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第1章.地上界はスローライフで Ⅰ

第006話.隠し部屋、見っけ♡

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 コガネアゲハの羽化に成功して以来、べりんとスティルは大の仲良しになりました。そんなスティルには、最近悩みがあるみたいです。

 スティルは、成体になったと同時に見た目も子供に戻りました。その影響か、見た目の方にどうしても精神的な思考が引き摺られてしまうみたいで……


 キャタピラの頃のスティルじいちゃだったら、絶対に『子供のべりんと一緒に、同じ遊びでキャッキャ喜ぶ』なんて……あり得ないですよ。

 微笑ましく見守る、とかならともかくね。

 ちなみにスティルくんの羽化は、べりんの『ナースリー』の影響は受け……たのでしょうか、多少は? 『メディス』で睡眠効果を与える時に、尻尾でぷちゅっとしちゃってますから。


 まさか、スティルくんが子供になっちゃった原因は……べりん?










 べりんも、最初のうちはそんな事を考えたりしました。でも1週間経ち、1ヶ月経つとそんな事どーでも良くなっちゃいます♪

 たとえ考えてたとしても、一度遊びに夢中になっちゃえばスッコーン!と忘れちゃいますから♪

 おっけー、今のべりんは遊びがお仕事の幼気いたいけな乙女。しょーがない、これぞ子供の特権だ!って割り切るしか無いですね。

「よーし、スティルくんっ! 今度はスティルくんが鬼の番でしゅよー! さー、かーくれよっと♪」

「お嬢の隠れ方、本格的なんだよなぁ! ヒィヒィフゥフゥ……」

 活発なべりんと、振り回されっぱなしのスティル……まるでスティル、べりんのカワイイ弟分……いや、舎弟みたいです♪

 辺りは一面、神樹イグドラシルの巨花に囲まれてます。

 樹上都市コキアからは、いくら見上げても常にこの巨花のがくの裏しか見えません。逆に言えば、巨花の端っこに立てばはるか彼方の水平線まで見渡せる訳で……

「あっ、あそこなら隠れるのにちょーどいいかも知れないでしゅねっ!」

 そう言ってべりんが近づいたのは、巨大なめしべの向こうに見える小高い丘です。

 その丘は長年そこに佇んでおり、すっかり蔓草とコケで覆われ周りの景色と同化して何の違和感も感じさせません。

 べりんはその丘に身を屈めて、もたれ掛かった次の瞬間……


コロコロコロリン♪


 いきなり扉がパカッと開いて、べりんは中の部屋にと転がってしまったんです。何とその扉、蔓草とコケでカムフラージュされて居たんです!


むぎゅー。


「お嬢、大丈夫かぁー?」

 べりんがしばらくノビていると、鬼ごっこをしていたスティルが心配して見に来てくれたんです。

「こんな所に部屋があったなんて……今まで知らなかったでしゅ」

 べりんは頭を抱えて、んむーって顔をしながら言います。

「しかし、コレは何に使われている部屋だったんだぁ?」

 スティルは部屋の中、周りをキョロキョロ見回します。部屋はこじんまりとしており、少し薄暗くてカビ臭いです。

 するとべりんの、とあるスイッチが突然……


 ウズ……ウズウズウズ……ウズウズウズウズウズウズ……キーッ!


「あぁっ、もうっ。こーゆーきちゃない部屋見ると、そーじせずにいられないでしゅっ! スティルくん、その扉を開けっ放しにしておいてくだしゃい!」

「お、おぅ……」

 厳密に言えば、花樹族なので木の皮に覆われてるべりん。袖なんて無いのに、袖を捲るポーズをして気合十分です。

 どこで覚えたんでしょう、そのポーズ?


パタパタパタ……パタパタパタ……
   パタパタパタ……パタパタパタ……


 2人は部屋の隅から隅まで、テッテー的に埃を払います。まるで火事でもあったのか?と言わんばかりに、扉の中から煙が外へモクモクモク……と立ち昇ります。


『ゲホッ、ゴホン!』×2


 しばらくすると、2人が部屋から出て来ました。2人とも、顔がススで真っ黒です。

「こりゃ、キタナイってもんじゃないぜ! でも、よーやく掃除が終わったなっ!」

「うんっ!」


パァンっ! ……ぼふっ!


 2人でハイタッチした瞬間、手のひら同士を叩き合った反動でお互いの顔の煤が舞い上がったんです。


あはは、あははははっ!


 そんなお互いの顔を見合いながら、2人で腹を抱えて大笑いします。そして、2人仲良く顔を洗いに行きます。










 そして、2人は再び部屋の中へ足を踏み入れます。部屋の中の空気はすっかりキレイで、中の様子がよく見えます。

「ねっ、スティルくん、アレって一体何でしゅか?」

 べりんがたまたま部屋の片隅に見つけたモノ、それは……?






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