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闇-133
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「あのー…驚かせたいというエリさんやアレックス様のお気持ちはわかるのですが目隠しはどうかと…」
化粧が終わり、式のために用意した『月色のオリエ布』でできたドレスを着付けする段階でビクトリアの手によって目隠しをされた。
当然、目隠しをしようとしたときのビクトリアの顔は紅潮し呼吸が荒かった。
「ふふふ…目隠しもなかなか…あ、いえいえ。着付けましたらドレスの上に長いローブをおかけして、分からないようにしてから目隠しを外しますのでそれまでは我慢をお願いいたしますわ」
フロリナが申し訳なさそうな声で話しかけてきたが、呼吸はビクトリアと同様に荒い。
「分かりました。私も早く月色のドレスを見たいので我慢をします」
とほほ…というような小さな溜息をツキヨはついた。
サラサラとした肌触りの布がツキヨの肌を包み込む。目隠しで見えないがドレープや何枚かの布の重なったような装飾がある感覚がする。
それでもドレスの重みは感じることはほとんどなく、むしろツキヨは心地よい肌触りを楽しんでいた。
最後にビクトリアが確認をしてからフロリナがツキヨにバサリと長いローブをかけて襟元でリボンを結ぶとそっと目隠しが外された。
ローブは薄紫色の絹製で首から裾ギリギリまでの長さがあるため、ツキヨはドレスを見ることができなかった。
手は使えるようにローブにはだぼついた袖がついて、そこから手を出すことができるが袖の構造上中のドレスを覗き込むこともできなかった。
「うふふふ…着付けいたしましたが、さすがエリの渾身の作品ですわ。とてもお似合いです」
ビクトリアがうっとりとした表情をする。
「似合っているならとても嬉しいのですが、今の時点では私は見れませんから…ふふ、あとの楽しみにしておきます」
長いローブの袖を蝶のようにはためかしていると、フロリナが一度休憩を、と花模様の座面が可愛らしい長椅子へ手を取って躓かないようにそっと座らせる。
「いつもフロリナが紅茶を淹れていますが、今日は私がご用意いたしますわ」
いつの間にか用意されていたティーワゴンを侍女から受け取ると手際よく準備をして、金彩が美しいティーカップへ注ぐ。
ツキヨがお気に入りのエストシテ王国の花の香りがする紅茶や小さめの焼き菓子などがテーブルに置かれると、紅茶の香りを楽しむ。
「知らぬ間に緊張をしていたのかもしれませんね。好きな紅茶の香りをかいだら少し落ち着きました」
カップを手に取り程よい温かさの紅茶を一口飲む。既にツキヨの好みの味にされているが、フロリナの淹れる紅茶よりも少し渋みが弱い感じで更に緊張をほぐしてくれるようだった。
「お好きな焼き菓子も食べやすい大きさで作りましたので、お召し上がりください」
早朝から準備をしていたため、小腹が減っていたツキヨは小皿を取りデザートフォークで素朴な焼き菓子を突いてパクリと口にする。
昼前にアレックスと父のマルセルの待つ大広間へ向かいこの日のために用意された宝飾品、ベールをつけたら式が始まる。
式中や露台から国民へのお披露目のときは言葉を交わすことはないだろうが、継母のマリアンナと結婚した義姉妹のメリーアンとミリアンは身内として来ていることを考えると少し頭が痛くなるツキヨだった。
*
「フロリナからツキヨちゃんの準備は終わったと言霊があったぞ」
「おお!そうか!楽しみだなぁ…オリエ布を見たら驚くぞー」
レオからの報告にアレックスはニヤニヤする。
長い絹のような銀髪をいつもの通りきちんと後ろに撫で付けているアレックスは最高礼装である金モールのついた黒い軍服を着ている。
エストシテ王国の大舞踏会や戴冠式で着ていたものと変わらないが、袖や襟元にオリエ糸で新たに細かい刺繍が追加されてより華やかな印象になった。
腰に愛刀を佩き、厚手に織った月色のオリエ布で作られた大綬をつけゴドリバー帝国皇帝勲章をつけ、白いトラウザーズに黒革のロングブーツを履いているとまさに「一国の皇帝陛下」に相応しい姿であった。
レオも同様に前と同じ最高礼服だったが袖や軍服の裾に控えめながら刺繍を追加をして、黒いトラウザーズに茶色の革のロングブーツを履いていた。
そして、リゲル公爵家の当主に代々受け継がれている煌びやかな勲章、腰には螺鈿細工が施された鞘が美しい長剣を佩いていた。
「式なんてめんどーくせーしか思っていなかったけどよ、今はツキヨのドレス姿が楽しみになってきたぜ」
うきうきとした表情で式が始まるのを待ち構えているアレックスに「そんなガキみたいにはしゃいでトチるなよ。死ぬほど恥ずかしいぞ」とレオはからかう。
実際、謁見の間で暇つぶしにと年嵩の代官が招いた暗殺者が3組、あえて忍び込んでもらった暗殺者が2組、どこかの国の大人数の一行に紛れていた暗殺者が2組…いずれもアレックスとレオが何事もなかったように片付けたが謁見の間に侵入させてもらえたことを『死ぬ前最後の幸運な思い出』だったと…顔も姿も思い出せない本日の暗殺者たちにレオは思いをはせた。
「あー!あと少し!楽しみだぜ!!」
大広間の控えの間で伸びをして少し大声で話すアレックスだった。
*
「そろそろ大広間の控えの間に向かうのにちょうどよろしい頃かと…」
準備が整ったとレオから言霊を受け取ったビクトリアがツキヨに伝える。
「はい…ビクトリアさん、フロリナ…今日はありがとうございます」
ローブにすっぽりと包まれたツキヨだが、それでも美しい所作だと分かるほどの礼をする。
「まぁ、奥様にそのようにお褒めいただけるなんて…あぁぁぁぁぁぁぁっ!なんて勿体無いぃぃっ!!!くぅぅぅっっ!!」
塵一つない絨毯に這いつくばってビクトリアはまた鼻を押さえる。
「お、お母様!また鼻血が!私は耐えていますけど気持ちはわかりますっ!!」
フロリナはビクトリアに寄り添うと一見、美しい親子愛について描いたような絵にも見える…が。
「あなたは…いつもこんな気高くて美しいうえ愛らしい姿を毎日見ている…暮らしているから大丈夫なのね!よく耐えられるわね!?」
「耐えることもツキヨ様に仕える身であればなんのそのですわ!その匂いたつような芳しい香りがする日なんて…あぁぁぁっ!!」
会話は限りなく残念な親子愛だった。
指輪の警報が鳴らなかったことに安心をしつつツキヨは二人を励まし、慰めると「お優しい奥様ぁぁぁ!」「慰められた…慰められた…慰められた…」と二人で意味不明なことをブツブツと呟きながらツキヨのローブとドレスを躓かないようにフロリナが持ち捌き、化粧直しができるように化粧品を抱えたビクトリアと大広間の控えの間に向かった。
*
アレックスは、びしっとした姿で大広間の入口の扉の前に立つと、広間内に大勢がいる気配を感じていると年嵩の代官のよく通る声でアレックスが入場することが告げられるとギッと大きな黒い扉が侍従たちの手で開かれる。宰相であるレオが座っている招待客の間を先導をしながら歩き始めると少し遅れてアレックスが威風堂々と銀髪をなびかせながら緋毛氈の上を歩く。
二人のその姿を見て「おお…」などの声が上がる中で一部の女性たちが「お美しい…」と言う熱い吐息混じりの声が上がっているのを地獄耳で捉えた。
【ニヒヒ…俺はやっぱりモテモテだぜ】
【ツキヨちゃんに言ってやろ】
キリっとした顔でアホな言霊のやり取りをしているのは当然誰も知らない。
高い天井と同じ高さの色ガラスによる緻密な模様が明るい日差しを受けて輝き、壇上の床を彩り、同じく磨き上げられた窓からは春の花が咲き、青々とした芝生が眩しい庭がよく見える。
緋毛氈も大広間のさし色のように敷き詰められていてより一層お祝い気分を盛り上げていた。
招待客は絞りに絞ったがそれでも100組が大広間の椅子に座り、麗しい皇帝陛下と可憐な婚約者の婚姻の式に相応しい姿は大広間にも花が咲いているかのようにも思える。
壇上に立ち、招待客を見ると最前列にエストシテ王国のユージス国王とエレナ王妃、ツキヨの父親のマルセルが座っていた。
アレックスが見ていることに気がつくと三人は笑顔で見つめ返し、アレックスもよく見なければ分からない程度に笑う。
ツキヨは控えの間でローブをつけたまま、化粧直しをして宝飾品を身に着ける。
ベールは宝冠をアレックスからツキヨの頭上に授けられることをエリが寝ずに考えた結果、耳の後ろ辺りにピンでキッチリと留める意匠となった。
宝冠が主役なのでベールは花のような大き目の飾りは作らず、緻密で繊細なレースの縁取りがされているだけで長さもツキヨの身長より少し短めだった。
普通の白い絹の長手袋をつけ、改めてアレックスからの贈られた大切な指輪をはめる。
ツキヨは警報が鳴らなかったことに安心をした。
そして、ローブをつけたままだが準備が整ったツキヨをビクトリアとフロリナがどこか楽しそうに大広間の扉の前に案内をして立たせる。
式の予行練習ではローブのことなんてなかったため、急に不安になる。
「え、このローブは…」
「奥様、ご安心ください。そのままで問題ございません」
「まさにツキヨ様のためにあるものですわ。扉がそろそろ開かれますからお待ちください」
ビクトリアとフロリナはツキヨの斜め後ろにいつものお仕着せ姿で背筋を伸ばし立つと、扉の中から年嵩の代官の声が堂々とした声でツキヨの名前を呼ぶと侍従が扉を開いた。
ビクトリアとフロリナは美しい最敬礼でツキヨを送り出す。
戸惑うツキヨをよそにローブ姿のまま扉が開かれた。
化粧が終わり、式のために用意した『月色のオリエ布』でできたドレスを着付けする段階でビクトリアの手によって目隠しをされた。
当然、目隠しをしようとしたときのビクトリアの顔は紅潮し呼吸が荒かった。
「ふふふ…目隠しもなかなか…あ、いえいえ。着付けましたらドレスの上に長いローブをおかけして、分からないようにしてから目隠しを外しますのでそれまでは我慢をお願いいたしますわ」
フロリナが申し訳なさそうな声で話しかけてきたが、呼吸はビクトリアと同様に荒い。
「分かりました。私も早く月色のドレスを見たいので我慢をします」
とほほ…というような小さな溜息をツキヨはついた。
サラサラとした肌触りの布がツキヨの肌を包み込む。目隠しで見えないがドレープや何枚かの布の重なったような装飾がある感覚がする。
それでもドレスの重みは感じることはほとんどなく、むしろツキヨは心地よい肌触りを楽しんでいた。
最後にビクトリアが確認をしてからフロリナがツキヨにバサリと長いローブをかけて襟元でリボンを結ぶとそっと目隠しが外された。
ローブは薄紫色の絹製で首から裾ギリギリまでの長さがあるため、ツキヨはドレスを見ることができなかった。
手は使えるようにローブにはだぼついた袖がついて、そこから手を出すことができるが袖の構造上中のドレスを覗き込むこともできなかった。
「うふふふ…着付けいたしましたが、さすがエリの渾身の作品ですわ。とてもお似合いです」
ビクトリアがうっとりとした表情をする。
「似合っているならとても嬉しいのですが、今の時点では私は見れませんから…ふふ、あとの楽しみにしておきます」
長いローブの袖を蝶のようにはためかしていると、フロリナが一度休憩を、と花模様の座面が可愛らしい長椅子へ手を取って躓かないようにそっと座らせる。
「いつもフロリナが紅茶を淹れていますが、今日は私がご用意いたしますわ」
いつの間にか用意されていたティーワゴンを侍女から受け取ると手際よく準備をして、金彩が美しいティーカップへ注ぐ。
ツキヨがお気に入りのエストシテ王国の花の香りがする紅茶や小さめの焼き菓子などがテーブルに置かれると、紅茶の香りを楽しむ。
「知らぬ間に緊張をしていたのかもしれませんね。好きな紅茶の香りをかいだら少し落ち着きました」
カップを手に取り程よい温かさの紅茶を一口飲む。既にツキヨの好みの味にされているが、フロリナの淹れる紅茶よりも少し渋みが弱い感じで更に緊張をほぐしてくれるようだった。
「お好きな焼き菓子も食べやすい大きさで作りましたので、お召し上がりください」
早朝から準備をしていたため、小腹が減っていたツキヨは小皿を取りデザートフォークで素朴な焼き菓子を突いてパクリと口にする。
昼前にアレックスと父のマルセルの待つ大広間へ向かいこの日のために用意された宝飾品、ベールをつけたら式が始まる。
式中や露台から国民へのお披露目のときは言葉を交わすことはないだろうが、継母のマリアンナと結婚した義姉妹のメリーアンとミリアンは身内として来ていることを考えると少し頭が痛くなるツキヨだった。
*
「フロリナからツキヨちゃんの準備は終わったと言霊があったぞ」
「おお!そうか!楽しみだなぁ…オリエ布を見たら驚くぞー」
レオからの報告にアレックスはニヤニヤする。
長い絹のような銀髪をいつもの通りきちんと後ろに撫で付けているアレックスは最高礼装である金モールのついた黒い軍服を着ている。
エストシテ王国の大舞踏会や戴冠式で着ていたものと変わらないが、袖や襟元にオリエ糸で新たに細かい刺繍が追加されてより華やかな印象になった。
腰に愛刀を佩き、厚手に織った月色のオリエ布で作られた大綬をつけゴドリバー帝国皇帝勲章をつけ、白いトラウザーズに黒革のロングブーツを履いているとまさに「一国の皇帝陛下」に相応しい姿であった。
レオも同様に前と同じ最高礼服だったが袖や軍服の裾に控えめながら刺繍を追加をして、黒いトラウザーズに茶色の革のロングブーツを履いていた。
そして、リゲル公爵家の当主に代々受け継がれている煌びやかな勲章、腰には螺鈿細工が施された鞘が美しい長剣を佩いていた。
「式なんてめんどーくせーしか思っていなかったけどよ、今はツキヨのドレス姿が楽しみになってきたぜ」
うきうきとした表情で式が始まるのを待ち構えているアレックスに「そんなガキみたいにはしゃいでトチるなよ。死ぬほど恥ずかしいぞ」とレオはからかう。
実際、謁見の間で暇つぶしにと年嵩の代官が招いた暗殺者が3組、あえて忍び込んでもらった暗殺者が2組、どこかの国の大人数の一行に紛れていた暗殺者が2組…いずれもアレックスとレオが何事もなかったように片付けたが謁見の間に侵入させてもらえたことを『死ぬ前最後の幸運な思い出』だったと…顔も姿も思い出せない本日の暗殺者たちにレオは思いをはせた。
「あー!あと少し!楽しみだぜ!!」
大広間の控えの間で伸びをして少し大声で話すアレックスだった。
*
「そろそろ大広間の控えの間に向かうのにちょうどよろしい頃かと…」
準備が整ったとレオから言霊を受け取ったビクトリアがツキヨに伝える。
「はい…ビクトリアさん、フロリナ…今日はありがとうございます」
ローブにすっぽりと包まれたツキヨだが、それでも美しい所作だと分かるほどの礼をする。
「まぁ、奥様にそのようにお褒めいただけるなんて…あぁぁぁぁぁぁぁっ!なんて勿体無いぃぃっ!!!くぅぅぅっっ!!」
塵一つない絨毯に這いつくばってビクトリアはまた鼻を押さえる。
「お、お母様!また鼻血が!私は耐えていますけど気持ちはわかりますっ!!」
フロリナはビクトリアに寄り添うと一見、美しい親子愛について描いたような絵にも見える…が。
「あなたは…いつもこんな気高くて美しいうえ愛らしい姿を毎日見ている…暮らしているから大丈夫なのね!よく耐えられるわね!?」
「耐えることもツキヨ様に仕える身であればなんのそのですわ!その匂いたつような芳しい香りがする日なんて…あぁぁぁっ!!」
会話は限りなく残念な親子愛だった。
指輪の警報が鳴らなかったことに安心をしつつツキヨは二人を励まし、慰めると「お優しい奥様ぁぁぁ!」「慰められた…慰められた…慰められた…」と二人で意味不明なことをブツブツと呟きながらツキヨのローブとドレスを躓かないようにフロリナが持ち捌き、化粧直しができるように化粧品を抱えたビクトリアと大広間の控えの間に向かった。
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アレックスは、びしっとした姿で大広間の入口の扉の前に立つと、広間内に大勢がいる気配を感じていると年嵩の代官のよく通る声でアレックスが入場することが告げられるとギッと大きな黒い扉が侍従たちの手で開かれる。宰相であるレオが座っている招待客の間を先導をしながら歩き始めると少し遅れてアレックスが威風堂々と銀髪をなびかせながら緋毛氈の上を歩く。
二人のその姿を見て「おお…」などの声が上がる中で一部の女性たちが「お美しい…」と言う熱い吐息混じりの声が上がっているのを地獄耳で捉えた。
【ニヒヒ…俺はやっぱりモテモテだぜ】
【ツキヨちゃんに言ってやろ】
キリっとした顔でアホな言霊のやり取りをしているのは当然誰も知らない。
高い天井と同じ高さの色ガラスによる緻密な模様が明るい日差しを受けて輝き、壇上の床を彩り、同じく磨き上げられた窓からは春の花が咲き、青々とした芝生が眩しい庭がよく見える。
緋毛氈も大広間のさし色のように敷き詰められていてより一層お祝い気分を盛り上げていた。
招待客は絞りに絞ったがそれでも100組が大広間の椅子に座り、麗しい皇帝陛下と可憐な婚約者の婚姻の式に相応しい姿は大広間にも花が咲いているかのようにも思える。
壇上に立ち、招待客を見ると最前列にエストシテ王国のユージス国王とエレナ王妃、ツキヨの父親のマルセルが座っていた。
アレックスが見ていることに気がつくと三人は笑顔で見つめ返し、アレックスもよく見なければ分からない程度に笑う。
ツキヨは控えの間でローブをつけたまま、化粧直しをして宝飾品を身に着ける。
ベールは宝冠をアレックスからツキヨの頭上に授けられることをエリが寝ずに考えた結果、耳の後ろ辺りにピンでキッチリと留める意匠となった。
宝冠が主役なのでベールは花のような大き目の飾りは作らず、緻密で繊細なレースの縁取りがされているだけで長さもツキヨの身長より少し短めだった。
普通の白い絹の長手袋をつけ、改めてアレックスからの贈られた大切な指輪をはめる。
ツキヨは警報が鳴らなかったことに安心をした。
そして、ローブをつけたままだが準備が整ったツキヨをビクトリアとフロリナがどこか楽しそうに大広間の扉の前に案内をして立たせる。
式の予行練習ではローブのことなんてなかったため、急に不安になる。
「え、このローブは…」
「奥様、ご安心ください。そのままで問題ございません」
「まさにツキヨ様のためにあるものですわ。扉がそろそろ開かれますからお待ちください」
ビクトリアとフロリナはツキヨの斜め後ろにいつものお仕着せ姿で背筋を伸ばし立つと、扉の中から年嵩の代官の声が堂々とした声でツキヨの名前を呼ぶと侍従が扉を開いた。
ビクトリアとフロリナは美しい最敬礼でツキヨを送り出す。
戸惑うツキヨをよそにローブ姿のまま扉が開かれた。
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