闇より深い暗い闇

伊皿子 魚籃

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闇−83

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 ヴィヴィアン女王は革張りの高級椅子からすっと立ち上がった。
 舞台の下手にぽうっと灯りがつく…とそこには口に猿轡をされた細身で全裸の男が両手足を椅子に縛り付けられていた。
 色白で少しひょろりとしている…が媚薬かなにかでも飲まされたのか肌は微かに赤く染まり、その股間も持ち主に似たひょろりとしているものがそそり立っていた…いや立っているが慎ましやかなもので、そして…子供のようだった。
 猿轡ががっしりとはめられて何を言っているのかは不明だが目元に薄らと涙が見える。

「自己紹介をしましょうかね…上手にご挨拶ができたらご褒美をあげるわね…」

 鞭で肩の辺りをさする…と脆弱そうな股間がビクリとする。
 犬の猿轡を従業員がぐっと乱暴に外す…と男はゴホゴホとむせて「く…ここは一体何なんだ!!??こんな姿で…しかも、この女は誰だ!?」と叫ぶ…と一瞬でパシィッ!と鞭が唸る。

「ぎゃん!!!」
「黙りなさい。うるさい犬は嫌いよ」
「う…何なんだ…ここは一体。どうなっているんだ…?」
「うるさい!」

 パァンッ!

「ギャヒィッ!」
「さぁ、自己紹介をしなさい。犬が飼い主に逆らうとどうなるかをさっさと理解しなさい。三回目はその貧弱な股間にくれてあげるわ」
「や、やめろ!わかった、わかったから!…名前はウ…ウィリアム・ドゥ・デンファレ…子爵…」

 涙目で自己紹介をしたウィリアムだった。ぼやける視界の先の観客に目をやるとしがない地方の小領地の子爵家の当主でも知っている高位貴族や豪商たちの顔が見える。

「ほう、あのデンファレ子爵か!はは!なんでも自称女たらしの詐欺師とかなんとか嘯いていたとか…ははは!」
「それにしても、女たらしでもあの貧弱な…同性ながら同情を禁じ得ないよ」
「いやぁ…子供以下ですなぁ」

 聞こえる声になぜかウィリアムはカッと体が疼く。鼓動を落ち着かそうと懸命に考えた。
【こ、ここは舞台らしいが一体どこなんだ?マリスス公爵のニール様と一緒にいたのが…なぜ…全裸でこんなことになっているのか…この女は建物の入口にいた女のはず…】

「デンファレ子爵…?自己紹介のご褒美をあげましょうか…」
 しなやかな鞭で乳首をさすられる…快感を感じた瞬間、鞭がパァン!と乳首を叩いた。
「ギャァ!」

 観客から「素晴らしいご褒美だ!羨ましい!!」と絶賛の声が聞こえた。
 ウィリアムは鞭を喰らうごとに股間がギンギンに張り裂けそうになることに気がついた…鞭が欲しいが恥辱に耐えられない。

「この犬はもちろん後ろは処女で未開発。花を買ったらそれを楽しむのもいいわ…しかも、この子供らしい立派な股間…剥いても、剥かなくてもお好み次第…剥くときの声を聞くのも素敵ね…あぁ…ここの可愛いらしいのには毛は邪魔ね」
 女王の一言で従業員が剃毛の準備を始める。

「これで本当にお子様になれるわね。よかったわね子犬ちゃん」
 手早く泡立てられた赤毛の陰毛がショリショリ…と丁寧に剃られていく。
「わぁ!やめろ!」
 その剃る刺激すらも快楽に繋がるのか頬を染めながら声を上げながら腰が微かに動き、びくびくと股間が蠢く。
「お利口な犬は飼い主に剃らせるものではないわ…自分でするものなのよ。犬は自分で毛繕いをするでしょう?!」

「女王様の手を煩わすとは!!」
「うらやまけしからん!!」
「その駄犬に罰を!!」

「ほら、先輩犬たちからお叱りが来たわよ。あの子たちは自分で毛繕いができる子たちなのよ…見習いなさい」
 お褒めの言葉をいただいた一部の犬たちは「有難き幸せでございます!」と椅子に座ったが一人がうれションをして退場させられた。

 股間がすっかりきれいになって子供のようになったウィリアムの股間だが羞恥心を超えるほどに快楽を求めている。ギンギンになっている熱の塊を押さえることができない。

「さぁ。子犬のおちんちんちゃん。今夜はわざわざあなたに会わせたい人を連れて来たの…感謝をしなさいね」
 鞭で軽く頬を叩かれる。
 叩かれると微かな痛みが残る。当然あっという間に消えるのを心の底から悔やんでいるウィリアムがそこにいた。

 
***
 上手から従業員がドレスを着た薄茶色の髪の女性を連れてきた…が目隠しをされているためエスコートをされているように布張りの上品な椅子にふんわりと座った。
 
「目隠しを外して差し上げて。この犬をもう少し中央へ」
 ウィリアムは屈強な従業員に椅子ごと抱えあげられ、舞台中央へ運ばれると、目隠しを外してもらった女性は侮蔑の表情でウィリアムを見つめた。

「お名前を伺ってもよろしくて?」
「えぇ。結構ですわ。私はサラ・ドゥ・デンファレ子爵の妻でございます。本日はご招待をいただき有難うございますわ」
「こちらこそ、このような日にお呼び立てして申し訳ございませんわ」

「サ、サラ!なんで、君がここに!!??ギャン!」
 その一言に鞭が唸る。

「お久しぶりでございます。ウィリアム様。ご親切なかたよりここの招待状をいただいたのですわ。
あなたがいると聞きましたのでご挨拶をと思いましたの。
まぁ、大したことではございませんが今までの所業はすでに私の父母兄弟はもとより、ご実家のカータバーミ男爵家の義父母様にもお伝え済みですわ」
「そんな!この僕が愛するのはサ…」「デンファレ子爵家のお金とあの豚のような女でしょう?」と冷たくサラは言い放つ。
「離婚の手続きと義父母様よりは謝罪と慰謝料を。足りないお金は爵位を売ってでも工面されるそうよ。豚の名義になる寸前のデンファレ家の屋敷や土地も私の名義に変更が終わればデンファレ子爵家は以前のようになりますからご安心くださいな」
 花の透かし模様の入った上品な扇子で優雅に扇ぐ。

「ヴィヴィアン女王様…私の目を覚まさせていただき感謝を申し上げますわ。あの犬と豚一族は女王様のお望み通りに煮るなり焼くなりしてくださいませ」
 ニッコリと赤い口紅をした唇が弧を描いた。

 観客席から「ふおっ!」という声が聞こえた。

「畏まりましたわ。サラ・ドゥ・デンファレ女子爵様…お粗末な舞台ですがお楽しみくださいませ」
 美しい淑女の礼をサラに捧げた。

「さぁ、私の犬たち。この粗末な子犬の皮を剥ぎたい子はいるかしら?デンファレ女子爵様もよろしければご参加くださいませ」
「えぇ。ありがとう。とても楽しみだわ」

 また、観客席からサラへ「ファー」という声が聞こえた。

 観客席前方の脂ぎって腹の出た男が優等生のようにビシィと手を挙げる。
 ヴィヴィアン女王様第一の犬と自負をして、そして男色で有名なとある国の豪商だった。
「あら、豚犬。相変わらずね…まぁ、あなたはおもちゃをすぐに壊すから気をつけてね」
「畏まりました!」
 嬉々として舞台に上がる豚犬。よく見るとトラウザーズの股間が膨らんでいるのをこれでもかとウィリアムに見せつけるように近付いた。
「わぁ!や、やめろ!お、男がそんなことをするなんて!嫌だ!やめろ!」


「あら。私が強く剥いたらその痛みですぐに果てて、夜毎そればかりですぐに満足されて幸せそうに眠っていましたわね。カータバーミ男爵家からデンファレ子爵家へ婿入りしたのに子を成せない理由は私のせいとしたのはどちら様かしら?」
 上手からサラのヤジが飛ぶと会場が笑いに包まれた。

「どこぞの雌豚とは楽しんでいたそうですわ」
「あれがまともにできたなんて、俄かに信じられませんわ!おほほ…」

「おぉ、いい子供ちんぽだなぁ…かわいいねぇ」
「や、やめてくれ!」
「こんなに嫌がっているのにここがギンギンだなんて好きなんだねこれが。まったく、躾がなっていない犬だなぁ…」
 豚犬は感情のない声でそのままウィリアムの皮をグィと躊躇いもなく引き下げた。

「や、やめ…ギャヒィィ!!!く…くはぁぁっぁああー!」
 ウィリアムは剥かれる痛みを感じ、叫びながら一気にびゅるる!と白濁汁を撒き散らした。

 床に飛び散った汁を見て満足そうに豚犬は笑った。
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