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第6章 心の傷
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リグの朝はスキルに一杯のコーヒーを入れることから始まる。
スキルは朝早くから目を覚ましててきぱきと早朝訓練に精を出しているかに思われがちだが、意外と朝が弱い。
寝ぼけてぼんやりしている胃にコーヒーを流し込まないとすっきりと目を覚ますことができない性質だった。反対にリグは寝起きが良いため、いつの頃からか自然とコーヒーを入れる役を任される形になった。
今ではすっかりスキルの好みのコーヒーの濃さを覚えてしまったほどである。ちなみに濃い目のコクのある感じが好みだ。
そして今日も水を汲みにヤカンを片手に井戸までやってきた。
するとそこにはずぶ濡れになってぼんやりと立っているレイピアの姿があった。レイピアは怒りとも悲しみとも取れないまったくの無表情をしていて、固く口を引き結んでいた。
これには朝からリグも仰天してしまった。しかし朝だったのが幸いだった、怖がりのリグはこれが夜だったら幽霊だと見間違えてヤカンを放り投げ情けない悲鳴でも上げて逃げ出していただろう。
「ど、どうしたんです!? こんなにずぶ濡れになって」
リグは慌てて側に駆け寄り、ハンカチがないかポケットの中を探った。
レイピアはちら、とリグの方を見て
「集中豪雨」
と、たった一言それだけをポツリと呟いた。
「な、何言ってるんですか! そんなわけないでしょう。これで拭いてください」
「いいわよ。すぐに乾くわ」
レイピアはそう言っているものの、とてもじゃないがすぐに乾くようには見えなかった。全身がぐっしょりと濡れていてで今もポタポタと雫を垂らしているのだ。
リグは強引にレイピアにハンカチを渡すとすぐに拭くように促した。それからためらいがちに尋ねる。
「あ、あの…もしかして団員達に…?」
昨日のレイピアの宣戦布告で団員達の怒りを煽ったのはリグも感じていた。けれどこんな暴挙に出るとは予想もしていなかった。
何も言わないレイピアに肯定であると見なしたリグは「私が注意しましょう!!」と憤慨した様子で言ったが、レイピアは首をゆっくりと横に振った。
「こうなることは予想していたから。それよりもリグも私から離れていた方がいいんじゃない? とばっちりが行くわよ」
「私は大丈夫ですよ。若君の側近みたいなものですから。もしくは執事ってところですかね」
「ふうん、そうなんだ……。このハンカチありがとうね」
ハンカチを片手にレイピアはくるりと背を向けるとそのまま歩いて行こうとした、リグは彼女が泣いているかもしれないという思いにかられてたまらずその背に声を掛ける。
「あ、あの…」
意外にも振り返ったレイピアは笑顔を浮かべていた。
少しも気にしていないという風に。
「泣いてると思った? 残念、これくらいじゃ泣かないわ」
普通のお嬢様だったら、こんなことされて笑顔でいられるはずがない。泣いて逃げ帰っているだろう。
なぜこの女性はこんなにも強くいられるのだろう…?
リグには不思議でたまらなかった。
自然とリグはその疑問を口にする。
「辛いとは思わないのですか?」
「もっと辛いことを知っているから…。だからね、これくらい平気よ」
レイピアの表情は穏やかに笑っているようにも見えたし、微かに憂いを帯びているようにも見えた。
彼女の言葉の意味、その表情の意味。
リグにはそれがわからなかった。それを確かめようとする前にレイピアは背を向けて走り出した。
「もっと辛いこと……?」
去ってしまったレイピアに問い掛けるようにポツリとリグは呟いた。
***
さすがにやり過ぎたか? とテントに帰ったブレンは思っていた。こんな季節に井戸水をぶっかけるなんて…。しかしすぐにその思いを否定する。
これぐらいでいい。これぐらいやればさすがにお嬢様も泣いて逃げ帰るだろう……。
「ブレン、探しましたよ」
後ろからいきなりかけられた言葉にハッとして後ろを振り向く。
見るとリグが腕組みをして立っていた。怒りのオーラが体中から発生していて、その不機嫌な表情から話の内容を聞かずともわかってしまった。
「あなた達ですってね、レイピアさんに水をぶっかけた犯人は」
案の定、リグはそのことについて切り出してきた。
わざわざ団員達に聞きまわって来たのだろうか。リグの性格を知っているブレンはきっとそうに違いないと納得する。
リグはひそかに「お説教魔」というあだ名がつけられていた。つけたのは他でもないブレンなのだが…。昔からそうだった。いつも悪さをするとどこまでも追いかけてきて説教をしてくる。正直うんざりしていた。
「そうだ。邪魔なんだ、あの女が」
少しも悪びれもせずにブレンは堂々とした態度を見せた。その態度にカチンときたリグは口を尖らせてブレンに詰め寄った。
「ブレン、あなたのしていることは若君とレイピアさんの勝負を汚すことなんですよ!? わかっているんですか」
「そんなことわかってる」
「それならなぜ!? 若君がこのことを知ったらさぞかし怒るでしょうよ」
ブレンは子供のようにぷい、とそっぽを向いて投げやりに言葉を吐き捨てる。
「それならスキルに告げ口するといい」
「な、なんですか告げ口って。あなたは子供ですか!? …ちょっとブレン聞いてるんですか」
「とにかく、俺はあの女が出てくまで嫌がらせでも何でもしてやる。これもスキルを守るためだ。それともお前はスキルが捕まってもいいと思ってるのか?」
もちろんそんなはずはない。スキルが捕まるのは困る。
頑なな横顔を見ていたらこれ以上ブレンに何か言っても無駄だと思い、リグは口をつぐんだ。
スキルは団員に慕われるが、いささかその傾向が強すぎるようだ。今後のレイピアに対する風当たりはますます強まりそうだ。
リグは同情を覚え、首を横に振り深くため息をついた。
***
「あたしスキルと寝たことがあるの」
シャンナリーの言葉が何度も何度も頭を反芻する。
可愛らしい声と憎たらしい顔で歌うようにつぶやいたその言葉。
いくら消そうとしても忌々しいくらいにまとわりついてくる。
なぜシャンナリーはわざわざ自分にそんなことを言ったのだろう。牽制のつもりだろうか。
恋人であるスキルがここ最近レイピアにばかり構うようになったから…腹を立ててこんな風に当たってくるのだろうか。
思えばシャンナリーとは顔を合わせればいつもネチネチと嫌なことばかり言われる。
馬鹿らしい。
スキルのことなど宝石を盗んだ盗賊にしか見えていないというのに。そんな相手とどうにかなるはずもない。
不幸なことにレイピアは今着ている服しか持っていなかった。この服ですら昨日着たものと同じなのだ。まさか1ヵ月も滞在するハメになるとは思ってもいなかったから替えの服など持ってきていなかった。
とりあえずテントで乾かそうと考えた。
いっそこのまま服を洗ってしまおうかとも思うが、そうすると着る服が無くなってしまう。今は乾かすことだけ考えてテントに戻ることにした。
顔を上げると団員達がレイピアを馬鹿にして笑う顔が見えるような気がして唇を噛み締めて、俯いたまま走り続けた。
もう少しでテントにたどり着くという所で急に誰かに腕を掴まれ、顔を上げると目の前にスキルの驚いたような顔があった。
「一体何があった?」
問いかけに対してレイピアは何でもないとそっけなく言ってぷい、とそっぽを向いた。
「何でもなくはないだろう? そんなにずぶ濡れで」
その投げやりとも言える言葉にムッと顔をしかめたスキルは肩に手を掛けて、こちらの顔を覗き込んでくる。しかしレイピアは首を横に振りながらその手を強引に振り払う。
「本当に何でもないわ。間違って水を被っただけよ、だから放っておいて」
レイピアはなぜだかスキルに対して無性に腹が立って仕方がなかった。
なぜこんなにもイライラするんだろう?
スキルを慕う団員から水をかけられたから? 昨日の夜のことが原因で? それともシャンナリーの言葉に―――。
すぐさまその考えを否定した。違う、きっと昨日の夜のことが原因だ。それに腹を立てているんだ。
とにかく放っておいて欲しい。
恋人がいるくせにあんなことしてきて。
不誠実。軽薄で最低な男、顔も見たくないのだ。
そう思いながらレイピアはそのままテントに入ろうとしたが、ムッとしたままのスキルが強引に手をつかんで引きずるようにして歩き出したので、かなわなかった。
「ちょっと! 離してよ」
レイピアの抗議の声を無視してひたすらスキルは歩き続けた。
そしてソアラのテントの前に立つとようやく手を離す。掴まれていた右手の部分は赤くなっていてヒリヒリと痛み、左手でさするとスキルを睨みつけた。
「痛いじゃない!」
「君が何も言いたくないなら俺も聞かない。ただその服は何とかした方がいい。風邪でも引かれたら迷惑だ」
「な…っ」
反論しようと口を開きかけたが、事実その通りだったのでぐっと引き結んだ。このままの状態でいたら本当に風邪を引いてしまうのは自分でもわかっている。
スキルはテントの中に入ると、ソアラにレイピアへ服を貸すように頼み、そのまま出て行ってしまった。
その言葉の通り何も聞くつもりは無いらしい。
リグの朝はスキルに一杯のコーヒーを入れることから始まる。
スキルは朝早くから目を覚ましててきぱきと早朝訓練に精を出しているかに思われがちだが、意外と朝が弱い。
寝ぼけてぼんやりしている胃にコーヒーを流し込まないとすっきりと目を覚ますことができない性質だった。反対にリグは寝起きが良いため、いつの頃からか自然とコーヒーを入れる役を任される形になった。
今ではすっかりスキルの好みのコーヒーの濃さを覚えてしまったほどである。ちなみに濃い目のコクのある感じが好みだ。
そして今日も水を汲みにヤカンを片手に井戸までやってきた。
するとそこにはずぶ濡れになってぼんやりと立っているレイピアの姿があった。レイピアは怒りとも悲しみとも取れないまったくの無表情をしていて、固く口を引き結んでいた。
これには朝からリグも仰天してしまった。しかし朝だったのが幸いだった、怖がりのリグはこれが夜だったら幽霊だと見間違えてヤカンを放り投げ情けない悲鳴でも上げて逃げ出していただろう。
「ど、どうしたんです!? こんなにずぶ濡れになって」
リグは慌てて側に駆け寄り、ハンカチがないかポケットの中を探った。
レイピアはちら、とリグの方を見て
「集中豪雨」
と、たった一言それだけをポツリと呟いた。
「な、何言ってるんですか! そんなわけないでしょう。これで拭いてください」
「いいわよ。すぐに乾くわ」
レイピアはそう言っているものの、とてもじゃないがすぐに乾くようには見えなかった。全身がぐっしょりと濡れていてで今もポタポタと雫を垂らしているのだ。
リグは強引にレイピアにハンカチを渡すとすぐに拭くように促した。それからためらいがちに尋ねる。
「あ、あの…もしかして団員達に…?」
昨日のレイピアの宣戦布告で団員達の怒りを煽ったのはリグも感じていた。けれどこんな暴挙に出るとは予想もしていなかった。
何も言わないレイピアに肯定であると見なしたリグは「私が注意しましょう!!」と憤慨した様子で言ったが、レイピアは首をゆっくりと横に振った。
「こうなることは予想していたから。それよりもリグも私から離れていた方がいいんじゃない? とばっちりが行くわよ」
「私は大丈夫ですよ。若君の側近みたいなものですから。もしくは執事ってところですかね」
「ふうん、そうなんだ……。このハンカチありがとうね」
ハンカチを片手にレイピアはくるりと背を向けるとそのまま歩いて行こうとした、リグは彼女が泣いているかもしれないという思いにかられてたまらずその背に声を掛ける。
「あ、あの…」
意外にも振り返ったレイピアは笑顔を浮かべていた。
少しも気にしていないという風に。
「泣いてると思った? 残念、これくらいじゃ泣かないわ」
普通のお嬢様だったら、こんなことされて笑顔でいられるはずがない。泣いて逃げ帰っているだろう。
なぜこの女性はこんなにも強くいられるのだろう…?
リグには不思議でたまらなかった。
自然とリグはその疑問を口にする。
「辛いとは思わないのですか?」
「もっと辛いことを知っているから…。だからね、これくらい平気よ」
レイピアの表情は穏やかに笑っているようにも見えたし、微かに憂いを帯びているようにも見えた。
彼女の言葉の意味、その表情の意味。
リグにはそれがわからなかった。それを確かめようとする前にレイピアは背を向けて走り出した。
「もっと辛いこと……?」
去ってしまったレイピアに問い掛けるようにポツリとリグは呟いた。
***
さすがにやり過ぎたか? とテントに帰ったブレンは思っていた。こんな季節に井戸水をぶっかけるなんて…。しかしすぐにその思いを否定する。
これぐらいでいい。これぐらいやればさすがにお嬢様も泣いて逃げ帰るだろう……。
「ブレン、探しましたよ」
後ろからいきなりかけられた言葉にハッとして後ろを振り向く。
見るとリグが腕組みをして立っていた。怒りのオーラが体中から発生していて、その不機嫌な表情から話の内容を聞かずともわかってしまった。
「あなた達ですってね、レイピアさんに水をぶっかけた犯人は」
案の定、リグはそのことについて切り出してきた。
わざわざ団員達に聞きまわって来たのだろうか。リグの性格を知っているブレンはきっとそうに違いないと納得する。
リグはひそかに「お説教魔」というあだ名がつけられていた。つけたのは他でもないブレンなのだが…。昔からそうだった。いつも悪さをするとどこまでも追いかけてきて説教をしてくる。正直うんざりしていた。
「そうだ。邪魔なんだ、あの女が」
少しも悪びれもせずにブレンは堂々とした態度を見せた。その態度にカチンときたリグは口を尖らせてブレンに詰め寄った。
「ブレン、あなたのしていることは若君とレイピアさんの勝負を汚すことなんですよ!? わかっているんですか」
「そんなことわかってる」
「それならなぜ!? 若君がこのことを知ったらさぞかし怒るでしょうよ」
ブレンは子供のようにぷい、とそっぽを向いて投げやりに言葉を吐き捨てる。
「それならスキルに告げ口するといい」
「な、なんですか告げ口って。あなたは子供ですか!? …ちょっとブレン聞いてるんですか」
「とにかく、俺はあの女が出てくまで嫌がらせでも何でもしてやる。これもスキルを守るためだ。それともお前はスキルが捕まってもいいと思ってるのか?」
もちろんそんなはずはない。スキルが捕まるのは困る。
頑なな横顔を見ていたらこれ以上ブレンに何か言っても無駄だと思い、リグは口をつぐんだ。
スキルは団員に慕われるが、いささかその傾向が強すぎるようだ。今後のレイピアに対する風当たりはますます強まりそうだ。
リグは同情を覚え、首を横に振り深くため息をついた。
***
「あたしスキルと寝たことがあるの」
シャンナリーの言葉が何度も何度も頭を反芻する。
可愛らしい声と憎たらしい顔で歌うようにつぶやいたその言葉。
いくら消そうとしても忌々しいくらいにまとわりついてくる。
なぜシャンナリーはわざわざ自分にそんなことを言ったのだろう。牽制のつもりだろうか。
恋人であるスキルがここ最近レイピアにばかり構うようになったから…腹を立ててこんな風に当たってくるのだろうか。
思えばシャンナリーとは顔を合わせればいつもネチネチと嫌なことばかり言われる。
馬鹿らしい。
スキルのことなど宝石を盗んだ盗賊にしか見えていないというのに。そんな相手とどうにかなるはずもない。
不幸なことにレイピアは今着ている服しか持っていなかった。この服ですら昨日着たものと同じなのだ。まさか1ヵ月も滞在するハメになるとは思ってもいなかったから替えの服など持ってきていなかった。
とりあえずテントで乾かそうと考えた。
いっそこのまま服を洗ってしまおうかとも思うが、そうすると着る服が無くなってしまう。今は乾かすことだけ考えてテントに戻ることにした。
顔を上げると団員達がレイピアを馬鹿にして笑う顔が見えるような気がして唇を噛み締めて、俯いたまま走り続けた。
もう少しでテントにたどり着くという所で急に誰かに腕を掴まれ、顔を上げると目の前にスキルの驚いたような顔があった。
「一体何があった?」
問いかけに対してレイピアは何でもないとそっけなく言ってぷい、とそっぽを向いた。
「何でもなくはないだろう? そんなにずぶ濡れで」
その投げやりとも言える言葉にムッと顔をしかめたスキルは肩に手を掛けて、こちらの顔を覗き込んでくる。しかしレイピアは首を横に振りながらその手を強引に振り払う。
「本当に何でもないわ。間違って水を被っただけよ、だから放っておいて」
レイピアはなぜだかスキルに対して無性に腹が立って仕方がなかった。
なぜこんなにもイライラするんだろう?
スキルを慕う団員から水をかけられたから? 昨日の夜のことが原因で? それともシャンナリーの言葉に―――。
すぐさまその考えを否定した。違う、きっと昨日の夜のことが原因だ。それに腹を立てているんだ。
とにかく放っておいて欲しい。
恋人がいるくせにあんなことしてきて。
不誠実。軽薄で最低な男、顔も見たくないのだ。
そう思いながらレイピアはそのままテントに入ろうとしたが、ムッとしたままのスキルが強引に手をつかんで引きずるようにして歩き出したので、かなわなかった。
「ちょっと! 離してよ」
レイピアの抗議の声を無視してひたすらスキルは歩き続けた。
そしてソアラのテントの前に立つとようやく手を離す。掴まれていた右手の部分は赤くなっていてヒリヒリと痛み、左手でさするとスキルを睨みつけた。
「痛いじゃない!」
「君が何も言いたくないなら俺も聞かない。ただその服は何とかした方がいい。風邪でも引かれたら迷惑だ」
「な…っ」
反論しようと口を開きかけたが、事実その通りだったのでぐっと引き結んだ。このままの状態でいたら本当に風邪を引いてしまうのは自分でもわかっている。
スキルはテントの中に入ると、ソアラにレイピアへ服を貸すように頼み、そのまま出て行ってしまった。
その言葉の通り何も聞くつもりは無いらしい。
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