41 / 60
第3章 乱舞
第41話 重なる想い
しおりを挟む
窓の外は満天の星が煌めく、明るい月夜。遠くに梟の声が響き、木々のざわめきが風の冷たさを感じさせる。
それはいつもなら気にもとめない、微かな音。でも、今の私には怖いくらいに大きく聞こえた。
湯浴みでネフィを筆頭に数人のメイド達に磨きあげられ、薄衣の寝衣を着せられて、私は大きな寝台に座っている。この寝室は、王太子夫妻のための部屋だ。寝台も自室の物とは違い、余裕で二人が横になれるだけの広さがある。それだけで、これから起こるであろう出来事が頭を過り、動きがぎこちなくなってしまう。
寝衣は透けているのではないかと思うほどに頼りなく、落ち着かない。窓から差し込む月明かりだけが部屋を照らし、焚かれたお香の細い煙が妖しい雰囲気を醸し出していた。
緊張で固まったまま、無限とも思える時間が終わりを告げる。
軽いノックが響き、私の部屋とは逆の扉が開く。この部屋にはお互いの自室からだけ入れるようになっていた。
現れた殿下も、同じような薄絹の寝衣を着ている。逞しい体の線がうっすらと見えて、私は咄嗟に顔を背けた。私が見ているように、殿下にも私が映っているという事だ。薄い寝衣を手繰り寄せ、どうにか体を隠そうと試みるも、殿下の腕が伸びてきて遮られてしまった。
「リージュ、恥ずかしいの? すごく奇麗だよ。こんな姿の君を見れるのは、僕だけなんだ……はぁ、幸せ……」
殿下は私の首元に唇を寄せ、深呼吸する。昼間と同じ行動だけれど、今は薄絹一枚を隔てただけの温もりが伝わってきて、とにかく恥ずかしい。体中が心臓になったのかと思ってしまうほどに、鼓動が激しく鳴る。
顔を上げられずにいる私に、殿下は薄く笑いながら頬を包んだ。その手は熱くて、お互いの熱が交じり合うような感覚に陥る。
「こっち見て……」
真っ赤になっている事は自覚しながら、おそるおそる顔を上げると、すぐに唇を塞がれた。二度、三度と口づけしながら、殿下はうっそりと囁く。
「やっと、君と繋がれる。この六年、どれほど夢に見たかな。出征してからは触れる事もできなくて、毎日君を想った。五年間はまだよかったんだなって、今更ながらに思うよ。だって、君はまだ遠い存在だったから。でも、今は違う。こうして手を伸ばせば触れられるんだ」
そっと私の胸に触れながら、殿下は吐息を漏らす。薄絹越しの殿下の手は大きくて硬く、頂を掠めるように動かれると更に体温が上がっていく。
思わず声が零れると、殿下はほくそ笑んだ。
「ふふ、可愛い……僕はまだ成人していないけど、きっと幸せにするから。できるだけ、優しくする。でも、昼間言ったように止まらないよ? ほら、もうこんなになっちゃってるもの」
そう言いながら、私の手を自分の下腹部へと導く。そこには熱の塊が脈打っていた。
「触って……? 僕がどれほど君を愛しているのか、感じてよ」
そう言われても、こんな経験なんて皆無の私はどう触ればいいのかさえ分からない。ぎこちなく撫でると、殿下が身震いをした。
「ん……っ。も、無理……。リージュ、先に謝っておくね。ごめん」
その言葉を言うが早いか、殿下は私に貪りついた。
それはいつもなら気にもとめない、微かな音。でも、今の私には怖いくらいに大きく聞こえた。
湯浴みでネフィを筆頭に数人のメイド達に磨きあげられ、薄衣の寝衣を着せられて、私は大きな寝台に座っている。この寝室は、王太子夫妻のための部屋だ。寝台も自室の物とは違い、余裕で二人が横になれるだけの広さがある。それだけで、これから起こるであろう出来事が頭を過り、動きがぎこちなくなってしまう。
寝衣は透けているのではないかと思うほどに頼りなく、落ち着かない。窓から差し込む月明かりだけが部屋を照らし、焚かれたお香の細い煙が妖しい雰囲気を醸し出していた。
緊張で固まったまま、無限とも思える時間が終わりを告げる。
軽いノックが響き、私の部屋とは逆の扉が開く。この部屋にはお互いの自室からだけ入れるようになっていた。
現れた殿下も、同じような薄絹の寝衣を着ている。逞しい体の線がうっすらと見えて、私は咄嗟に顔を背けた。私が見ているように、殿下にも私が映っているという事だ。薄い寝衣を手繰り寄せ、どうにか体を隠そうと試みるも、殿下の腕が伸びてきて遮られてしまった。
「リージュ、恥ずかしいの? すごく奇麗だよ。こんな姿の君を見れるのは、僕だけなんだ……はぁ、幸せ……」
殿下は私の首元に唇を寄せ、深呼吸する。昼間と同じ行動だけれど、今は薄絹一枚を隔てただけの温もりが伝わってきて、とにかく恥ずかしい。体中が心臓になったのかと思ってしまうほどに、鼓動が激しく鳴る。
顔を上げられずにいる私に、殿下は薄く笑いながら頬を包んだ。その手は熱くて、お互いの熱が交じり合うような感覚に陥る。
「こっち見て……」
真っ赤になっている事は自覚しながら、おそるおそる顔を上げると、すぐに唇を塞がれた。二度、三度と口づけしながら、殿下はうっそりと囁く。
「やっと、君と繋がれる。この六年、どれほど夢に見たかな。出征してからは触れる事もできなくて、毎日君を想った。五年間はまだよかったんだなって、今更ながらに思うよ。だって、君はまだ遠い存在だったから。でも、今は違う。こうして手を伸ばせば触れられるんだ」
そっと私の胸に触れながら、殿下は吐息を漏らす。薄絹越しの殿下の手は大きくて硬く、頂を掠めるように動かれると更に体温が上がっていく。
思わず声が零れると、殿下はほくそ笑んだ。
「ふふ、可愛い……僕はまだ成人していないけど、きっと幸せにするから。できるだけ、優しくする。でも、昼間言ったように止まらないよ? ほら、もうこんなになっちゃってるもの」
そう言いながら、私の手を自分の下腹部へと導く。そこには熱の塊が脈打っていた。
「触って……? 僕がどれほど君を愛しているのか、感じてよ」
そう言われても、こんな経験なんて皆無の私はどう触ればいいのかさえ分からない。ぎこちなく撫でると、殿下が身震いをした。
「ん……っ。も、無理……。リージュ、先に謝っておくね。ごめん」
その言葉を言うが早いか、殿下は私に貪りついた。
11
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説


「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

美人な姉と『じゃない方』の私
LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。
そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。
みんな姉を好きになる…
どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…?
私なんか、姉には遠く及ばない…

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる