僕の転生した世界があまりにも生々しい件

灯水汲火

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第1章 訓練生編 『目指せ、アマツ世界を救う冒険者!』

第4話 ガースー総統

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第4話 ガースー総統


 いよいよ、訓練初日がやってきた。
 タマキ先生の説明によると、午前の訓練は講義形式で、アマツ世界の一般常識や、冒険者にとって必要な基本的知識などを教えてくれるらしい。午後の訓練は実技形式で、剣や魔法の使い方など、実践的な練習を行うということになっている。
 ちなみに、昨日会った上水流萌音さんについては、講義形式の訓練は既に修了しており、今日は第一線で活躍しているモンクの冒険者を特別講師に招いて、僕たちとは別メニューの訓練をするそうだ。
 タマキ先生はまだ来ていないので、今日この教室にいるのは、僕と栗林みなみさんの2人だけである。

 その栗林さんとは、ひととおり朝の挨拶をしたものの、その後は2人とも沈黙が続いた。
 栗林さんは、腐女子趣味があることを除けば、文句なしに可愛い美少女である。そして、昨日と同様、可愛らしくセクシーな巫女服を着ている。
 そんな美少女が、彼女を作ったこともない自分の隣に座っているだけでもドキドキしてしまうのに、昨日は奇妙なハプニングで、転倒した栗林さんのお尻が僕の顔面に乗っかってしまい、栗林さんの可愛いお尻や大事なところまでも見てしまった。そして、顔の上に乗っかられた栗林さんのお尻の感触、女の子特有の甘い匂い。
 栗林さんの姿を見るたびに、そんなあれやこれやを思い出してしまうので、栗林さんの姿を正視できない。そして、栗林さんは昨日の件で僕を嫌いになったのか、僕の方をほとんど見てくれない。

 しかし、それでも栗林さんは学校の同級生みたいなものである。しかも、クラスに1人しかいない同級生である。コミュニケーションを取らないわけには行かない。僕は思い切って、無難な話題から切り出すことにした。

「……タマキ先生、遅いね。そろそろ始まる時間なのに」
「そうですね……」
 栗林さんから、か細い声で返事が来たものの、会話が続かない。どうしよう……。


 そんな気まずい沈黙が続いた後、ようやくタマキ先生が『教室』に到着した。
「遅れちゃった~! 2人ともごめんね。……どうしたの? 2人とも顔を真っ赤にしちゃって」
「え? 僕たちの顔、そんなに赤くなってます?」
「それはもう、えっちしたいけどお互い恥ずかしくて言い出せないカップルみたいな感じになってるわよ。講師の立場じゃなかったら、こっそり覗きながら成り行きを見守りたいところだわ」
「先生、僕たちをからかわないでください! それより、先生今までどうしてたんですか?」
「ああ、それはね。ついさっき、行き倒れになっていた日本人の女の子がこのセンターに運ばれてきたから、その対応に追われていたのよ。今は、コハルさんがその子の面倒を見ているわ」
「行き倒れ?」
「そうよ。アテナイス様の力でこのアマツへ転生してきたまでは良いものの、たぶんどこへ行けばいいか分からなくなって迷子になっているうち、お腹が空いてバタンキューって感じになっちゃったみたいね。それを、たまたま近くを通りかかったトードーさんという農家の方が発見されて、本来なら自分の農場へ帰る予定だったところ、わざわざ引き返してその子を城門まで送り届けてくれたのよ」
「トードーさんって、ひょっとしてダイゴロー・トードーさんですか? あの、背は低いけどがっちりした感じの」
「そうだけど、どうしてきよたんがトードーさんのことを知っているの?」
「僕も、トードーさんのお世話になったんです。転生してから行き先が分からなくて、街道を歩いていたところをトードーさんの馬車に乗せてもらいました」

「……すみません。トードーさんって、どなた様ですか?」
 話について行けないといった感じの栗林さんが、おずおずと質問する。
「トードーさんはね、トーキョー・シティーの西側に住んでいる農家の方で、ちょうど日本からの転生者は、トーキョー・シティーの西門と、トードーさんの農園の間くらいに現れることが多いから、トードーさんには日本人らしき人を見つけたら、こちらへ送り届けてもらうようにお願いしているの。
 それから、このセンターで支給している食事も、トードーさんの農園で採れた野菜を使っていてね、このセンターとは何かと縁のある方なのよ。トードーさんとこの野菜は美味しいって、この界隈では結構評判なのよ」
「そうなんですね……」
「そういえば、みなみちゃんはトードーさんのお世話にはならなかったの?」
「いえ、私はこの世界に来て目が覚めると、割と近くに大きな城門があって。でも、どうしていいか分からなくて、そこの兵士さんに声を掛けようとしてみたら、兵士さんに日本人の方ですかって聞かれて、私がそうですって答えたら、ここへ連れて来られたんです」
「そうなんだ、みなみちゃんは運が良かったわね。思い切り運の悪い人だと、トーキョーの城門から結構遠いところに転生させられた挙句、自分でなんとかしようとするあまりとんでもない方向へ行っちゃって、モンスターに食べられたり餓死しちゃったりする例もあるみたいね」
「そんな例があるんですか!?」
 話を聞いていた僕が、思わず声を荒げた。
「残念ながらあるのよ。ごく稀にだけど、そうした日本人らしき人の遺体が発見されることもあるわ。もっとも、モンスターに食べられちゃったような場合には、死体は発見されないだろうから、実際にはもっといるんじゃないかしら」

 ……酷い。あまりにも酷すぎる。
 僕も、初めてこの世界へ転生してきたとき、転生後のサポートが若干不親切なのではないかと思ったが、これはもう若干どころじゃない。あの駄女神に、文句の一つも言ってやらなければ気が済まなかった。
「アテナイスさん、聞こえますか?」
 僕は、腰に付けてある剣の鞘に向かって話しかけてみた。
「聞こえてるわよ」
 すぐに返事が来た。これは、昨日も聞いたアテナイスさんの声で間違いない。
「アテナイスさん、今のタマキ先生のお話によれば、アテナイスさんによってこのアマツ世界を救うべく転生させられたものの、その後のサポートがあまりに不親切なせいで、このトーキョー・シティーへ辿り着くことすら出来ず、何事も成し遂げることなく野垂れ死んだ日本人が結構いるんじゃないかということですけれども、アテナイスさんはこの世界を管理する女神として、またこの世界を救うために何百人もの日本人を送り出した立場として、この状況をどのように受け止めていらっしゃいますか?」

 ……。
 念のため10秒くらい待ってみたが、今度は何の返事も無かった。
「今度は返事が無いわね」
「どうやら、聞こえないフリをしているみたいですね」
「……まあいいわ。アテナイス様はそういう女神だって、私も分かってるから」
 タマキ先生が、そう言って嘆息する。どうやら、アテナイスさんの駄女神ぶりは、タマキ先生もよく分かっているらしい。

◇◇◇◇◇◇

「話が脱線しちゃったけど、これから初日の講義を始めます。今日やるのは、主にアマツの国の現状と、ガースー総統のお話よ」
「ガースー総統? 魔王じゃなくて?」
「ええ。アテナイス様は、転生してくる人たちに『魔王ガースー』とか『大魔王ガースー』って説明しているみたいだけど、本人は魔王じゃなくて、全アマツ世界を支配する『総統』を名乗っているの。そして、このトーキョー・シティーも、ガースー総統の支配を受けているわ。もっとも、その酷い支配ぶりから、陰で『魔王』と呼んでいる人も少なくないから、『魔王ガースー』と呼んでもあながち間違いとは言えないけど」
「具体的に、どんな点が酷いんですか?」
「そうね。このトーキョー・シティーがガースー総統の支配下に置かれたのは、今から10年くらい前のことで、私が転生してくるちょっと前くらいのことらしいんだけど、ガースー総統は『魔軍』と呼ばれる、凄く強力なモンスターたちを引き連れてこのトーキョーに攻め込んできて、それまでトーキョーを守ってきた強力な冒険者たちが、魔軍の手によってあまりにも簡単に殺されてしまったことから、当時の知事がとても勝ち目はないと判断して降伏を決めたそうよ。それ以来、トーキョー・シティーは毎年、ガースー総統への貢物を贈らなければならないの」
「どんなものを送っているんですか?」
「まず、結構な量の金銀財宝と食料。特に食料は、人類が食べるものばかりじゃなくて、モンスターしか食べないようなものをわざわざこちらで栽培しなきゃいけないから、トーキョー・シティーやここで暮らす人々にとって結構な負担になっているわ。でも、様々な貢物の中で一番酷いのは、いわゆる『美女税』ね」
「美女税?」
「毎年5人ずつ、13歳から16歳くらいの美少女を、しかも処女を貢物として差し出さなければならないのよ。そのくらいの年齢の女の子や、そうした娘を持つ親たちは、皆恐怖に怯えているわ」

「……すみません。その、貢物として差し出された女の子たちは、その後どうなってしまうんですか?」
 それまで、黙って話を聞いていた栗林さんが、おずおずと質問する。
「みなみちゃん、残念ながら正確なことは、先生にも分かりません。世間ではガースー総統が処女の生き血を吸っているんじゃないかなんて、いろんな根拠のない噂が飛び交っているけど、ガースー総統に仕える官僚モンスターたちと接触しているトーキョー・シティーの職員さんから聞いた話によると、どうやらそうではないみたいね。
 ガースー総統は、フルネームではヨッシー・ガースーと言って、マッサー・ガースーという素行の悪い長男がいるらしいんだけど、女の子たちはそのマッサーや総統配下の幹部たちに与えられているらしいわ。このアマツに住むモンスターたちの大半は、人類と性交渉が可能なので、どうやら性奴隷として奉仕させられているみたい」
「……」
 栗林さんは、その話を聞くと押し黙ってしまった。

「説明を続けるわね。毎年一定数の美女を貢物として差し出させたりはしているけど、ガースー総統自身はそういう色事に興味は無いみたいで、『国民のために働く総統』を自称して、日々精力的に政務に励んでいるそうよ。もっとも、少なくともそれが人類の役に立った試しは全くと言って良いほどない上に、ガースー総統に仕える官僚モンスターたちも、総統の無茶な指示に応えるため、連日深夜までサービス残業を余儀なくされているみたい。トーキョー・シティーの職員と接触するモンスター官僚たちも、口々にガースー総統の愚痴をこぼしているみたいね」
「……」
「そんなガースー総統は、どうやらスポーツに強い思い入れがあるみたいで、5年に1回『トーキョー・ゴリンピック』というスポーツ大会を開催させて、それが自分の政権浮揚に繋がると信じ込んでいるみたいなの。
 もっとも、5年前に開催された第1回の大会は、トーキョーで疫病が流行っている最中だったにもかかわらず、総統の命令で無理やり開催させられて、それが原因でトーキョーの疫病対策は大幅に遅れて、わたしの夫を含め結構な数の死者を出してしまったわ。しかも、開催費用は全額、トーキョー・シティーの負担。そして、その直後に総統選挙があって、ガースー総統は公式発表によれば投票率100%、得票率100%で再選されたわ」

「……タマキ先生。投票率100%、得票率100%って、まともな選挙なら通常あり得ないと思うんですけど。それに、先生の話を聞いていると、そもそも当選すること自体がおかしいような人物なのに」
「きよたん。そのとおり、最初からまともな選挙じゃなかったのよ。まず、ガースー総統は、自身の生まれ故郷だというアキノミヤに宮廷を構え、そこをアマツの首都と定めているみたいなんだけど、総統立候補の受付は、そのアキノミヤでしか行われていないのよ。
 アキノミヤは、アマツの国でも北方の辺境にあった村で、昔はそこにも人類が住んでいたらしいんだけど、今では気象条件が悪化して寒くなり過ぎて、人類はそこに住むどころか足を踏み入れることもほぼ不可能。つまり、人類はそもそも立候補すること自体が事実上不可能で、実際に立候補したのもガースー総統だけだったわ」
「何ですかそれ? そんなんじゃ、そもそも選挙をやる意味があるんですか?」
「選挙自体、ガースー総統の自己満足のためにやっているみたいなものよ。それで、投票に行くのは15歳以上の有権者で、投票に行かないと罰金を取られるから、仕方なく私も含め全員が投票に行ったわ。もっとも、実際には白紙投票なんかも結構あったらしいんだけど、候補者がガースー総統しかいなかったので、そうした白票なんかも全部ガースー総統への投票とみなされて、公式には得票率100%になっているわけ。それでも、ガースー総統はその選挙結果に満足し、『自分はアマツの国民に支持されている』と自信を持っているらしいわ」
 ……もう、ガースー総統の話を聞いていると、なんか頭痛がしてきた。


「さて、2人にはこれから、そんなガースー総統の映像をみてもらいましょう」
 タマキ先生がそう言って黒板の方を指差すと、黒板が人物の映像に切り替わった。
 この映像に映っているのが、おそらくガースー総統なのだろう。顔の皮膚が紫色をしているので人間でないことは明らかだが、顔立ちは人間の老人とさほど大差なく、しかも日本のテレビなんかでよく見た某総理に似ていた。
「タマキ先生、この世界にはビデオとかがあるんですか?」
「無いわよ。このアマツ世界では、物質文明は現代日本よりだいぶ遅れていて、テレビやビデオ、DVDみたいな映像機器はまだ発明されていないわ。その代わり、情報魔術がかなり発達していて、たぶん日本では出来ないようなことも出来たりするの。
 もっとも、アマツの情報魔術は、トーキョー大学なんかで研究されているかなり稀少なもので、このセンターはユーリコ知事の肝煎りで作られた関係で、実用試験も兼ねて最新の情報魔術が惜しみなく使われているから、映像機器も使わずにこうした映像を流したりすることも出来るんだけど、一般庶民は町の中央広場なんかに表示される大画面で、時々流されるシティーからの広報を観ることが出来る程度よ。一般庶民でもアクセスできる、テレビやラジオ、インターネットなんかに相当するものは、このアマツにはないわ」
「……分かりました」
「それじゃあ、先日ガースー総統から送られてきた、国民向けのメッセージを流すわね」
 タマキ先生はそう言って、画面を操作し始めた。リモコンとかは無く、指で遠隔操作をしているような感じだが、操作方法自体は、日本のパソコンやスマホで映像を観るときと大差ないようだ。
 やがて、ガースー総統の静止画像が動画に切り替わり、画面内のガースー総統が喋り始めた。


「こんにちは。ガースーです。今日も、国民の皆様に総統からのメッセージをお送りします。
 さて、今日のアマツにおける最大の政策課題は、増え続けるモンスターの襲撃に対する対策であり、総統府にも連日、モンスターの被害報告が各地より多数寄せられております。総統府としては、最大限の警戒心をもって状況を注視いたしますとともに、安全安心な社会を実現すべく、今後もモンスターの被害拡大に全力を尽くす所存であります。・・・・・・」


 はあ???
 総統の口から発せられたあまりにも不可解なメッセージに、僕と栗林さんは一様に首をかしげた。
 なお、ガースー総統は、冒頭のあいさつ部分だけはちょっと気持ち悪い笑みを浮かべ、その後は無表情で下の方を向きながら喋っていた。どうやら、事前に用意された原稿を読み上げているらしい。
 タマキ先生は、そんな僕たちの様子を見ると、一旦映像を止めて説明を始めた。
「えーとね、実際にどうであるかはともかくとして、少なくとも総統府の立場としては、アマツの各地に生息し人類に被害を加えているモンスターたちは、総統とは無関係ということになっているの。だから、総統の支配下にあるこのトーキョーでも、モンスターと戦って人類を守る冒険者たちの活動は容認されているのよ。
 そして、総統も表向きは、そうしたモンスターによる被害の拡大を憂慮しているらしくて、被害の拡大防止に全力を尽くすっていう趣旨のメッセージを時々送って来るの。もっとも、実際に人類の役に立つようなことはほとんどやっていなくて、総統がよく使う『最大限の警戒心をもって状況を注視する』というのは、ガースー語で『何もしない』という意味だなんて嫌味を言う人もいるけどね」
「でも、今のメッセージでは、『モンスターの被害拡大に全力を尽くす』って言ってませんでした?」
「それは、単なる原稿の読み間違いよ。官僚モンスターから事前通告されてきたメッセージでは、確かに『モンスターの被害拡大防止』って書かれていたから。ガースー総統は、原稿の読み間違いが結構多くて、時には原稿を1ページまるごと飛ばして読んじゃったりすることもあるのよ。総統を補佐する官僚モンスターたちも、相当手を焼いているみたい」


「……そんなんで大丈夫なんですか? 何と言うか、実質的には人類の敵であるとかいう問題以前に、こんな頼りない人物だとモンスターたちを統率するのも難しいような気がするんですけど」
「まあね。ガースー総統は、弱い人類や官僚モンスター相手には結構威張っているけど、『魔軍』の中では、それほど絶対的な支配力を持っているわけではないみたいなの。『魔軍』を構成する強力なモンスターたちは、いくつかの派閥に分かれて権力争いをしているらしいんだけど、そうした『魔軍』の中でも『四天王』と評される長老たちが、今のところ揃ってガースー総統を支持しているから、総統を快く思わないモンスターたちも表立って抵抗することはできないそうよ。
 もっとも、これは私が、日頃官僚モンスターたちとの折衝にあたっているトーキョー・シティーの職員から聞いたというだけの話だから、どこまで真実かは分からないわよ。それに、官僚モンスターたちの言う『四天王』の名前も、ちょっと変な名前が多くて、本名かどうかも分からないし」
「……どんな名前なんですか?」
「四天王の筆頭が『シンゾー・アブー』、次が『ア・ソウダロウ』、3人目が『シン・キロー』、最後の1人は『サンカイ・カンジチョー』って言うんだって」
「何なんですか、それは!?」
 僕は、突っ込みたい衝動を抑えきれず、思わず絶叫してしまった。

「どうしたの、きよたん? 四天王の名前に心当たりでもあるの?」
「あるも何も、ガースー総統も含め、僕が死ぬ直前の日本で権力を振るっていた政治家たちを若干もじったような名前ばかりなんですけど……」
「うーん、それはたぶん偶然の一致よ。気にしない方がいいわ」
 タマキ先生は、僕のツッコミをあっさりとかわし、講義をまとめた。
「以上、色々余計なことも喋っちゃったけど、みなみちゃんも含めて最低限覚えてほしいことは、現在のトーキョー・シティーはガースー総統の支配下に置かれている状況にあり、トーキョーの冒険者たちは勝手に暴れているモンスターの討伐くらいはできるけど、表立ってガースー総統を討伐するなんてことはとても言えない状況にあり、本気でガースー討伐を目指しているのは、今のところ訓練生のもえちゃんくらいしかいません。
 そして、『魔軍』内部の複雑な政治状況からすると、どうやらガースー総統さえ倒せば済むというわけではなさそうなので、このアマツに平和をもたらすには、このトーキョー近辺である程度実力を付けた後、危険なアマツの各地を旅して回りさらに実力を付け、アマツの各地で独自の勢力圏を築いている『魔軍』幹部たちの拠点を潰して徐々に魔軍の勢力を削いでいくという、とてつもなく危険で大変なことをやらなければなりません。
 さらに、このトーキョーは比較的住環境に恵まれているけど、他の町や村は人口が少なくて住環境も悪く、モンスターに潰されて廃墟になっちゃった町や村もあるようなので、長期間にわたり立ち寄れる人類の町や村が無いサバイバル旅行を強いられる可能性も十分あります。
 だからこそ、わざわざ日本から転生してきた冒険者たちも、ほとんどはガースー討伐なんて夢物語だって最初から諦めちゃって、このトーキョー近辺で冒険者稼業をしてそこそこ裕福な暮らしをすることしか考えていないわけですが、もしもえちゃんの言うように本気でガースー討伐を目指すつもりなら、それは大変な茨の道になることだけは間違いありません。
 もちろん、先生としても、そのような状況に満足しているわけではなくて、出来ればこのセンターから本気でガースー討伐を目指してくれる冒険者が現れてくれれば良いと思っていますが、きよたんやみなみちゃんに、そのような生き方を強制することはもちろん出来ません。
 以上を踏まえて、このアマツで冒険者としてどのような生き方を選ぶかは、それぞれ考えてくださいね」
「「わかりました」」
 タマキ先生の言葉に答える僕と栗林さんの声がハモった。

◇◇◇◇◇◇

「ちょっと、しんみりするような話になっちゃったから、話題を変えるわね。これからは、アマツの人口問題に関する話になるけど、特にきよたんにとっては天国のような話よ」
 今まで真面目に講義をしていたタマキ先生が、急に笑顔になって僕の方を向いた。
「……何で、僕にとって天国なんですか?」
「話を聞いていれば分かるわ。現在、このトーキョー・シティーの人口は約10万人、周辺の農村部を含めれば約30万人から50万人くらいいると推計されていますが、全盛期のトーキョーには市内だけでも100万人以上もの人口を誇ったと伝えられていますから、人口がだいぶ減ってしまっています。
 そして現在も、おそらくトーキョーやその近辺に限らず、アマツの全域において、人類の人口は減少傾向にあります」
「モンスターの被害を受けているからですか?」
「それもあるけど、人口の男女比に問題があるのよ。トーキョーやその周辺地域においては、人類の約8割が女性で、男性は2割くらいしかいません。特に、えっちをして子供を作ることが出来る健康な成人男性は、10人に1人いるかいないかだと思うわ」
「……どうして、そんなに男女比が偏っているんですか?」
「理由はいろいろあるけど、まず医療水準が現代の日本よりだいぶ低いことね。出生率自体は概ね男女半々くらいなんだけど、アマツで生まれた女の子は、疫病や事故にでも遭わない限り、約8割以上が成人まで育ちますが、男の子は虚弱ですぐに亡くなってしまう子が多くて、えっちが出来る健康な成人男性にまで育つのは、せいぜい2割前後に過ぎません。まあ、これは昔の日本も、概ね似たような状況だったみたいだけどね」
「はあ」
「それに加え、モンスターの襲撃などで殺されるのは、大半が男性です。アマツのモンスターで、人類との戦闘に出てくるのは大半がオスで、人類の女性を性欲のはけ口とみなしているので、例えば冒険者の一行がモンスターと戦って負けても、女の子は捕まって数日間凌辱されただけで解放されたり、警戒が緩くなって自力で脱走できたりして、大体半分くらいは生きて帰って来られます。
 実際、先生も一度オークたちとの戦闘に負けて捕まってしまったことがありますが、諦めてオークたちに凌辱されていたところ、5日間くらいするとオークたちが私に飽きてしまったのか、どこにでも行けみたいな感じで解放され、何とか生きてトーキョーに戻って来ることが出来ました。
 そういうわけでみなみちゃん、運悪くモンスターたちに捕まってしまったときは、下手に抵抗せず、大人しくされるがままになった方がいいわよ。女の子でも、しつこく抵抗しようとする子は容赦なく殺されるから」
 栗林さんは、タマキ先生の言葉に脅えながらも、黙って頷いた。

「しかし、男性の場合にはそうは行きません。冒険者がモンスターと戦う場合でも、モンスターが一般住民の集落を襲う場合でも、男性は容赦なく殺されてしまいます。これが、アマツで男性が少ない第二の理由です。ちなみに、このアマツでモンスターに殺された場合、遺体がモンスターに食べられたりしていなければ、仲間が死後概ね24時間以内にアテナイス教の寺院へ遺体を運んできてくれれば、寺院の司祭に『リザレクション』の魔法で生き返らせてもらうことが出来ますが、それが出来なかった場合には、もうアマツでの人生は終わりです。アマツでの記憶などはすべて失って、地球のどこかで赤ちゃんからやり直すことになるみたいね」
「はあ……」
 嫌な世界だな。男は負けたら容赦なく殺されるのか……。
「そんなわけで、アマツではえっちできる健康な成人男性が極端に不足しているので、現代の日本みたいに一夫一婦制なんか採っている余裕は無くて、むしろ健康な成人男性は複数のお嫁さんをもらって、子作りえっちに励むことが強く推奨されています。もっとも、一日中えっちばかりしているのも問題があるので、昼間は懸命に働き、夜はえっちに励むのが理想の男性とされています。ユーリコ知事は、トーキョーの成人男性たちに『ライフ・エッチ・バランス』を呼び掛けているわ」
「……ユーリコ知事って、ひょっとしてそういう横文字の表現が好きなんですか?」
「よく分かったわね。最近はトーキョーの近辺でもモンスターの被害が増えているから、ユーリコ知事は特にモンスターの襲撃が多い夜間について、住民たちに不要不急の外出を控えるよう、『ステイ・ホーム』を呼び掛けているわ」

 ……。
「どうしたの、きよたん? なんで頭を抱えてるの?」
「……いえ、日本でも散々聞かされた言葉なので。理由は違いますけど」
「そうなの。若干話が逸れたけど、これは主にきよたん向けの話だからしっかり聞いてね。そんなわけで、えっちが出来る若くて健康な成人男子に精一杯頑張ってもらわないと、今後もアマツの人口は減る一方だから、トーキョー・シティーでは男性がたくさん子作りえっちをできるような環境の整備に取り組んでいるの。ユーリコ知事も、立候補の際に『成人男子の童貞ゼロ』を、公約の1つに掲げていたくらいよ」
「はあ……」
 だんだん嫌な予感がしてきた。

「もっとも、女性の方も男なら誰でも良いというわけでは無くて、どうしても健康で精力旺盛な男性に人気が集まってしまうのよ。その方が、健康な子供を産める可能性が高いからね。そして、このアマツ世界では男女を問わず、一般にVITの数値が高いほど、精力や性欲も強い傾向にあるわ。
 だから、転生したばかりでVITが130もあるきよたんは、毎晩何回も子作りえっちをこなせる伝説級の性豪になれる可能性が高いということで、即戦力になり得る強い冒険者としてだけでなく、子作りえっちの担い手としても期待を集めています」
 ……。
 僕の嫌な予感は、ますます強くなった。


「というわけできよたん、昨晩は誰と何回えっちした?」
 タマキ先生から、ド直球なセクハラ質問が来た!
「……してません」
「ええっ!? 私も、もえちゃんも、みなみちゃんもえっちOKなのに、誰ともえっちしなかったの!? ……でも、それじゃあきよたんの若い健康な身体にみなぎっている、溢れんばかりの青春の欲望は、どうやって処理したの!?」
「黙秘権を行使します!!」
「きよたん、残念だけどこの問題について黙秘権は認められないわ。出来れば訓練中からでも、子供を産みたい女性との子作りえっちに協力してほしいという理由もあるけど、男性の冒険者にとってえっちの能力はとっても重要よ。
 この世界で冒険者たちがパーティーを組むときは、男性の冒険者1人に3人から5人くらいの女性が付くハーレムパーティーが一般的で、もえちゃんとみなみちゃんをパーティーに加える前提でも、少なくともあと1人以上は、こことは別に訓練しているアマツ出身の女の子を誘う必要があるわ。
 そして、男性の冒険者が女性をパーティーに誘うときには、その女性とまずえっちして、その女性が満足できる男だったらパーティーに加わるというのが一般的なの。まあ、童貞ならえっちのテクニックは期待できないけど、一晩で何回もえっちできる精力旺盛な男の子なら、将来有望ということで多めに見てもらえるわ。ちょうど、このセンターにいる男性の訓練生がきよたんだけということもあって、きよたんにどれだけの精力があるかは、私を含めこのセンターにいる女性全員が注目しているのよ」
「出来れば、そんなことで注目しないでもらいたいんですけど……」

「それは無理な話よ。今のきよたんだって、隣にいるみなみちゃんを可愛い女の子として注目しているでしょう?」
 うわあ、ものすごく答えにくい質問が来た。
「それはその、注目していない……わけではありません」
 僕が、慎重に言葉を選びながら何とかそう答えると、栗林さんが顔を赤くして俯いている。
 僕としては、えっちな欲望を剥き出しにして栗林さんに嫌われるのは、何としても避けたいんだけど……。

「ほらね。以前にも、似たような感じの訓練生を担当したことがあるから、先生には分かるのよ。きよたんは、女の子とのえっちには興味深々だけど、恥ずかしがり屋さんで、自分からえっちしたいって言い出せないタイプでしょう? せめてもの情として、コハルさんにもバレることなくどこでオナニーしたかは聞かないでおいてあげるから、昨晩何回オナニーしたかだけでも教えてくれる?」
「そんなこと答えられませんよ! あからさまなセクハラ質問じゃないですか!?」
「きよたん、日本とこのアマツでは法律が全く違うのよ。今私がやっている質問は、トーキョー・シティーの少子化対策特別措置法に基づく正当な調査権限の行使よ。回答を拒否するなら、今夜きよたんを強制的に私の部屋へ連行して、私と何回えっちできるか自分の身体で確認することも認められているのよ。というか、先生としてはむしろ、その方が好都合なのよね~。私だってきよたんとえっちしてみたいし、きよたんが回答を拒否するなら、今夜合法的にきよたんの童貞を奪うことができるし」
「ううう……。酷すぎる……」
 そういう質問が必要だとしても、せめて栗林さんがいない場にして欲しかった。デリカシーが無さすぎる。

「きよたん、そんな深刻に考えなくてもいいのよ。女の子ならともかく、男の子にとっての初えっちはとても気持ちいいだけで、一度経験したら病みつきになっちゃうのが普通だから。さあ、先生があと5つ数える前に答えないと、回答を拒否したものとみなすわよ。1,2,3,4……」
「6回です」
「え?」
「だから、昨晩は6回しました」
「なるほど、きよたんは昨晩恥ずかしくて誰にもえっちしたいと言い出せなかったけど、溢れんばかりの性欲を我慢することは出来なくて、どこかでこっそりと6回もオナニーしちゃったわけね。そして、昨晩6回もオナニーしたにもかかわらず、きよたんの名槍清隆丸は、今朝からズボンの上からでも分かるほど元気いっぱいになっちゃってるわけね。よく分かったわ」
 僕が、仕方なく出来る限り小声で答えたことを、わざわざはっきりした声で補足まで加えて確認するタマキ先生。
 この人、本当の鬼だ……。

「それで、今の話聞いてた? みなみちゃん」
「……は、はい!」
 今まで、顔を真っ赤にして俯いていた栗林さんが、急に指名されて驚いたように返事をする。
「いい? 男の子は大抵こういうものなのよ。きよたんは恥ずかしがり屋さんだから、自分からはなかなか言おうとしないけど、内心ではみなみちゃんみたいな可愛い女の子とえっちしたくてたまらないのよ。でも、みなみちゃんの立場は決して安泰ではないのよ。
 今のきよたんには、たぶん女の子はもえちゃんとみなみちゃんくらいしか見えていないと思うけど、このセンターではアマツ出身の女性訓練生も結構いて、パーティーを組む相手さえ見つかれば今月中にも卒業できそうな子も6人くらいいるのよ。その子たちにはいろんなタイプがいるけど、みんな結構な美人で、もちろん全員が、何とかきよたんに選ばれたいと思っているわ。
 みなみちゃんは、もえちゃんとは違ってまだ基本職である僧侶のレベル1だし、基本能力なんかもそんなに光るものがあるわけじゃないから、今後他の訓練生たちとの競争になったら、きよたんからパーティーのメンバーに選ばれる保証は出来ないわよ。
 お節介だと言われるのを承知の上で忠告しておくけど、きよたんが恥ずかしくて言い出せないなら、自分から誘って今夜初えっちの相手をするくらいの積極性を見せないと、卒業するきよたんからパーティーメンバーに選ばれず、そのまま訓練生として待機させられた挙句、きよたんより数段レベルの落ちる男の子で妥協せざるを得ない、なんて結果になりかねないわよ」
 理不尽とも思えるタマキ先生の説教に、栗林さんは俯いたまま何も言い返せないでいる。あまりにも可哀想だ。

「あ、ちょうどそろそろ昼休みの時間ね。普段なら昼食は、食堂で訓練生全員が集まって食べるんだけど、今日だけは特別に、きよたんとみなみちゃんの2人だけで、この教室で食べていいことにするわ。その間に、2人で今夜をどう過ごすか相談するといいわ。
 じゃあ、これで午前の授業は終わり。午後はもえちゃんも合流して実技の基礎をやるから、2人きりになれる時間は昼休憩までよ」
 タマキ先生はそう言うと、自ら僕と栗林さんの食事を運んできて、『教室』を立ち去ってしまった。

◇◇◇◇◇◇

 こうして、僕と栗林さんの2人きりになった昼食の時間。
 しばらくは気まずい沈黙が続いたが、こういう機会に何も話をしないのは良くないと思い、僕は思い切って話を切り出した。
「栗林さん、さっきの授業では、その……、色々とごめんなさい」
「そ、そんなことありません! きよたかさんは、何も悪くないと思います。それに、わたしも色々と勉強になりましたし……」
「勉強? あの、セクハラ丸出しの授業が勉強になった?」
「はい。実はその、昨晩きよたかさんが、私の部屋へ来てくれなかったから、ひょっとして私、女の子としての魅力が無いのかなって悩んでいたんです。……でも、本当はきよたかさんが我慢しているだけだって知って、ちょっとだけ安心しました」
「そ、そうなんだ。でも、栗林さんには、女の子としての魅力は十分あるからね。その点は全然心配しなくていいよ」
 僕がそう言うと、栗林さんは顔を真っ赤にして俯いた。本当に可愛い。

「そ、それって、わたしが女の子として可愛いっていうことですか……?」
「……正直に言うと、すっごく可愛いと思います」
「そ、そんな……。すっごく可愛いだなんて……」
 栗林さんが、明らかに動揺している様子で、身体をモジモジさせ始めた。どうやら、嫌がられている様子はない。

「……え、えーと、きよたかさん」
「うん」
「きよたかさんとは、昨日会ったばかりですけど、優しそうで良い人のような気がします。だから、私がこの世界で生きていくには、きよたかさんのパーティーに入れてもらうのが、たぶん一番良いと思っています。
 ……でも、昨日お話ししたとおり、私は日本にいたとき病気ばかりして、特に中学に入ってからは、学校にはほとんど行けなかったので、きよたかさんみたいな同年代の男の人と、こうやって二人きりで話すなんて、生まれて初めてのことなんです。だから、それだけでも緊張して、さっきから心臓がバクバクしちゃって……。そんな状態なのに、今夜いきなり、きよたかさんとえっちしなさいとか、しかも自分から誘いなさいなんて言われても……」
「ああ、それはよく分かる。どう考えても無理があるよね」
「はい。……でも、きよたかさんがえっちしたいのを我慢していることは分かりましたから、もし初めてが私で良ければ、私の部屋に来てください。そういう経験は全く無いので、何をすればいいのか分かりませんけど、もしきよたかさんが望むなら、どんなにえっちなことをされても、……耐えてみせます」
「栗林さん、そんな無理しなくていいよ。タマキ先生はあんなこと言ってたけど、僕としては栗林さんの方が嫌でなければ、卒業する時には絶対に栗林さんをメンバーに選ぶつもりだから。えっちとかそういう話は、僕の方もまだ覚悟が出来てないから、これから栗林さんといろんなお話をして、親睦を深めてから考えても、決して遅くはないと思うし……」
「そ、そうですよね……」
 その後は会話が続かず、お互い顔を赤面させてのお見合い状態になってしまった。


 昼休憩の時間が終わる頃、上水流さんとタマキ先生が、相次いで『教室』に入ってきた。上水流さんは、お見合い状態になっていた僕たちを訝し気な表情で睨みつけ、タマキ先生は僕たちを「若いっていいわね~」と言わんばかりのニコニコ顔で見つめていた。
 上水流さん、僕、栗林さんが並んで着席した後、タマキ先生が話を切り出した。
「3人とも揃ってるわね。これから午後の訓練、と行きたいところだったけど、本日もまた、日本から転生してきた新入生の女の子が1名います。もうすぐ、コハルさんがその子を連れてくると思うから、ちょっと待っていてくださいね」
「今日も新入生? 2日間で3人も日本人の新入生が入って来るなんて、珍しいわね」
 上水流さんがそう感想を漏らす。

 ともあれ、待つことしばし。
 『教室』で待っていた僕たちを驚かせたのは、入ってきた新入生の異様な姿だった……。

(第5話に続く)
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