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第一章 始まりの場所

種族と能力

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 ・ベアアップ

 見た目は完全に熊。鋭い牙に柳葉包丁みたいな爪を持つ。一見凶暴そうに見えるが思った以上に温厚な性格の持ち主。色は黄色で夢の国にいるアイツみたい。平均的大きさは中型トラック並。中でもヤキが乗り移ったヤツは種族の長らしく、その体高は3メートルほどもある。個体数は22匹。
 
 ・カットウルフ

 その名の通り狼に酷似していて、相手を切り裂くナイフのような爪を持つ。普段はボス統治による集団生活をしているらしく、ヤキがボスを瞬殺した為に巡り巡って僕がその地位に。大きさは全てボス並で小型トラック程ある。色は汚い茶色で個体数は33匹。

 ・モンキーンダ

 お猿さん。しかも結構でかい。大凡小学生高学年程もある。まれに大きなヤツも存在するのだとか。不思議と真っ赤な体毛が生えているのだが、決して毛深いとは言えない。チンチン丸出し。狼に脅されて仕方なく覇権争いに参加していた。個体数44匹。

 ・リバーライダー

 完全にカワウソ。見た目も大きさも色も全部。カワイイ。とにかくカワイイ。マジカワイイ。個体数11匹。本来はもっと生息していたが、山の争いにビビッて他の場所へと移動したのが多数いるとか。

 以上四種族が僕のもとに残った。本来は今よりも多様な種がいたのだが、先程全匹に衣食住を提供するのは無理だと伝えたら一部の動物達が空気を読んで去って行った。それから読みとるに、この山に生息していた動物達は総じて知能が高いと思われる。逆恨みなどの報復を防ぐためにも、出て行く彼等へミニバンの肉を多めに分け与えてやることに。

 
 「えー、みんな聞いて。青ジョリの家では皆一緒に住むのは無理だからとりあえず町モドキを作るんで協力してください」

 ギュウギュウ詰めで青ジョリの小さな庭へと集まった野生動物達。彼の通訳を介して皆にそれが伝わるも、一同首を傾げた。そりゃそーだ。

 「えー、先ずはベアアップ……種族名で一々呼ぶのもアレだな。ちょっと各族長か代表は前へ出てきてもらえる?」

 「?」

 僕は彼等に名前を付けてやった。勿論自分が呼びやすいように。

 「ベアアップの長はこれから〝ショーキュー〟って呼ぶね。それとモンキーンダは〝タパーツ”で、リバーライダーは〝ペット〟で。それと……」

 カットウルフは今統率者が不在状態。と言うより僕がその地位となっている。面倒だから妙に首の後ろ毛が長いヤツに暫定大将の地位を与えて彼に一切合切任せることとした。

 「お前は〝ヤンキー〟ね」

 短絡的な名づけだと言われようが分かりやすさを考慮した結果がコレ。別に面倒臭かったわけじゃないんだからね!

 「じゃあさ、これからモッチーはヤンキーとショーキューを連れて〝モー〟を捕まえに行って。陽が落ちる前に必ず帰ってくるように」

 「オッケーです三河君。星の数ほど捕まえてきますから待っててください!」

 そんなにいるかよ? 寧ろ少なかったらペナルティーを科して追い込むか?

 「なんですかその眼は? まるで僕が大法螺吹いている様じゃありませんか? もし捕まえられなかったら僕が家畜となってやろうではありませんか!」

 「モッチーその言葉を忘れるなよな」

 「へ! 三河君こそ! もし約束通り実行したなら、あっちの世界では色々と協力してもらいますからねーっだ!」

 こうして彼は登山口から山の中へと消えて行った。そのまま永遠に消えればいいのに!

 「さてと、残った僕らは生活の基盤を築きます。ねぇ青ジョリ、この近くに川ってあるの? ペットはみるからに水生動物だよね?」

 「あ、川は直ぐ近くにありますが、リバーライダーは別に水の中で暮らしている訳ではありませんでさぁ。正確には水の中でもその行動が制限されないって感じでさぁ」

 意外や意外、こっちではカワウソって陸上で生活してるんだ。まあ見た目が同じってだけでカワウソではないんだけれど。

 「だったらさ、彼等に言って大量の魚を捕まえて来てもらって。とりあえず今日の夕食分を。あとさ、ちょっと聞きたいんだけど……」

 何をしようにも先ずは金属を手に入れなければならない。家を作るのもそうだし、調理するのもそう。さっきみたいにモッチーのナイフや動物達の爪にばっかり頼る訳にもいかないし。なんとなーく不衛生っぽいから。そこで青ジョリがミニバンを捌く時に使かっていたカマのような刃物に目を付けた。あの刃は間違いなく金属から出来ていると。


 「え? これでっか? これはそこの河原に転がってる石ッコロをやはり同じ石で研いで薄くしたやつでさぁね」

 「マジで? どう見ても金属ジャンそれ?」

 「金属? えーっと、それは一体?」

 「とりあえずそれが落ちている場所に連れてってよ。あとさ、向日葵ってどこに咲いてるの? ちょっとまとまった数が欲しいんだけど」

 この世界での優秀アイテムを先ずは大量保有しようと思った。いつ何時役に立つのか分からないし。それでも多分貴重な植物なんだろうな。

 「こんなのどこにでもありまっせ。摘んでも一晩で直ぐまた花を咲かせるし……まあ雑草でさぁね」

 「マジで?」

 流石は異世界、僕のミドリムシサイズの脳では理解不能な事だらけ。もしかするともっと便利な植物もあるのでは?

 「じゃあさ、タパーツは仲間を20匹ほど連れてサンフラワを集めて来て。残りは僕と一緒に来てよ」

 こうして僕は約半数のモンキーンダを連れて河原へと向かうのだった。


 「これもう完全に鉄ジャンか!」

 河原には数種類の石が転がっていた。青ジョリの話だと茶色いのがカマの刃に使用したやつで、薄い緑色の石は研ぐのに使ったそうだ。他の石は家の建造に使用したとも言っている。ここはまさに素材の山。

 試しに茶色の石を緑の石にこすりつけてみると、錆らしきものが流れてその下からは輝く金属部が顔を出す。同じとは言えないも、非常に鉄の性質と似ている。となれば焼き入れしたり叩いて密度を上げればもっと用途がひろがるのでは?

 「ねぇモンキーンダたち、ここにある様々な石を家の前まで運ぶの手伝って。それから色ごとに分けてね」

 青ジョリの通訳で一斉に作業へと取り掛かるお猿さん達。そんな従順でいいの? ちょっとぐらい逃げ出しても構わないよ? それにしても皆働き者だなぁ。


 ― 数十分後 ―

 「えぇっ!? 僕の腹時計ではまだ一時間も経ってないのにもうこんなに?」

 そこには大量の石とありえない量の向日葵が山積みされていた。仕事早すぎだろうに。

 「じゃあちょっと青ジョリ来て」

 折角これだけの労働力があるのだから、最初に彼等の雨風を凌げる場所から作ろうと思う。青ジョリの家は手作り感満載だから、取りあえずはその手法を用いて彼等にも家を建ててやろうってなワケだ。

 「へぇ、だったら接着部分用のコイツを……」

 集めた石から白い穴だらけのヤツを取り出すと、床に置いて踏みつける青ジョリ。驚くことに一瞬で粉々となる。それに水を少量混ぜると忽ち粘土状へと変化。一日もあればカチカチに乾燥するそうで、所謂コンクリート? これで石と石をくっつけるのだそうだ。確かに簡単だけど、突貫工事でももう少し手が込んでるぞ? こんなん地震があったら一発だと思うんだけどなぁ?

 「まぁ、先ずは仮設住宅ってことでいっか。だったら青ジョリが仕切って何個か作って。僕ちょっとやりたいことがあるからさ、かまどかしてね」

 「へぇ。どれぐらい作ればいいんで?」

 「いや、陽がかげったら終わりで。それと絶対に無理しないでね。別に労働を強要してるんじゃないからね。あくまでも一緒に生活する為の基盤づくりを手伝って貰ってるんだから」

 「へぇ……」

 青ジョリは不可思議な顔をして去っていく。
 それを見てこれまで静かだったヤキが口を開いた。

 『……どうやら旦那様の考え方が理解できないみたいですね?』

 「まぁね。そりゃ世界が違えば文化や考え方が違うのは当然だろうね。この世界はまだ弱肉強食が一般的なルールみたいだからさ、多分奴隷制度とかもあるんだろうね。彼等も僕に対してなんとなく奴隷根性が見受けられるし。文明の発達には避けて通れないのかもしれないけど、僕としてはそーゆーのイヤだなぁ。別にこの世界へそれを押し付けようとは思わないけどね」

 『……ウフフ、旦那様らしいですね。そのお優しさがいつかきっと報われますよ』

 「ありがとうヤキ。そうやって言われると少し救われる気がするよ」

 
 こうして僕は山積みの向日葵から複数個手にして家の中へと入って行った。

 
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