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第1章 今世 アレクサンダー視点

13 あなたが欲しい ※R18

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 シャルルが俺を信じて待っていたということは、前世でも俺は間に合ったのだな。

 シャルルは腕など切り落とされていないし、奴隷商に売り飛ばされなかったのだな。

 だから、今回、信用してくれたのだな。アレクサンダーはそのことに安堵した。



 そのシャルルは、自分の部屋にアレクサンダーを招いたことがうれしいようで、先ほどからそわそわと落ち着かない。
 目が合うと、にっこりとほほ笑みを返してくる。


 〝氷の天使〟〝冷静沈着で感情を表に出さない王太子〟という評判はどうも間違っているようだ、とアレクサンダーは思った。
 こんなにシャルルは感情豊かではないか。
 実は、シャルルが女性には冷たい態度であることをアレクサンダーは知らない。


「アレク、単身で城に乗り込んで来たのか?」

「そうなるな。道中で出会えば護衛騎士をそのまま連れてこようと思っていたが、会わずじまいだ」


 その護衛騎士たちは、今、必死でアレクサンダーを追いかけているところであるが、彼はそのことに気づいていない。

 シャルルは侍女の入れてくれたお茶を一口飲んだ。
 前に座っているアレクサンダーを見てもじもじする様子をみせた。


「アレクにそんな目で見られたら、どうしていいかわからなくなる」

「どんな目だ?」

「愛しい者を見る目だ。慈しむような優しい目。記憶が蘇ったのか?」

「そうだな、断片だけだが思い出した。シャルルを助けるために宮殿内を走っている記憶だった。その時の私は、シャルルを大切に思う心と、失うかもしれない恐怖に満ちていた」

「そうか、たぶん、あの時の記憶だな」


 シャルルは遠くを見つめる目をした。そして、アレクサンダーに視線を戻した。


「さっき、看護室でアレクの顔を見つけた時、思った通りだったと、胸がいっぱいになったんだ。
絶望的な状態だったが、不思議と恐ろしくなかった。
前世も今も、いつでもアレクは私を助けに来てくれると信じていたから」

「もちろん、何度でも助ける。あの女狐、王太子を処刑しようとは、さすがにやりすぎたな」


 アレクサンダーが憤怒の表情を浮かべ、目の前のお茶を飲み干した。


 アレクサンダーは立ち上がり、シャルルの腕を掴んだ。碧い瞳が見上げてきた。今度は、その手を、シャルルは振りほどかなかった。




 ベッドの上で、吸うだけの軽い口づけを繰り返していたが、やがてそれは深まった。


 舌を絡ませながら、シャルルのシャツのボタンを外し、手を這わせた。
 唇を離すと甘い吐息が聞こえて、アレクサンダーはふっとほほ笑む。服を全部はぎ取って眺めてみた。


「本当に天使と見紛うばかりの美しさだな」


 アレクサンダーがシャルルの下半身に手をやると、潤んだ碧い瞳が見つめてくる。


「だが、堕天使だ」


 耳元で囁いて、シャルルの股間のものを握り込む。白い身体がぴくっと跳ねた。
 もう片方の手で胸元をなでる。そこに痕を残したくて、何度も場所を変えて唇を落とした。


「アレク、アレク」

「なんだ?」

「愛してる」

「ああ、俺も愛している」



 シャルルの物を握り込む手を緩く動かした。
 上気した顔で耐える様子が煽情的で、アレクサンダーも自分の物を握り込んで動かした。

 二人果てた後に、シャルルの汚れた腹を拭いていると、起き上がってアレクサンダーに抱き着いてきた。

 
「あなたが欲しい」


 かすれた声が、アレクサンダーの下半身を直撃した。
 それでも、大切なものは大切に扱いたいと、アレクサンダーは踏みとどまった。


「今は我慢しろ。城に帰ればいくらでも抱いてやる」

「今は駄目なのか」

「俺は男に入れた経験がない。もし怪我をさせたら、シャルルを城に連れて帰れなくなる」


 シャルルは無表情でアレクサンダーの話すことを聞いていた。
 

「帰り道、長時間毎日馬に乗るんだ。尻に負担がかかる。無理はさせたくない」

「あなたはいつもそうだ! また同じ失敗を繰り返す気なんだな!」


 憤怒の表情で叫んだあと、シャルルは「寝る」といって背を向けた。

 前世で余程の失敗をしたらしい。これはまずいな、とアレクサンダーは腕を組み前世を思い出そうと腕を組んだ。

 考え込んでいたアレクサンダーの背中に、温かい身体の感触がした。


「アレク、すまなかった。今のは私が悪い。前世のことを今に持ち出し責めるのは、してはいけないことだった、許してくれ」


 シャルルが泣きそうな声で縋るから、あっけなくアレクサンダーの理性のタガが外れた。



 ぎりぎりのラインで我慢していたのに、そんな声を出すシャルルが悪い、とアレクサンダーは自分自身に言い訳した。

 押し倒し馬乗りになった。侍女がサイドテーブルに置いて行った香油に手を伸ばす。シャルルの両足を抱え上げ肩にかけた。見えた穴と自身の先端に香油を塗りこめた

(香油を置いていくとは、侍女殿も用意のいいことだ)

 自国の王太子が犯されるのを手伝う侍女に半ばあきれる。

「こんなところまで美しいな」
 といって、指を挿入する。

 指を動かすと嬌声をあげたシャルルに「力を抜け」といって、前の物を握り込んだ。

 一瞬そちらに意識がそれたためか、指にかかる力が抜けたのを確認し、アレクサンダーは自身の物を押し入れた。

「う……っ!」

 シャルルはしなやかに背を反らせる。アレクサンダーの耳に、声にならない悲鳴が聞こえた。


「大丈夫か?続けてもよいか?」


 こくこくと頷くシャルルの足をもう一度抱えなおし、腰を深く押し入れた。

 苦痛に歪む顔も美しいな、と思いながら腰を揺さぶる。閉じた瞼に涙が滲み、アレクサンダーの加虐心を煽られた。もっと泣かせてみたいと動きを早める。

 次第にアレクサンダーも観察する余裕がなくなり、ただ腰を揺さぶった。

 ひと際身体を仰け反らしたシャルルが果てるのを確認して、自身も果てた。

 放心状態のシャルルの身体を抱きしめ「怪我してないか?」と耳元で囁くと、無言でシャルルは頷いた。


「なんだ、泣いているのか?」

「うれしかったからだ」


 ぎゅっと抱き返してくる身体がたまらなく愛おしくて、「俺もだ」とアレクサンダーは囁いた。



 第1章 完


 
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