闇より深い暗い闇

伊皿子 魚籃

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闇-145

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 豪奢な室内には似合わない淫靡な水音が響く。時折僅かに囀るような女の声も聞こえるがその声は意味を成さない。
「んっ……んっんぁ……」

 胡座をかいたアレックスの上に跨がり腰を支えられてツキヨは上下にゆるゆると挿し動かされていた。
 既に3度吐精したとは思えない鋼のような肉棒は動くたびに蜜壺から溢れる淫蜜や自ら吐き出した白濁汁を掻き出し、身にまとい敷布を更に濡らす。


***

 二度目の吐精は一度目よりも野性的に背後から掻き抱かれるように吐き出し、背に赤い所有印や噛み跡をつけられた。その際に猫のまぐわいを思わせるように首飾りがチリチリと鳴り続けていたことをツキヨは胡乱げに思い出す。

 三度目は体力的な限界からツキヨは休憩を強請ってアレックスのびくともしない筋肉の鎧を押し返した……が、その手を掴まれて優しく手に口付けをされた。

【あぁ、休める~】

 と、思った瞬間両手首にオリエ布で作られた組紐がくるりと巻かれ、ヘッドボードに結ばれた。
 足は固定されることはなくとも両足の間には定位置だといわんばかりにアレックスが居座るとまたも花芯を嬲り、舐り続けられ、新たに蜜壺内のイイトコロを見つけられ一度目よりも濃厚に子袋に吐精された。

***

 そして、今。
 性急な交わりではなくゆるく差し入れられた肉棒のカサの部分で蜜壺の全体を擦り上げられている。
「んっ……ぅふ……ン……ァンん」
 銀髪の下生えがツキヨの勃起しきった花芯も掠めるが、動く度に達してしまう状態にまでさせられている今は肉棒を常に締め付けるだけの刺激にしかならなかった。
「今度はゆーーーっくり、楽しもうぜ。ツキヨの肉をいっぱい擦ってやるからな」
 大きな手が後頭部を押さえ身を捩ることもできないがムチュリとツキヨの唇を貪り、舌を奥まで入れて隅々まで味わうように舐め尽くす。微かに触れた小さな舌をチロチロと細かく擦り合すとツキヨの身体がビクビクと震える。
 唇を貪りながら胸の頂きの蕾を摘むとキュンッと蜜壺は肉棒を淫らな動きで吐精を促す。
「悪い子だ……何度躾けてもイヤらしいな」
「ぁあっ!ちが……んんっっ!!」

 蕾を強く摘み、耳朶を食み、舌を這わす。
「どこもかしこも甘くて……匂いも堪らない……全て俺のものだ」
 肉棒が重量を増したのかぐむっと膨らむ。
「ぁひんっ!!お、ぉっきく……ン!ぁあ!!」
「いつも煽っているツキヨが悪い子だからなぁ……ナカもさっきよりも俺にお強請りしてきてるぜぇ」 
 胡座の上に座り、自重とアレックスのせいで肉棒が最奥まで挿入されるとツキヨの下腹部は肉棒らしき形とその先に丸く膨らんでいるような箇所が見られる。
「もぉ……ぁやあ……」
「新妻の子袋に汁を満たすのが夫の努め。俺の愛が溢れ出して仕方がねぇ……あぁ、ほら、またたくさん出すぞ」
 ぐっと腕に閉じ込めるようにツキヨを抱き締めて、上下に動かすとナカも蠢き、肉棒を扱くように絡みつく。
「ひン……あっあっあっっぁ!!!ィ……!!!」
「出るぞっ!!!ふうぅっ!」
 最後にトンっ!と最奥に打ち付けると、熱を帯びた白濁汁が注ぎ込まれた。
 ビクビクッ!と震えたツキヨは、そのまま疲労感混じりの笑顔で目を瞑ってしまった。
 最後の一雫を出し切ったアレックスは目を瞑ったツキヨを愛おしげに口付けると、まだ元気そうなワガママな相棒を抜いて、寝台に寝かせた。
 敷布は何かしらの液体まみれのベタベタだったが、このために意地と気合いで習得をした清浄魔法で整えた。
 裸身を晒す女神を傷つけないように首飾りも外して、乱雑にヘッドボードにジャラリと置く。
 まるで、ツキヨの肌に直接触れていたことに嫉妬するようかのように。
 少し膨らんだ下腹部に触れ、正式に女神と褥を共にする権利を得たという喜びを噛み締め、ついニヤニヤが止まらなくなる。

 掛布を広げ寝息をたてているツキヨを大切に包み込み、その上からアレックスはしがみついた。

「あー、『新婚さんいらっしゃるんるんっ!』に出てえな……憧れてるんだよな。椅子から転がり落ちるところとか」

 ポツリと呟いて目を閉じた。

 ほんのり太陽が昇り始めた頃だった。


***

「俺の新妻が可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて……辛い!ツライ!つらい!TSURAI!ゔぁーーーーーっ!!!」

 ツキヨは寝台横で発せられている獣じみた謎の奇声で目を覚ました。
 いや、覚まさせられたというべきかもしれない。
 昔、読んでいた小説にあった新婚夫婦が目を覚ますときに小鳥が囀るようなのを夢見ていたという訳ではないが、それとはだいぶ異なるということは確かだった。

 いつの間にか寝衣を着せられていたが、恐らく着せてくれた奇声の主にお礼を言う―――が、刺激をするのは控えようとぐっと口を閉じた。
 身体も軋むうえ、これ以上体力を使うような目に合うのも耐えられない……と、菫色の瞳がツキヨの瞳を捕らえた。

「俺の新妻!!!!俺の奥様!!!おはようううーーーーっっっ!!!!!!!」
 奇声の主は軽々と寝台へ飛び乗ったが、少しも軋むことはなかった。
「お、おおおおおおおはようございます……」
「ヴァーーーーーーッ!新妻が!奥様!人妻が!団地妻が!挨拶してきたーっ!!!未来永劫俺の新妻がーーっ!」
 寝台で大きな身体を捩り叫び、喜びの限り涙を流した。

「あああーっ!可愛ぃ!怖いくらい可愛い!!妻だ!妻だ!」
 あまりの勢いに圧倒されたのに慄きつつも掛布で前を隠しつつノロノロとツキヨは起き上がる。
「わぁぁぁぁっ!恥ずかしがっている人妻だっっ!!!!起き上がった人妻だっ!!突撃!隣の若奥様っ!!淫乱人妻花びらズンドコベロンチョ大回転!?!」
 人妻ブームが訪れたのか掛布ごとツキヨを抱き締めながら「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い…………」と耳元で呪詛の如く呟き始めた。
「あ、あの。落ち着いてください……その……だ、『旦那様』……?」
「だだだだだだだだぁっ!!!旦那様?!?!?旦那様!?!?!ゔぁーーーーーっ!!誰だ?!俺かっ?!俺なのか?!」
 落ち着かせようとツキヨが口にした言葉は、見事に大失敗だった。

 そのあと、訳のわからない奇声をあげながら鼻血を吹き出してアレックスは寝台に沈んだ。

「我が生涯に一編の悔いなし…うふふ」

 それは、世紀末覇者すらも認めてしまうくらいとてもいい笑顔だった。


 新婚一日目でこの騒ぎになるとは、さすがに想像をしていなかったツキヨは鼻血まみれの新婿の鼻を布で優しく拭く。
「まったく、相変わらず困った旦那様ですこと。ふふ」

 笑いながら初夜のせいで少し腫れた唇で額に口付けをした。
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