【完結】あなたが欲しい~前世を思い出したのは、最愛の王太子に処刑の危機迫る時だった

ノエル

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第2章 前世 シャルル視点

18 最終話 1章13話の続き【今世】 ※R18

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 現世 ベッドの上で

「――――――――――――ということが前世であったのだ」

 行為の後、二人並んでベッドに寝ころび、シャルルは前世の思い出話を始めた。
 ふんふん、と時折相槌を打ちながら、アレクサンダーは興味深そうに聞いている。シャルルは天井を見つめたまま先を続けた。

「あなたは、ずっと、願掛けといって、私に我慢を強いていた。そして、待ち望んだ西大陸統一を果たしたあの夜! やっと、あなたの物を入れてもらえると思ったあの夜! 
 祝賀会で酔ったあなたは、身体を冷やしてくると外に出て、そのまま崖から転落して死んだんだ! 
 即死だったんだぞ! お別れの言葉もなく、突然アレクは逝ってしまったんだ! 
 落ちる直前、あなたは空に手を伸ばして、宙を掴むようなしぐさをしていたらしい」

 シャルルは、上半身を起こして、アレクサンダーを見た。
 アレクサンダーは組んだ手を枕にして仰向けに寝ころんでいた。金色の瞳がどこか遠くを見ている。

「ああ、思い出した。あれは月が奇麗な夜だった。美しい月光がお前の姿に見えたんだ。西大陸統一を果たして、やっと、お前を手に入れることができる、と月に手を伸ばした。気が付いたら、足の下に地面がなかった」
「アレク!」
「悪かったな。俺の死後、あれからどうした?」

 シャルルは気を取り直して、アレクサンダーに寄り添った。

「知っていると思うが、次期皇帝にはレオがなった。元々あなたが帝国にいない間、皇帝代理として、素晴らしい政治手腕を発揮していたからな。
 あなたが信頼していた将軍たちも、統一した大陸を手分けして統治した。それらがうまく機能しているのを確認して、わたしはカロリーヌ王女を連れてフェラードに帰り、国王となった。あなたが愛した人たちが全員幸せになるのを見届けた。
 私には、アレクに返せないくらいの恩があった。でも、私は、あなたへの恩返しは、ちゃんと果たせたと思う」

 そうか、とつぶやいてアレクサンダーはシャルルを抱き寄せた。

「あなたは23歳で皇帝になって、すぐに西大陸統一のための遠征に出たけれど、皇帝の務めだといって、直前に子供を作った。
 実は、あなたの死後、私は帝国に残って、あなたの息子をサポートしようと思ったんだ。
 だけど、レオにいわれた。『あと十数年したら、皇帝の地位は兄上の子供に渡すつもりだ。シャルルもフェラードに帰って子を成せ。そうしたら、来世で自分たちの子孫として生まれてくることができるかもしれない。シャルル、金色の目をした兄上と、きっとまた会えるよ』、と」
「すごいな。レオナルドの予言は当たったな」
 アレクサンダーは目を丸くした。
「それは夢のある話だと思ったし、なぜかそうなる気がした。それで、国に帰って、カロリーヌ王女と結婚し子供を設けた」

 シャルルは寂しくほほ笑んだ。あの頃、私はアレクを失って生ける屍みたいだったから、レオもカロリーヌ王女も心配してくれたんだろうな。

「私はアレクがいない世界で、アレクを欲しがっているままの状態で、一人残された」
「それは、本当に悪かった。今から、好きなだけくれてやる」
「では、再開しよう。もっと、アレクに触れたい」

 アレクサンダーはシャルルを四つん這いにさせて、後孔に指を入れた。
 長い指で擦るように動かされて、たまらず声が漏れた。

「入れるぞ。息を吐け」

 後ろから覆いかぶされるようにして入れられて、強い快感にシャルルは白い喉を仰け反らせた。
 指とは比較にならない質量が押し入ってくる。これがずっと待ち望んでいたものなのだ。

「うっうっうっ」
「大丈夫か?」
「ああ、動いてくれ」

 アレクサンダーはゆっくりと腰を動かしながら、シャルルの前の物を掴んだ。
 ぐぅ……とシャルルは小さく呻いた。

「お前の中は熱いな。熱くて絡まってきて最高だ。俺は前世、どれほどお前を愛していたのだろう。きっと恐ろしいくらいだ。だが、前世は終わったことだ。また新たに愛し合おう」

 アレクサンダーがリズミカルに腰を揺さぶってくる。
 もっと、アレクサンダーを感じていたいのに、シャルルは理性が弾け飛びそうになった。
 もう、何もかも、わからない。このままどうなってもいい気がした。だけど、たった一つの大切な想いは手放さない。

「あなたが欲しい。ずっと、あなたが欲しかった」

 うわごとのようにシャルルがいった。

「知っている。そして、俺もだ」

 アレクサンダーがシャルルの肩口に口づけを落とした。

「もう、欲しがる必要はない。俺はもうお前のものだ。そして、お前も俺のものだろう?」
「もちろんだ、アレク。もちろん、私はあなたのものだ」

 二人で同時に達したあと、シャルルはアレクサンダーに抱きついた。




 あなたが欲しい  完



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