かみさまの忘れ人

KMT

文字の大きさ
上 下
4 / 25
第一章「かみさまのいない日常」

第3話「心の距離」

しおりを挟む


優衣は尿意を感じてテントから出た。その他のキャンパー達は星空を眺めてまだ起きてるようだが、優衣はさっさと寝てしまっていた。しかし、プチクラ山の夜はだいぶ冷える。優衣は用を足すために仮設トイレに向かった。

「ふぅ...スッキリ♪」

優衣はふと足を止め、開けた草原で空を見上げた。空には無数の星が輝いていた。

「わぁ~、綺麗…」

星の一粒一粒が独特の色の輝きを放ち、地上で生きる人々の人生を祝福しているようだった。しばらく見とれる優衣。

「綺麗ですけど、やっぱり寒いですねぇ…」

隣から男性が声をかけてきた。見た目が少し若々しい。年齢は20は越えているだろうか。とにかく優衣は挨拶した。

「こんばんわ。えっと、キャンプに参加してる人ですか?」
「はい。この山から見る星空は実に見事だとお聞きしたもので」
「確かに素晴らしいですね。あ、私…黒田優衣(くろだ ゆい)っていいます」
「藤野豊(ふじの ゆたか)です。よろしく」

二人は七海町が開催するプチクラ山星空観察キャンプに参加していた。プチクラ山はハイキングや天体観測に適していることで有名な観光スポットであり、毎年町が星空観察をするために抽選で選ばれた者達でキャンプをするという催し物を行っていた。正直、優衣は星空よりキャンプが目当てで参加した。他のキャンパー達が星を見ている中、一人テントにこもって寝た。しかし一度見てみれば、あまりにもの美しさに思わず目を奪われてしまった。

そして、時刻がちょうど午後9時になった頃だった。

「いや~本当に綺麗で…って、あっ!流れ星!」

星空の上に重なるように、いくつかの線が現れては消えた。見事な流星だ。優衣は慌てて手を合わせて唱える。

「あぁぁ、えっと神様神様仏様…どうかこの願いをお叶えください!」
「元気ですね…」

豊も優衣に倣って手を合わせて祈る。無数の流星はキャンプに参加した人々を感動の渦に巻き込んだ。

シュー

「?」

何やら後ろから音がする。二人は後ろを振り返る。

「あれは…」
「煙?」

森の奥からモヤモヤした白い煙のようなものが立ち込めてきた。暗い森の中で白く輝く。

「いや、煙というよりは霧のような…」
「もしかしたら誰か火を起こし過ぎてるのかも!行って見ましょう!」
「はい…」

二人は深い森の中に入った。濃い霧の中をどこまでも走った。





二人の行方不明者届が出たのはそれから4日経った後だった。



   * * * * * * *



それから私と陽真君の仲はますます良くなった。小学校中学校を共に卒業し、同じ高校に入学した。再び同じ学校での生活を迎えた私達。

「これから3年間よろしくね!」
「おう…」

桜舞い散る入学式の校門で、高校の制服に身を包んだ私達は記念写真を撮った。陽真君の方は頬がやや火照っているように見えた。対して私は満面の笑顔だ。陽真君からもらった愛嬌を大切に持ち合わせている。こうして私達の高校生活は始まった。



陽真君との間に距離を感じ始めたのは、一年後の二年生になり始めた頃。いや、別に彼と話さなくなったり、一緒にいなくなったりしたわけではない。うまく言葉に表せないけど…心の距離の話だ。

陽真君は運動が好きだった。入学式の時も運動系の部活動からの勧誘をすごく受けていて、それらに興味関心があった。野球、サッカー、バレーボール、バスケットボールなど、体を動かせるのであれば運動部は何でもいい様子だったが、陽真君は一番の運動の基本である走ることを扱う陸上部を選んだ。そのことを、高校生活が始まって1ヶ月ほど経った後に陽真君が教えてくれた。

「私も陽真君と一緒に走りたい」

私は無意識にそんなことを口走っていた。相変わらず運動は苦手なのに。

「お前には難しいんじゃないか?」

さすがの陽真君も私の運動神経を懸念した。最初は私も走者として入るつもりだった。女子部員も走者として2,3人入部しているらしく、私も今から練習すれば大丈夫だと思った。だが、現役陸上部員の実力に圧倒されて自信を失い、結局マネージャーの道を選んだ。

そこまでして陸上部に入部するのは、やはり陽真君のそばにいたいからという理由だった。そんな半端な理由で部活動を選ぶのは自分でもどうかと思う。だが、嫌な予感がしたのだ。部活動に入れば会える時間もうんと少なくなる。運動部ならなおのことだ。このままだと陽真君が私から離れていきそうな気がした。

予感は的中した。陽真君は部活に徹底的にのめり込むようになり、帰りが遅くなった。陽真君の走りの実力は現役部員も賞賛するほどで、さらに没頭していった。私がマネージャーとして部活を行う日と部活動自体が休みの日以外は、陽真君は夕方まで練習を続けた。陽真君が先に帰るように言うため、私は一人で帰るしかなかった。

そこからだ。私は陽真君との心の距離を感じ始めた。マネージャーとして彼にタオルやスポーツドリンクの入った水筒を渡すためにそばにいたとしても…

「陽真君、これ…」
「おう、サンキュー」

それらを受け取ると、陽真君はタオルで汗だけ拭き取り、無口になる。不機嫌なわけではない。考え事をしているのだ。どうすれば早く走れるようになるのかを。体重をかける部分はどこに、疲れない呼吸のリズムは、体のフォームを安定させるコツ、これ以上工夫できることはないかと。

「頑張ってね」
「あぁ…」

この時の陽真君との会話は長続きはしない。陽真君をそっとしておいてあげるのだ。一人で考え込んでいる姿を見るととても悲しくなる。今の彼の目は私を見ておらず、はるか遠くのゴールを見ている。私にも何か手伝えることはないかと思うが、陸上の知識は何一つないため、ただタオルと
水筒を渡すことしかできない。私が助けられることは限られていた。

私は強くなりたかったのかもしれない。いつも陽真君に守られてばっかりだったから。それがもどかしくて仕方なかった。今まで自分が彼を助けたことはあったか。

「今日も疲れたぜ…」
「お疲れ様」

やっと一緒に下校ができる放課後がやって来た。しかし、下校路の最中の会話も長続きはしない。陽真君は頭の片隅でやはり陸上のことを考えているようだった。話があからさまに断片的だったからだ。陽真君のために私は気づかないふりをしながら横を歩いた。

「凛奈、明日は遅くなると思う。明日の放課後は先に帰っててくれ」

静寂が続き、ようやく言葉を発してくれたかと思いきや、私の期待外れの内容。これも最近よくあることだ。

「うん、わかった」

陽真君のために私は我慢する。本当は帰りが遅くなってでも陽真君と一緒に下校路を歩きたい。しかし、陽真君には今は別にやるべきことがある。私の事情を押し付けて陽真君に迷惑をかけるわけにはいかない。

「あれ?」
「ん?どうした?」
「いや、何でもない」

私は何か大切なことを忘れているような気がした。





「んで、結局あんたはどうしたいわけ?」
「えっと…陽真君との距離が遠くなった気がするから近づきたくて…」
「それはさっき聞いた。私は別にあんた達そんなに遠くないように感じるわよ?同じ部活で普通に頻繁に会ってるし、帰りも一緒に歩いて帰ってんでしょ?」
「物理的な距離じゃなくて、えっと…心の問題というか…」
「はぁ?何それ?曖昧過ぎるわよ…」

私は同じクラスの黒田哀香(くろだ あいか)に相談をした。彼女は私の新しい友達だ。黒髪のツインテールが特徴で元気の有り余る子。男勝りな性格をしているけど、たまに垣間見る女の子らしさが可愛い子だ。哀香ちゃんは普段通りの少し乱暴な口調で話すけど、私の相談を真剣に受けてくれている。優しい。

「心の距離ねぇ~」

哀香ちゃんはぽりぽりと頭を掻く。今までに哀香ちゃんには何度も相談をしている。お互いが暇な時に行ける陽真君とのお出かけ(哀香ちゃんは「デートじゃん」と言うけど、付き合ってるわけではないんだけどなぁ…)に着るべき服を選んでもらったり、スポーツをする人(もっと具体的に言うと、陸上部などで走る人)の体に健康的な料理のレシピを教えてもらったり。まぁ、全部陽真君のことなんだけど…。とにかく私は陽真君に関することで悩む度に相談をしていた。でも、さすがの哀香ちゃんも今回ばかりは具体的なアドバイスができないみたい。

「うーん…。あっ、いいところに!レンタカー!」
「ブーン、って、誰がレンタカーだ!あ、ちょっと哀香!」

緑髪の男の子が、哀香ちゃんの横を他人顔で通っていこうとした(車の真似をしながら。案外ノリノリだった)。哀香ちゃんはその子の制服の袖を引っ張って無理やりこちらへ近づけた。

「引っ張らないでよ…」
「丁度いい、ちょっと相談したいことがあるの」

彼の名前は紀村蓮太郎(きむら れんたろう)。ちょっと私に似ていて内気な男の子だ。哀香ちゃんとは中学校が同じらしくて仲がいいみたい。私は陽真君が忙しい時は哀香ちゃんと蓮君の三人でよく一緒に行動している。蓮君に相談することもたまにある。

「何?また陽真君についての相談?」
「そう、レンタカーも協力してちょうだい」
「レンタカー言うな!」

私は彼のことを「蓮君」と呼ぶけど、哀香ちゃんはよくふざけて「レンタカー」と呼ぶ。ずいぶんと仲が深いみたいだ。



「うーん…心の距離が遠くなった気がする、ねぇ…」
「具体的な策はないわけ?」
「とりあえずゆっくり話をしてみるとか」
「お話聞いてくれるかなぁ?」
「うーん…」

三人で唸る。そもそも相談内容が意味不明過ぎることに今さら頭を悩ませる。何?心の距離を近づけたいって…。一体何が言いたいのよ私…。

「心とは一体何か…」
「哲学…」
「バカロレア…」
「馬鹿…馬と鹿…、一生に一度でいいから馬に乗ってみたいわね」
「乗れたらカッコいいよね」

二人が謎の会話を始める。どれだけ考えても明確な解決策が見つからない。そもそも私は陽真君に何がしたいのか。二人の無駄話も終わって沈黙がしばらく続いた後、哀香ちゃんが口を開いた。

「あっ!こういうのはどう?」



 凛奈が陽真を誰もいなくなった放課後の教室に呼び出す
        ↓
 その場で凛奈が制服を脱いd(ry

「ちょっと待って!凛奈に何させてるんだよ!」
「ちょっと!まだ途中なんだから黙ってなさい!レンタカー」
「レンタカー言うな!」
「続けるわね」



 その場で凛奈が制服を脱いで下着姿になる
        ↓
 陽真が凛奈のパンツやブラジャーに興奮して凛奈に襲いかかる
        ↓
 二人だけの放課後の居残り学習(意味深)が始まる
        ↓
 既成事実ができて二人は結ばれる



「はい!これで二人は心も体もゼロ距離になってハッピーエンド!」

哀香ちゃんのハチャメチャな考えに思わず赤面する。陽真君に下着姿を見られる様を想像すると、とてつもなく恥ずかしい。

「あのねぇ…」

蓮君はもちろん呆れ顔だ。

「大丈夫よ。男なんてパンツとか見せとけば狼になって襲ってくるに決まってるわ。この際体の関係をつくってしまえばいいのよ!」

体の関係というのは…その…えっちな…あれで…///。

「凛奈?」

でも、もうそこまでしないと陽真君との距離は取り戻せないのか。だったらやるしか…。今日の下着、何色だったかな…可愛いの着てきたっけ?

「お~い、凛奈~?」
「は、恥ずかしいけど…///、陽真君にならその…ぱ…パンツ…見られてもいいから…///」

私はさらにその様を想像してしまい、頭から湯気が出る。恥ずかしさがこみ上げ、涙目になる。見られてもいないのに両手でスカートを押さえる。私が陽真君と…その…え、えっちなこと…を…うぅぅ…///

「凛奈…」

哀香ちゃんが私の肩に手を乗せて言う。

「わからない?冗談よ…?」





放課後は哀香ちゃんと蓮君が一緒に帰ってくれると言った。そのついでと言っては何だけど、三人で陽真君の部活の様子を見に行った。ちなみに二人は帰宅部だ。

「そういえば、今日部活いいの?あんたマネージャーなんでしょ?」
「うん。今日は私の担当じゃないから…」
「担当?」

おかしな話だけど、この学校の陸上部はマネージャーがとても多い。走者としての陸上部の部員が23人に対し、マネージャーは14人もいる。ほとんどが陽真君のカッコよさを耳にして、観賞目的で入部した子ばかり。正直私もその内の一人だ。陽真君は高校生になってから、女の子にこれでもかと言うほどにモテるようになった。それもそのはず。運動神経抜群で成績優秀、それにすごくイケメンだから。だが、私以外の女の子に関わられることが多くなったことも、心の距離を感じる理由の一つでもある。

話を戻すけど、一度の部活に14人もマネージャーがいては仕事が均等に分散できない。そこで、何曜日に誰がやるのかという担当を決めた。一度の部活に3,4人入ってマネージャー活動を行うという、アルバイトの固定シフト制のような謎の環境ができあがってしまった。それで今日は私の担当の曜日ではないということだ。

「ふーん」
「陽真君どこかな…」

私は陸上部が使っているグラウンドのスペースで陽真君の姿を探す。走っている人達を一人一人見渡す。

「きゃ~♪」
「浅野く~ん!」
「カッコいい~♪」

歓声の上がっている場所へ顔を向けると、ベンチに4,5人女子生徒が座って観賞をしていた。ジャージを着ている子と、制服を着ている子がいる。マネージャーもいるみたいだ。みんな陽真君の走る姿を見に来たようだ。

「あ、凛奈。浅野君ならあそこよ」

その中にマネージャー仲間の万里(まり)ちゃんがいた。彼女もまた陽真君のカッコよさに惹かれ、マネージャーとして陸上部に入部した子だ。

「ありがと…」
「あ、浅野君今から走るよ!」
「頑張って~♪」
「はぁ…遠くから見てもイケメン過ぎる…」

私の返事も陽真君に対しての賞賛の会話に掻き消される。私ももう蚊帳の外から陽真君を眺める一人の観客でしかないのか…。

「そういえば、もうすぐ体育大会よね?」
「浅野君走ってくれるのかな?」
「だといいわね」

そうだ。もうすぐ体育大会がある。陽真君は何か走る競技に出るのだろう。そのためにも必死に練習をしている。

パンッ
突然のピストルの音が私の心の中でのひとりごとを引き裂いた。私は陽真君の姿を追う。

「浅野君~!」
「頑張って~♪」
「素敵~♪」

ちょうどピストルの音と共に陽真君が走り出したようだった。大きく腕と足を大きく振り上げてチーターのように早く走る陽真君、カッコいい。俊足で200メートル先のゴールを目指す。その横には他の男子部員が並走している。もしかして競争しているのかな。

胸の中に何かがざわめく。外に出たくて出たくてたまらなく感じている。こういう時に言うべきことは…。私は深く息を吸う。

「陽真君!頑張って~!」

私は思い切り叫ぶ。哀香ちゃんと蓮君はもちろん、周りに陽真君の観賞をしに来た女の子達も驚いてこちらへ注目する。陽真君のためならば、勇気を出して私は大声を出すことができる。

「…!」

それは決して錯覚ではなかった。陽真君は私の叫びを聞いた瞬間スピードを上げ、隣で並走している男子部員を追い越した。体から震え落とされる汗の滴が綺麗だ。そしてそのままゴールイン。陽真君は勝利した。

「やった~!」
「浅野君が勝った~♪」
「カッコいい~♪」

陽真君の勝利に喜びの声をあげる女の子達。陽真君の自慢のガッツポーズ、並走した男子部員と握手をする姿、すべてがいとおしい。私は何だか嬉しくなる。

「行こっ」

私は哀香ちゃんと蓮君に帰るよう促した。

「え?もういいの?」
「うん」

もう満足だった。二人はそれ以上何も言わずに私に着いてきた。最後に私は陽真君の喜ぶ姿を眺めながら下校路へ着く。



この時の私は気づかなかったけど、私が帰ろうとしていることに気づいた陽真君は、私の歩く後ろ姿を何か言いたげに見つめていたらしい。





「ほら、別に遠くないじゃない、あんた達」
「うん…」

帰り道に哀香ちゃんはまた私の相談を受けてくれた。でも、何だか自己解決できそうな気もした。

「ん?何か満足してなさそうな顔ね~?」
「うん。本当にこのままでいいのかなって思って…」

確かに心の底から私達は通じ合っているような気がした。心の距離のことは私の考え過ぎだったのかもしれない。今の関係のままで十分幸せ…のはず。でも、何か足りない気がする。まだ何かが欲しかった。その“何か”はまだ今の私にはわからない。相変わらず曖昧な私だ。

「幼なじみね~♪」
「え?」

哀香ちゃんは口元に手を置き、ニヤニヤしながら私を見つめる。

「そういう図々しいところ、本当に素敵だわ。いかにも幼なじみって感じ」
「哀香、何言ってるの…」

私と蓮君はいまいち哀香ちゃんの発言が理解できなかった。幼なじみって関係あるのかな?でも、よく考えてみれば確かに私って図々しいのかも。今の関係で満足していないところとか。

「ねぇ、凛奈」

哀香ちゃんは私の肩に手を置いて言う。









「いっそのこと告白したら?」
「…!?」

告白という言葉を聞いた瞬間、私の体の中の熱が一気に頭に集中するのがわかった。告白って…す、好きって言うの!?私はあからさまに動揺する。再び恥ずかしさが込み上げる。

「そんな、こ、告白って…///」
「言っとくけど、冗談じゃないわよ」
「でも、そんな…は、陽真君に告白って…わ、私…///」

私は赤くなった頬を両手で押さえる。告白するということは、私が陽真君を好きという事実があるということだ。ん?果たしてそれは事実なのか。

「凛奈、胸に手を当てて」
「え?うん…」

私は蓮君のいう通りに自分の胸に手を当てる。隣で哀香ちゃんが「巨乳うらやま…」と呟いているのが気になるけど、私は静かに心臓の鼓動を感じる。

「陽真君のことを思い浮かべてみて」

蓮君の言う通り、私は心の中で陽真君を思い浮かべる。陽真君と歩いた夕焼けの帰り道。小さい頃いつも泣いていた私を、陽真君は優しく笑って手を引いてくれた。陽真君と一緒にいる時間は本当に幸せだった。もう一度あの幸せを味わいたい。



ドクンッ ドクンッ
心臓の鼓動が早くなった。陽真君を思い浮かべた私の心はドキドキしていた。あぁ、そうか。これが答えなんだ。

「凛奈、どう?」

蓮君は心配そうに私は聞く。

「うん、大丈夫みたい」

哀香ちゃんも静かに私を見つめる。
私はできるだけ笑顔で言う。



「私、陽真君のことが好き」

高校生になってようやく自分の気持ちがわかった。締め切りが遅れた後にようやく存在に気がついた提出物のように、私の心はいつだってのろまだった。

「なら問題はないわね」
「でも、陽真君はどう思ってるか…」
「『でも』じゃないの!自分の気持ちに正直になりなさい!あんた可愛いし性格も優しいから陽真くらい落とせるわよ」
「そうだよ。自信持って!」
「そんなに心配することないと思うわ。幼なじみって、かなり優位なステータスよ」
「迷うくらいなら今のうちに自分のにしときな。誰かに取られる前に」

二人にこれでもかと励まされ、私は少し勇気が湧いてきた。

「哀香ちゃん…蓮君…」

覚悟を決めよう。いつまでも悩んでいるくらいなら行動を起こそう。

自分で言うのも何だけど、それからの私は行動力がより強まったと思う。どんなに辛いことがあっても、陽真君のためなら乗り越えられるようになったのだ。

私の勇気は哀香ちゃんや蓮君、私の助けになってくれた人、そして陽真君がくれたものだから。



    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

今、夫と私の浮気相手の二人に侵されている

ヘロディア
恋愛
浮気がバレた主人公。 夫の提案で、主人公、夫、浮気相手の三人で面会することとなる。 そこで主人公は男同士の自分の取り合いを目の当たりにし、最後に男たちが選んだのは、先に主人公を絶頂に導いたものの勝ち、という道だった。 主人公は絶望的な状況で喘ぎ始め…

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?

ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。 しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。 しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…

My Doctor

west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生 病気系ですので、苦手な方は引き返してください。 初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです! 主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな) 妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ) 医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

処理中です...