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第一章 暗殺者に手を
7.魔力をこねこね魔法開発
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剣術の鍛錬が始まって一週間。今日はゲルラリオから指定された休息日だった。
かといってレオは一日中部屋で怠惰にするつもりはない。今日は前々からやろうと思っていた魔法開発をする予定であった。
「よしっと」
朝食を食べ、何時もの動きやすい黒服に着替え、屋敷の裏手にある原っぱに歩を進める。気候は丁度良く、穏やかに流れる風が心地良い。
揺れる草を踏みながら歩き、少し開放感のある原っぱに辿り着いた。
「到着到着ー」
大きく息を吸って吐く。
現在、レオが使える魔法は≪身体強化≫≪盾≫≪灯≫≪治癒≫≪魔力探知≫≪魔弾≫の六つ。原っぱにある切り株に腰を下ろして前々から構想していた新たな魔法をもう一度イメージした。
今回考えている新しい魔法は完全にゼロから作るのではなく、既存の魔法を組み合わせるものだ。それは、≪魔弾≫と≪魔力探知≫を組み合わせて、相手を追尾する新しい魔弾と言うもの。
言うなれば≪追尾魔弾≫だ。
仕組みは単純。≪魔力探知≫で相手の魔力を探知、その機能を持ったまま≪魔弾≫を発動する。そうすれば当たるまで追尾する魔弾の完成だ。
何故レオがこのような組み合わせを思いついたのかと言うと、それは彼が前世で漫画やラノベをよく見ていた他ならない。
魔法によって地球と別のベクトルで文明が発展しているこの世界において、レオの前世の知識はあまり役に立たない。しかし、唯一の知識チートと言えるのが、この想像力と発想力だった。
「まず…≪魔力探知≫」
レオは≪魔力探知≫を発動する。探知範囲はレオを中心として半径五十メートル。この範囲の大きさは、魔法に込める魔力量や本人の力量に左右される。
レオは元から魔力量が多かったのと、魔法を使い始めた日から毎日のように枯渇する寸前まで魔力を使っていたので、増える度合いも上昇していた。
だから、今のレオの保有魔力量は一般的な魔法使いと何ら遜色ない。
「次は…≪魔弾≫」
レオが右手を前に出して呟くと、ソフトボールほどの半透明で淡く光る弾が出現。心の中で発射とレオが呟くと、勢いよく前方に飛んで行った。
≪魔弾≫は時速百六十キロを優に超える速さを保持したまま数十メートル先の巨岩に激突。深さ十五センチほどの穴を空ける結果になった。
「それで、っと…この二つを組み合わせる」
魔物でも人でもなんでもいいが、逃げる敵を自動でどこまでも追尾する魔弾を想像する。この世界の魔法を発動するためには、適切な魔力と精密な魔力操作と鮮明なイメージが大切だ。
二つの要素が混ざり新たな一つとなるように想像する。この魔弾を当てる対象はレオの上空にいる一匹の鳥。
「≪追尾魔弾≫」
レオの掌の上に淡く光る弾が出現。次の瞬間、設定した対象である鳥目掛けて飛んで行った。
自分が狙われていることに気が付いたのか、鳥は旋回して方向転換をする。このまま魔弾が直線で飛んでいくなら絶対当たらないが……、
「曲がったっ!」
意志を持っているかのように鳥が飛んでいる方向に曲がった。そのまま綺麗な曲線の軌跡を描きながら飛んでいき、鳥に直撃。
鳥の胴体が吹き飛び辺りに羽が飛び散る。こちらの身勝手で殺してしまったのは申し訳ないが、実験と言うのはそういうものだと割り切ってレオは考えた。
「よし…成功だ!」
まさか一回目で成功するとは思わず、レオは小さくガッツポーズをする。後は、普通の≪魔弾≫のように、ノータイムで発動できるようにするまで繰り返すだけだ。
「まだ昼前か」
この原っぱに来てからまだ一時間もたっていない。それならば、いずれは作ろうと決めていたもう一つの新しい魔法を試してみようとレオは思った。
新しい魔法のイメージとしては魔力で形成された苦無などの暗器。具体的に言えば、≪盾≫を苦無のような形に変形させるといった感じだ。
ただ、≪盾≫の特徴として空間に固定されているというものがある。武器といった自由に取り回しができるようにするには、この特徴はいらない。
「イメージとしては…魔力をぎゅっと縮めて物質化させる感じかな」
その様子をレオは脳内でイメージを固める。
まずは目的。
何故このような魔法を作ろうと決めたのかと言うと、武器を携帯していない時でも魔力さえあれば自由に武器を生成できるからだ。
形状。
苦無の形を鮮明に思い浮かべる。
手順。
自分の魔力を糧に苦無を生成。
「ふぅ…≪武器生成≫」
強く強くイメージしながら、掌を胸の前で上に向けて魔法名を呟く。次の瞬間、掌に長さ十五センチほどの一本の苦無が現れた。
「はっはっはっ!まじか!できちゃたよ!」
手の中にある半透明の苦無を見ながらレオは笑い叫ぶ。先程の≪追尾魔弾≫しかり、この≪武器生成≫しかり、どちらも一発で成功している現実に思わず笑ってしまった。
「重量はほぼ無いに等しいな」
魔力でできているので重さはほとんど感じられない。軽いのは良いことだが、軽すぎても武器として問題がある。何故なら軽すぎると相手を殺傷する能力が低くなるからだ。
「んーどうしたもんか…まあ要改善ってことかな」
成功は成功だが新たな問題点が出てきてしまった。しかし、レオは別に落ち込んだりしていない。研究というのは失敗の繰り返しであり、改善の繰り返しであるからだ。
その時、レオの腹が鳴った。
「腹減ったから帰ろー」
時刻はもうすぐ昼。そろそろ昼飯の時間だと思ってレオは切り株から立ち上がった。少し凝った体を伸びをしてほぐす。
「ん~~っよし」
すっきりしたレオは、少し暖かくなった風に撫でられながら屋敷へ歩を進めた。
かといってレオは一日中部屋で怠惰にするつもりはない。今日は前々からやろうと思っていた魔法開発をする予定であった。
「よしっと」
朝食を食べ、何時もの動きやすい黒服に着替え、屋敷の裏手にある原っぱに歩を進める。気候は丁度良く、穏やかに流れる風が心地良い。
揺れる草を踏みながら歩き、少し開放感のある原っぱに辿り着いた。
「到着到着ー」
大きく息を吸って吐く。
現在、レオが使える魔法は≪身体強化≫≪盾≫≪灯≫≪治癒≫≪魔力探知≫≪魔弾≫の六つ。原っぱにある切り株に腰を下ろして前々から構想していた新たな魔法をもう一度イメージした。
今回考えている新しい魔法は完全にゼロから作るのではなく、既存の魔法を組み合わせるものだ。それは、≪魔弾≫と≪魔力探知≫を組み合わせて、相手を追尾する新しい魔弾と言うもの。
言うなれば≪追尾魔弾≫だ。
仕組みは単純。≪魔力探知≫で相手の魔力を探知、その機能を持ったまま≪魔弾≫を発動する。そうすれば当たるまで追尾する魔弾の完成だ。
何故レオがこのような組み合わせを思いついたのかと言うと、それは彼が前世で漫画やラノベをよく見ていた他ならない。
魔法によって地球と別のベクトルで文明が発展しているこの世界において、レオの前世の知識はあまり役に立たない。しかし、唯一の知識チートと言えるのが、この想像力と発想力だった。
「まず…≪魔力探知≫」
レオは≪魔力探知≫を発動する。探知範囲はレオを中心として半径五十メートル。この範囲の大きさは、魔法に込める魔力量や本人の力量に左右される。
レオは元から魔力量が多かったのと、魔法を使い始めた日から毎日のように枯渇する寸前まで魔力を使っていたので、増える度合いも上昇していた。
だから、今のレオの保有魔力量は一般的な魔法使いと何ら遜色ない。
「次は…≪魔弾≫」
レオが右手を前に出して呟くと、ソフトボールほどの半透明で淡く光る弾が出現。心の中で発射とレオが呟くと、勢いよく前方に飛んで行った。
≪魔弾≫は時速百六十キロを優に超える速さを保持したまま数十メートル先の巨岩に激突。深さ十五センチほどの穴を空ける結果になった。
「それで、っと…この二つを組み合わせる」
魔物でも人でもなんでもいいが、逃げる敵を自動でどこまでも追尾する魔弾を想像する。この世界の魔法を発動するためには、適切な魔力と精密な魔力操作と鮮明なイメージが大切だ。
二つの要素が混ざり新たな一つとなるように想像する。この魔弾を当てる対象はレオの上空にいる一匹の鳥。
「≪追尾魔弾≫」
レオの掌の上に淡く光る弾が出現。次の瞬間、設定した対象である鳥目掛けて飛んで行った。
自分が狙われていることに気が付いたのか、鳥は旋回して方向転換をする。このまま魔弾が直線で飛んでいくなら絶対当たらないが……、
「曲がったっ!」
意志を持っているかのように鳥が飛んでいる方向に曲がった。そのまま綺麗な曲線の軌跡を描きながら飛んでいき、鳥に直撃。
鳥の胴体が吹き飛び辺りに羽が飛び散る。こちらの身勝手で殺してしまったのは申し訳ないが、実験と言うのはそういうものだと割り切ってレオは考えた。
「よし…成功だ!」
まさか一回目で成功するとは思わず、レオは小さくガッツポーズをする。後は、普通の≪魔弾≫のように、ノータイムで発動できるようにするまで繰り返すだけだ。
「まだ昼前か」
この原っぱに来てからまだ一時間もたっていない。それならば、いずれは作ろうと決めていたもう一つの新しい魔法を試してみようとレオは思った。
新しい魔法のイメージとしては魔力で形成された苦無などの暗器。具体的に言えば、≪盾≫を苦無のような形に変形させるといった感じだ。
ただ、≪盾≫の特徴として空間に固定されているというものがある。武器といった自由に取り回しができるようにするには、この特徴はいらない。
「イメージとしては…魔力をぎゅっと縮めて物質化させる感じかな」
その様子をレオは脳内でイメージを固める。
まずは目的。
何故このような魔法を作ろうと決めたのかと言うと、武器を携帯していない時でも魔力さえあれば自由に武器を生成できるからだ。
形状。
苦無の形を鮮明に思い浮かべる。
手順。
自分の魔力を糧に苦無を生成。
「ふぅ…≪武器生成≫」
強く強くイメージしながら、掌を胸の前で上に向けて魔法名を呟く。次の瞬間、掌に長さ十五センチほどの一本の苦無が現れた。
「はっはっはっ!まじか!できちゃたよ!」
手の中にある半透明の苦無を見ながらレオは笑い叫ぶ。先程の≪追尾魔弾≫しかり、この≪武器生成≫しかり、どちらも一発で成功している現実に思わず笑ってしまった。
「重量はほぼ無いに等しいな」
魔力でできているので重さはほとんど感じられない。軽いのは良いことだが、軽すぎても武器として問題がある。何故なら軽すぎると相手を殺傷する能力が低くなるからだ。
「んーどうしたもんか…まあ要改善ってことかな」
成功は成功だが新たな問題点が出てきてしまった。しかし、レオは別に落ち込んだりしていない。研究というのは失敗の繰り返しであり、改善の繰り返しであるからだ。
その時、レオの腹が鳴った。
「腹減ったから帰ろー」
時刻はもうすぐ昼。そろそろ昼飯の時間だと思ってレオは切り株から立ち上がった。少し凝った体を伸びをしてほぐす。
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