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第2章 前世 シャルル視点
2 アレクが好き
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シャルルは対面のソファに座るアレクサンダーを見た。
もう一度あのきれいな金色を見てみたい。
目が合うと、シャルルはキラキラ光る金色の瞳から目が離せなくなった。でも、しばらくしてアレクサンダーの存在そのものがキラキラ光っているのだと気が付いた。
アステリア帝国に来て初めて、幸せな気分になって、シャルルは足をぶらぶらさせてみた。
うれしくて、じっとしていることができなかったのだ。
「シャルルは今、何歳だ」
「僕は5歳です」
「敬語はいい。友達のように話せ」
「わかった。そうする。アレク好き」
あはは、とアレクサンダーは笑った。
「アレクはいくつなの」
「4つ上の9歳だ」
「9歳!」
まだ、子供だった!
シャルルはもっと上だと思っていたので、口をぽかんと開けた。
「5歳か。馬や剣は、6歳から本格的な訓練に入るので、まだ早いな。では、マナーと読み書きの家庭教師を手配しよう」
「家庭教師が来るの?」
「そうだ。シャルルは王族なのだから、ふさわしい教養を身につけなければな。フェラードに帰ったとき、誇れるようにだ。頑張れるな?」
「うん。がんばれる」
シャルルはまた頭をくしゃくしゃして欲しくて、アレクサンダーの隣に移動した。
頭を差し出し物欲しげに見つめるシャルルがおかしいのか、アレクサンダーはシャルルの望み通り、頭をくしゃくしゃして笑った。うれしかった。
「お茶が入りました」マリアンが声をかけた。
アレクサンダーはマリアンを引き留め、「少し話を聞きたい」といって座らせた。先ほどまでシャルルが座っていたソファだ。
シャルルは、2人の話す内容を黙って聞いていた。どうも自分のことであれこれ考えてくれているらしい、それがわかってうれしかった。
マリアンは何事か切々と訴えていた。「シャルル様が心配で」「シャルル様がおかわいそうで」という言葉が頻繁にシャルルに聞こえた。
シャルルは、〝自分はかわいそう〟なのではなく〝一人で寂しい〟のだ、といいたかったが、いい出せなかった。アレクサンダーは難しい顔でマリアンのいうことを聞いていた。
シャルルはお茶を飲んでクッキーをつまんだ。護衛騎士と目があったら、にっこりされた。
しばらくして、マリアンは言いたいことをいい終えたようで、すっきりした顔になった。アレクサンダーはお茶を一口飲んで考え事をしていた。
「では、ここは宮を警備する兵士すらいないのか」
「夜は、交代で宮の外を警備してくださっています」
「それでは不十分だ。兵士を早急に増員する。それに、夜だけではなく、昼も警備させなければシャルルはもとより、侍女殿も危険ではないか」
アレクサンダーは振り向いて護衛騎士に合図した。
「はっ」
護衛騎士の一人が前に出た。
「宮を警備する兵士の手配は誰にいえばいいのか?」
「王子殿下の宮の警備ですと、騎士団長の管理だと」
「では、騎士団長に宮に兵士をよこすように伝えろ。陛下には私からいっておく」
「はっ」
「伯爵令嬢にメイドの仕事までさせるわけにはいかない。使用人も手配しよう。そうだ、イザーク」
「はっ」
護衛騎士の一人が前に出た。
「お前は宿舎に帰る時、ここの前を通るのではないか?様子をみてやれ」
「はっ。では勤務終了後、そのようにいたします」
「おじさん、きてくれるの?」
「王子殿下。私はおじさんではありません。まだ28歳です。イザークとお呼びください」
「じゃあ、イザーク、きてくれるの?」
「はっ」
イザークはうれしそうに頷いた。
アレクサンダーは帰り際に「また来る」といって去っていった。
「待ってる。アレク好き」
シャルルは初恋の相手に再度告白したのだった。
この日から、寂しかった宮が少しにぎやかになった。
もう一度あのきれいな金色を見てみたい。
目が合うと、シャルルはキラキラ光る金色の瞳から目が離せなくなった。でも、しばらくしてアレクサンダーの存在そのものがキラキラ光っているのだと気が付いた。
アステリア帝国に来て初めて、幸せな気分になって、シャルルは足をぶらぶらさせてみた。
うれしくて、じっとしていることができなかったのだ。
「シャルルは今、何歳だ」
「僕は5歳です」
「敬語はいい。友達のように話せ」
「わかった。そうする。アレク好き」
あはは、とアレクサンダーは笑った。
「アレクはいくつなの」
「4つ上の9歳だ」
「9歳!」
まだ、子供だった!
シャルルはもっと上だと思っていたので、口をぽかんと開けた。
「5歳か。馬や剣は、6歳から本格的な訓練に入るので、まだ早いな。では、マナーと読み書きの家庭教師を手配しよう」
「家庭教師が来るの?」
「そうだ。シャルルは王族なのだから、ふさわしい教養を身につけなければな。フェラードに帰ったとき、誇れるようにだ。頑張れるな?」
「うん。がんばれる」
シャルルはまた頭をくしゃくしゃして欲しくて、アレクサンダーの隣に移動した。
頭を差し出し物欲しげに見つめるシャルルがおかしいのか、アレクサンダーはシャルルの望み通り、頭をくしゃくしゃして笑った。うれしかった。
「お茶が入りました」マリアンが声をかけた。
アレクサンダーはマリアンを引き留め、「少し話を聞きたい」といって座らせた。先ほどまでシャルルが座っていたソファだ。
シャルルは、2人の話す内容を黙って聞いていた。どうも自分のことであれこれ考えてくれているらしい、それがわかってうれしかった。
マリアンは何事か切々と訴えていた。「シャルル様が心配で」「シャルル様がおかわいそうで」という言葉が頻繁にシャルルに聞こえた。
シャルルは、〝自分はかわいそう〟なのではなく〝一人で寂しい〟のだ、といいたかったが、いい出せなかった。アレクサンダーは難しい顔でマリアンのいうことを聞いていた。
シャルルはお茶を飲んでクッキーをつまんだ。護衛騎士と目があったら、にっこりされた。
しばらくして、マリアンは言いたいことをいい終えたようで、すっきりした顔になった。アレクサンダーはお茶を一口飲んで考え事をしていた。
「では、ここは宮を警備する兵士すらいないのか」
「夜は、交代で宮の外を警備してくださっています」
「それでは不十分だ。兵士を早急に増員する。それに、夜だけではなく、昼も警備させなければシャルルはもとより、侍女殿も危険ではないか」
アレクサンダーは振り向いて護衛騎士に合図した。
「はっ」
護衛騎士の一人が前に出た。
「宮を警備する兵士の手配は誰にいえばいいのか?」
「王子殿下の宮の警備ですと、騎士団長の管理だと」
「では、騎士団長に宮に兵士をよこすように伝えろ。陛下には私からいっておく」
「はっ」
「伯爵令嬢にメイドの仕事までさせるわけにはいかない。使用人も手配しよう。そうだ、イザーク」
「はっ」
護衛騎士の一人が前に出た。
「お前は宿舎に帰る時、ここの前を通るのではないか?様子をみてやれ」
「はっ。では勤務終了後、そのようにいたします」
「おじさん、きてくれるの?」
「王子殿下。私はおじさんではありません。まだ28歳です。イザークとお呼びください」
「じゃあ、イザーク、きてくれるの?」
「はっ」
イザークはうれしそうに頷いた。
アレクサンダーは帰り際に「また来る」といって去っていった。
「待ってる。アレク好き」
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