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第四章「KANATA」
第25話「KANATA」
しおりを挟む「はぁぁぁぁぁぁ!!!」
オリヴァが機械にたどり着く前に、僕は高く拳を振りかざした。ハルさんの苦しみの分、目一杯力を込めてお見舞いする。
悪魔なのは、お前の方だ!
バンッ!
「ぐはっ!?」
僕の体はまたもや電流に飲み込まれる。そうだ、オリヴァにはライトニングガンがあったんだ。
「うぅぅ…」
「危ねぇ危ねぇ…」
オリヴァは機械のレバーに手をかける。飛び道具を持っているのが実に卑怯だ。しかし、奴らにとっては関係ない。計画の邪魔をしようとする僕らを、本気で殲滅《せんめつ》しにかかっている。オリヴァの戦争は既に始まっているのだ。
「残念だったな。お前らの抵抗もここまでだ」
ガチッ
オリヴァは機械のレバーを傾け、スイッチをプラスに切り替える。すると、ジアの髪が逆立ち、体中が青白い光に包まれる。
「フフ♪」
ジアが不敵な笑みを浮かべる。能力を一気に解放させる。
「うわ!」
「わぁ!」
バシッ
ジアの腕を掴む麻衣子と玲羅さんは、念力で瞬時に引き剥がされ、アマンダさんと共に再び壁に貼り付けられる。
「くそっ! またかよ…」
「う、動けない…」
出男君と蛍ちゃんも、壁に貼り付けられたまま体の自由を奪われる。壁に背中を打ち付けられた衝撃で、アマンダさんの手からライトニングガンが溢れ落ちる。ジアは壁に貼り付けられたみんなに手をかざし続ける。
「ジア…もうやめるんだ…」
僕は体中に流れる痺れを堪えて起き上がる。今奴らに反撃できるのは、体の自由が効く僕だけだ。ジアの映る視界がぼやける。メガネをかけていないからではない。涙が溢れ落ちそうなのだ。
「やめないわ。私はオリヴァに全てを捧げる。オリヴァの邪魔をする者は容赦なく叩き潰す!」
「くっ…ハルさん目を覚まして! ジアの好きにさせちゃダメだよ! このままだと何もかもおしまいだ!」
僕はジアの奥底に押し込められたハルさんの心に呼び掛ける。ハルさんには僕の声が聞こえているはずだ。どうかハルさんが体のコントロールを取り戻してくれれば…。僕は神様に魂を捧げる覚悟で叫ぶ。
「僕はそんなの嫌だ! だからハルさん…」
「ウザい」
シュッ
床に落ちているライトが浮かび上がる。
「ウザいウザいウザいウザいウザい。もうこれ以上口を開くな! 私達の邪魔をするなぁ!!!」
バンッ
「ぐふっ!」
ジアの波動弾が腹に命中する。何度も超能力による攻撃を受け止めて、僕の体はボロボロになっていた。もはや立っているのもままならない程に。僕は脱け殻のように床に這いつくばった。薄れていく視界の先には、血痕が見えた。僕、血を吐いたのか…。
「…」
「伊織!」
「伊織君!」
ついに倒れて動けなくなった僕に、壁に貼り付けられたみんなが呼び掛ける。応えようと腕を動かそうとするも、脳からの指令が腕にたどり着かない。磁石でくっついているかのように、僕の腕は重たく床に乗っかったままだ。もう疲労困憊で立ち上がれなかった。ジアとオリヴァは、勝利を確信してニタニタと笑う。
「フンッ、無様ね。結局ハルとアンタの時間は、ただのお遊びに過ぎないのよ。もうアンタはハルに会えない。ハルは私の手で消してやるんだから」
「…」
「守ってやるなんて約束しちゃって。でも結局守れなかったわね。ハルもそうだけど、約束を破るようなアンタも、生きる意味なんかないのよ」
「…」
「諦めなさい。アンタとハルの時間は、これで終わりよ」
「そんなわけない!」
「!?」
突然麻衣子が口を開いた。ジアに向かって叫んだ。
「アンタなんかに伊織とハルは負けないわ! もちろんオリヴァにもね」
「何ですって…」
「超能力が使えるからって、自分が宇宙最強とか思ってんじゃないでしょうね。全く違うわ!」
「フンッ…ハルはともかく、この男に一体何ができるってのよ。ただくだらない詩を書くだけしかできない無能な人間に…」
「無能なんかじゃないわ!!!」
麻衣子の叫び声がのジアの鼓膜と心を揺らす。
「アンタ見てこなかったの? ハルがどれだけ伊織の詩で変わることができたのかを」
「…」
「私も最初は読んでも何とも思わなかったわよ。でもハルはそれを読んで人生を救われた。今まで受けた様々な屈辱を覆《くつがえ》すほどに、伊織の温かい詩はハルの心を優しく包み込んだ。魅力は伝わらなかったけど、わかったわ。伊織の詩にはそれほどの力がある。他人の人生観を丸々変えてしまうほどの力があるってね!」
麻衣子…。
「何が言いたいのよ…」
「伊織を馬鹿にするんじゃないわよ! 確かにそいつはずっと詩を書いてばかりいた。読んでて私にもよくわからなかった。どれもこれもくだらないわよ。でもね、そんな奴にも魅力があって、きっと誰かの助けになれる。実際に伊織の詩がハルの人生を救ったように。伊織がハルの心を動かしたのよ! まさにそれこそ超能力だわ!」
ジアは歯ぎしりしながら後退りする。
「アンタみたいな人を傷付けるだけの薄汚い力とは違う!」
「くっ…」
「だから伊織は生きる価値のない無能な人間なんかじゃない。伊織はアンタが思うよりも何百倍も何千倍も何万倍もすごいんだから!!!」
「伊織君!」
麻衣子の勇気が伝染したように、今度はアマンダさんが僕に訴える。
「麻衣子ちゃんの言う通りよ。アナタはとっても素晴らしい人。アナタはハルの本物の笑顔を取り戻した。私にできないことを、意図も簡単にやってみせたじゃない!」
「そうだ! 男ならこんなところで諦めんな! その身が朽ち果てて息絶えようが、守りたいものは何が何でも守り通せ!」
「伊織君ならできる! いいえ、伊織君にしかできないのよ!」
「保科! アンタはその程度の人間なわけ? 違うでしょ!?」
みんなからの熱いエールが、僕の心に飛び込んでくる。ジアの攻撃で完全に凍えきった体が、まるで新鮮な血を注いだように暖まっていく。温度を取り戻した僕の腕は、地に手を突いて体を起こす。
「伊織、立ちなさい! アンタにはあるんでしょ? 本当に守らなきゃいけない人が!」
本当に守らなきゃいけない人、それは…
「ハル…さん…」
僕は潰れそうなほど傷だらけの喉で声を出した。ジアは立ち上がった僕を見つめ、目の前の光景が信じられような様子で立ちすくんでいた。
「ハルさんは…僕が…守る…」
僕は今にも折れそうな足で体を支える。操り人形のようなふらふらした足取りで、ゆっくりとジアに近づいていく。
「何なの…アンタ…」
「ハルさん…僕、すごく嬉しかったんだ…ハルさんが僕の詩を誉めてくれたこと…」
「うるさい!」
バシッ
床に転がっていたライトを念力で浮かせ、僕の顔面に投げつけるジア。衝撃で吹っ飛ばされ、再び床に背を打ち付けて倒れる僕。額から赤黒い血が流れ落ちる。
「本当に嬉しかった…初めて誉めてくれたのがハルさんだったから…」
「うそっ、なんで…」
それでも僕は立ち上がり、再び歩き出す。ジアはオリヴァのテーブルに置いてある燭台やら彫刻やらを、念力で浮かして僕の頭部目掛けて投げつける。その度に僕は倒れるけど、すぐに起き上がって歩き始める。不思議だ。物をぶつけられる衝撃は痛いはずなのに、ハルさんのことを思うと耐え凌ぐことができる。そう、これも…
「ハルさんの…おかげで…僕は自信が持てた…自分の存在に…」
「来ないで!」
バシッ
僕は止まらずに歩みを進める。今ならどんな苦痛も受け流すことができそうだ。脳幹を銃で撃ち抜かれても、心臓を刃物で貫かれても、ハルさんの元へたどり着くことができる。
「僕の…生きる理由を…作ってくれたのは、他の誰でもない…ハルさんなんだ」
「来るな!」
グシャッ バキッ ズガンッ
ライトや燭台、彫刻が、容赦なく頭に降り注ぐ。投げつける物が無くなれば、ジアは波動弾で僕の進行を阻む。しかし、頭が血だらけになっても、僕は足を止めなかった。ハルさんを思う心が僕にくれた力だ。
「ありがとう…ハルさん…」
「何…何なの…」
「おいジア! さっさと倒せ!」
オリヴァがジアに向かって叫ぶ。しかし、いくら攻撃しても倒れない僕に恐怖し、子鹿のようにたたずむ。
“伊織君、私も…”
「私も…ありがとう…」
「…!」
ジア自身も意図せずに口が開いた。今の優しい口調は、間違いなくハルさんのものだ。ジアの真似ではない。ジアはとっさに口から放たれた言葉に戸惑いを隠せないでいた。
「なんで…今のは…ううっ!」
ジアは頭を押さえてもだえ苦しむ。
「ハルさん…」
僕はジアの目の前に立つ。ジアは目を見開いて、僕の前に立ちすくむ。ハルさんには感謝しきれないほどに救われた。こんなに僕の人生が明るい色で彩られるなんて思わなかった。父さんと母さんがいなくなって、世の中に絶望して、死にたいとも考えた僕の思考を、ハルさんは意図も簡単にねじ曲げ、僕の居場所を作ってくれた。ハルさんと出会ってからの人生が、これ以上ないくらいに幸せなものになった。
そして僕は…
「あぁぁ…」
「ありがとう。本当にありがとう…」
僕はハルさんの体をぎゅっと抱き締め、そして口を開いた。
「好きだ…ハル…」
僕はハルが好きだ。ハルと出会ってから、彼女と一緒にいる時間が短く感じるようになった。一緒に食べる料理が美味しいと思うようになった。一緒に眺める景色が美しく見えるようになった。
自分を好きだと思えるようになった。
「あぁぁ…」
「好きだよ、ハル。この宇宙の誰よりも…君を愛してる。僕と出会ってくれて、ありがとう…」
今なら思える。この広い宇宙で、僕の価値を…僕が生きていい理由を見つけてくれる人は必ずいる。それがハルだった。彼女が差し出す温かい手が、僕をこの世界に生きる一人の大切な存在として認めてくれた。初めて自分を認めてくれた君を、僕は好きになったんだ。
「ハル、もっと君の声が聞きたい。君の笑顔が見たい。君の命を感じたい…」
「あぁぁ…」
「君に会いたい…」
僕は涙で目をいっぱいにしながら、祈るように強くハルの体を抱き締めた。
「伊織…君…」
僕はすぐにハルの顔を見る。ハルの瞳は星を散りばめたような白い粒が浮かんでいた。心を圧迫するような赤黒い邪気が消えていた。涙の宇宙だ。
「ハル…?」
「伊織君!」
今度はハルの方から勢いよく抱きついてきた。陽気なハルの声だ。ハルの人格に切り替わった。ハルが目を覚ましたんだ。
「伊織君! 伊織君!」
「よかった…本当によかった…」
ハルの人格が、ジアの人格に打ち勝った。体のコントロールを取り戻した。僕の必死の呼び掛けに、ハルは答えてくれたんだ。
バタバタバタッ
ジアの人格が抑え込まれたことにより、念力が再び途切れ、壁に貼り付けられた麻衣子達は体の自由を取り戻す。
「ハル…」
「元に戻ったのね!」
「よっしゃあ!」
「やったね伊織君!」
「よかった…」
ハルの復活をみんなで一緒に喜ぶ。本当によかった。やっぱりハルは心の強い人だ。
「な…なんで…どうして…」
一人取り残されたオリヴァは、ハルの身に起こったことが理解できないでいた。ただ、今まで味方側にいたジアが押し込まれ、ハルに体の自由を奪われたことだけは瞬時に察した。
「言ったでしょ。伊織はすごいって」
麻衣子は胸を張ってオリヴァの方へ歩み寄る。アマンダさんはライトニングガンを拾い、銃口をオリヴァに向けながら近づく。ハルさんはオリヴァに手をかざし、波動弾を形成する。ジアの人格を抑え込むことに成功したハルは、今やジア以上に最強だ。完全に形勢逆転し、僕らはオリヴァを追い詰めた。
「諦めなさい、オリヴァ」
「クソッ!」
ダッ
オリヴァはきびすを返し、ファルクを操る機械の方へ走り出した。オリヴァにはまだあの機械が残されていた。
「させない!」
バンッ
とっさにアマンダさんがライトニングガンで電撃を放つ。しかし、オリヴァは絶妙な角度に首を傾け、電撃をかわした。そのまま機械に手を掛ける。
「…!」
ハルが波動弾をオリヴァに向ける。そのまま気を高めて発射…
バシッ! ピンッ
しかし、オリヴァは素早くレバーを傾け、スイッチをマイナスに切り替える。ハルの波動弾はしぼんだ風船のように小さくなり、跡形もなく消える。マイナスに切り替わったことにより、ハルがファルクを使えなくなったのだ。
「あっ…」
「クソが! ジアの奴、こんな奴らに負けるなんて…あれほど愛してやったというのに!」
カチッ
オリヴァはライトニングガンの銃口をハルに向ける。
「もうお前らは用済みだ!!!」
バァァァァァン!!!!!
パワーマックスで電撃が放たれた、機械をも吹き飛ばすほどの勢いの電撃が、うなり声を上げる竜のように飛んでくる。僕はとっさにハルの前に出て両手を広げる。これ以上ハルの体は傷付けさせない。
バッ
「え…」
しかし、ハルは僕を横に突き飛ばした。地面に倒れると同時に、ハルの悲鳴が鼓膜に飛び込んで来る
「あぁぁぁぁ!!!」
バチバチバチバチッ
巻き付くロープのように、青白い電流がハルの体を包み込む。苦しみながら、ハルは僕の横に倒れる。そして眠りにつくように気を失った。
「…」
「ザマァねぇな! 俺を裏切った報いだ!」
気絶したハルに、もといジアに吐き捨てるオリヴァ。こいつ…散々ハルの体を弄んでおいて…。動かなくなったハルを眺め、僕は心の底から怒りが込み上げてきた。
ダダダダダッ
オリヴァのところへ走る。この最低な男を殴りたくてたまらない。相手が飛び道具を持っていることもお構い無しに、僕は我を忘れて走り出す。
「馬鹿め…」
オリヴァは僕の鼻先に狙いを定め、ライトニングガンの銃口を向ける。
カチッ
「…っな!?」
オリヴァは困惑した。引き金を引いても、電撃が全く発射されない。すぐにメーターを確認する。どうやらエネルギー切れのようだ。最後の最後で宇宙の神様は、オリヴァを見放した。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
バシュッ
「ぐふっ!」
オリヴァの頬に渾身の一撃が炸裂する。殴られた頬はスポンジのように潰れ、オリヴァは床に叩き付けられる。突然のライトニングガンのエネルギー切れに戸惑い、抵抗する余裕もなかったようだ。
「ハルのことはどうか知らないけど、君はジアのことが好きなんだろ? だったらどうして彼女の体を傷付けるんだ? 君には人としての心がないのか!?」
「ぐっ…」
「ファルカーを差別する人もそうだ。オリヴァ、この星の代表として肝に命じろ。超能力を持っているかどうかなんて些細な違いだろ。心を開いて関わり合えば、相手の知らない魅力が見えてくる。相手のことをよく知ろうともしないで、自分のイメージだけで人を差別するな!」
僕はハルとの思い出を振り返りながら、オリヴァを叱りつける。僕もハルの超能力を初めて目の当たりにした時は、本当にびっくりした。しかし、言わせてみればたったそれだけのこと。ハルさんは人智を越えた未知の生物などではなく、普通の人間だ。純粋で優しく、どこにでもいる可愛らしい女の子だ。
「ファルカーに父さんを殺されて、さぞ悔しかっただろう。でもね、怒りをぶつけるのは間違っている。憎しみによる争いは更なる憎しみを生むんだ。それなら仲良くした方が平和でしょ? 君の父さんが望む強い国とは、二つの種族が互いに助け合って生きていく絆の強い国のことなんじゃないかな」
「…」
「種族は違えど、同じ星で暮らす仲間だ。わかり合うのは簡単だろ? 君、本当はそれをどこかで思ってたんじゃないのか? だからファルカーであるとわかっていても、ジアのことを好きになったんじゃないのか?」
オリヴァは憎いはずのファルカーであるジアに近づいた。僕はそれを、どこかでファルカーとわかり合いたい気持ちがあったからであると信じたい。ファルカーのことは憎いけど、ジアだけはせめて理解してあげたい。そんな気持ちがどこかにあったのではないか。
しかし、オリヴァは頬に手を当て、反抗的な態度で返す。
「うるせぇ! もう本当のこと言ってやるよ! 本当はジアのことも愛してなんかねぇ。アイツに近づいたのも、告白したのも、全部兵器として利用するための口実だ! 能力をうまく使いこなせるとはいえ、アイツはファルカーだ。誰が何と言おうと…ファルカーは俺にとって憎むべき存在なんだよ!」
「…」
僕は驚愕した。まさかジアまで騙されていたとは。地球なら死刑判決が下されるレベルかもしれない。この男は一体どれだけのファルカーを陥れたら気が済むんだ。
しかし、僕はオリヴァの様子に違和感を感じた。うまく言えないが、自分の犯した罪に対し、全くもって責任を感じていないようなことを言っているが、怯えたような口調が、自分の行いを後悔していることを表しているようにも見てとれた。
「俺の父さんを殺したファルカーを…俺は憎む…だから…」
ピッ バタンッ
オリヴァがスイッチを見せつけ、勢いよく押す。すると、唯一の出入口がシャッターで閉じられる。
「この世から一人残らず消し去ってやる!」
ピッ
再び新たなスイッチを取り出して押すオリヴァ。押した瞬間、至るところからけたたましい警報音が鳴り響く。麻衣子達は萎縮する。
「何? 何が起きたの!?」
「あと5分でこの宇宙船は粉々に吹き飛ぶ。お前らは爆発に巻き込まれて死ぬだろうな」
爆発だって!? ということは、今のスイッチは時限爆弾のタイマーをスタートさせるための…。
「なんでそんなこと…ていうか、このままだと僕らだけじゃなくてオリヴァまで…」
「もう自分の命なんかどうでもいい。俺はファルカーを全滅させることができればそれでいいんだよ」
オリヴァは自暴自棄になっていた。自分の命を省みず、ただ父親を殺された憎しみに突き動かされていた。ひとまずここを脱出しなくては。
ガシャンッ ガシャンッ
「ダメだ! このシャッターびくともしねぇ…」
出男君ががむしゃらにシャッターを叩き続けるが、開く様子はなかった。赤く腫れた腕を庇う出男。素材が特殊な合金か何かでできているようだ。蛍ちゃんが渾身の蹴りをお見舞いしても、シャッターは傷一つ付かなかった。
「無駄だ、脱出は不可能だ」
オリヴァに何を言われても僕らは諦めなかった。部屋中を駆け回り、出口を探した。すると、アマンダさんが何かを思い出したように、テーブルの方へ向かっていく。テーブルに取り付けられた液晶画面に触れる。
「この部屋のコンピューターにアクセスして…爆弾のシステムを解除すれば…」
ケーブルで自分の液晶端末とテーブルを繋ぐアマンダさん。アクセスが完了すると、爆発システムにログインする。
「できた!」
僕らはアマンダさんのところへ行き、液晶端末の画面を囲む。画面には『2:51』と表示されていた。残り2分51秒でこの宇宙船は爆発するようだ。そしてその下には…
「パスワード?」
4桁のパスワードを入力するスペースと、カタカナが並んだキーボードが表示されていた。爆発システムは正しいパスワードを入力することで解除できるらしい。もちろん僕らはパスワードを知らない。アマンダさんも知らないようだ。
「オリヴァ! 正しいパスワード知ってんでしょ! 答えなさい!」
麻衣子がオリヴァの胸ぐらを掴んで脅す。しかし、オリヴァは目線を合わせずに他人顔のように呟く。
「さぁな」
「オリヴァ! 答えなさい!」
オリヴァに顔を近づけて恐喝するように叫ぶ麻衣子。オリヴァは黙ったままだ。しかし、オリヴァが仕組んだ爆発システムであるため、オリヴァが解除するためのパスワードを知っているのは間違いない。
バァンッ
「ぐっ!?」
オリヴァが電撃を受け、もだえ苦しむ。麻衣子がいつの間にかアマンダさんのライトニングガンを奪っており、オリヴァに向けて放ったらしい。
「言いなさい! パスワードは何なの!?」
バンッ
「ぐはっ!」
電撃の音とオリヴァの苦しく声が重なる。拷問じみた光景に思わず目を反らす。流石にやり過ぎではないか。
「言え!!!」
「ハ、ハルの…」
オリヴァは薄れゆく意識の中、かすれた声で呟く。ハルの…何だ? ハルが関係しているのか?
「ハルの…何!?」
「ハルの…本当の…」
バタッ
麻衣子の手からオリヴァの胸元が滑り落ちる。そのままオリヴァは床に倒れ、気を失う。必要以上に追い詰め過ぎたようだ。麻衣子がいくら体を揺らしても、オリヴァは目を覚まさなかった。
「残り2分!」
アマンダさんが叫ぶ。もはやパスワードを解く以外に爆発を止める術は残されていないようだ。しかし、パスワードを知っているオリヴァは気絶したまま。ハルが関係しているとわかっていても、肝心のハルも先程から意識を失ったままだ。
「…」
僕らは必死に考える。視界の隅に、捕らわれたお姫様のように眠るハルの姿が見える。
「ハルの…本当の………名前?」
オリヴァが気絶する前に言った言葉を思い出した。もしかしたら、オリヴァはハルの本当の名前を知っていて、それをパスワードとして設定しているのではないか。
「名前? ハルはハルじゃないの?」
頭を抱えながら、麻衣子が僕に聞いてくる。
「いや、ハル自身も知らない本当の名前があるんだ。もしかしたらパスワードはそれかもしれない」
「ハル自身も知らなかったら意味ないじゃない!」
たとえハルが意識を保っていたとしても、元々ハルは自分の本名を知らない。自分を捨てた親も、拾って育ててくれたアマンダさんも、愛称である“ハル”で呼んでいた。聞いてもわかるはずがない。でも、もしオリヴァがハルの本名を知っているとしたら…。
カチカチ
アマンダさんがキーボードで「ハル」と入力し、Enterキーを押す。しかし、「パスワードが間違っています」の文字が表示される。次に「ジア」と入力しても同じだった。やはり彼女の本名は別にあるんだ。ここは一つ賭けてみよう。僕らはパスワードはハルの本名であると断定した。
「ハル…アンタの名前は一体何なの…」
玲羅さんが気絶したハルに問いかける。ハルは答えることなく、目を閉じたままでいる。端末の画面を見るとタイマーが『0:44』と示されていた。既に爆発まで残り1分を過ぎていた。部屋で鳴り響く警報音が、僕らの正常な思考を狂わせる。
「嘘だろ…こんなところでお陀仏かよ…」
「うぅぅ…」
出男君と蛍ちゃんは涙目になりながら身を寄せ合う。麻衣子と玲羅さんも悔しそうな顔をしている。アマンダさんは端末を床に起き、優しくハルの頬を撫でる。みんな、刻一刻と迫る死の瞬間を受け入れかけていた。
『0:20』
僕は端末に表示されるキーボードを睨み付ける。考えろ…考えるんだ! ハルを守れる男は僕だけなんだ。アマンダさんやオリヴァ程ではないにしろ、これまでハルと多くの時間を共にしてきたではないか。
『0:15』
ハルのことは十分理解したつもりだ。自分の大好きな女性のことなんだから、導き出せるはずだ。思い出せ、彼女の苦しみを…悲しみを…話してくれた過去を。オリヴァの脅威、二つに引き裂かれた人格、彼女の人生そのものが、この謎を物語っている。
『0:10』
「…あっ!」
“オリヴァ…君は…もしかして…”
『0:05』
僕はキーボードでパスワードを入力した。
* * * * * * *
オリヴァが目覚めた。いつの間にか外に連れ出されており、周りを大勢の警察が取り囲んでいた。オリヴァは手錠をかけられる。伊織達も含め、テトラ星意思決定機関の特殊部隊の人達などの、数多くの人命を危機に晒した罪で、オリヴァは裁判にかけられることになった。まだ未成年であるため、情状酌量の余地があるといいのだが。
「…」
伊織達は立ち上がるオリヴァを見つめる。警察に救助され、伊織達はなんとか宇宙船を脱出することができた。すると、伊織の横をハルがすり抜けた。いや、彼女はジアだ。
「オリヴァ…」
ジアはいつの間にか目を覚ましていた。眉間にシワを寄せ、オリヴァを睨み付ける。ハルとジアは意識を共有しているため、人格が切り替わった後も聞こえていたのだろう。オリヴァが戦争に利用するためだけにジアに近づいたと言っていたことを。さそがしオリヴァを恨んでいることだろう。
「ジア、待って」
伊織はジアの肩に手を乗せた。ジアはこちらを振り向く。伊織はジアの前に出て、オリヴァに近づく。
「…なんでわかった。アイツの本名が“ハルジア”だってことが」
オリヴァが暗いトーンで伊織に問いかける。爆発寸残のあの瞬間、伊織は頭によぎった「ハルジア」という名前を入力した。見事にヒットし、爆弾のタイマーは『0:01』で止まり、爆発システムは解除された。その後、アマンダが警察に通報し、伊織達の救助が始まったというわけだ。
伊織はオリヴァの瞳を見つめる。
「僕自身もとても不思議なんだけど、君がパスワードをどうするか考えたら、なんとなくわかったよ」
「俺が?」
「君はファルカーを全滅させるとか、散々言っていたけど、本当はわかり合いたい気持ちがあったんでしょ?」
僕は小馬鹿にするように、オリヴァに笑いかける。
「そもそも、僕らを本気で倒そうと思っているのに、パスワードなんて逃げ道を用意するのも不自然だと思ったんだ。しかもそのパスワードはハルの本名だった。嫌いなファルカーであるはずのハルのね」
「…」
「君はファルカーとわかり合いたかった。そして、ハルとジアが一つになってほしかった。二人をちゃんと愛せるように、兵器として利用しようと思っていたけど、心のどこかで間違ってると思ってたんじゃないかな」
「…フッ、だったら何だよ」
オリヴァはまるで、そのことを読まれることも想定済みであると言い張るように笑う。
「別に。ただ、君が悪役になり切れない不器用な人間だってことがわかるだけさ」
「…」
オリヴァは自身の敗北を悟り、まるで今後のテトラ星の命運を託すように口を開く。
「アイツの本名は『ハルジア・アオキテル』。テトラ星の住民データベースに名前が載っているのを見て知ったんだ。全く…宇宙の神様はひっでぇ運命を与えたがるよな。ファルカーとノンファルカー…二つの種族だけじゃなく、アイツの心も引き裂いちまうなんて」
オリヴァは警察に連行され、背を向ける。最後に伊織に向かって呟く。
「負けたよ。アイツのことを宇宙で一番理解してやれるのは、伊織…お前だ」
そう言い残して、オリヴァは警察に囲まれながら警察の配送車へと歩いていった。弱々しくも、どこかたくましい背中を伊織達に見せつけながら。
「…っはっ!」
「ハル!」
静かに人格が切り替わり、ハルが目を覚ました。
「伊織君!」
「ハル!」
伊織とハルは抱き合った。これで全てが終わった。いや、全てと言うと語弊があるが、少なくともオリヴァの脅威は完全に終結した。湧き出た秘湯のような安心感に浸り、二人は身を寄せ合う。
伊織達はテトラ星意識決定機関の手配した宇宙船で、地球まで護送してもらうことになった。ファルカーを兵器として利用した侵略戦争は、オリヴァが捕らえられたことにより一時停滞となった。しかし、すぐにも中止に進むであろう。元々オリヴァの独断で進められた計画であったため、新たに任命される総長次第で計画が変更される。果たして、テトラ星の行く末はどうなることやら。
「そういえば、保科もやっとハルのこと呼び捨てで呼ぶようになったわね」
「アイツは強くなったのよ。心も体もね」
麻衣子と玲羅は、手当てを受けてもまだ尚傷だらけの伊織の背中を見つめる。
「へぇ…保科、すごいわね」
「えぇ、私なんかじゃとても釣り合わないわね」
「え?」
「何でもない」
麻衣子は伊織の背中をいつまでも微笑ましく見つめた。
「やっぱ宇宙は広いなぁ…」
「そうね」
「まるで俺達の心のようだ」
「そうね」
出男と蛍は身を寄せ合いながら、窓から見える宇宙空間を眺めている。
「…」
「…」
伊織とハルも、宇宙に散りばめられた星々を眺める。ハルを救い出すことに成功した達成感で、伊織はクタクタだった。伊織は隣に座るハルに顔を向ける。ハルはどこか寂しそうな顔をしている。
「ハル、これからどうするの?」
「…しばらく、テトラ星で暮らしてみようと思う」
「え?」
僕は思わず声を上げた。元々テトラ星での差別を受ける人生に絶望していたハル。しかし、再びテトラ星での生活を考えていたようだ。
「どうして…」
「戦争は止められたけど、まだファルカーの邪悪なイメージが払拭できたわけじゃない。これからファルカーとノンファルカー、二つの種族が互いに助け合っていけるような未来を作りたい。そのために、私…テトラ星に残ることにしたよ」
「…そっか」
伊織はハルに微笑みかける。それがハルの決断と言うのなら、伊織は甘んじて受け入れる。ハルはようやく自分の地位を取り戻すことができたのだ。伊織はハルの輝かしい未来を祝福した。
「ハルの人生はハルのものだ。これから自由に生きるといい」
「うん、ありがとう」
ポタッ
「…あれ?」
伊織は自分のズボンに染みができていることに気づく。
「おかしいな…ハルがようやく…前向きに生られるように…なるかもしれないってのに…ほんと、おかしいなぁ…」
伊織の瞳から悲しみの雫が溢れ落ちる。ハルがテトラ星で生きることを決意した。しかし、それはすなわち伊織との別れを意味する。いつかハルとは別れる日がやってくる。そのことは予測できていた。しかし、伊織にはそれが堪らなく辛い。まるで瞳だけが誰かのものになってしまったかのように、涙が止まらない。
「伊織君…ごめんね…」
「ハル…」
伊織はズボンが湿り切ってしまう前に、ポケットからあるメモを取り出す。祈るように折り目を開く。
「これが…僕の気持ちだよ」
伊織は詩をハルに手渡す。テトラ星に向かう宇宙船の中で、いつか来るであろうハルとの別れを想像しながら書いた詩だ。ハルはそれを受け取り、静かに読み始めた。瞳は既に悲しみの雫を落としかけていた。
* * * * * * *
KANATA / 星名意織
あなたがそばにいればいいのに
なんで遠くに行っちゃったんだろう
あなたが残したものは
今も僕の胸に
残ってるはずだろうって
思っていた
だけど大事なものは
離れれば離れるほど
遠くなって忘れちゃうんだ
虚しいよね
あなたの頬に触れるまで
あと数センチなんだ
もう少しなんだ
それでも遠ざかって
また離れてく
どうしようもなく日は沈んでいく
辛くて凍えそうになる夜ばっか
悲しくて死にたくなる夜ばっかだよ
どんな希望も夢も詰め込んだとしても
あなたがいなきゃただのガラクタに
それでも僕は歩いていくけど
あなたと歩いた道しか知らないや
終わりこそ全ての始まりなんだよと
その言葉抱き締め歩いていこうぜ
だけど少し胸が痛むの
あなたがそばにいてくれたら
思い出だけは捨てない
あなたはそう言った
その全てが僕らの足になるから
月日はまた巡って
16年が過ぎて
見覚えのあるような
花が咲く
あなたと永遠になるまで
あとどれくらい永遠を
続けたらいいんだろう
それでも遠ざかって
また離れてく
どうしようもなく咲いた花も散る
苦しくて泣きたくなる夜ばっか
虚しくて何も言えない夜ばっかだよ
どんな幸せでも 慈しんだ愛も
あなたがいなきゃただのぼろ切れに
季節だけが通り過ぎていく
忙しないけどあなたのいない日々
長かったようで短くも思える
その時間も抱き締め生きていこうぜ
だけどまだ寒さが続くの
あなたがそばにいないからね
見えなくて迷っていく人生と
首を絞められたまま歌う声と
ごちゃ混ぜになったままの希望と絶望は
今の僕を何色に染め上げるんだろう
辛くて凍えそうになる夜ばっか
悲しくて死にたくなる夜ばっかだよ
どんな希望も夢も詰め込んだとしても
あなたがいなきゃただのガラクタに
それでも僕は歩いていきたい
あなたがくれた愛を力にして
あなたに出会えて本当によかったと
その言葉抱き締め歩いていこうぜ
一つだけわがままを言うなら
あなたがそばにいてほしい
遥か彼方 あなたを想う
* * * * * * *
「…何よ、これ」
「…」
ポタッ
メモ用紙に涙が落ちる。その染みが「あなたがそばにいてほしい」のフレーズを覆い隠すように広がっていく。伊織の気持ちに共感しているようだった。
「こんなの読んだら…離れたくなくなるじゃない…」
「ハル…」
「うぅぅ…伊織君、ありがとう…」
ハルは伊織の胸に飛び込んで泣き叫んだ。ハルは思う。一体この男はどれだけ自分の心を変えさせれば気が済むのだろうか。自分も伊織と一緒にいたい。離れ離れになりたくない。こんな美しい詩は夢のままに留めておきたい。
「伊織君…本当にありがとう…」
「うん」
「私、伊織君のことが大好き」
「僕もだよ、ハル」
ハルはやっと自分の気持ちを伝えることができた。自分の人生を救ってくれた救世主に恋をして、思いを伝え、互いの愛を確かめ合う。まさか自分がこんなことを経験できるとは思わなかった。これも全て伊織のおかげだ。ハルは伊織に深く感謝した。
「伊織君、好き…好き…大好き!」
「僕もだよ、ハル。大大大大好きだ!」
近づいてくる地球をバックに、二人は熱いキスを交わした。地球は二人の愛を祝福するかのように、青く美しく輝いていた。
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