闇より深い暗い闇

伊皿子 魚籃

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闇-116

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 エストシテ王国の戴冠式も無事に終わり、アレックスとツキヨ、レオはゴドリバー帝国の屋敷へ戻った。

 王国の庭木と同じようにたった数日留守にしただけで応接室から見える庭の木々の葉はより赤く染まり、春や夏とも違う美しさで目を楽しませてくれる。
 短い時間で買ったエストシテ王国の紅茶や有名菓子店の焼き菓子をフロリナに手渡すと赤く形のいい唇がにっこりとさせて、ツキヨに礼を述べる。
 皆で分けるようにとツキヨはかなりの量をいつも買ってくるので厨房の料理人や侍女に分けつつフロリナはこっそりと紅茶と菓子の可愛らしい絵が描かれた空缶を自室の棚に宝物のように飾り置いた。ツキヨからもらった小さな髪飾りやリボン、菓子の瓶や缶。小さな花は押し花にしている…恐らくアレックスのツキヨコレクションより豊富だろうと自負をしている。

【ふふふふ…お館様はほぼ手に入れられない女性特有のお土産や贈答品の『髪飾り』がありますからね…】

 フロリナはニィと笑い自室を出た。


 応接室で王国からお土産の紅茶をレオに淹れてもらい、アレックスと一緒にお菓子を摘む。
「そういえば、レオさん…このお菓子の空缶ってありませんか?今の季節限定の絵柄で可愛いものだったので小物入れに使おうかと思っていて…」
 紅葉の木々とうさぎ等の小動物が描かれているのをツキヨは気に入っていた…がレオは顔色を変えず「あぁ、からあとで確認しておきます」と答える。
「じゃあ、お願いしますね。うさぎとリスが可愛かったので」

【あれれれ~?犯人は…】
 アレックスとレオは同じことがよぎった。


 紅茶を飲み終わる頃、フロリナが缶を大切そうにツキヨに渡した。
【ツキヨ様と同じような趣味であることを誇りに思いますわ…ふふ】
 女にしか分かりにくい好みを逆に自慢するように言霊が伝わってきた。
 男二人は跪きたくなるほどの悔しさに苛まれた。


 一息ついたのを見計らい、フロリナからアレックスに留守中に城や屋敷に届いた手紙などを渡す。
 新たな友好国からの礼状や舞踏会の招待状、いつものスコーンのお店からの手紙DMがごちゃごちゃとある。

 『紅葉色の新作のスコーンと葡萄のタルト発売のお知らせ』だけを手元に残し、礼状類はレオに丁重にお断りの返信を任せた。
 以前から帝国とそれ以外の国で手紙のやり取りが手軽にできるようにと取り決められてきたが、それが他国にも拡大して本格的に動き始めたようだった。

「それから、エリ様よりドレスの打ち合わせを早々に行いたいと言霊が届いています」
「あぁ、それは近くツキヨと一緒に行くから…」
「え?もう、ドレスのことをですか?!」
 隣に座る偉丈夫の顔をツキヨは見上げる。
「ぁたりめぇだろう。紅葉が終わって、雪が降ったらあっという間に宵越祭クリスマス?になってすぐに闇越祭大晦日?で、新明祭正月?で、春待ち花が咲いたら春だぞ!式だぞ!結婚だぞ!俺の可愛い可愛いお嫁さんになるんだぞ!!!!!!」
 菫色の瞳でクワッとツキヨを見つめる。

「あ、はい。すいません」

 何故か謝ったツキヨだったが、父マルセルのような大人になりたいと強く思った。


***

 庭のオジーからもらった球根は蕾のまま秋が過ぎ、この年初めて暖炉に火を着けた日にエストシテ王国のエレナ王妃とカトレア領地のマルセルから手紙と荷物が届いた。
 
 ツキヨはアレックスの執務室にはたびたび訪れているが、今は重厚な執務椅子にドンと座るアレックスの膝の上に座らされていた。
 膝の上にツキヨを横座りにさせると通常の三倍仕事が捗ることがレオの研究によって明らかになった…という訳ではないが、アレックスが「休憩」と称してツキヨとイチャイチャするために脱走をして、ならばいっそのことツキヨも用がない限り執務室内の長椅子で寛いだり、本を読むようにした…が、最終的に長椅子から膝の上が定位置となってしまったのだ。
 晩秋から年末にかけて忙しくなる執務からアレックスがトンズラしないための対策だったが、この結果にレオは深く反省した。


「俺はツキヨがお膝に乗って可愛いから問題はないし、寒いからツキヨが風邪をひかねぇか心配だしな!」
 小柄なツキヨを抱き締めながら髪やこめかみに口付けをする。
「あの…きちんと仕事を…」
「おう、ちゃんとしてるぜ!」
 書類に署名をしながら腹部に回した腕で正々堂々とツキヨをぎゅっと抱き、引き寄せた。
 厚い胸板がツキヨの頭部に当たると、この巨躯の要である心臓の鼓動がツキヨに伝わる…アレックスは鼻歌交じりに他の書類に手を伸ばす…洗いざらしの私服のシャツの香りと一緒に使っている同じ石鹸の香りが動くと同時にふわりと香ると、ほんの一瞬だけツキヨの鼓動が跳ね上がる。


 急に鼻歌が止まり、アレックスがツキヨの顔を覗き込む。
「ん?今、ドッキリしたな?」
 香りに動揺したことがひどく下品な気がしてツキヨは赤い顔を俯いて隠した。
 菫色の瞳を持つ獰猛な獣が黒い瞳を逃すことは有り得ない…ペンを置いて、右手で俯いているツキヨの顎を持ち上げると黒い瞳を捉えたまま獣は薄く形のいい唇を赤い顔をしたツキヨの桃色の唇を塞いだ。
「ぅん…」
 ちゅぷりと水音がツキヨの耳に響く。
 『執務室』というアレックスの仕事場であることを思い出し、ツキヨはアレックスから顔を背けようとするが右手で押さえられて逃れられない。
「俺から離れるな…ん…」
「ん…ぁ」
 菫色の瞳の獣は厚い舌で歯列をなぞり、唾液の全てを啜る。
「…ゃん…執…務し…だか…ら」
「俺の部屋だ」
 じゅぷ…と小さな舌を吸い、先端を優しくチロチロと獣から子犬のようになって舐める。

 しかし、子犬のふりをしながら左手でそろそろと新しい冬用のドレスの少し厚めの生地を手繰り寄せて薄い長靴下を履いた太股を露わにする。
「ん…ぁ…!」
 僅かに反抗をしたツキヨは手で隠そうとするが、アレックスは左手でツキヨの細い両手首を豊かな胸元でまとめ掴む。
「白い太股が隠れたぞ…」
 アレックスが不埒な苦情を申し立てるが、審理などは特に行われず右手で再度ドレスの裾を手繰り寄せて先程よりも上のほうにある秘所を守る頼りない白いレースの砦に辿り着く。
 甘い果実みたいな匂いに引き寄せられるように、そっと人差し指で秘所の縦筋を何度か往復する。
「ん…く…」
 何往復かすると指先に柔らかい肉襞に不似合いなものが引っかかるのを感じると、レースでざらついた生地を押し付けるように擦り上げる。
「ひぁっ!ん…ふっ…はぁんっ!!」
 繊細で美しい紋様を描いている生地であるはずのものが凶暴な快楽を与える凶器に変わり、ツキヨの呼吸が荒くなり更に膨らみが硬さを増す。
「あっ…ぁあっ…イ…」
 蕩けそうな黒い瞳が快楽に溺れかけそうになった瞬間、膨らみの刺激が急に止まる。
「ん…んぅ…」
 甘い声が急速に冷える…「どうした?」とニヤリと笑う。
「あ、んんっ…そんな…なんでも…」カッと顔に熱が集まり口ごもるが、少し熱から冷めた豆粒に再びぞろり…とレースを擦りつける。

「あぁぁっ!!!!」
「はは…洪水みたいになっているのか?」
 擦るたびにビチョビチョと止め処なく溢れ出ると、冷えた熱がツキヨの下腹部に再び集中し始め、やがてその抑えられない快楽に素直に従うことにする…。

「ぁああん!!ん…ィ…」

 また、動きがピタリと止まり下腹部に与えられた熱が急激に冷やされる。
「…ん…んん…ぅ…」
 ツキヨの体は熱に浮かされるが口にすることができないが、今度はソロソロと優しい刺激が与えられる。
「ぅあぁぁんっ!あぁっ…ぁ…ぁああ!」
 もどかしいのかツキヨはアレックスの菫色の瞳に何かを懇願する。
「何が欲しい?」
 優しい刺激がツキヨを狂わすが、僅かに残る羞恥が戒める。
「ツキヨの欲しいものがわからねぇなぁ…」とくつくつと笑いながらこの世で一番優しい優しい刺激をこの世で一番愛おしい存在に与える。


 蕩けそうな黒い瞳が愛おしい。

 劣情の塊の菫色の瞳が憎らしい。



「あぁ…ァ…アレックスぅ…様ぁ…ぁああっ!!!くりゃさいぃ!あ…アレックス…さ…のくらさひぃ…!!!!あぁぁぁ!!!!」
「おう、愛おしい女の願いを叶えることが僕である俺の役目と存在だ!」

 アレックスはツキヨを苛めていたレースの下着を剥ぎ取ると、座ったままトラウザーズから寛げた凶悪な肉塊を最奥の肉門まで一気に突き入れた。


「ぁ…ぅぐ…!!!!!あっ…ああああっんんんっ!!!!」

 叫び声なのか甘い声なのか…執務室にツキヨの声が響き渡った。
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