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第1章.檸檬ネコのテト
第005愛.山田製作所、侵入①
しおりを挟む視界が開けた先に見えるモノ。それは先程までロープの奥、生い茂る薮の密林の先に幻の様に見えた……妖しい気配漂う、ブキミな白い建物ネ。
巨大な門の正面に廻り、ピンクフクロウの羽根が指す先を2匹で見上げたネ。
──────────────
YAMADA IRELAND Co.,Ltd.
──────────────
表札には『山田製作所アイルランド支部』……そう、近年日本からアイルランドへ海外進出した航空機部品製造メーカーの名がそこに彫られてたのヨ。
でも、目の前には聳え立つ壁。アタイとピンクフクロウ、どうやって侵入したらイイ? 聳え立つ壁、どうやって攻略するネ?
にゃ、ニャニャッ!
ほー、ホホーほー!
すると突然、2匹でザッと身構え合ってお互い片方の前脚を突き出したヨ。鳴き声と共に……何度も、何度もネ。
この時、実はテレパシーを介した脳内会話でこんな激熱なやり取りが交わされて居たのヨ。
【じゃんけんポン! アイコでしょ!
アイコでしょ! アイコでしょ!】×2
……www そりゃ何時まで経っても決着つく訳無いヨ、だって「肉球と羽根」なのネ。どうやってグーとチョキ、パーを出すのヨ?
結局、ピンクフクロウの案で妥協したのネ。両の爪でアタイの背中の肉をガシッと掴み、そのまま大空へテイクオフしたヨ!
確かに、空を飛べるピンクフクロウに壁を越えて運んで貰うのがセオリーなんだろうケド……
何だか今のアタイ、猛禽類にハンティングされた「憐れな生け贄」感が半端無いのネ。たぶん、その掴み方がそう想起させるのヨ。
でもピンクフクロウ、アタイを空中で落とさない様に細心の注意を払うネ。場数も相当踏んでるし、掴む爪をパッと放したりもしないヨ。
決して、必死の形相が眼に出てる訳じゃ無いのネ。フクロウは元来そんな顔なのヨ!
もしも動物の世界に『プロフェッショナル』と云う言葉が存在するのなら、ピンクフクロウが間違い無くそれだと思うネ。
……人間だった時も、そうヨ。
無事に壁を飛び越えて、門の向こうへ侵入出来たみたいネ。アタイとピンクフクロウは2匹で、ガラス張りの正面玄関に廻ってみたのヨ。
でも、真正面に立ってもドアは開かなくテ。ぴょんこぴょんこ、飛び跳ねても駄目ネ。人間より背が低過ぎて、センサーが反応しないのヨ。
くいっ、くいっ。
ちょん、ちょん……はい?
ピンクフクロウ、アタイを肩車する案を出したのネ。ケド、それでもたぶん……まだ子供の身長で反応してくれないと思うヨ。
建物の中へ、どうすれば入れると思うネ?
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