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闇-77
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フロリナのぶっ込んだ『小惑星』と呼ばれる火炎を使う魔気のお陰で庭にいたモスコス辺境伯の私兵はほとんど壊滅状態となり、あとは騎士団や近衛兵が怪我をした私兵たちの隊長各と思わしき人物や私兵を幾人か捕えた。
庭も当然壊滅状態となったがユージス国王は気にすることもなく怪我人や兵の指揮にあたっていた。
念のためフロリナとツキヨは壇上の机のところに武器を構えて潜んでいた。
「フロリナ…さっきのは…いえ、むしろあの不思議な武器は一体どういったものなのでしょう」
ツキヨは潜んでいた机の下から顔を出した。
「あれは…父が神代の遺跡と呼ぶ『失われた文明』の遺跡が南方に多くあります。こちらの方でも遺跡があってもこれはあまり発掘がされません。
どういったのものかは父のこれからの研究にかかっていますが、そのころの文明の武器らしくこの筒状のところから鉄の玉が何らかの力で発射をして敵に攻撃をするものと推測がされています。
ただ、父は良く言えば研究熱心でして…魔気によって弾を練り上げて発射をするもの再現をしてしまったのです。それで、私は護身術とともに今後の護衛などために訓練を重ねました。
同じ魔気を持つものでも使いこなせるものはほとんどいないようです。
そのため…今も父は研究や遺跡発掘三昧で南方の国に赴任生活をしています」
フロリナが手に持つ黒鉄色の無機質な筒状の武器を改めて見つめる。
手入れがよくされているのか黒光りしていてツキヨの顔が筒の形に沿ってグニャリと歪んで見える…と同時にツキヨは歪んだ顔の背後から血に濡れた兵士が壇上にそっとあがってきたのに気がついた。
広間の中央や正面庭をを警戒しているのかフロリナは一瞬反応が遅れた。
「…っん!フロリナ!危ない!」
このとき、ツキヨは父と母が領民の子たちと同じように野山を駆け回り「まるで小鹿みたいにお転婆なお姫様だね」と笑って褒めてくれたことを感謝した。
「えーーーい!!!」
ツキヨは隠れていた机にある重厚な木製の椅子の背もたれをガシリと握りしめて、背後からのっそりと現れた兵士の頭に無我夢中でガツン!!!と叩きつけた。
「ぐぅぁ!!」
まさか、色白でか細い未来の皇后陛下が椅子をブン投げるとは想像もしていなかったのか油断をしていた兵士は頭と顔面に椅子を叩きつけられて、そのまま昏倒した。
貴族とはいえ領民の子と分け隔てなく育ったツキヨはなにかとあると気絶するその辺の『ご令嬢』とは体力が全く違っていた。
「ツキヨ様!」
フロリナが衝撃で震えるツキヨを支え「申し訳ありません!主によってこの身を守らせるなんて…あぁ!」と何度も謝罪を口にする。
「いいえ。主従とかではありません。大切な人が危ないなら助けるのが友人です」
「あぁ…恐れ多い…この身はツキヨ様のためなら盾となり剣となるのが私の務め。それを友人とは…」
キィン!!
「ツキヨォォォォォォオオオオオオオオ!!!!!!」
神速でアレックスが壇上にすっ飛んできた。
「怪我は?息は?命は?心臓は?血液は?血糖値は?尿酸値は?あんな、汚いものを殴っちゃだめだ!」
身体中を確認するかのようにドレスの上からべたべたと触りツキヨの状態を確認するが、アレックスの礼服の方が埃や煤、破れが酷い状態だった。髪や肌に血の跡があるが軽症で魔気によって自己回復をしたようだった。
「ア、アレックス様…こそ大丈夫ですか?」
「俺は問題ねぇ…が!フロリナ!お前!!!ちっとは手加減ってやつをしろ!!!俺はだいぶあっちまで飛んで行って楽しかったぞ!」
「お怪我がないようでなによりでございます」
「お前の親父の鼻毛を全部引っこ抜いてやる!!」
「父にはよく伝えておきますので…」
ツーンとしたフロリナとは対照的にアレックスは泥に汚れた銀髪を振り乱して文句をブーブーと言っていた。
***
城内では怪我をした兵を軍医の元へ運び、モスコス辺境伯の私兵たちは騎士団によって捕えられて地下牢へ連れて行かれた。
そのころ、レオは混乱になった瞬間に…
「魔物よ!魔物なのよ!私たちを殺しに来たのよ!!」
…と叫んだ女の私室で温かい紅茶を淹れて寛いでいた。
私室の主の女はレオの糸で拘束をされていた。この騒動で転倒をしたのか高価なドレスは汚れ、裾は破れていた。
「早く縄を解きなさい!私を誰と思っているの?!」
小さな照明がテーブルに一つだけ置かれた薄暗い部屋で女は叫ぶが金髪に赤毛の混じった男は動じることもなく長椅子から立ち上がり室内の絵画を鑑賞したりしていた。
「…ふぅ。絵画は静かにゆっくり鑑賞するものなんだが、お前にこの約100年前のこの絵の価値が分からないのなら知らなくて当然か…」
「その絵はトルーが…トルガー国王からこのナールの誕生日に贈ったものよ!何千万もするんだから!勝手に触らないで!!」
花瓶に花を生けている白い肌の豊満な女性…の絵は薄暗い明りの中で今も花を生けている。
「まぁいい。お前の父親と辺境伯は時期に捕まるだろうし、お前もよくて修道院か北の城塞の塔での優兵だな。この絵が好きならしっかり見ておけ」
「な!なんですって!!私は何もしていないわ!」
パチリ…と指を鳴らした。
『魔物よ!魔物なのよ!私たちを殺しに来たのよ!!』
『魔物よ!魔物なのよ!私たちを殺しに来たのよ!!』
『魔物よ!魔物なのよ!私たちを殺しに来たのよ!!』
『魔物よ!魔物なのよ!私たちを殺しに来たのよ!!』
何度もナールディアの声がどこからか繰り返される。
「こ、これは…父が言えっていっただけで関係ないわ!私は関係ない!!!関係ないわ!!」
甲高い声で繰り返される声を打ち消すように叫ぶ。
「早く解いて、トルーのところへ連れて行きなさい!!そして、あんたの国の黒薔薇の苗を早くナールに寄越しなさい!!どうせ、誰も育てられないんだから!!!」
「あぁ…そうか…黒薔薇の苗のことをすっかり忘れていたよ…」
レオはニィっと笑った。
庭も当然壊滅状態となったがユージス国王は気にすることもなく怪我人や兵の指揮にあたっていた。
念のためフロリナとツキヨは壇上の机のところに武器を構えて潜んでいた。
「フロリナ…さっきのは…いえ、むしろあの不思議な武器は一体どういったものなのでしょう」
ツキヨは潜んでいた机の下から顔を出した。
「あれは…父が神代の遺跡と呼ぶ『失われた文明』の遺跡が南方に多くあります。こちらの方でも遺跡があってもこれはあまり発掘がされません。
どういったのものかは父のこれからの研究にかかっていますが、そのころの文明の武器らしくこの筒状のところから鉄の玉が何らかの力で発射をして敵に攻撃をするものと推測がされています。
ただ、父は良く言えば研究熱心でして…魔気によって弾を練り上げて発射をするもの再現をしてしまったのです。それで、私は護身術とともに今後の護衛などために訓練を重ねました。
同じ魔気を持つものでも使いこなせるものはほとんどいないようです。
そのため…今も父は研究や遺跡発掘三昧で南方の国に赴任生活をしています」
フロリナが手に持つ黒鉄色の無機質な筒状の武器を改めて見つめる。
手入れがよくされているのか黒光りしていてツキヨの顔が筒の形に沿ってグニャリと歪んで見える…と同時にツキヨは歪んだ顔の背後から血に濡れた兵士が壇上にそっとあがってきたのに気がついた。
広間の中央や正面庭をを警戒しているのかフロリナは一瞬反応が遅れた。
「…っん!フロリナ!危ない!」
このとき、ツキヨは父と母が領民の子たちと同じように野山を駆け回り「まるで小鹿みたいにお転婆なお姫様だね」と笑って褒めてくれたことを感謝した。
「えーーーい!!!」
ツキヨは隠れていた机にある重厚な木製の椅子の背もたれをガシリと握りしめて、背後からのっそりと現れた兵士の頭に無我夢中でガツン!!!と叩きつけた。
「ぐぅぁ!!」
まさか、色白でか細い未来の皇后陛下が椅子をブン投げるとは想像もしていなかったのか油断をしていた兵士は頭と顔面に椅子を叩きつけられて、そのまま昏倒した。
貴族とはいえ領民の子と分け隔てなく育ったツキヨはなにかとあると気絶するその辺の『ご令嬢』とは体力が全く違っていた。
「ツキヨ様!」
フロリナが衝撃で震えるツキヨを支え「申し訳ありません!主によってこの身を守らせるなんて…あぁ!」と何度も謝罪を口にする。
「いいえ。主従とかではありません。大切な人が危ないなら助けるのが友人です」
「あぁ…恐れ多い…この身はツキヨ様のためなら盾となり剣となるのが私の務め。それを友人とは…」
キィン!!
「ツキヨォォォォォォオオオオオオオオ!!!!!!」
神速でアレックスが壇上にすっ飛んできた。
「怪我は?息は?命は?心臓は?血液は?血糖値は?尿酸値は?あんな、汚いものを殴っちゃだめだ!」
身体中を確認するかのようにドレスの上からべたべたと触りツキヨの状態を確認するが、アレックスの礼服の方が埃や煤、破れが酷い状態だった。髪や肌に血の跡があるが軽症で魔気によって自己回復をしたようだった。
「ア、アレックス様…こそ大丈夫ですか?」
「俺は問題ねぇ…が!フロリナ!お前!!!ちっとは手加減ってやつをしろ!!!俺はだいぶあっちまで飛んで行って楽しかったぞ!」
「お怪我がないようでなによりでございます」
「お前の親父の鼻毛を全部引っこ抜いてやる!!」
「父にはよく伝えておきますので…」
ツーンとしたフロリナとは対照的にアレックスは泥に汚れた銀髪を振り乱して文句をブーブーと言っていた。
***
城内では怪我をした兵を軍医の元へ運び、モスコス辺境伯の私兵たちは騎士団によって捕えられて地下牢へ連れて行かれた。
そのころ、レオは混乱になった瞬間に…
「魔物よ!魔物なのよ!私たちを殺しに来たのよ!!」
…と叫んだ女の私室で温かい紅茶を淹れて寛いでいた。
私室の主の女はレオの糸で拘束をされていた。この騒動で転倒をしたのか高価なドレスは汚れ、裾は破れていた。
「早く縄を解きなさい!私を誰と思っているの?!」
小さな照明がテーブルに一つだけ置かれた薄暗い部屋で女は叫ぶが金髪に赤毛の混じった男は動じることもなく長椅子から立ち上がり室内の絵画を鑑賞したりしていた。
「…ふぅ。絵画は静かにゆっくり鑑賞するものなんだが、お前にこの約100年前のこの絵の価値が分からないのなら知らなくて当然か…」
「その絵はトルーが…トルガー国王からこのナールの誕生日に贈ったものよ!何千万もするんだから!勝手に触らないで!!」
花瓶に花を生けている白い肌の豊満な女性…の絵は薄暗い明りの中で今も花を生けている。
「まぁいい。お前の父親と辺境伯は時期に捕まるだろうし、お前もよくて修道院か北の城塞の塔での優兵だな。この絵が好きならしっかり見ておけ」
「な!なんですって!!私は何もしていないわ!」
パチリ…と指を鳴らした。
『魔物よ!魔物なのよ!私たちを殺しに来たのよ!!』
『魔物よ!魔物なのよ!私たちを殺しに来たのよ!!』
『魔物よ!魔物なのよ!私たちを殺しに来たのよ!!』
『魔物よ!魔物なのよ!私たちを殺しに来たのよ!!』
何度もナールディアの声がどこからか繰り返される。
「こ、これは…父が言えっていっただけで関係ないわ!私は関係ない!!!関係ないわ!!」
甲高い声で繰り返される声を打ち消すように叫ぶ。
「早く解いて、トルーのところへ連れて行きなさい!!そして、あんたの国の黒薔薇の苗を早くナールに寄越しなさい!!どうせ、誰も育てられないんだから!!!」
「あぁ…そうか…黒薔薇の苗のことをすっかり忘れていたよ…」
レオはニィっと笑った。
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