14 / 33
第1章 今世 アレクサンダー視点
13 あなたが欲しい ※R18
しおりを挟むシャルルが俺を信じて待っていたということは、前世でも俺は間に合ったのだな。
シャルルは腕など切り落とされていないし、奴隷商に売り飛ばされなかったのだな。
だから、今回、信用してくれたのだな。アレクサンダーはそのことに安堵した。
そのシャルルは、自分の部屋にアレクサンダーを招いたことがうれしいようで、先ほどからそわそわと落ち着かない。
目が合うと、にっこりとほほ笑みを返してくる。
〝氷の天使〟〝冷静沈着で感情を表に出さない王太子〟という評判はどうも間違っているようだ、とアレクサンダーは思った。
こんなにシャルルは感情豊かではないか。
実は、シャルルが女性には冷たい態度であることをアレクサンダーは知らない。
「アレク、単身で城に乗り込んで来たのか?」
「そうなるな。道中で出会えば護衛騎士をそのまま連れてこようと思っていたが、会わずじまいだ」
その護衛騎士たちは、今、必死でアレクサンダーを追いかけているところであるが、彼はそのことに気づいていない。
シャルルは侍女の入れてくれたお茶を一口飲んだ。
前に座っているアレクサンダーを見てもじもじする様子をみせた。
「アレクにそんな目で見られたら、どうしていいかわからなくなる」
「どんな目だ?」
「愛しい者を見る目だ。慈しむような優しい目。記憶が蘇ったのか?」
「そうだな、断片だけだが思い出した。シャルルを助けるために宮殿内を走っている記憶だった。その時の私は、シャルルを大切に思う心と、失うかもしれない恐怖に満ちていた」
「そうか、たぶん、あの時の記憶だな」
シャルルは遠くを見つめる目をした。そして、アレクサンダーに視線を戻した。
「さっき、看護室でアレクの顔を見つけた時、思った通りだったと、胸がいっぱいになったんだ。
絶望的な状態だったが、不思議と恐ろしくなかった。
前世も今も、いつでもアレクは私を助けに来てくれると信じていたから」
「もちろん、何度でも助ける。あの女狐、王太子を処刑しようとは、さすがにやりすぎたな」
アレクサンダーが憤怒の表情を浮かべ、目の前のお茶を飲み干した。
アレクサンダーは立ち上がり、シャルルの腕を掴んだ。碧い瞳が見上げてきた。今度は、その手を、シャルルは振りほどかなかった。
ベッドの上で、吸うだけの軽い口づけを繰り返していたが、やがてそれは深まった。
舌を絡ませながら、シャルルのシャツのボタンを外し、手を這わせた。
唇を離すと甘い吐息が聞こえて、アレクサンダーはふっとほほ笑む。服を全部はぎ取って眺めてみた。
「本当に天使と見紛うばかりの美しさだな」
アレクサンダーがシャルルの下半身に手をやると、潤んだ碧い瞳が見つめてくる。
「だが、堕天使だ」
耳元で囁いて、シャルルの股間のものを握り込む。白い身体がぴくっと跳ねた。
もう片方の手で胸元をなでる。そこに痕を残したくて、何度も場所を変えて唇を落とした。
「アレク、アレク」
「なんだ?」
「愛してる」
「ああ、俺も愛している」
シャルルの物を握り込む手を緩く動かした。
上気した顔で耐える様子が煽情的で、アレクサンダーも自分の物を握り込んで動かした。
二人果てた後に、シャルルの汚れた腹を拭いていると、起き上がってアレクサンダーに抱き着いてきた。
「あなたが欲しい」
かすれた声が、アレクサンダーの下半身を直撃した。
それでも、大切なものは大切に扱いたいと、アレクサンダーは踏みとどまった。
「今は我慢しろ。城に帰ればいくらでも抱いてやる」
「今は駄目なのか」
「俺は男に入れた経験がない。もし怪我をさせたら、シャルルを城に連れて帰れなくなる」
シャルルは無表情でアレクサンダーの話すことを聞いていた。
「帰り道、長時間毎日馬に乗るんだ。尻に負担がかかる。無理はさせたくない」
「あなたはいつもそうだ! また同じ失敗を繰り返す気なんだな!」
憤怒の表情で叫んだあと、シャルルは「寝る」といって背を向けた。
前世で余程の失敗をしたらしい。これはまずいな、とアレクサンダーは腕を組み前世を思い出そうと腕を組んだ。
考え込んでいたアレクサンダーの背中に、温かい身体の感触がした。
「アレク、すまなかった。今のは私が悪い。前世のことを今に持ち出し責めるのは、してはいけないことだった、許してくれ」
シャルルが泣きそうな声で縋るから、あっけなくアレクサンダーの理性のタガが外れた。
ぎりぎりのラインで我慢していたのに、そんな声を出すシャルルが悪い、とアレクサンダーは自分自身に言い訳した。
押し倒し馬乗りになった。侍女がサイドテーブルに置いて行った香油に手を伸ばす。シャルルの両足を抱え上げ肩にかけた。見えた穴と自身の先端に香油を塗りこめた
(香油を置いていくとは、侍女殿も用意のいいことだ)
自国の王太子が犯されるのを手伝う侍女に半ばあきれる。
「こんなところまで美しいな」
といって、指を挿入する。
指を動かすと嬌声をあげたシャルルに「力を抜け」といって、前の物を握り込んだ。
一瞬そちらに意識がそれたためか、指にかかる力が抜けたのを確認し、アレクサンダーは自身の物を押し入れた。
「う……っ!」
シャルルはしなやかに背を反らせる。アレクサンダーの耳に、声にならない悲鳴が聞こえた。
「大丈夫か?続けてもよいか?」
こくこくと頷くシャルルの足をもう一度抱えなおし、腰を深く押し入れた。
苦痛に歪む顔も美しいな、と思いながら腰を揺さぶる。閉じた瞼に涙が滲み、アレクサンダーの加虐心を煽られた。もっと泣かせてみたいと動きを早める。
次第にアレクサンダーも観察する余裕がなくなり、ただ腰を揺さぶった。
ひと際身体を仰け反らしたシャルルが果てるのを確認して、自身も果てた。
放心状態のシャルルの身体を抱きしめ「怪我してないか?」と耳元で囁くと、無言でシャルルは頷いた。
「なんだ、泣いているのか?」
「うれしかったからだ」
ぎゅっと抱き返してくる身体がたまらなく愛おしくて、「俺もだ」とアレクサンダーは囁いた。
第1章 完
20
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた8歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
虐げられても最強な僕。白い結婚ですが、将軍閣下に溺愛されているようです。
竜鳴躍
BL
白い結婚の訳アリ将軍×訳アリ一見清楚可憐令息(嫁)。
万物には精霊が宿ると信じられ、良き魔女と悪しき魔女が存在する世界。
女神に愛されし"精霊の愛し子”青年ティア=シャワーズは、長く艶やかな夜の帳のような髪と無数の星屑が浮かんだ夜空のような深い青の瞳を持つ、美しく、性格もおとなしく控えめな男の子。
軍閥の家門であるシャワーズ侯爵家の次男に産まれた彼は、「正妻」を罠にかけ自分がその座に収まろうとした「愛妾」が生んだ息子だった。
「愛妾」とはいっても慎ましやかに母子ともに市井で生活していたが、母の死により幼少に侯爵家に引き取られた経緯がある。
そして、家族どころか使用人にさえも疎まれて育ったティアは、成人したその日に、着の身着のまま平民出身で成り上がりの将軍閣下の嫁に出された。
男同士の婚姻では子は為せない。
将軍がこれ以上力を持てないようにの王家の思惑だった。
かくしてエドワルド=ドロップ将軍夫人となったティア=ドロップ。
彼は、実は、決しておとなしくて控えめな淑男ではない。
口を開けば某術や戦略が流れ出し、固有魔法である創成魔法を駆使した流れるような剣技は、麗しき剣の舞姫のよう。
それは、侯爵の「正妻」の家系に代々受け継がれる一子相伝の戦闘術。
「ティア、君は一体…。」
「その言葉、旦那様にもお返ししますよ。エドワード=フィリップ=フォックス殿下。」
それは、魔女に人生を狂わせられた夫夫の話。
※誤字、誤入力報告ありがとうございます!
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。
婚約破棄?しませんよ、そんなもの
おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。
アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。
けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり……
「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」
それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。
<嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>
悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る
竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。
子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。
ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。
神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。
公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。
それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。
だが、王子は知らない。
アレンにも王位継承権があることを。
従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!?
*誤字報告ありがとうございます!
*カエサル=プレート 修正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる