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13.引っ越し
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翌日、騎士団の詰め所へは二人揃って向かった。門に入ったところで最初に出会ったのはラルだった。
ラルは僕達が揃ってやって来たことに眉を跳ね上げた。
「はぁ? どういうこと。シド、何で朝からそいつと一緒に現れるわけ」
「ラル。話がある。今、少しいいか」
僕が口を開く前にシドが話し出した。
「俺とフェリクスは昨日から恋人同士になった」
それを聞いたラルの目がこれ以上ないほど見開かれる。
「はぁ!? シド、正気なの。あんなにこいつのこと嫌っていたじゃないか。それにこれまでずっと散々嫌がらせされていただろ。何がどうなってそんな話になるんだよ。訳が分かんないよ」
ラルの鋭い視線から僕を庇うようにシドが一歩前に出る。
「違う! あれは周りが勝手に動いていただけで、フェリクス自身はそんなこと一切していなかった。俺もお前もフェリクスをずっと誤解していたんだ。頼むから、今のこいつを見てやってくれ。あまり辛く当たるな」
「騙されてるんじゃないのか!? そうやって油断させて陰でお前のことせせら笑うんだ。目を覚ませって。信用なんかするなよ」
「ラル!!」
「待って、シド!」
シドの体からラルに対しての怒りが噴き出したのを感じて、慌ててシドの袖を掴む。
「頼むから、喧嘩なんてしないでくれ。二人は友人同士なんだろう。お願いだ」
友人同士の二人が僕のせいで喧嘩をするなんて間違っている。必死のお願いが通じたのかラルに掴みかかろうとしていたシドの腕が止まり、ため息と共に下ろされる。
「ラル。今は僕が信用できないのも分かる。だけど、これからの僕を見ていてくれないか。絶対にシドを傷つけたりしないから」
これまでの僕だったら、どんなに訴えたって分かってくれないだろうと初めから諦めていたに違いない。だけど、シドやミハイルが僕を信じてくれたように、諦めずに行動し続ければ、ラルもきっと分かってくれるかもしれない。今はそんな風に思っている。
だから自分の気持ちを伝えた。真っ直ぐ、ラルの瞳を見つめて。
「……ふん!」
ラルは視線を逸らし、背を向けてしまった。僕を認められないという拒絶が伝わってくる。だけど、今はこれで十分だ。いつか分かってくれたらいい。
ミハイルは僕とシドが恋人同士になったことを全て知っていたみたいで、にっこりと穏やかに笑って祝福してくれた。
「シドってばちょっと見ない間に雰囲気が随分柔らかくなったね。ずっとトゲトゲしていたものね。やっぱり愛の力は偉大だ」
シドは照れ隠しからかふいっと顔を背けてしまう。
シドの雰囲気が柔らかくなったっていうのは僕も実感している。恋人同士になったあの日から、僕に向けられる表情は常に穏やかでやさしい。案外世話好きな性格なのか、昨日なんてずっと甘やかしてもらっていたような気がする。
他人からもそう見えているのが、何だかくすぐったいような気もするけれど、とても嬉しい。
「それにフェリクスも。君の表情もこれまでよりずっと生き生きしている。うん、すごくいいと思う。二人共、本当に良かったね」
今度は僕が照れてしまう番だった。
驚くべきだったのはその後だ。
この日の訓練が終わった後、シドとミハイルに連れ出されて向かったのは空き家になっていたミハイルの家だった。
「フェリクス。良かったらこの空き家を使って欲しい。君があんなところに住んでいると知っていたらもっと早くに紹介してあげられたのに。気付くのが遅くなってごめんね」
驚きすぎて、声もなくミハイルを見つめる。家は中も外もとても綺麗な状態だし、薄暗さとは一切無縁の住宅街にある。完璧な立地だった。
ミハイルの申し出はとてもありがたいけれど、本当に僕が住んでもいいというのだろうか。
「遠慮はいらないよ。僕は今宿舎に住んでいるから、誰もこの家を管理する人がいなくて困っていたんだ。手放してしまうのは思い出が多すぎて忍びなくてね。フェリクスが住んでくれるなら家も傷まないから、そうしてくれると僕にとってもありがたい」
「でも……」
「フェリクス。僕は困っている友人の力になりたいんだ。それぐらいはさせてくれないか」
友人、という言葉にヒュッと息を呑む。
友人……僕と、ミハイルが!?
「ふふ、僕はもうとっくに君の友人のつもりでいたんだけどね? フェリクスはシドと友達になりたかったみたいだけど、今はそれよりずっと強い恋人っていう絆が出来ているから、友人第一号の座、僕がもらってもいいだろう。ねぇ、そこの恋人さん?」
僕に向かって微笑んだ後、シドに目線を向けるミハイル。「フェリクスが良ければな!」ってシドは少し面白くなさそうに腕を組んでいる。
「どうやら心の狭そうな恋人の許可が下りたみたいだ。それで、どうかな。僕を君の友人にしてくれる?」
僕はやっぱり声も出せずこくこくと頷いた。今、口を開いたら嗚咽しか出てこないから。僕の初めての友達。いつも親切にしてくれるミハイルと友達になれたらいいなって思っていたから、とても、とても嬉しい。
「良かった! それじゃあ友人のお願いを聞いてここに住んでよ、フェリクス」
「だが、本当に……いいのだろうか」
「当たり前だよ。それにね、君がここに住んでくれないとシドの奴、君が心配でまた階段から落ちそうになるんじゃないかなぁ」
「え?」
「おい、ミハイル!!」
シドが焦った声を出した。
僕が心配でまた階段から落ちそうになるとはどういうことだろう?
口を両手で塞ごうとするシドから逃れながらミハイルは言葉を続けた。
「どうして以前シドが階段から落ちそうになったと思う? あれはね、一晩中君の家の前で寝ずの番をしていたからなんだ。それで眠くなってふらっとしたの」
「てめ、ミハイル……! 言うなって言っただろ」
「仕方ないだろう。フェリクスは案外頑固なんだから、ちゃんと言わないと。分かったかいフェリクス、シドをこれ以上心配させないためにもここに住んでくれよ」
くそ、って恥ずかしそうに毒づくシドを見上げる。
僕が二人組の男に襲われかけたあの日、宿舎に帰ったと思っていたシドはずっと扉の外にいた。シドの外套は僕が持っていたから、外はとても寒かったはずなのに。
僕の身を守ってくれていたのだ。
「ありがとう、シド」
「……おう」
お礼を伝えるとゆらゆらと滲む世界の中で、シドが口元を手の甲で押さえて真っ赤になるのが見えた。
これ以上大切な恋人を心配させないため、ミハイルの好意に甘えてありがたく家を借りることにした。
荷物はほとんど無かったから、二人に手伝ってもらってその日のうちに引っ越しは終わった。
騎士団内でシドは僕への気持ちを一切隠さなかった。
これまでのような拒絶の態度から愛しくてたまらないって感じの態度に変わったことで、最初皆は随分と混乱したようだ。必然的に注目されることになる。それが良かったのか、皆から僕への態度も少しずつ柔らかくなった気がする。「毎日頑張ってるんだな」って声を掛けられたこともある。見ていてくれている人もいるんだ、とても嬉しい。
シドは訓練の後は必ず僕を家まで送り届けてくれる。帰り道はもう暗くないし危なくもないから大丈夫だと伝えたが、そこは折れてくれなかった。
その流れで夕飯も共に食べるようになった。「お前は放っておくと何も食べないからな」って料理を作ってくれる。
台所で鼻歌を歌いながら料理を作るシドはとても楽しそうに見えた。お世辞抜きにシドの作る料理はどれも美味しい。料理人としてでもやっていけるんじゃないかと言ったら、曖昧に笑っていたけれど満更でもなさそうだった。
いつも作ってもらってばかりは悪いから、最近では僕もシドに教えてもらいながら簡単な料理をするようになった。卵の料理が好きでチーズオムレツなら一人でも作れるようになったけれど、やっぱりシドの作ってくれるものの方が美味しい。
食後シドは宿舎に帰らなければならないけれど、次の日が休みの時は泊まっていってくれる。そんな日には明け方近くまで時に激しく、時に穏やかに体を重ねた。
そうして忙しくも穏やかな日々を過ごしていたある日、騎士団、いやオレイユ王国を脅かす大事件が起こったのだ。
ラルは僕達が揃ってやって来たことに眉を跳ね上げた。
「はぁ? どういうこと。シド、何で朝からそいつと一緒に現れるわけ」
「ラル。話がある。今、少しいいか」
僕が口を開く前にシドが話し出した。
「俺とフェリクスは昨日から恋人同士になった」
それを聞いたラルの目がこれ以上ないほど見開かれる。
「はぁ!? シド、正気なの。あんなにこいつのこと嫌っていたじゃないか。それにこれまでずっと散々嫌がらせされていただろ。何がどうなってそんな話になるんだよ。訳が分かんないよ」
ラルの鋭い視線から僕を庇うようにシドが一歩前に出る。
「違う! あれは周りが勝手に動いていただけで、フェリクス自身はそんなこと一切していなかった。俺もお前もフェリクスをずっと誤解していたんだ。頼むから、今のこいつを見てやってくれ。あまり辛く当たるな」
「騙されてるんじゃないのか!? そうやって油断させて陰でお前のことせせら笑うんだ。目を覚ませって。信用なんかするなよ」
「ラル!!」
「待って、シド!」
シドの体からラルに対しての怒りが噴き出したのを感じて、慌ててシドの袖を掴む。
「頼むから、喧嘩なんてしないでくれ。二人は友人同士なんだろう。お願いだ」
友人同士の二人が僕のせいで喧嘩をするなんて間違っている。必死のお願いが通じたのかラルに掴みかかろうとしていたシドの腕が止まり、ため息と共に下ろされる。
「ラル。今は僕が信用できないのも分かる。だけど、これからの僕を見ていてくれないか。絶対にシドを傷つけたりしないから」
これまでの僕だったら、どんなに訴えたって分かってくれないだろうと初めから諦めていたに違いない。だけど、シドやミハイルが僕を信じてくれたように、諦めずに行動し続ければ、ラルもきっと分かってくれるかもしれない。今はそんな風に思っている。
だから自分の気持ちを伝えた。真っ直ぐ、ラルの瞳を見つめて。
「……ふん!」
ラルは視線を逸らし、背を向けてしまった。僕を認められないという拒絶が伝わってくる。だけど、今はこれで十分だ。いつか分かってくれたらいい。
ミハイルは僕とシドが恋人同士になったことを全て知っていたみたいで、にっこりと穏やかに笑って祝福してくれた。
「シドってばちょっと見ない間に雰囲気が随分柔らかくなったね。ずっとトゲトゲしていたものね。やっぱり愛の力は偉大だ」
シドは照れ隠しからかふいっと顔を背けてしまう。
シドの雰囲気が柔らかくなったっていうのは僕も実感している。恋人同士になったあの日から、僕に向けられる表情は常に穏やかでやさしい。案外世話好きな性格なのか、昨日なんてずっと甘やかしてもらっていたような気がする。
他人からもそう見えているのが、何だかくすぐったいような気もするけれど、とても嬉しい。
「それにフェリクスも。君の表情もこれまでよりずっと生き生きしている。うん、すごくいいと思う。二人共、本当に良かったね」
今度は僕が照れてしまう番だった。
驚くべきだったのはその後だ。
この日の訓練が終わった後、シドとミハイルに連れ出されて向かったのは空き家になっていたミハイルの家だった。
「フェリクス。良かったらこの空き家を使って欲しい。君があんなところに住んでいると知っていたらもっと早くに紹介してあげられたのに。気付くのが遅くなってごめんね」
驚きすぎて、声もなくミハイルを見つめる。家は中も外もとても綺麗な状態だし、薄暗さとは一切無縁の住宅街にある。完璧な立地だった。
ミハイルの申し出はとてもありがたいけれど、本当に僕が住んでもいいというのだろうか。
「遠慮はいらないよ。僕は今宿舎に住んでいるから、誰もこの家を管理する人がいなくて困っていたんだ。手放してしまうのは思い出が多すぎて忍びなくてね。フェリクスが住んでくれるなら家も傷まないから、そうしてくれると僕にとってもありがたい」
「でも……」
「フェリクス。僕は困っている友人の力になりたいんだ。それぐらいはさせてくれないか」
友人、という言葉にヒュッと息を呑む。
友人……僕と、ミハイルが!?
「ふふ、僕はもうとっくに君の友人のつもりでいたんだけどね? フェリクスはシドと友達になりたかったみたいだけど、今はそれよりずっと強い恋人っていう絆が出来ているから、友人第一号の座、僕がもらってもいいだろう。ねぇ、そこの恋人さん?」
僕に向かって微笑んだ後、シドに目線を向けるミハイル。「フェリクスが良ければな!」ってシドは少し面白くなさそうに腕を組んでいる。
「どうやら心の狭そうな恋人の許可が下りたみたいだ。それで、どうかな。僕を君の友人にしてくれる?」
僕はやっぱり声も出せずこくこくと頷いた。今、口を開いたら嗚咽しか出てこないから。僕の初めての友達。いつも親切にしてくれるミハイルと友達になれたらいいなって思っていたから、とても、とても嬉しい。
「良かった! それじゃあ友人のお願いを聞いてここに住んでよ、フェリクス」
「だが、本当に……いいのだろうか」
「当たり前だよ。それにね、君がここに住んでくれないとシドの奴、君が心配でまた階段から落ちそうになるんじゃないかなぁ」
「え?」
「おい、ミハイル!!」
シドが焦った声を出した。
僕が心配でまた階段から落ちそうになるとはどういうことだろう?
口を両手で塞ごうとするシドから逃れながらミハイルは言葉を続けた。
「どうして以前シドが階段から落ちそうになったと思う? あれはね、一晩中君の家の前で寝ずの番をしていたからなんだ。それで眠くなってふらっとしたの」
「てめ、ミハイル……! 言うなって言っただろ」
「仕方ないだろう。フェリクスは案外頑固なんだから、ちゃんと言わないと。分かったかいフェリクス、シドをこれ以上心配させないためにもここに住んでくれよ」
くそ、って恥ずかしそうに毒づくシドを見上げる。
僕が二人組の男に襲われかけたあの日、宿舎に帰ったと思っていたシドはずっと扉の外にいた。シドの外套は僕が持っていたから、外はとても寒かったはずなのに。
僕の身を守ってくれていたのだ。
「ありがとう、シド」
「……おう」
お礼を伝えるとゆらゆらと滲む世界の中で、シドが口元を手の甲で押さえて真っ赤になるのが見えた。
これ以上大切な恋人を心配させないため、ミハイルの好意に甘えてありがたく家を借りることにした。
荷物はほとんど無かったから、二人に手伝ってもらってその日のうちに引っ越しは終わった。
騎士団内でシドは僕への気持ちを一切隠さなかった。
これまでのような拒絶の態度から愛しくてたまらないって感じの態度に変わったことで、最初皆は随分と混乱したようだ。必然的に注目されることになる。それが良かったのか、皆から僕への態度も少しずつ柔らかくなった気がする。「毎日頑張ってるんだな」って声を掛けられたこともある。見ていてくれている人もいるんだ、とても嬉しい。
シドは訓練の後は必ず僕を家まで送り届けてくれる。帰り道はもう暗くないし危なくもないから大丈夫だと伝えたが、そこは折れてくれなかった。
その流れで夕飯も共に食べるようになった。「お前は放っておくと何も食べないからな」って料理を作ってくれる。
台所で鼻歌を歌いながら料理を作るシドはとても楽しそうに見えた。お世辞抜きにシドの作る料理はどれも美味しい。料理人としてでもやっていけるんじゃないかと言ったら、曖昧に笑っていたけれど満更でもなさそうだった。
いつも作ってもらってばかりは悪いから、最近では僕もシドに教えてもらいながら簡単な料理をするようになった。卵の料理が好きでチーズオムレツなら一人でも作れるようになったけれど、やっぱりシドの作ってくれるものの方が美味しい。
食後シドは宿舎に帰らなければならないけれど、次の日が休みの時は泊まっていってくれる。そんな日には明け方近くまで時に激しく、時に穏やかに体を重ねた。
そうして忙しくも穏やかな日々を過ごしていたある日、騎士団、いやオレイユ王国を脅かす大事件が起こったのだ。
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