 1組目¦副会長×可愛いふわふわ男子 2組目¦構想中…

うさキロク

雲古
BL
サイコパス鬼畜サボり魔風紀委員長に馬車馬の如く働かされながらも生徒会長のお兄ちゃんに安らぎを得ながらまぁまぁ平和に暮らしていた。 そこに転校生が来て平和な日常がちょっとずつ崩れていくーーーーーーーー

キミの次に愛してる

Motoki
BL
社会人×高校生。 たった1人の家族である姉の由美を亡くした浩次は、姉の結婚相手、裕文と同居を続けている。 裕文の世話になり続ける事に遠慮する浩次は、大学受験を諦めて就職しようとするが……。 姉への愛と義兄への想いに悩む、ちょっぴり切ないほのぼのBL。

処理中です...