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第7話 遠足の班決め……詰んだ

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 入学式から1週間が経った。俺はギリギリ無事だし、モブとして上手くやっていけてる、というか……

「あの錦小路が1週間も暴力沙汰を起こしてない……!?」
「まだ誰も襲われてないなんて」
「今フリーだってマジ? あの、権力で女を買ってた錦小路が!?」
「噂によると高校から改心したらしいぞ」
「大人しく見せてるだけなんじゃないの?」

 という感じである。
 やっぱ錦小路の印象最悪すぎだろ。どこのヤクザだよ。

 一方。主人公はヒロイン――佐々木 神奈と接触したようだ。
 佐々木神奈はいわゆるあざとい小動物系。黒髪ボブに、ピンクがかった瞳。身長は148cmと小柄で、そしてかなりのムチムチボディをお持ちでいらっしゃる。たしかゲーム情報ではカップ数がFだったような……メイドカフェで働いていて、趣味はSNS。裏垢女子であり、ちょっとしたメンヘラでもある。でもそこには彼女なりの理由があって――
 曰く、親からの愛情が注がれず、また、小学生の時にひどいいじめに遭い、昔からさみしい思いをしていた。SNSは、その寂しさを紛らわせるためにやっていたのである。
 学校では明るく振舞い、みんなのアイドルとして生活している彼女は錦小路にいじめられているのに屈しない主人公に興味を抱くようになる――

 で、なんで接触したのが分かったかだ。
 主人公と神奈が最初に出会うのは、彼女の働くメイドカフェだ。学校の人には内緒にしていた神奈は、主人公に秘密にするようにお願いする。主人公も当然その願いを聞くのだが、なんと神奈と主人公、席が隣なのだ。
 2人とも、ある日を境に急によそよそしきなったからすぐ分かったぜ。
 
 というわけで。このまま2人で勝手に恋愛してくれれば俺は十分だ。
 俺は成田という友達もいるわけだし、本当に今のままで安定してくれたらそれで十分。悪役を演じるとかはできそうにないしな。モブでいさせてくれ。

 ぼーっと考えていたら、教室に先生が入ってきた。

「えぇ、今日のHRはですね。来週の遠足の班決めです。まだクラスもね、そこまで馴染めていないと思うのでくじ引きで決めようと思います」

 マジか。遠足、成田と行きたかったんだけどな。クラスで他に友達できる気しないぞ。

「では、1班から読み上げていきますね。えーっと、1班。成田、木戸……」

 次々読み上げていく。
 とりあえず、主人公と佐々木とさえ違う班になってくれればいいのだ。にしても、成田とは違う班か。残念だ。

「では5班。錦小路、佐々木、山田、三木」

 ……んんん? おっと? これは詰んだ?
 一瞬自分の耳を疑った。けど、悲しいことにこれは現実らしい。
 俺の班の人たちが全員、名前を呼ばれた瞬間に下を向いたからだ。よっぽど嫌なんだろうな。錦小路と一緒なの。

「これで最後ですね。では皆さん、班の方と、当日の行き先を決めてください」

 今回の遠足は自由行動だ。だから行き先を決める必要があるというのは、昨日の終礼の時から言われていた。
 先生の言葉でみんな一斉に動き出す。その中に、1つやたら腰の重い班があった。当然俺の班だ。中学からここに通ってる神奈も戸惑っているような雰囲気だった。

「ど、どうしようか。行き先」

 俺の席に全員が集まった。
 怯えたような表情をしている。ガチで申し訳ない。
 
「佐々木さんは行きたいところある?」

 山田というらしい女子生徒がおずおずと尋ねた。

「うーん。わたしは美味しいスイーツが食べたいな。なんかさぁ、お店いっぱいあるらしいんだよね」
「ス、スイーツか。いいね。私も食べたいなぁ」

 完全に凍った空気の中、神奈はいつも通りの声を出した。すごいな。さすがあざといの権化と言われるだけある。

「錦小路くんは、行きたいとことかあるの?」
「俺は別に。みんなの好きなところでいい」
「そっかー! じゃあ、わたしたちの行きたいところから選ぼうか。ね、みんなそれでいい?」
「そうだなー。みんなで案、出していくか」
 
 神奈のおかげで空気が緩む。原作でも魅力的に描かれてはいたけど、やっぱ目の前のすると本当にかわいい子だなと思う。それに原作ではヤンデレなところがメインに描かれていたからな。こういう明るいところを見ると感動するっていうか……

「うん。決まったね。当日はこのルートで行こう。みんな、楽しもうね!」

 授業が終わる頃にはもうみんな神奈のほんわかとした空気に包まれていた。
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