14 / 14
第一章 暗殺者に手を
14.予想外の接敵
しおりを挟む
≪身体強化≫によって向上した身体能力と、足場として使用する≪盾≫によってレオとカエデは屋敷の屋根へ辿り着いていた。
「侵入経路は大丈夫そう?」
「ああ、確認済みだ」
「了解。じゃあ合図を送るよ」
全ての用意が整ったのでレオは真上に向かって≪魔弾≫を発射した。
光量と大きさに魔力を込めた≪魔弾≫は一直線に天を駆けあがる。
その瞬間、屋敷の敷地の入り口付近、つまり例の無駄に豪華な銅像や噴水がある場所に一筋の雷が落ちた。
ゲルラリオの仕業である。
レオがその方向を目を凝らして見ると、祖父ゲルラリオが獰猛に笑っているのが確認できた。
「おーぞろぞろと出てきた」
騒ぎに気が付いた屋敷に常駐している騎士がぞろぞろと広場に姿を現す。
何かをゲルラリオ叫んでいるが、当のゲルラリオは全く取り合う様子はない。遂にしびれを切らした騎士が侵入者を排除しようと飛び掛かった。
が、ゲルラリオから飛び出した雷が襲い掛かっていく騎士を蹂躙する。
剣を抜くことなく、雷の魔法だけで騎士たちを下していった。
この結果は、ゲルラリオが強いという要因も勿論あるが、それよりこの屋敷の騎士たちが弱すぎる。
一か月ほど前から本格的に鍛錬を始めたレオであっても余裕で勝てそうだ。
「あの騎士たち弱くない?」
あまりの弱さに思わずレオは呟く。
「だから言っただろう。屋敷を守っている騎士は男爵のお気に入りだけだ」
「あー…だから必然的に弱い騎士が多くなるのね」
「そうだ。反対に真面目である程度の実力を持った騎士は、街の警備や街の外の治安維持に駆り出されている」
自分に都合の良い騎士は傍に置き、都合の悪い騎士は外へ追い払う。
そうしていった結果が、目の前の惨状なのだろう。
戦闘開始されて僅か一分。
戦場である広場に立っているのはゲルラリオただ一人であった。
「ん?」
ぞくり。
レオは反射的にカエデを押し倒して転がった。
瞬間、頭上を一筋の剣閃が走る。
「んーー?外したかー…僕の腕が狂ったのかなぁ」
暗闇から聞こえてくるのんびりとした声。
レオはすぐに立ち上がってカエデを後ろに隠し、胸の前に限界まで魔力をつぎ込んだ小さな≪盾≫を発動。
「シ――ッ!」
同時に、暗闇から淡く光る剣が一直線に走り、≪盾≫に衝突した。
「くっ…!」
運がよかった。
奇跡だった。
後少しでも強度が低かったら、後少しでも場所がずれていたら、レオは体に穴を空けていただろう。
しかし、全てのタイミングが重なって、電撃のように放たれた突きは≪盾≫にひびを入れる結果に終わった。
「わーびっくり…これも防ぐのかぁ」
淡く光る剣を手にゆっくり歩いてくる男。レオは目の前の男から発せられる圧によって額に冷や汗が溜る。
「カエデ、先に行って」
「なにを――っ!」
「行って」
何時もの余裕のある声と違い、淡々と振り返らずに言うレオ。
カエデは何か言おうとしたが、この状況で何を言うのだと自分に怒りを覚えた。
「武運を祈る」
ただ一言だけ言い残し、カエデは屋根から姿を消した。
「あー…行っちゃった…でもまぁ僕の仕事は侵入者の排除だし…別にいいよね」
ぶつぶつと一人喋る男。
「じゃあ…早く死んでね」
ゆらりと男が剣を動かした瞬間、
「悪いけど死んだら説教されるから無理だよ」
男の体に淡く光る糸が絡みついた。
「侵入経路は大丈夫そう?」
「ああ、確認済みだ」
「了解。じゃあ合図を送るよ」
全ての用意が整ったのでレオは真上に向かって≪魔弾≫を発射した。
光量と大きさに魔力を込めた≪魔弾≫は一直線に天を駆けあがる。
その瞬間、屋敷の敷地の入り口付近、つまり例の無駄に豪華な銅像や噴水がある場所に一筋の雷が落ちた。
ゲルラリオの仕業である。
レオがその方向を目を凝らして見ると、祖父ゲルラリオが獰猛に笑っているのが確認できた。
「おーぞろぞろと出てきた」
騒ぎに気が付いた屋敷に常駐している騎士がぞろぞろと広場に姿を現す。
何かをゲルラリオ叫んでいるが、当のゲルラリオは全く取り合う様子はない。遂にしびれを切らした騎士が侵入者を排除しようと飛び掛かった。
が、ゲルラリオから飛び出した雷が襲い掛かっていく騎士を蹂躙する。
剣を抜くことなく、雷の魔法だけで騎士たちを下していった。
この結果は、ゲルラリオが強いという要因も勿論あるが、それよりこの屋敷の騎士たちが弱すぎる。
一か月ほど前から本格的に鍛錬を始めたレオであっても余裕で勝てそうだ。
「あの騎士たち弱くない?」
あまりの弱さに思わずレオは呟く。
「だから言っただろう。屋敷を守っている騎士は男爵のお気に入りだけだ」
「あー…だから必然的に弱い騎士が多くなるのね」
「そうだ。反対に真面目である程度の実力を持った騎士は、街の警備や街の外の治安維持に駆り出されている」
自分に都合の良い騎士は傍に置き、都合の悪い騎士は外へ追い払う。
そうしていった結果が、目の前の惨状なのだろう。
戦闘開始されて僅か一分。
戦場である広場に立っているのはゲルラリオただ一人であった。
「ん?」
ぞくり。
レオは反射的にカエデを押し倒して転がった。
瞬間、頭上を一筋の剣閃が走る。
「んーー?外したかー…僕の腕が狂ったのかなぁ」
暗闇から聞こえてくるのんびりとした声。
レオはすぐに立ち上がってカエデを後ろに隠し、胸の前に限界まで魔力をつぎ込んだ小さな≪盾≫を発動。
「シ――ッ!」
同時に、暗闇から淡く光る剣が一直線に走り、≪盾≫に衝突した。
「くっ…!」
運がよかった。
奇跡だった。
後少しでも強度が低かったら、後少しでも場所がずれていたら、レオは体に穴を空けていただろう。
しかし、全てのタイミングが重なって、電撃のように放たれた突きは≪盾≫にひびを入れる結果に終わった。
「わーびっくり…これも防ぐのかぁ」
淡く光る剣を手にゆっくり歩いてくる男。レオは目の前の男から発せられる圧によって額に冷や汗が溜る。
「カエデ、先に行って」
「なにを――っ!」
「行って」
何時もの余裕のある声と違い、淡々と振り返らずに言うレオ。
カエデは何か言おうとしたが、この状況で何を言うのだと自分に怒りを覚えた。
「武運を祈る」
ただ一言だけ言い残し、カエデは屋根から姿を消した。
「あー…行っちゃった…でもまぁ僕の仕事は侵入者の排除だし…別にいいよね」
ぶつぶつと一人喋る男。
「じゃあ…早く死んでね」
ゆらりと男が剣を動かした瞬間、
「悪いけど死んだら説教されるから無理だよ」
男の体に淡く光る糸が絡みついた。
0
お気に入りに追加
19
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄されたので歴代最高の悪役令嬢になりました
Ryo-k
ファンタジー
『悪役令嬢』
それすなわち、最高の貴族令嬢の資格。
最高の貴族令嬢の資格であるがゆえに、取得難易度もはるかに高く、10年に1人取得できるかどうか。
そして王子から婚約破棄を宣言された公爵令嬢は、最高の『悪役令嬢』となりました。
さらに明らかになる王子の馬鹿っぷりとその末路――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
あーもんど
恋愛
ある日、悪役令嬢に憑依してしまった主人公。
困惑するものの、わりとすんなり状況を受け入れ、『必ず幸せになる!』と決意。
さあ、第二の人生の幕開けよ!────と意気込むものの、人生そう上手くいかず……
────えっ?悪役令嬢って、家族と不仲だったの?
────ヒロインに『悪役になりきれ』って言われたけど、どうすれば……?
などと悩みながらも、真っ向から人と向き合い、自分なりの道を模索していく。
そんな主人公に惹かれたのか、皆だんだん優しくなっていき……?
ついには、主人公を溺愛するように!
────これは孤独だった悪役令嬢が家族に、攻略対象者に、ヒロインに愛されまくるお語。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
オカン公爵令嬢はオヤジを探す
清水柚木
ファンタジー
フォルトゥーナ王国の唯一の後継者、アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレは落馬して、前世の記憶を取り戻した。
ハイスペックな王太子として転生し、喜んだのも束の間、転生した世界が乙女ゲームの「愛する貴方と見る黄昏」だと気付く。
そして自身が攻略対象である王子だったと言うことも。
ヒロインとの恋愛なんて冗談じゃない!、とゲームシナリオから抜け出そうとしたところ、前世の母であるオカンと再会。
オカンに振り回されながら、シナリオから抜け出そうと頑張るアダルベルト王子。
オカンにこき使われながら、オヤジ探しを頑張るアダルベルト王子。
あげく魔王までもが復活すると言う。
そんな彼に幸せは訪れるのか?
これは最初から最後まで、オカンに振り回される可哀想なイケメン王子の物語。
※ 「第15回ファンタジー小説大賞」用に過去に書いたものを修正しながらあげていきます。その為、今月中には完結します。
※ 追記 今月中に完結しようと思いましたが、修正が追いつかないので、来月初めに完結になると思います。申し訳ありませんが、もう少しお付き合い頂けるとありがたいです。
※追記 続編を11月から始める予定です。まずは手始めに番外編を書いてみました。よろしくお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
面白いですね!続き楽しみに待っていますね頑張って下さいね~😄