闇より深い暗い闇

伊皿子 魚籃

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闇-112

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 いつもとは違う肌触り、室内の明るさを感じツキヨは目を覚ました。
 隣には相変わらず筋肉枕―――腕枕をしてくれているアレックスがグースカと眠っているがツキヨの目には白い布地の円形状の屋根や見たことの無い毛織物の毛布や家具類が置かれた不思議な室内が見えた。
 …昨晩は、戴冠式の行われたエストシテ城からアレックスの影移動で無理矢理連れてこられたどこかの砂漠のオアシスで獣のように交り合った…ことを思い出しカッと顔が赤くなった。

 当然のことながら、隣の大工でぇくのおっさんは我関せずと眠っている。

 アレックスは上半身裸ではあるが、ツキヨはいつの間にか体が清められて見たことも着たことも無いどこかの民族衣装のような白い麻でできた少し厚手のざっくりとしたワンピース状の寝衣を着ていた。

【また、どこかへ移動したのかしら…】

 ツキヨはいつもならアレックスが抱き締めながら寝ていて、朝は動くことがままならないのだが今は筋肉枕をして、左腕は反対側にドーンと広げられているのとこれ幸いとそっと置き上がる…何故か体のあちこちが軋むように痛いが、夜明けが近いのか白い布の屋根はうっすらと夜明け前の濃い目の紫色になっており、小さな棚の上のランプの炎がチラチラと照らす。
 寝台の木枠は棘一つなく磨かれていて、床には毛織の絨毯が隅から隅まで敷き詰められていて、床からの冷気は感じることはない。
 その毛織の絨毯に降りると何故か体のあちこちが軋むように痛いが、いつもの高級な絨毯とは違う温かみと心尽くしを感じられる…例えばブラウンたちが作る家具のような優しさがじわりと身に沁みてくるようだった。
 砂漠の夜は寒いと何かの本でツキヨは読んだ覚えがあるが、室内の真ん中には小さなストーブに太い薪がほとんど燃え尽きて熾火となって静かに最後の使命を終えようとしていたがその火が砂漠の寒さからツキヨたちを守ってくれていたのだと思うと、そばにあった少し細めの薪を持ち、火かき棒で扉を開けてその心優しい炎を受け継ぐように薪を放り込むと何故か体のあちこちが軋むように痛いが。
 
 子供の頃、「宵越祭」という冬の祭があると、カトレア家に代々伝わる木製の飾りを庭師のオジーたちと一緒に庭木に飾りランプを置き柔らかい明かりが灯される夜に庭を領民に開放をしていた。
 
 いつからかは不明だが領民は庭を見にくると、お礼と謂わんばかりに野菜や果物の甘煮や干菓子や木製の玩具…などをマルセルたちに贈り帰っていくようになり、毎年「不要ですよ」と言っても「これは奥様へ」「ツキヨお嬢様にはお世話になっているから」「スホールさんへ☆」というをされるばかりだった。
 そこで、カトレア家も大型の薪のオーブンをフル回転して総出でクッキーを大量に焼き上げて庭に来た領民たちへささやかな返礼として手渡していた。
 料理長のダンやルルーが火かき棒を使い火力を調整しては薪を追加したりしていたのをツキヨもよく見ていて忙しいと自らが火力の調整をしていた。


 ツキヨは火かき棒で小さなストーブの薪の位置を調整しながら、毎年ワイワイと大騒ぎをしながら両親や使用人たちが「宵越祭」を楽しんでいたことを思い出した。
 
 あの日には帰れないけど、今は新しい「ともしび」がツキヨの心を照らしていた。


 スゥ…とツキヨの背後から入口の厚手の布が風で揺れた。暖かい室内の空気を攪拌するように適度に混ざり合う。
 火かき棒を置いて、入口の布を止めている紐を解いて顔を出すとそこは昨夜のオアシスの湖畔であることが分かるが、どこからこのテントを持ってきたのかツキヨは頭を傾げる。
 外は砂の地平線辺りから美しいグラデーションを描きながら夜明けを迎えようとしていて、ツキヨの霞む記憶の中に残る、満天の星空は既にお役御免で目立つ一等星以外は眠りについてしまった。

 砂が入るからかテント内にしまわれていた革製のサンダルのようなものを履く。つま先部分にはベッドカバーと同じような美しい花模様が刺繍されている。その横の大きいサイズはアレックス用だろう。

 外へ出ると、厚手の寝衣とはいえ砂漠の夜明けの冷たい風には敵わない。
 遠くに見える砂丘には風が戯れに作った風紋が少しずつ明るくなる陽に映し出されるが風が吹くたびに紋様は二度と同じものを描き出すことはなかった。

 テントを見やると砂漠の砂色に映える白い厚手の布地が何枚も重ねられているのかどっしりとした作りで、ちょっとやそっとの風で吹き飛ぶようなものではない。
 厚手の布が張られた入口には「アレックスさんち」と書いてある。
 
 急にバサリと厚手の布が内側からめくられると上半身裸で下穿き一枚つまりパンイチのアレックスが「よお、もう起きたのか?おはよう。早起きさんだなぁ…」と寝癖のついた銀髪を手櫛で直しながら出てきた。
 砂漠には不似合いな絹のような銀髪と菫色の瞳と美術館に飾られていそうなアレックスの肉体が徐々に明るくなる陽にあたると、鎧のような筋肉の陰影もはっきりする。
「お、おはようございます…何も着ないと風邪を引きますよ」
 筋肉の陰影にどぎまぎしながらツキヨはアレックスパンイチのおっさんに言うが本人はお構いなしにそのままツキヨを軽々と抱き上げて、口付ける。
「ツキヨが看病してくれるなら風邪でもなんでも大歓迎だ」
 菫色の瞳でツキヨの黒い瞳を見つめる。

「あの…いっそのこと風邪を引いてくれれば…いいえ、なんでも…」
 昨夜のとんでもないことになった痴態を思い出してアレックスをねめつける。
「んー?どうした?ご機嫌斜めさんか?」
 ニヤと笑う。

 パンイチで。

「また、してやろうか?」
 バッとツキヨの顔が真っ赤になる。
「も、もう!あんなのやめてください!!!外もだめと言ったのに!!」
 縦抱きにされている状態でポカポカと叩く。
「なんのことかは、俺は知らねぇなぁ…あーあ、いい肩叩きだ。さて、冷えたから風呂でも入るか!」
 何故ここに風呂があるのかなど聞きたいことはあるが、また、いろいろな危機を感じたツキヨは逃げようとするが当然、筋肉の拘束から逃げられずそのままパンイチのアレックスと風呂へと向かった。


【絶対、いやぁぁぁぁぁ】

 ツキヨは脱衣場で寝衣をスポンと脱がされて、昨夜にはなかった木製の浴槽へ放り込まれ、アレックスもザブンと入る。
 アレックスを背もたれにして少し冷えた体に温かい湯が身を包む…危機からは逃れてはいないが、湯には罪はない…ツキヨはテントや風呂のことについて聞いたりした。
「風呂に入って、軽くメシを食ってから城に戻るから問題はねぇし。あとはレオの小言を聞き流せばいいだけだ」
「レオさん苦労ばかりして…」
 よよよ…とツキヨは目頭を押さえる。
「まぁ、いいじゃねぇか。たまには自然に囲まれたところでのんびりして楽しいし…このテントとかは全部このままにして別荘代わりにしようと思っているからな。俺とツキヨだけの秘密基地だ。
レオたちが知らないところだから影移動で追っかけてくることもないし、結界もオアシス以外の部分にかけて不可視の状態にすれば誰かに入られることもねぇ。砂漠を横断する商隊たちには必要不可欠だからな」

 衝立からオアシスの湖面が朝日に照らされ始めてキラキラと輝くのが見える。
 庭の美しいアレックスの屋敷やエストシテ城にいることが多く、自然の美しさに直接触れたり見たりする機会がカトレア領地にいるときに比べて減ったツキヨはその景色に息を飲んだ。
 アレックスもテントや設備の自慢話を子供のように話し、程よい湯に体を委ねていた…二人のゆったりとした時間が流れていた…



「あぁ、そういえば。昨日は結界で汚れないとはいえ、砂地の草むらの上だったよな…」
「ん?!」
「よぉし、掃除だ!掃除だ!健康な朝は掃除から始まる!!」
「えっ!!!!きゃぁ!!!!」
 謎のスローガンを掲げ、背もたれ代わりのアレックスは抱かかえていたツキヨのぷるんとした白い丘の上にある2つの桃色の蕾を突然、くにり…と摘み捻った。
 油断をしていたツキヨは身を捩ることもできない筋肉の檻の中の急な刺激に吐息混じりに声を出すしかなかった。
 両蕾は平等に人差し指と親指に根元から摘まれてくにくにと緩急をつけた刺激を与えられ、気がつくと限界までぷっくりと膨れ上がり、桃色から少しずつさくらんぼのような色に変わりつつあるが、同時に声を抑えていたツキヨも我慢ができずに艶めかしい声を漏らす。
「だめぇ!んあぁ…ぁ!はぁ…ああん!」
 そのまま、くにくにとしながらアレックスは白いうなじに舌をぞろりと這わすと舌先に温泉とツキヨの汗の味が広がり、甘噛みをするとツキヨもビクビクと震える。
「ん…ひぁぁ」
「汗も美味い…ツキヨが汗をかいたら俺が全部舐め取ってやる」
 左手だけを熟れた蕾を刺激する役目にして、右手は不埒な手つきで黒い下生えの奥へ入り込む。ツキヨがきゅっと股を閉じたが、そんな抵抗はないようなもので右手の中指でぷにゅりとした花弁の間に入れ人差し指と薬指で花弁を挟み込む。

「ここはいつも柔らかくて堪らないな…大事に大事に掃除しないとなぁ…」
 中指で蜜壷の入口ぎりぎりを擦ると、明らかに湯とは違う粘性のある水分が湧き出る。
「あ…ああっ!」
「とろとろしているのが出てきた…これからは毎日ツキヨは掃除しないと大変だな…」
 ぐぷり…と蜜壷へ中指を入れて肉壁の上部のざらついた部分を念入りに擦ると「あっ…あっ…ぁあんっ!」とツキヨの声色が甲高くなる。
 それにあわせて、アレックスは一番掃除をすべき花芯を優しく守る包皮を親指でくいっと持ち上げて敏感な花芯を直接湯に晒す。
 湯は決して熱くはないが、アレックスが丁寧に育て上げた花芯には熱は刺激となりツキヨの体を甘く蝕む。

「ひぃいんっ!!ぁあっ…!!!!」

 花芯は所有者の言うことは聞かないように育て上げられていた。
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