23 / 29
魔法への邂逅
第23話 ︎︎憧れを抱いて
しおりを挟む
翌朝、俺はまたいつの間にかベッドに寝ていた。ぼーっとする頭に、微かだが昨日の記憶が蘇る。
昨日、あの採石場で魔術の訓練をやっていたら、つい没頭してしまって、MPがすっからかんになったんだっけ。だってさ、すっげー面白いんだもん魔術って。
今俺が覚えている魔術は火、水、熱、風、地、光、闇のレベル5までだ。これはヒューゼントに教えてもらった。ギルドで使う予定だった魔術書の金が浮いたのはありがたいけど、俺、まだレベル2だからね?
実際に使えるのは1頁までの魔術だ。4以上の頁に載っている魔術はグレーで表示されていて使えない。
そもそも魔術の使用制限というものがある。自身のレベルが1であれば、1頁目が問題なく使える。これは冒険者に限らず、魔術書を読んだり、師匠がいれば覚える事ができるんだけど、それ以降はレベルキャップが設けられている。
2頁目以上はレベルが5の倍数で解放されていく。この辺もなんかゲームっぽいよな。
だから使える範囲で色々試した。MPの調整、長時間の維持、同時使用、広範囲展開、凝縮、拡散。ヒューゼントに習った事に加え、漫画やゲームで仕入れた知識も総動員だ。
特に同時使用が面白い。あの大魔導士を知ってる奴なら誰でも試したいであろう、極大呪文。そして禁呪法。
結果から言えば、禁呪法は真似ができた。5つの炎を指に灯す事に成功。もう鳥肌もんだよ。思わず叫んじゃったね。
でも極限呪文の方はダメだった。2種類の魔術を展開する事はできるけど、どうしても混ざらない。だけど面白い現象が起きたんだ。
まず火と熱。熱属性の魔術は温度を操る。だから氷を出すには熱魔術を使わなきゃならないんだ。魔術をマイナスに働かせて、大気中の水分を凍らせる。ここで問題が起きた。
火も熱なんだよね。ある意味同じ属性って事。熱魔術をプラスに働かせると逆の現象で大量の水蒸気が発生する。火は出ないけど、高温にはなるって訳。
これは水魔術にも言える事で、水とプラスの熱を使っても、結局は水同士になってしまう。対極の魔術が存在しないんだ。
光と闇も同じ。光を使えば必然的に闇ができて意味が無い。風と土も対極とは言えないしね。
そこで試したのが火と風。
これは正直ヤバかった。
火を風が煽って、火災旋風みたいに渦巻いたんだ。実験を繰り返してMP切れ寸前だったから大事にはならなかったけど、全力でやったらフレンドリーファイア待ったナシ。大きな戦場とかでしか使えないわ。
あとは水と土。こっちは底なし沼ができた。採石場に大穴開けちゃって、丁度MPも尽きたし陽も暮れたから逃げて来ちゃったけど……今日、どうなってんだろ。ちょっと怖いな。
そんで、やっぱりカンパニーハウスの門でぶっ倒れて、今に至る。
あー……またメイムに礼言っとかないとな。俺を運べるのはメイムくらいだし、2日続けて迷惑をかけてしまった。帰りの気力は残しとかないとダメだね。
まだ重い体を起こすと、ノックが響きイルベルが入ってきた。寝ぼけ眼で見やると、呆れたように笑う。
「おはよう、ルイ。その分じゃ、昨日もやりすぎたのか? ︎︎訓練に励むのも良いけど、あまり無理はするなよ。うちの貴重な戦力が減ってしまう」
そう言って背中をバシバシと叩かれた。
「痛い、痛いってイルベル!」
抗議の声を上げる俺にも、笑顔を崩さず頭をぐしゃりと撫でられる。
「お、今日は言い返す気力があるんだな。まだたった2日なのに、凄いじゃないか。やっぱり勇者に選ばれるだけはある。その調子なら、自分で降りてこられるよな? ︎︎もう朝飯ができるぞ。……今日もキーナが当番だけど、ちゃんと言って聞かせたから。話し合いにも、応じるそうだ」
最後は優しい声音で囁く。俺は少し気まずくて、俯いてしまった。
キーナと、ちゃんと話したい。そうは思っても、相手にも譲れないものがある。思い通りになんていく訳ない。
それでも。
俺はシーツをきつく握って、頷いた。
「分かった。ありがとう、イルベル。俺、ちゃんとキーナと話すよ。同じカンパニーの仲間なんだ。しこりは残したくない」
ベッドを降りて、イルベルにしっかりと視線を合わせた。
昨日、あの採石場で魔術の訓練をやっていたら、つい没頭してしまって、MPがすっからかんになったんだっけ。だってさ、すっげー面白いんだもん魔術って。
今俺が覚えている魔術は火、水、熱、風、地、光、闇のレベル5までだ。これはヒューゼントに教えてもらった。ギルドで使う予定だった魔術書の金が浮いたのはありがたいけど、俺、まだレベル2だからね?
実際に使えるのは1頁までの魔術だ。4以上の頁に載っている魔術はグレーで表示されていて使えない。
そもそも魔術の使用制限というものがある。自身のレベルが1であれば、1頁目が問題なく使える。これは冒険者に限らず、魔術書を読んだり、師匠がいれば覚える事ができるんだけど、それ以降はレベルキャップが設けられている。
2頁目以上はレベルが5の倍数で解放されていく。この辺もなんかゲームっぽいよな。
だから使える範囲で色々試した。MPの調整、長時間の維持、同時使用、広範囲展開、凝縮、拡散。ヒューゼントに習った事に加え、漫画やゲームで仕入れた知識も総動員だ。
特に同時使用が面白い。あの大魔導士を知ってる奴なら誰でも試したいであろう、極大呪文。そして禁呪法。
結果から言えば、禁呪法は真似ができた。5つの炎を指に灯す事に成功。もう鳥肌もんだよ。思わず叫んじゃったね。
でも極限呪文の方はダメだった。2種類の魔術を展開する事はできるけど、どうしても混ざらない。だけど面白い現象が起きたんだ。
まず火と熱。熱属性の魔術は温度を操る。だから氷を出すには熱魔術を使わなきゃならないんだ。魔術をマイナスに働かせて、大気中の水分を凍らせる。ここで問題が起きた。
火も熱なんだよね。ある意味同じ属性って事。熱魔術をプラスに働かせると逆の現象で大量の水蒸気が発生する。火は出ないけど、高温にはなるって訳。
これは水魔術にも言える事で、水とプラスの熱を使っても、結局は水同士になってしまう。対極の魔術が存在しないんだ。
光と闇も同じ。光を使えば必然的に闇ができて意味が無い。風と土も対極とは言えないしね。
そこで試したのが火と風。
これは正直ヤバかった。
火を風が煽って、火災旋風みたいに渦巻いたんだ。実験を繰り返してMP切れ寸前だったから大事にはならなかったけど、全力でやったらフレンドリーファイア待ったナシ。大きな戦場とかでしか使えないわ。
あとは水と土。こっちは底なし沼ができた。採石場に大穴開けちゃって、丁度MPも尽きたし陽も暮れたから逃げて来ちゃったけど……今日、どうなってんだろ。ちょっと怖いな。
そんで、やっぱりカンパニーハウスの門でぶっ倒れて、今に至る。
あー……またメイムに礼言っとかないとな。俺を運べるのはメイムくらいだし、2日続けて迷惑をかけてしまった。帰りの気力は残しとかないとダメだね。
まだ重い体を起こすと、ノックが響きイルベルが入ってきた。寝ぼけ眼で見やると、呆れたように笑う。
「おはよう、ルイ。その分じゃ、昨日もやりすぎたのか? ︎︎訓練に励むのも良いけど、あまり無理はするなよ。うちの貴重な戦力が減ってしまう」
そう言って背中をバシバシと叩かれた。
「痛い、痛いってイルベル!」
抗議の声を上げる俺にも、笑顔を崩さず頭をぐしゃりと撫でられる。
「お、今日は言い返す気力があるんだな。まだたった2日なのに、凄いじゃないか。やっぱり勇者に選ばれるだけはある。その調子なら、自分で降りてこられるよな? ︎︎もう朝飯ができるぞ。……今日もキーナが当番だけど、ちゃんと言って聞かせたから。話し合いにも、応じるそうだ」
最後は優しい声音で囁く。俺は少し気まずくて、俯いてしまった。
キーナと、ちゃんと話したい。そうは思っても、相手にも譲れないものがある。思い通りになんていく訳ない。
それでも。
俺はシーツをきつく握って、頷いた。
「分かった。ありがとう、イルベル。俺、ちゃんとキーナと話すよ。同じカンパニーの仲間なんだ。しこりは残したくない」
ベッドを降りて、イルベルにしっかりと視線を合わせた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!
夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!!
国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。
幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。
彼はもう限界だったのだ。
「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」
そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。
その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。
その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。
かのように思われた。
「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」
勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。
本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!!
基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。
異世界版の光源氏のようなストーリーです!
……やっぱりちょっと違います笑
また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)
【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話
白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。
世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。
その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。
裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。
だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。
そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!!
感想大歓迎です!
※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる