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第2章 前世 シャルル視点
13 仮面舞踏会2
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「喉が渇いたわ。場所を移しましょう」
「ご令嬢、あれは何してるの? あそこの男性が胸に刺した花を黄色いドレスの女性に渡したんだ。女性は受け取って嬉しそうにしてる」
「ああ、あれはね。ふふふ。この国は性に開放的だから。あなたは花を持っていないの?」
「入口でもらったんだけど、アレクから取り上げられた。まだ早いって。どういう意味だろう」
「なるほど。従兄殿は、よほど、君が大切と見える」
突然、後ろから声がして、シャルルは振り返った。
主催者である仮面をつけていない男がほほ笑んでいる。
「あっ、ミロ伯爵。ご機嫌よう。今日は招待してくれてありがとうございます」
ミロ伯爵は、アレクサンダーとカロリーヌ王女の従妹で、王族公爵家の嫡男である。
公爵位を継ぐまではミロ伯爵として自由に過ごしている、いわば遊び人である。
「君は相変わらず美しいね。仮面をつけてもその美しさはまるで隠しきれていない」
「ちょっと、それは私にいう言葉じゃなくて?」
「失礼。ご令嬢、いうまでもなく、あなたはとてもお美しい。あっ、従兄殿がこちらを見てる。ちょっと、からかってやろうかな」
ミロ伯爵は、シャルルに胸に刺した黄バラを渡した。
「私はご令嬢と一曲踊ってくるから、君はあの扉の向こうにいる使用人にこのバラを渡してきて」
シャルルは首を傾げた。
「バラを渡してどうするの?」
「まあ、いいから。あとは使用人が案内してくれる」
ミロ伯爵はシャルルにウインクした。
「お兄様に叱られても知らないから」
「保護者としては、少し危機感をもってもいいんじゃない?」
二人は楽しそうにいい合いながら、ダンススペースに去っていった。
シャルルはわけがわからないまま、黄バラを持って、扉に向かった。
アレクサンダーは、貴族たちに囲まれていたが、シャルルが黄バラを持って歩いていると、視線を向けてきた。
何か言いたげな目をしていたので、シャルルは、にっこり微笑んでみせた。
扉を抜けると使用人が数人立っていた。言われたとおり黄バラを渡そうとすると、その手首を掴まれた。
「待て、シャルル。一体どういうつもりだ?」
振り向くとアレクサンダーが睨みつけている。
仮面舞踏会で名を呼んではいけないと自分がいっていたのに、堂々とシャルルの名を呼んだアレクサンダーに、動揺した。
アレクサンダーは、シャルルから黄バラを取り上げ「これをミロ伯爵に戻してくれ」、と使用人に渡した。
シャルルは、怒られるようなことをした覚えはないが、と思いつつ、アレクサンダーに引っ張られて廊下の隅にいった。
「シャルル、軽率なことをするな。どうしても興味があるのなら、明日にでも王族専用の娼婦でも男娼でも呼んでやる。それまで我慢しろ。今日の目的は場慣れをすることだけだ」
「娼婦に男娼? アレク、何をいっているの? 僕はミロ伯爵にいわれて、花を持ってきただけだよ」
ぽかんとした顔で、シャルルはアレクサンダーを見上げた。
はあ、とため息をついて、「何も知らないようだな」とつぶやき、
「この花の意味を教えてやる。この花を使用人に渡してみろ」と胸に刺した白バラをシャルルに渡した。
「ご令嬢、あれは何してるの? あそこの男性が胸に刺した花を黄色いドレスの女性に渡したんだ。女性は受け取って嬉しそうにしてる」
「ああ、あれはね。ふふふ。この国は性に開放的だから。あなたは花を持っていないの?」
「入口でもらったんだけど、アレクから取り上げられた。まだ早いって。どういう意味だろう」
「なるほど。従兄殿は、よほど、君が大切と見える」
突然、後ろから声がして、シャルルは振り返った。
主催者である仮面をつけていない男がほほ笑んでいる。
「あっ、ミロ伯爵。ご機嫌よう。今日は招待してくれてありがとうございます」
ミロ伯爵は、アレクサンダーとカロリーヌ王女の従妹で、王族公爵家の嫡男である。
公爵位を継ぐまではミロ伯爵として自由に過ごしている、いわば遊び人である。
「君は相変わらず美しいね。仮面をつけてもその美しさはまるで隠しきれていない」
「ちょっと、それは私にいう言葉じゃなくて?」
「失礼。ご令嬢、いうまでもなく、あなたはとてもお美しい。あっ、従兄殿がこちらを見てる。ちょっと、からかってやろうかな」
ミロ伯爵は、シャルルに胸に刺した黄バラを渡した。
「私はご令嬢と一曲踊ってくるから、君はあの扉の向こうにいる使用人にこのバラを渡してきて」
シャルルは首を傾げた。
「バラを渡してどうするの?」
「まあ、いいから。あとは使用人が案内してくれる」
ミロ伯爵はシャルルにウインクした。
「お兄様に叱られても知らないから」
「保護者としては、少し危機感をもってもいいんじゃない?」
二人は楽しそうにいい合いながら、ダンススペースに去っていった。
シャルルはわけがわからないまま、黄バラを持って、扉に向かった。
アレクサンダーは、貴族たちに囲まれていたが、シャルルが黄バラを持って歩いていると、視線を向けてきた。
何か言いたげな目をしていたので、シャルルは、にっこり微笑んでみせた。
扉を抜けると使用人が数人立っていた。言われたとおり黄バラを渡そうとすると、その手首を掴まれた。
「待て、シャルル。一体どういうつもりだ?」
振り向くとアレクサンダーが睨みつけている。
仮面舞踏会で名を呼んではいけないと自分がいっていたのに、堂々とシャルルの名を呼んだアレクサンダーに、動揺した。
アレクサンダーは、シャルルから黄バラを取り上げ「これをミロ伯爵に戻してくれ」、と使用人に渡した。
シャルルは、怒られるようなことをした覚えはないが、と思いつつ、アレクサンダーに引っ張られて廊下の隅にいった。
「シャルル、軽率なことをするな。どうしても興味があるのなら、明日にでも王族専用の娼婦でも男娼でも呼んでやる。それまで我慢しろ。今日の目的は場慣れをすることだけだ」
「娼婦に男娼? アレク、何をいっているの? 僕はミロ伯爵にいわれて、花を持ってきただけだよ」
ぽかんとした顔で、シャルルはアレクサンダーを見上げた。
はあ、とため息をついて、「何も知らないようだな」とつぶやき、
「この花の意味を教えてやる。この花を使用人に渡してみろ」と胸に刺した白バラをシャルルに渡した。
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