剣術チートな悪役令嬢

時雨

文字の大きさ
上 下
17 / 18
第1章 魔法陣を抜けると、異世界であった

16. 休日の朝

しおりを挟む
 ガヤガヤ、と少し騒がしい音で目が覚めた。

(今日何かあったっけ?)

  カレンダーを確認しようと体を起こした。が、その前に頭が冴え、今日はアランがうちに来る日であることを思い出した。
  アランは婚約してから週一で、学校に通いだしてからも、休日に、最低月に一度はここに来る。

  現在の時刻は午前十時。アランが来るのはいつも大体午後一時くらいだから、まだ準備するのに時間があるだろう。
  アランはルソワール王国第二王子であるため、絶対に失礼な態度は取れない。それで、彼がうちに来る時の準備にはこの家の人全員余念がないのだ。

「お嬢様、朝食の準備が出来ました」

  ノックしてから部屋に入ってきたメイド長のミアが言った。彼女はいつも綺麗なブロンドの髪を三つ編みにしていて、頬にはそばかすが浮いている。目が少し離れていてファニーフェイスだ。
  そして仕事がとんでもなく早い。何か頼んだら、十分以内に必ず対応してくれるくらいだ。

「あら?」

  ミアが首を傾げた。一体何だろうと思って、彼女の目線を辿ると、赤いシーリングスタンプの付いた便箋に行き着いた。神様からの手紙だ。

「手紙ですか?」

  ソプラノの高い声で彼女が言った。

「ええ、そうなの。最近出来た友達が手紙を書くことが趣味で、よく交換するのよ。これは、昨日貰ったやつ」

  ベッドから降り立ち上がって、手紙を持つ。慌てたように聞こえただろうか。ちょっと焦るが、ミアのことだから、人の手紙の内容なんて勝手に見ないだろう、と判断して、手紙はそのままにしておいた。
  それにエリーズの部屋に入るのは、ミア以外ほとんどいない。
  
「そうなんですか」

  予想通りミアは納得したように頷き、ほら、早く用意して下さい。スープが冷めてしまいますよ、と言ってエリーズの背中を押した。

  食堂に行くと、お母様、お父様がもう席に座っていて、ご飯を食べていた。今日のメニューは、ホットコーヒーにサンドウィッチ。それと具沢山なポトフだ。デザートに苺ジャムのかかったヨーグルトがついている。

  ふわふわの卵サンドを口に運びながら、エリーズは昨日のことについてふと思い出した。
  レオンに言われたこと、そして叩き折ったフラグ。もしかしたら神様からの今日の手紙に、諸々のことについて何か書いてあるかもしれない。
   それに、単なる噂話にしては、レオンの声にはいくらか真剣さが滲んでいて、エリーズに何か訴えかけているようだった。

  考え事をしていると

「エリーズ、ぼーっとしすぎです。アラン様が来ると言うのに、その調子ではいけませんよ」

  母親から注意を受け、エリーズは素直に頷くと、ご飯を食べ終え、席を立った。

(まずは髪を結ってもらうか)

  エリーズはミアを呼ぶと、部屋へと戻って行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

死ぬ予定なので、後悔しないようにします。

千羊
恋愛
4年間、なんの助けもなくスラムで生きてきた名もなき少女。その命も途絶えそうになった時、少女は青年に助けてもらった。青年を見た時、少女は思い出す。この人は前世でやった乙女ゲームの登場人物だ、と。 前世の記憶を辿ると、自分はまさかの悪役令嬢であり、ヒロインの双子の姉のティファニア!?それってハッピーエンドもバッドエンドも悪役令嬢は死ぬよね? 前世では後悔して死んだのだから、今世では後悔なく生きぬきたい!! じゃあ、まずは前世知識でお金を貯めてスラムを救おう!! ん?攻略者とはどうするかって?もちろんそれも対策しますよ。なんせ、あんな性格の悪そうな女に渡せませんからね。 なろうでも同じ作品を公開しています。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでのこと。 ……やっぱり、ダメだったんだ。 周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中 ※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。 ※諸事情により3月いっぱいまで更新停止中です。すみません。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

【完結】乙女ゲームのヒロインに転生したけどゲームが始まらないんですけど

七地潮
恋愛
薄ら思い出したのだけど、どうやら乙女ゲームのヒロインに転生した様だ。 あるあるなピンクの髪、男爵家の庶子、光魔法に目覚めて、学園生活へ。 そこで出会う攻略対象にチヤホヤされたい!と思うのに、ゲームが始まってくれないんですけど? 毎回視点が変わります。 一話の長さもそれぞれです。 なろうにも掲載していて、最終話だけ別バージョンとなります。 最終話以外は全く同じ話です。

処理中です...