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第5章 長い一ヵ月のはじまり
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目覚めたとき、視界を覆っていたのは白色のテントの天井。その見慣れぬ光景にレイピアは違和感を覚えたが、すぐに昨日の出来事を思い出した。
そういえば盗賊を追って来たんだっけ……。
慣れない枕のせいで朝早くに目が覚めてしまった。乱れてしまった髪の毛を手で撫で付けて辺りを見わたす。
1ヵ月間、レイピアの寝場所としてテントが与えられた。この白色のテントはそれなりに広く、簡易ベッドを置いてもまだ余裕があった。もっとも荷物など持ってきていないレイピアにとってはベッドさえあればそれだけで充分だったが。
目覚めてしまったものの、この後どうしようかと思い悩んだ。
テントの外に一歩踏み出したら盗賊達が其処此処にいるわけだから。
スキルの正体を知ってここまで追ってきたレイピアが彼らに歓迎されるとは思い難い。むしろ殺されてしまうのでは、という不安さえ募る。
我ながら無謀なことをしたな、と改めて思い少しだけ後悔する。せめて屋敷の人に行き先だけでも伝えておけばよかった。そうすれば少しは状況が良くなっていたかもしれない。
昨日の少しだけ恐ろしかったスキルの態度にも萎縮している。
外に行かなくちゃという気持ちと、中に閉じこもっていたいという気持ちがせめぎ合う。
うーん、と唸りながら頬杖をついて考えていると声掛けも無しに急にテントの幕が開けられた。驚いてそちらを向くと黒髪の少女が立っていた。
年齢はレイピアと同じ年ぐらいに見える。
肩の辺りまで伸ばした黒曜石のような髪の毛は艶やかでウェーブがかかっている。そして唇には真っ赤なルージュ。けれど下品さが少しも感じられないのは愛らしい顔立ちのおかげだろう。
かわいい、と素直にレイピアは思った。
黒髪の少女は何も言わずにテントに入り、レイピアの側につかつかと寄って来ると全身を値踏みするようにして眺めた。どことなく敵意を感じさせる視線が肌につきささる。
「な、なによ!?」
不躾な視線にむっとしたレイピアが口を尖らせる。
なぜ初めて会う人間にこんな視線を向けられなくてはならないのか……。
「なんだ、大したことないじゃん」
その少女はくりくりとした大きな瞳を細めて、せせら笑うようにして言い放った。
あまりにもその愛らしい顔と声から想像もつかないような言葉遣いとその内容にレイピアは唖然として、口をポカンと開けた。頭が理解するのを拒否している。
「なっ、なっ…」
声を出せずに口をパクパクとさせるレイピアになおも少女は言葉を続ける。
「スキルとゲームするらしいけど、あんたが勝てるわけじゃん。あたし達のリーダーなのよ?」
音をたてて椅子に腰かけると、あろうことか煙草をぷかぷかとふかし始めた。あまりにもその少女に似合わなすぎる姿にレイピアは呆然とするしかなかった。
頭が理解するのを拒否しているのかもしれない。こんなかわいらしい娘がこんなことを言うなんて、と。
それはスキル達がレイピアに対して思っていることと一緒なのだが、生憎自分のことはわからない。
前言撤回。
ちっともかわいくない……!
「もしあんたがダイヤを取り返したとしても、絶対にスキルを捕まえるようなことはさせないから!」
そこでレイピアは納得した。
この少女はスキルが好きで、だからこそレイピアが邪魔なのだと。
だが、彼女もまたここまで言われて生憎と黙っていられるようなおとなしい娘ではなかった。おしとやかでもない。生来の気の強さがむくむくと頭をもたげてきた。
「私とスキルのゲームでしょう? あなたが口出しする権利はないと思うけれど」
レイピアは少女の口から煙草をひったくると床に落としてグリグリと踏みつけた。
「ここは禁煙よ」
少女は何するのよ!? という顔をして、マスカットのような緑色の瞳でレイピアを睨みつけた。
2人の間に見えない火花があがる。
互いに絶対に負けられない敵だと認定し合った瞬間だ。
「絶対にあんたみたいな女追い出してやるんだから!」
椅子を蹴飛ばすと少女はべーっと舌を出してテントから出て行った。
嵐のような少女だ。
一方、テントに1人残されたレイピアはメラメラと闘志を燃やした。根が負けず嫌いの性格をしているため、黒髪の少女の「スキルに勝てるわけないじゃん」という言葉に憤慨した。
絶対に勝ってやる!
そうとなったらこうしてはいられない。一刻も早くスキルからダイヤを奪い返さなくては。
レイピアは盗賊連中のことをあれこれと気にするのをやめにして、ダイヤのことだけに集中しようと心に決めた。認めたくないが、少女の言葉が後押ししてくれたのは確かだ。彼女に感謝しつつレイピアはテントの外へ出た。
***
テントの外に出ると、何人かの団員達に会った。スキルを追ってきた女という噂はすでに広まっているらしく、その後もレイピアの姿を見ようと何人も集まってきた。
彼らは話かけてくることもなければ、面と向かって悪口を言うわけでもない。ただ遠巻きにレイピアを見ているだけだった。スキルをまんまと欺いてここまで追ってくることができたお嬢様とはどんな人物だろう、そんな視線だった。
しかしそこにある空気は好意的とは決して言えない冷たいものに感じた。
当然よね、私はスキルの敵なんだから。
そう割り切ることにした。
それでも少しだけちくちくと胸は痛んだが、たいして気にしていないふりをしてスキルの姿を探した。
だが、同じようなテントがいくつも並んでいるため、彼がどこに居るのか全くわからなかった。結果ぐるぐると同じような場所を歩くことになってしまった。
こそこそとテント街を嗅ぎまわっているとでも思われているのだろうか、団員達の視線も痛い。
そこに朝食をのせた盆を片手にしたリグの姿を発見した。リグの方もレイピアの姿を見るなり探しましたよ、と言い朝食をのせた盆を突き出した。
「これ……私の?」
肯定の印にリグはにこりと微笑んだ。
「でも、私が食べてしまっていいの…?」
「もちろんです。それとも何も食べないまま1ヵ月も若君とダイヤの争奪戦する気ですか?」
1日2日でスキルからダイヤを奪えるはずがない、そう言われているようでなんとなくおもしろくなかったが好意は素直に受け取ることにした。
お礼を言って盆を受け取った。盆の上にはハムを挟んだサンドイッチとオレンジジュースがのせられている。
レイピアはテントに戻ることなくその場でパクつく。
リグは目を丸くした。貴族の女性が!? と驚いているのかもしれない。
「行儀が悪くてごめんなさいね、でも今は時間が惜しいから。あなたはもう食べたの?」
「ええ、は、はい」
「そう、それじゃあこの後スキルの居場所とかテントの案内とかしてくれる? まだよく場所がわからなくって」
今のところこのサーカス団の中でレイピアに好意的なのはリグとソアラだけなので、彼に道案内を頼むことにした。
レイピアはストローを挿したオレンジジュースを勢いよく飲み干す。リグはその様子に驚き、苦笑しながらも頷いた。
目覚めたとき、視界を覆っていたのは白色のテントの天井。その見慣れぬ光景にレイピアは違和感を覚えたが、すぐに昨日の出来事を思い出した。
そういえば盗賊を追って来たんだっけ……。
慣れない枕のせいで朝早くに目が覚めてしまった。乱れてしまった髪の毛を手で撫で付けて辺りを見わたす。
1ヵ月間、レイピアの寝場所としてテントが与えられた。この白色のテントはそれなりに広く、簡易ベッドを置いてもまだ余裕があった。もっとも荷物など持ってきていないレイピアにとってはベッドさえあればそれだけで充分だったが。
目覚めてしまったものの、この後どうしようかと思い悩んだ。
テントの外に一歩踏み出したら盗賊達が其処此処にいるわけだから。
スキルの正体を知ってここまで追ってきたレイピアが彼らに歓迎されるとは思い難い。むしろ殺されてしまうのでは、という不安さえ募る。
我ながら無謀なことをしたな、と改めて思い少しだけ後悔する。せめて屋敷の人に行き先だけでも伝えておけばよかった。そうすれば少しは状況が良くなっていたかもしれない。
昨日の少しだけ恐ろしかったスキルの態度にも萎縮している。
外に行かなくちゃという気持ちと、中に閉じこもっていたいという気持ちがせめぎ合う。
うーん、と唸りながら頬杖をついて考えていると声掛けも無しに急にテントの幕が開けられた。驚いてそちらを向くと黒髪の少女が立っていた。
年齢はレイピアと同じ年ぐらいに見える。
肩の辺りまで伸ばした黒曜石のような髪の毛は艶やかでウェーブがかかっている。そして唇には真っ赤なルージュ。けれど下品さが少しも感じられないのは愛らしい顔立ちのおかげだろう。
かわいい、と素直にレイピアは思った。
黒髪の少女は何も言わずにテントに入り、レイピアの側につかつかと寄って来ると全身を値踏みするようにして眺めた。どことなく敵意を感じさせる視線が肌につきささる。
「な、なによ!?」
不躾な視線にむっとしたレイピアが口を尖らせる。
なぜ初めて会う人間にこんな視線を向けられなくてはならないのか……。
「なんだ、大したことないじゃん」
その少女はくりくりとした大きな瞳を細めて、せせら笑うようにして言い放った。
あまりにもその愛らしい顔と声から想像もつかないような言葉遣いとその内容にレイピアは唖然として、口をポカンと開けた。頭が理解するのを拒否している。
「なっ、なっ…」
声を出せずに口をパクパクとさせるレイピアになおも少女は言葉を続ける。
「スキルとゲームするらしいけど、あんたが勝てるわけじゃん。あたし達のリーダーなのよ?」
音をたてて椅子に腰かけると、あろうことか煙草をぷかぷかとふかし始めた。あまりにもその少女に似合わなすぎる姿にレイピアは呆然とするしかなかった。
頭が理解するのを拒否しているのかもしれない。こんなかわいらしい娘がこんなことを言うなんて、と。
それはスキル達がレイピアに対して思っていることと一緒なのだが、生憎自分のことはわからない。
前言撤回。
ちっともかわいくない……!
「もしあんたがダイヤを取り返したとしても、絶対にスキルを捕まえるようなことはさせないから!」
そこでレイピアは納得した。
この少女はスキルが好きで、だからこそレイピアが邪魔なのだと。
だが、彼女もまたここまで言われて生憎と黙っていられるようなおとなしい娘ではなかった。おしとやかでもない。生来の気の強さがむくむくと頭をもたげてきた。
「私とスキルのゲームでしょう? あなたが口出しする権利はないと思うけれど」
レイピアは少女の口から煙草をひったくると床に落としてグリグリと踏みつけた。
「ここは禁煙よ」
少女は何するのよ!? という顔をして、マスカットのような緑色の瞳でレイピアを睨みつけた。
2人の間に見えない火花があがる。
互いに絶対に負けられない敵だと認定し合った瞬間だ。
「絶対にあんたみたいな女追い出してやるんだから!」
椅子を蹴飛ばすと少女はべーっと舌を出してテントから出て行った。
嵐のような少女だ。
一方、テントに1人残されたレイピアはメラメラと闘志を燃やした。根が負けず嫌いの性格をしているため、黒髪の少女の「スキルに勝てるわけないじゃん」という言葉に憤慨した。
絶対に勝ってやる!
そうとなったらこうしてはいられない。一刻も早くスキルからダイヤを奪い返さなくては。
レイピアは盗賊連中のことをあれこれと気にするのをやめにして、ダイヤのことだけに集中しようと心に決めた。認めたくないが、少女の言葉が後押ししてくれたのは確かだ。彼女に感謝しつつレイピアはテントの外へ出た。
***
テントの外に出ると、何人かの団員達に会った。スキルを追ってきた女という噂はすでに広まっているらしく、その後もレイピアの姿を見ようと何人も集まってきた。
彼らは話かけてくることもなければ、面と向かって悪口を言うわけでもない。ただ遠巻きにレイピアを見ているだけだった。スキルをまんまと欺いてここまで追ってくることができたお嬢様とはどんな人物だろう、そんな視線だった。
しかしそこにある空気は好意的とは決して言えない冷たいものに感じた。
当然よね、私はスキルの敵なんだから。
そう割り切ることにした。
それでも少しだけちくちくと胸は痛んだが、たいして気にしていないふりをしてスキルの姿を探した。
だが、同じようなテントがいくつも並んでいるため、彼がどこに居るのか全くわからなかった。結果ぐるぐると同じような場所を歩くことになってしまった。
こそこそとテント街を嗅ぎまわっているとでも思われているのだろうか、団員達の視線も痛い。
そこに朝食をのせた盆を片手にしたリグの姿を発見した。リグの方もレイピアの姿を見るなり探しましたよ、と言い朝食をのせた盆を突き出した。
「これ……私の?」
肯定の印にリグはにこりと微笑んだ。
「でも、私が食べてしまっていいの…?」
「もちろんです。それとも何も食べないまま1ヵ月も若君とダイヤの争奪戦する気ですか?」
1日2日でスキルからダイヤを奪えるはずがない、そう言われているようでなんとなくおもしろくなかったが好意は素直に受け取ることにした。
お礼を言って盆を受け取った。盆の上にはハムを挟んだサンドイッチとオレンジジュースがのせられている。
レイピアはテントに戻ることなくその場でパクつく。
リグは目を丸くした。貴族の女性が!? と驚いているのかもしれない。
「行儀が悪くてごめんなさいね、でも今は時間が惜しいから。あなたはもう食べたの?」
「ええ、は、はい」
「そう、それじゃあこの後スキルの居場所とかテントの案内とかしてくれる? まだよく場所がわからなくって」
今のところこのサーカス団の中でレイピアに好意的なのはリグとソアラだけなので、彼に道案内を頼むことにした。
レイピアはストローを挿したオレンジジュースを勢いよく飲み干す。リグはその様子に驚き、苦笑しながらも頷いた。
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