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闇-86
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ウエストには繊細なレースが施された葡萄酒色のドレスに身を包み、やや緊張した様子の…サラが新しく与えられたしなりがまだ固い乗馬用鞭を持って現れた。
「ヴィヴィアン女王様…このたびは華麗な舞台にご一緒に立たせていただきますことを誠に感謝いたしますわ」
美しい淑女の礼でサラは傅く。
「ふふふ…素晴らしいわ。このきれいで汚い見世物小屋にようこそ…サ…。
あぁ…そうね…名前をこの私が与えましょう」
「おおお!先ほどの方ではないか!!まさか、再びお姿を見られるとは…あぁ!」
「ヴィヴィアン女王様が自らお名前を与えるなんて聞いたこともないぞ!」
会場がざわめく中、ヴィヴィアン女王は赤い唇を弧にしてサラに告げる。
「そう、私の頭文字を与えましょう…『ヴィアンカ』…私の可愛い駄犬たち、このヴィアンカ女王も私と思い飼い主として敬い、愛し、慕い…そして忠誠を誓いなさい…」
ヴィヴィアン女王は新しいヴィアンカ女王を犬たちにお披露目をすると、駄犬の代表がヴィアンカ女王に即位の祝と挨拶を述べて忠誠を誓った。
「あぁ…ヴィヴィアン女王様。あの糞犬以外に雌豚にも躾ができるなんて光栄ですわ」
「ふふふ…さぁ、お仕置きの時間よ…」
「ひ…こ、これは一体何なんだい?!目が覚めたらこんな…こんなことになってるなんて…うう。早く縄をほどきなさい!娘にもこんなことをして…非人道的なことが許されると思っているのかい?!!警備隊に通報してやるわ!!」
パァン!
ヴィアンカ女王が鞭を床に振り下ろすと小気味よい音が響くと駄犬は涎を垂らす。
「非人道的なこと?豚が人道を求める話なんて流行らない三文小説以下ね」
「豚!豚だなんて!失礼な!あんた、そんな恥知らずな娼婦みたいな格好をして何様なんだい?!!」
化粧でグチャグチャになった顔でマリアンナはヴィアンカ女王を睨みつけると、長い睫毛が縁取る美しい瞳を二度ほど瞬きをしてから断言をする。
「あんたの飼い主よ」
そして、たるんだ腹に渾身の一撃をくれてやった。
「ギャヒン!くっ…ぅぅ…」
微かに涙が滲むが気にもせずヴィアンカ女王はもう一度鞭を腹へ打つ。
「やっぱり、あの糞犬より意外としぶといですわね…面の皮が厚いって便利ね」
ヴィヴィアン女王が屈強な従業員を呼び、鞭で裂かれた安物の生地のドレスを引き裂いて醜い腹を無理矢理詰めたコルセットとズロースだけにする。
「これは、うちの領地の名物の豚の丸焼きにでもできそうですな」
「食べても脂身ばかりだろう!ハハハ!」
駄犬が嘲笑する。
「あぁ、猿轡はそのままで雌子豚と雌馬も同じにしなさい」
ヴィアンカ女王がサラリと感情も無く従業員に言い放つ。その姿は誰もが傅く美しい女王だった。
「メリーアン!ミリアン!子供たちはやめておくれ!」
「あら、豚にも親子愛があるのね。例え義理の娘であっても奴隷にして売り飛ばすくらいだから平気だと思っていたわ…あぁ、作業はさっさと続けなさい」
にっこりとマリアンナは従業員に微笑んだ。
猿轡をされて椅子に四肢を縛られているだけなのでドレスの首元からビリビリと引き裂くと簡単にコルセットとズロース姿になる…「簡単に破れるなんてずいぶん安いドレスだな!ハハハ!」従業員もおどけながら笑う。
恐怖と混乱に支配されたメリーアンとミリアンはボロボロと泣きながらも「うーうー」と猿轡をされた口で唸っていた。
「見事な子豚だねぇ!」
「雌馬は可哀想なくらい…私は男だが同情を禁じえないな…」
「その二匹の猿轡を取らないほうがいいわ。サルみたいにキーキーうるさいから…」
眉間に皺を寄せながらヴィヴィアン女王はメリーアンのコルセットの中から鞭で「胸元の秘密」を掻き出していた。
大量に詰め込まれていた綿や布をほうきとちりとりで片付けた。
***
マリアンナはまぶしい舞台の上ですらツキヨを罵っていた。
【あの会話がそのまま聞こえるなんて…ツキヨの魔物の力で残されたものに違いないわ!!卑しい娘!育ての母たちを蔑ろにするのは親不孝以外なにものでもないわ!
ニール様に会えたと思っていたらこんな目にあうなんて…きっとツキヨの魔力でマリスス公爵も誑かしたに違いない。
ここから出るために一旦、従う振りをして脱走すれば…会場内は結構な身分の方が多いみたいだからツキヨに騙されたとして助けてもらえばいいのよ…ウィリアムももしかしたら逃げているかもしれないし…】
救いの道を模索することでこの恐怖心に打ち勝とうと決心した。
***
「あら?雌豚。まだ、頑張るわね…そんなに鞭が好きなのかしら?あなたの愛人…という元人間のウィリアムはあっさりと人間をやめて、尖った踵に踏まれるのが楽しそうな従順な飼い犬になったのだけどねぇ…」
ほほほ…と上品にヴィアンカ女王は笑う。
「えぇ。子供みたいなモノの皮を剥いたらあっという間にイッて舞台にぶちまいて…それはもう醜いこと」
十年前のことのように思い出したヴィヴィアン女王は遠い目をしていた。
「ウ…ウィリアムもここにいたのかい?!!」
逃げたりしたのかと思っていたマリアンナは最後の望みが絶たれたことを知る。
「えぇ、醜いものをさらけ出してから立派な首輪をつけて新しい飼い主と幸せそうに帰ったわ」
「ヴィアンカ、ほら。よくみなさい。この雌豚の絶望した顔を…どんな醜くても、美男美女でも老若男女でも絶望の顔は同じように…ふふふ。美しいわ」
鞭でヴィヴィアン女王はマリアンナの頬を軽く叩く。
「さぁ、もっと美しい絶望を見せて頂戴。今度は二匹の美しい絶望を見させてもらおうかしら…」
「む、娘はまだ嫁入り前なんだよ!止めておくれ!」
「あら、なおさら楽しみね」
ギャアギャアと喚き叫ぶマリアンナに業を煮やしたヴィヴィアン女王はキン!とウエストの見えない部分から暗器…細いナイフを取り出し喉笛に当てる。
「私は、うるさいのと汚いものが嫌いなの」
それ以後、マリアンナは球のようなものを口に放り込まれ閉じさせられた。
涎が口の周りに垂れるのを見て笑う駄犬たちだった。
「ヴィヴィアン女王様…このたびは華麗な舞台にご一緒に立たせていただきますことを誠に感謝いたしますわ」
美しい淑女の礼でサラは傅く。
「ふふふ…素晴らしいわ。このきれいで汚い見世物小屋にようこそ…サ…。
あぁ…そうね…名前をこの私が与えましょう」
「おおお!先ほどの方ではないか!!まさか、再びお姿を見られるとは…あぁ!」
「ヴィヴィアン女王様が自らお名前を与えるなんて聞いたこともないぞ!」
会場がざわめく中、ヴィヴィアン女王は赤い唇を弧にしてサラに告げる。
「そう、私の頭文字を与えましょう…『ヴィアンカ』…私の可愛い駄犬たち、このヴィアンカ女王も私と思い飼い主として敬い、愛し、慕い…そして忠誠を誓いなさい…」
ヴィヴィアン女王は新しいヴィアンカ女王を犬たちにお披露目をすると、駄犬の代表がヴィアンカ女王に即位の祝と挨拶を述べて忠誠を誓った。
「あぁ…ヴィヴィアン女王様。あの糞犬以外に雌豚にも躾ができるなんて光栄ですわ」
「ふふふ…さぁ、お仕置きの時間よ…」
「ひ…こ、これは一体何なんだい?!目が覚めたらこんな…こんなことになってるなんて…うう。早く縄をほどきなさい!娘にもこんなことをして…非人道的なことが許されると思っているのかい?!!警備隊に通報してやるわ!!」
パァン!
ヴィアンカ女王が鞭を床に振り下ろすと小気味よい音が響くと駄犬は涎を垂らす。
「非人道的なこと?豚が人道を求める話なんて流行らない三文小説以下ね」
「豚!豚だなんて!失礼な!あんた、そんな恥知らずな娼婦みたいな格好をして何様なんだい?!!」
化粧でグチャグチャになった顔でマリアンナはヴィアンカ女王を睨みつけると、長い睫毛が縁取る美しい瞳を二度ほど瞬きをしてから断言をする。
「あんたの飼い主よ」
そして、たるんだ腹に渾身の一撃をくれてやった。
「ギャヒン!くっ…ぅぅ…」
微かに涙が滲むが気にもせずヴィアンカ女王はもう一度鞭を腹へ打つ。
「やっぱり、あの糞犬より意外としぶといですわね…面の皮が厚いって便利ね」
ヴィヴィアン女王が屈強な従業員を呼び、鞭で裂かれた安物の生地のドレスを引き裂いて醜い腹を無理矢理詰めたコルセットとズロースだけにする。
「これは、うちの領地の名物の豚の丸焼きにでもできそうですな」
「食べても脂身ばかりだろう!ハハハ!」
駄犬が嘲笑する。
「あぁ、猿轡はそのままで雌子豚と雌馬も同じにしなさい」
ヴィアンカ女王がサラリと感情も無く従業員に言い放つ。その姿は誰もが傅く美しい女王だった。
「メリーアン!ミリアン!子供たちはやめておくれ!」
「あら、豚にも親子愛があるのね。例え義理の娘であっても奴隷にして売り飛ばすくらいだから平気だと思っていたわ…あぁ、作業はさっさと続けなさい」
にっこりとマリアンナは従業員に微笑んだ。
猿轡をされて椅子に四肢を縛られているだけなのでドレスの首元からビリビリと引き裂くと簡単にコルセットとズロース姿になる…「簡単に破れるなんてずいぶん安いドレスだな!ハハハ!」従業員もおどけながら笑う。
恐怖と混乱に支配されたメリーアンとミリアンはボロボロと泣きながらも「うーうー」と猿轡をされた口で唸っていた。
「見事な子豚だねぇ!」
「雌馬は可哀想なくらい…私は男だが同情を禁じえないな…」
「その二匹の猿轡を取らないほうがいいわ。サルみたいにキーキーうるさいから…」
眉間に皺を寄せながらヴィヴィアン女王はメリーアンのコルセットの中から鞭で「胸元の秘密」を掻き出していた。
大量に詰め込まれていた綿や布をほうきとちりとりで片付けた。
***
マリアンナはまぶしい舞台の上ですらツキヨを罵っていた。
【あの会話がそのまま聞こえるなんて…ツキヨの魔物の力で残されたものに違いないわ!!卑しい娘!育ての母たちを蔑ろにするのは親不孝以外なにものでもないわ!
ニール様に会えたと思っていたらこんな目にあうなんて…きっとツキヨの魔力でマリスス公爵も誑かしたに違いない。
ここから出るために一旦、従う振りをして脱走すれば…会場内は結構な身分の方が多いみたいだからツキヨに騙されたとして助けてもらえばいいのよ…ウィリアムももしかしたら逃げているかもしれないし…】
救いの道を模索することでこの恐怖心に打ち勝とうと決心した。
***
「あら?雌豚。まだ、頑張るわね…そんなに鞭が好きなのかしら?あなたの愛人…という元人間のウィリアムはあっさりと人間をやめて、尖った踵に踏まれるのが楽しそうな従順な飼い犬になったのだけどねぇ…」
ほほほ…と上品にヴィアンカ女王は笑う。
「えぇ。子供みたいなモノの皮を剥いたらあっという間にイッて舞台にぶちまいて…それはもう醜いこと」
十年前のことのように思い出したヴィヴィアン女王は遠い目をしていた。
「ウ…ウィリアムもここにいたのかい?!!」
逃げたりしたのかと思っていたマリアンナは最後の望みが絶たれたことを知る。
「えぇ、醜いものをさらけ出してから立派な首輪をつけて新しい飼い主と幸せそうに帰ったわ」
「ヴィアンカ、ほら。よくみなさい。この雌豚の絶望した顔を…どんな醜くても、美男美女でも老若男女でも絶望の顔は同じように…ふふふ。美しいわ」
鞭でヴィヴィアン女王はマリアンナの頬を軽く叩く。
「さぁ、もっと美しい絶望を見せて頂戴。今度は二匹の美しい絶望を見させてもらおうかしら…」
「む、娘はまだ嫁入り前なんだよ!止めておくれ!」
「あら、なおさら楽しみね」
ギャアギャアと喚き叫ぶマリアンナに業を煮やしたヴィヴィアン女王はキン!とウエストの見えない部分から暗器…細いナイフを取り出し喉笛に当てる。
「私は、うるさいのと汚いものが嫌いなの」
それ以後、マリアンナは球のようなものを口に放り込まれ閉じさせられた。
涎が口の周りに垂れるのを見て笑う駄犬たちだった。
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