闇より深い暗い闇

伊皿子 魚籃

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闇-84

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 舞台上に白濁した液が床の洗浄液のようにドロリと広がる。

「ははは!これは愉快なおもちゃだな!!傑作だよ!!」
 豚犬は出っ腹を抱えて笑う。
 貧弱なそれは白濁汁にまみれながら外気に晒され、さらに快楽を求めるようにささやかに勃っている。
「豚犬!床が汚れたわ。掃除をしなさい」
「はい!喜んで!」

 掃除の言葉だけで、豚犬は這いつくばり白濁液を丁寧に舐めていると「お味はどうかしら?この犬にも先輩犬として教えてやりなさい」と命令がされると白濁液をベロリと舐めて、ウィリアムの口元へ近づく。
「うわ!やめろ!そんなのおかしいぞ!こんなこと許されるのか!!」
 ウィリアムは口を閉じられないように屈強な従業員に口を押さえつけられると、豚犬の舌苔まみれの舌の上に乗った白濁液をボタリと叫び続ける口へ溢した。

「ぎゃあ!げほっ!んご!ああ!!」
 そのまま男たちに口を押さえられ飲み込んだ。

「自分のものを先輩が片付けて、それをまた処理をしているだけなんだから、楽でしょう?」
 にっこりとヴィヴィアン女王は唇で弧を描く。

 そして、剥かれたままの敏感なそこへピシン!パァン!と鞭を振るうと反抗的な言葉から「ゆ、許してください!お願いします!女王様!」と少しずつ従順な言葉が自然と出てくる。

「まぁ、あなたって謝罪の言葉を知っていたのね?!醜いものを晒しながら謝罪なんてとてもお似合いですわよ。このさい這いつくばって私の靴に口づけをして謝罪をしないまし!女王様、よろしいかしら?」
 ヴィヴィアン女王は従業員にウィリアムの拘束を解かせると首に紐をつけてずるずると這いずらせて、優雅な笑顔のサラの元へ連れて行く。

 這いつくばっているウィリアムにサラは心得たかのように美しい脚を足乗せ代わりに乗せた。
「ずいぶん安っぽい足乗せですこと!休息にも使えないわ!でも、役に立たない家具のくせに言葉を発せるのだから役立たずを謝罪してほしいわ!」
 履いている流行りの靴の踵で背中にグリグリと刺すように踏みつける。

「そ、そんな…」
「女王様、生意気な家具ですわね…」
「えぇ…そうね」
 パシィン!と尻や背に鞭を振り下ろす。

「ひぃ!許してください!アヒィィ!!私は愚かな犬でございます!お許しください!女王様…サ、サラ様!!!!」

 ウィリアムは、痛みと快楽の挟間からやっと絞り出した声での靴に口づけをして、犬となった。

「あははは!犬となり犬として生きなさい!ねぇ、義父様、義母様!」
 ぎょっとして思わずウィリアムは立ち上がる…「どこを見ているの?立っていいなんて誰が言ったかしら?」ヴィヴィアン女王の冷たい声が響き渡る。

【両親がいるのか?!いるのか?!いるのか?!やめてくれ!?やめてくれ!!!!!】

「義父様、義母様!素晴らしい舞台ですわよね!私、すっかり気に入ってしまいましたわ!」

【わぁああああぁぁぁぁぁ!!!!やめろ!やめろ!!!】

 再び四つん這いになりサラや観客に笑われ、罵られ、鞭を喰らう…その恐怖と混乱でウィリアムは気がついたら小水を舞台に垂れ流してしまった。

「…!!うわあああ!申し訳ありません!申し訳ありません!!!許してください!女王様!!!!」
 黄色い汚水の中で小さくなって許しを乞うウィリアムだったが「汚いのは嫌いよ。豚犬…この犬はあんたにくれてやるわ。豚犬以外にも皆さんもこの駄犬はほしいかしら?」と冷たい呼びかけに手巾を鼻に当てた顰め顔の観客の犬たちですら顔を横に振る。

「豚犬、大切にしなさい。一年後にこの場で生育状況を報告しなさい。壊したらお仕置きよ!」
「ヴィヴィアン女王様に誓って素晴らしい犬としてまた連れて参ります!」
「ひ!まさか…そんな…こんな…女王様!こ、こんなの後生です、せめて実家の家族の元へ…」「家族なんていたのかしら?ねぇ、義父様、義母様」サラが呟く。
「お父様!お母様!見ないでください!わぁああ!」


「さぁ、豚犬の勇気と宿題がちゃんと終わることを祈って乾杯しましょう。ウィリアム…可愛い駄犬、御機嫌よう、さようなら」
 高級な発泡酒が何本も開封されて観客、従業員、ヴィヴィアン女王、サラにクリスタルのグラスに注がれて渡される。

「あなたの素敵な夢と未来に乾杯!」
 
「女王様自らの乾杯がいただけるとは…」
「これは持って帰って保存をしておきたいくらいだ」

 ウィリアムに首輪をつけて紐をもつ豚犬の雄姿に盛大な拍手と賛辞が送られてそのまま豚犬は笑顔で、ウィリアムは四つん這いで犬のようになって退場していった。俯いた顔はどんな顔かはうかがうことができなかった。

 サラはすっきりとした顔で「義父母様なんて来る訳ないじゃない…なんであんなのと結婚したのか一生の恥だわ」と呟いた。
 副支配人が舞台の笑顔のサラをエスコートして舞台袖に下がると、これから支配人がサラに相談事があるとそっと伝えていた。


 ヴィヴィアン女王は冷たい笑顔で観客の犬たちを満足そうに見まわしてから舞台袖に下がった。


【マリアンナたちと幸せに暮らしていたのに土地も家も金も奪われこんな目に合うとは…最後の最後で一気に雪崩のようにまとめて何もなくなる。俺はそんな悪いことでもしたのか?!くそ!絶対に逃げ出すぞ!また、田舎のブスやババァたちで金を奪えばいいんだからな!!】



***

「俺、明日から皇帝辞めるわ。フロリナと会うとき四つん這いになる自信あるわ」
「鞭…嫌だよな…」
 桟敷席でドヨドヨしながら軽食を摘んでいるアレックスとレオだったが気のせいか胃が痛いような気がしてきた。

「あのウィリアムの本当の奥方は今頃、ここで働かないかと説得させられているだろうな」
「ひー。あんな怖いのが増えたら俺、本当に皇帝辞める。本当に勘弁してくれよ…死にたかねぇよ…」
「あんな犬は勘弁してほしい…っていうかなりたくもない」
「ツキヨの犬なら可愛い感じでなる自信が俺にはあるぜ!!」
 いい笑顔でアレックスが言うも、レオは想像すらしたくなかった。

「いいか、そんなことしたら本当にヴィヴィアン女王様に…」
「いやぁぁぁぁ!それだけはやめてぇぇぇぇ!なりません!絶対に可愛い犬でも猫でもカエルでもなりません!こわぁぁぁいいいいいー!」
 
 それ以前に、ツキヨに嫌われることを心配するのが先だと思われる。
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