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闇-102
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アレックスはスコーンの材料や味も遺伝子レベルで解析、そして自分が食べた15個のスコーンの中で一番ツキヨが触れたものを匂い、気配、想像、妄想から判断をした結果、少し端が焦げていた5個目と判断された。
5個目の解析結果は今後ツキヨがもし料理を作った際の基準値、焦げた味と相まって素晴らしい味のハーモニーを奏でていた、と帝国の公文書を作成して公文書館に永久保存をすることに決めた。
【これによって、国家として料理の文化がより成熟することを俺は皇帝として成し遂げたんだ…】
菫色の瞳は帝国のより良い将来を見据えていた。
***
「少し、慌ただしいけどマルセルさん、これから織機を作っているところへ行きませんか?」
以前、飲んだ時に好評だったハービービル国産の緑色のお茶をレオはティーカップに注ぎ入れた。どっしりした食事をしたあとにお腹が重く感じたり、脂っぽい食事で胸焼け気味になったときにこの緑茶を飲むと不思議とスッキリとする。
「それはいいですね!ぜひ、完成して動いている織機を見てみたいですよ!」
不思議な苦みのある緑茶をマルセルは一口飲んだ。
「今も少しずつ織っていて生産力も向上しているそうです」
「布地の生産もうまく軌道に乗って帝国産のオリエ布として流通をするのを僕も楽しみにしています。僕も新しい糸もいくらか持ってきましたので在庫として渡しておきたいです」
「それは助かります。そろそろ糸が減ってきたと連絡があったので間に合ってよかったです」
ホッと胸をなでおろすレオだった。
「じゃあ、出かけるか。荷物もあるから俺とツキヨとマルセルと三人で馬車で行こう」
馬車と言葉を聞いたフロリナは厨房の裏口から出て、御者へ支度をするように伝えに出た。
ツキヨは夕方近いので薄い長袖のコートを羽織って玄関へ向かうとそこには既に支度をしたアレックスとマルセルが御者と話をして待っていた。
「そうだな、少し風があるから上に着たほうがいいな」
アレックスは少し襟が曲がっているのに気がついてツキヨのコートの襟元をチョイチョイと直した。
「あ、ありがとうございます…」
「おっちょこちょいだな!」
「子供の時からツキヨは変わらないね!」
ハハとマルセルが笑うと「詳しく聞かせてもらおうじゃないか…」とアレックスは意外とがっしりしているマルセルの肩をガシッと掴んだ。
「お父様ーー!!いーやーあーぁぁぁぁぁ!!!」
ツキヨは心から叫んだ…が、この義親子?が思っている以上に気が合うということを昨日から身を以て感じていた。
「ははは、そんな恥ずかしがらなくてもいいじゃないか」
「ツキヨの歴史を知るうえで重要な情報を手に入れるだけだ。案ずることはないぞ」
キメ顔で言われても説得力は皆無だがツキヨは諦めた。
「馬車も荷物を積み終わりましたわ」
フロリナが白目になっているツキヨの顔をうふふ…と見つめながら声をかけた。
御者が馬車の扉を開けるとアレックスはツキヨをエスコートして乗せると次にマルセルが乗り、最後にアレックスが乗り込んだ。
「いってきますー」
窓から顔を出してフロリナに声をかけた…少し冷たい風が何故かいつもよりツキヨの目に沁みた。
***
昨日からマルセルの持ってきた野菜を食べて機嫌がいい4頭の馬たちは軽やかに走り続けた。
ほどなくして、整えられた道から木々に囲まれて落ち葉の多い道に変わってくるとやがてブラウンたちドワーフ一族が多く住む村の入り口付近に着いた。
それ以上は道が細く馬車では行けないため三人は御者に礼を言って、アレックスが荷物を抱えるとカサカサと落ち葉を踏みしめながらブラウンの工房へ歩き始めた。
「アレックスさん、少し持ちますよ!」
「んー?別に大した量じゃねぇし、重くもねぇから気にすんなよ」
小さな子供が入れるくらいの木箱3箱を抱えてアレックスは鼻歌交じりに歩いていた。
そして、丸太小屋のブラウンの工房が見えてきた。
荷物を置いて、前に自らが破壊して直した扉を叩くと、扉が勢いよく開いた途端「誰だ!うるせぇんだよ!今、忙しいって言ってんだろ!!!!」とブラウンが怒鳴り散らした。
「よお!ブラウン、久し振りだな!」
「なんだ、あんたか。相変わらず能天気そうな顔をしているけど、久し振りだな!」
ワハハ!と笑いながら2人は肩を叩き合い「ブラウンも毟られた髭が戻ってよかったなー!!」とお互いに再会を喜んだ。
「ツキヨちゃんも久し振りだな。…今日は知り合いも一緒かい?」
「お久し振りです、ブラウンさん。あの、私の父です」
「はじめまして、織機の件ではお世話になっていたのにご挨拶が遅れて申し訳ありません。僕はツキヨの父でマルセルといいます」
すっと頭を下げる動作が美しいマルセルの挨拶だった。
「おー!なんだ、親父さんなのか!?いやぁ、はじめまして。俺はここの木工工房のブラウンだ。よろしくな!」
マルセルはがっしりとした職人の手を掴んで握手をした。
「こんな玄関先で話すもんじゃねぇし、散らかってるけど中に入んな」
工房内は相変わらず木材や道具が所狭しと置かれて、切った太い丸太を立てて椅子にして座った。
「ブラウンさん、イエロおばあ様は…?」
「そのうち、今の騒ぎを聞きつけて来るだ…」「まーた、ドタドタやってうるさいよ!だから嫁ももらえないって何回言ってると思うんだい?!!」と裏口からイエロが入ってきた。
「そっちこそ、うるせえじゃ…「何か言ったかい?!…って、あ!ツキヨちゃんじゃないかい!!おや、筋肉だるまも一緒かい!久し振りさね!」とイエロはツキヨを抱き締める。
「相変わらず元気そうだな!」
「おばあ様、お久し振りです!今日はブラウンさんたちに会いたいと父も一緒なんです」
「ツキヨちゃんのお父さんかい?!こんな小汚いところに申し訳ないね!あたしはイエロって言ってこのブラウンの祖母でね、どうぞよろしく」
ニコニコとイエロはマルセルに挨拶をすると「実は…イエロさんたちが今、織っている布の糸を僕の領地で生産をしていて…一度お会いしたくて来たんです!」とマルセルは握手をしてから木箱を開けて糸をしまっている柔らかい布地の袋を取り出した。
「まーぁ!もう、糸が少なくなってきたところでさ、これでまた織るのが捗るよ!糸もどんどん質が良くなってきて…あんたもいい腕してるさね!」
バンバンとイエロはマルセルの肩を叩いた。
「いたた…たくさん持ってきたので引き続き、お願いしますね!」
「任せておくれよ!どんどん織らせてもらうから、安心しておくれよ」
糸と布談議に盛り上がっているところ、片隅の台所でブラウンはお茶を静かに淹れていた。
熱い紅茶が注がれたてんでばらばらの形のカップが行き渡る。
「今はあたし以外に2人が織り始めていて…まだ技術的にはいまいちだけどだいぶ身についてきているさね。ドレスに使うようなものは無理でも布小物に使うくらいのものは織れているから、今度はそういったものを作る人が必要なのさ」
「織機は俺が作っているけど、簡単に作れるもんじゃねぇから、織るのを希望している人はしばらくそういうもんを作る作業をしてもらう予定だ」
ずっ…とブラウンが紅茶をすする。
「布小物…ですか。どういったものですか?手巾とか…?」
不思議そうにマルセルはイエロの顔を見た。
「そうさね。それはもちろんだけど小物入れやぬいぐるみなんかを考えていてね。ほら、草の繊維だから赤ん坊が口にしても安心さね。人気が出ると思っているのさ」
「確かに、赤ちゃんや子供向けのものは人気が出そうですね。刺繍もしても可愛いですし」
ツキヨはオリエ布で作られたウサギやネコのぬいぐるみを端切れでもいいので自分で作ってみようと密かに計画を立てた。
「親父さん、うちのばあさんの織機を見てみるかい?」
「よかったらその場で織ってみるから見て、なにか指摘するところがあったらツキヨちゃんと教えてほしいさね」
それは、ぜひ…ということで裏に作ったという作業小屋へ向かう。
「あまりあちこちに知られないように他のみんなもここで作業をすることに決めていてよ、ばあさん以外に村の旦那に先立たれた母子家庭になった母親と親子で魔気が弱くて貧しい母娘の娘の2人働いている」
ガチリ…と厳重な鍵をブラウンが開けて中に入ると、小屋というには立派な室内で白い布に覆われた織機が3台置かれていた。
「こっちが、あたしの使っている織機さ。もう、だいぶ使い慣れていい相棒さね」
白い布をバサリとイエロが取り、足元の経糸の上下のカエシの調整をして座板に座ると、杼を手に取ってザァッと緯糸の間に通してから筬で手前に優しくとんとんとする…のをパタンパタンと何度か繰り返す。
「あぁ…この音。懐かしいですね。妻のオリエも同じように織っていて…」
マルセルの瞳が潤んで明かりにキラと反射する。
「奥さんもきっといろいろ想いを込めて織っていたんだろうさ。ツキヨちゃんがそれを引き継いでこうやって廃れた技術やものが復活したのさ。奥さんもきっと喜んでるだろうさね」
「はい…ありがとうございます。オリエもきっとイエロさんたちの活躍を見て応援をしていると思います」
パタンパタン…と小気味よい音が小屋の中に響いていた。
5個目の解析結果は今後ツキヨがもし料理を作った際の基準値、焦げた味と相まって素晴らしい味のハーモニーを奏でていた、と帝国の公文書を作成して公文書館に永久保存をすることに決めた。
【これによって、国家として料理の文化がより成熟することを俺は皇帝として成し遂げたんだ…】
菫色の瞳は帝国のより良い将来を見据えていた。
***
「少し、慌ただしいけどマルセルさん、これから織機を作っているところへ行きませんか?」
以前、飲んだ時に好評だったハービービル国産の緑色のお茶をレオはティーカップに注ぎ入れた。どっしりした食事をしたあとにお腹が重く感じたり、脂っぽい食事で胸焼け気味になったときにこの緑茶を飲むと不思議とスッキリとする。
「それはいいですね!ぜひ、完成して動いている織機を見てみたいですよ!」
不思議な苦みのある緑茶をマルセルは一口飲んだ。
「今も少しずつ織っていて生産力も向上しているそうです」
「布地の生産もうまく軌道に乗って帝国産のオリエ布として流通をするのを僕も楽しみにしています。僕も新しい糸もいくらか持ってきましたので在庫として渡しておきたいです」
「それは助かります。そろそろ糸が減ってきたと連絡があったので間に合ってよかったです」
ホッと胸をなでおろすレオだった。
「じゃあ、出かけるか。荷物もあるから俺とツキヨとマルセルと三人で馬車で行こう」
馬車と言葉を聞いたフロリナは厨房の裏口から出て、御者へ支度をするように伝えに出た。
ツキヨは夕方近いので薄い長袖のコートを羽織って玄関へ向かうとそこには既に支度をしたアレックスとマルセルが御者と話をして待っていた。
「そうだな、少し風があるから上に着たほうがいいな」
アレックスは少し襟が曲がっているのに気がついてツキヨのコートの襟元をチョイチョイと直した。
「あ、ありがとうございます…」
「おっちょこちょいだな!」
「子供の時からツキヨは変わらないね!」
ハハとマルセルが笑うと「詳しく聞かせてもらおうじゃないか…」とアレックスは意外とがっしりしているマルセルの肩をガシッと掴んだ。
「お父様ーー!!いーやーあーぁぁぁぁぁ!!!」
ツキヨは心から叫んだ…が、この義親子?が思っている以上に気が合うということを昨日から身を以て感じていた。
「ははは、そんな恥ずかしがらなくてもいいじゃないか」
「ツキヨの歴史を知るうえで重要な情報を手に入れるだけだ。案ずることはないぞ」
キメ顔で言われても説得力は皆無だがツキヨは諦めた。
「馬車も荷物を積み終わりましたわ」
フロリナが白目になっているツキヨの顔をうふふ…と見つめながら声をかけた。
御者が馬車の扉を開けるとアレックスはツキヨをエスコートして乗せると次にマルセルが乗り、最後にアレックスが乗り込んだ。
「いってきますー」
窓から顔を出してフロリナに声をかけた…少し冷たい風が何故かいつもよりツキヨの目に沁みた。
***
昨日からマルセルの持ってきた野菜を食べて機嫌がいい4頭の馬たちは軽やかに走り続けた。
ほどなくして、整えられた道から木々に囲まれて落ち葉の多い道に変わってくるとやがてブラウンたちドワーフ一族が多く住む村の入り口付近に着いた。
それ以上は道が細く馬車では行けないため三人は御者に礼を言って、アレックスが荷物を抱えるとカサカサと落ち葉を踏みしめながらブラウンの工房へ歩き始めた。
「アレックスさん、少し持ちますよ!」
「んー?別に大した量じゃねぇし、重くもねぇから気にすんなよ」
小さな子供が入れるくらいの木箱3箱を抱えてアレックスは鼻歌交じりに歩いていた。
そして、丸太小屋のブラウンの工房が見えてきた。
荷物を置いて、前に自らが破壊して直した扉を叩くと、扉が勢いよく開いた途端「誰だ!うるせぇんだよ!今、忙しいって言ってんだろ!!!!」とブラウンが怒鳴り散らした。
「よお!ブラウン、久し振りだな!」
「なんだ、あんたか。相変わらず能天気そうな顔をしているけど、久し振りだな!」
ワハハ!と笑いながら2人は肩を叩き合い「ブラウンも毟られた髭が戻ってよかったなー!!」とお互いに再会を喜んだ。
「ツキヨちゃんも久し振りだな。…今日は知り合いも一緒かい?」
「お久し振りです、ブラウンさん。あの、私の父です」
「はじめまして、織機の件ではお世話になっていたのにご挨拶が遅れて申し訳ありません。僕はツキヨの父でマルセルといいます」
すっと頭を下げる動作が美しいマルセルの挨拶だった。
「おー!なんだ、親父さんなのか!?いやぁ、はじめまして。俺はここの木工工房のブラウンだ。よろしくな!」
マルセルはがっしりとした職人の手を掴んで握手をした。
「こんな玄関先で話すもんじゃねぇし、散らかってるけど中に入んな」
工房内は相変わらず木材や道具が所狭しと置かれて、切った太い丸太を立てて椅子にして座った。
「ブラウンさん、イエロおばあ様は…?」
「そのうち、今の騒ぎを聞きつけて来るだ…」「まーた、ドタドタやってうるさいよ!だから嫁ももらえないって何回言ってると思うんだい?!!」と裏口からイエロが入ってきた。
「そっちこそ、うるせえじゃ…「何か言ったかい?!…って、あ!ツキヨちゃんじゃないかい!!おや、筋肉だるまも一緒かい!久し振りさね!」とイエロはツキヨを抱き締める。
「相変わらず元気そうだな!」
「おばあ様、お久し振りです!今日はブラウンさんたちに会いたいと父も一緒なんです」
「ツキヨちゃんのお父さんかい?!こんな小汚いところに申し訳ないね!あたしはイエロって言ってこのブラウンの祖母でね、どうぞよろしく」
ニコニコとイエロはマルセルに挨拶をすると「実は…イエロさんたちが今、織っている布の糸を僕の領地で生産をしていて…一度お会いしたくて来たんです!」とマルセルは握手をしてから木箱を開けて糸をしまっている柔らかい布地の袋を取り出した。
「まーぁ!もう、糸が少なくなってきたところでさ、これでまた織るのが捗るよ!糸もどんどん質が良くなってきて…あんたもいい腕してるさね!」
バンバンとイエロはマルセルの肩を叩いた。
「いたた…たくさん持ってきたので引き続き、お願いしますね!」
「任せておくれよ!どんどん織らせてもらうから、安心しておくれよ」
糸と布談議に盛り上がっているところ、片隅の台所でブラウンはお茶を静かに淹れていた。
熱い紅茶が注がれたてんでばらばらの形のカップが行き渡る。
「今はあたし以外に2人が織り始めていて…まだ技術的にはいまいちだけどだいぶ身についてきているさね。ドレスに使うようなものは無理でも布小物に使うくらいのものは織れているから、今度はそういったものを作る人が必要なのさ」
「織機は俺が作っているけど、簡単に作れるもんじゃねぇから、織るのを希望している人はしばらくそういうもんを作る作業をしてもらう予定だ」
ずっ…とブラウンが紅茶をすする。
「布小物…ですか。どういったものですか?手巾とか…?」
不思議そうにマルセルはイエロの顔を見た。
「そうさね。それはもちろんだけど小物入れやぬいぐるみなんかを考えていてね。ほら、草の繊維だから赤ん坊が口にしても安心さね。人気が出ると思っているのさ」
「確かに、赤ちゃんや子供向けのものは人気が出そうですね。刺繍もしても可愛いですし」
ツキヨはオリエ布で作られたウサギやネコのぬいぐるみを端切れでもいいので自分で作ってみようと密かに計画を立てた。
「親父さん、うちのばあさんの織機を見てみるかい?」
「よかったらその場で織ってみるから見て、なにか指摘するところがあったらツキヨちゃんと教えてほしいさね」
それは、ぜひ…ということで裏に作ったという作業小屋へ向かう。
「あまりあちこちに知られないように他のみんなもここで作業をすることに決めていてよ、ばあさん以外に村の旦那に先立たれた母子家庭になった母親と親子で魔気が弱くて貧しい母娘の娘の2人働いている」
ガチリ…と厳重な鍵をブラウンが開けて中に入ると、小屋というには立派な室内で白い布に覆われた織機が3台置かれていた。
「こっちが、あたしの使っている織機さ。もう、だいぶ使い慣れていい相棒さね」
白い布をバサリとイエロが取り、足元の経糸の上下のカエシの調整をして座板に座ると、杼を手に取ってザァッと緯糸の間に通してから筬で手前に優しくとんとんとする…のをパタンパタンと何度か繰り返す。
「あぁ…この音。懐かしいですね。妻のオリエも同じように織っていて…」
マルセルの瞳が潤んで明かりにキラと反射する。
「奥さんもきっといろいろ想いを込めて織っていたんだろうさ。ツキヨちゃんがそれを引き継いでこうやって廃れた技術やものが復活したのさ。奥さんもきっと喜んでるだろうさね」
「はい…ありがとうございます。オリエもきっとイエロさんたちの活躍を見て応援をしていると思います」
パタンパタン…と小気味よい音が小屋の中に響いていた。
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