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闇-61
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柔らかいビロードの生地に包まれた最上級のプラチナの王冠…ここには白、月色の真珠が大小問わず惜しげもなく使われている。
王冠自体は限りなく細く細く加工され華奢で軽量に作られている。左右は弓と矢を意匠としているがその合間にアクセントとして白真珠が儚げに飾られている…そして中央に燃えるような糸杉に極小のアメジストが埋め込まれ寸分の狂いもない真球の月色をした真珠を守るかのように包み、囲う。
紫の炎や真珠は…いつか…いつか…やがては消える。
ずっと…永遠はないけどただ無邪気に『あなたを守りたい』と騎士のように誓う。
「ふふん。アレちゃんとは付き合いが長いけど…こぉれぇはぁ…うっふっふっふっ…いやーぁん。あたしも恋がしたいわぁん゛!!!!」
独りで身を抱き締めるエリザベス…敗北を初めて知るかのように長椅子に突っ伏すフロリナ…リリアンは既に手遅れだったか鼻血を出してぶっ倒れていた。
ツキヨは意匠の意味はじわじわと身に沁みてくる…真綿のように首…ではなく背の高いアレックスが背中から大きな体で包み込む優しさと慈しみ、そして無限大の愛情が血道を通り全身を熱となって駆け巡る。
「ふぁっ!」
思わず現実に戻ったツキヨも顔を真っ赤にして変な声を出して、女子4人と一緒に血圧を測ることにした。
4人とも血圧が異常だった。
「ったくよぉ…レオのやつ今度こそ火山の噴火口のど真ん中で死闘決選してボコボコにしてやる…おぉ…エリ、待たせて悪かったなぁ。レオの野郎がよ…って4人で何やってんだ?」
アレックスが勝手知ったるなんとやらでツカツカと応接室へ入ると女子4人が「愛とはなんぞや」と語り合っていた。
念のため、リリアンは血圧を下げる薬草茶を淹れて飲んでいた。
「なんでもいいからよぉ…ドレス見せてくれよー。ドレスー!」
「アレちゃん゛は、うっさい゛!だまってろ゛!!愛よ!これは愛なのよぉ゛ぉ゛ぉ゛!」
「愛って…深いですね…リリアンさん、鼻血がまた…」
「フロリナさんって結構修羅場とかくぐっている感じがします…」
鼻血を押さえる。
「修羅場ならいいですが…血の海は少々…」
「おーい…ドーレースー…」
「うるさい!!」
「すいません」
しばらく、血の海の話について女子4人は熱心に聞いていた。
「あのー…ド…ドレス…は…いかかでございますかー?」
「アレちゃんいたの?!やだーん゛!早く言ってよぉ!」
「すいません…」
また小さく長椅子に座った。
「早速、完成したドレスに袖を通していただきましょうかねぇん」
女子4人で白い布に覆われたドレスを抱えて試着室へ入って行った。
さらさらとした衣擦れの音が聞こえる。
時折、調整をしているのかエリザベスの指示をする声が聞こえ、フロリナとリリアンが整える。
【やっぱり、俺はガキなのか…】
自らの体内で暴れる心臓の動悸に困惑する。
気晴らしではないが落ち着くためにテーブルの上の宝飾品を見つめ出来栄えに満足をして身につけたツキヨを想像をする。
【俺だけの月の女神…許された日だけに雲間からその身をこの世界に姿を現す…そして、俺だけの…】
「アレちゃぁん、お・待・た・せぇ」
試着室からエリザベスが出てくると、その後ろをフロリナとリリアンが介添えをしながらツキヨがそそと出てきた。
調整が終わり完成したドレスをまとい、エリザベスが各宝飾品で飾り立てる…すると月の女神がアレックスの目の前に姿を現した。
ドレスの輝く月色が王冠の土台となっているプラチナに反射をして金でもプラチナでもない…極めて稀な金属の色になる。
少し恥ずかしそうに俯くツキヨの頭が少しでも動くとキラキラと輝く。
「…似合う…ぞ」
褒め言葉を言うも、声は上擦って掠れていた。
「ありがとうございます…良かったです」
頬を薄紅色に染める。
ドレスをあれこれとエリザベスとアレックスが最終確認をしてツキヨに着心地を聞いては調整を行い…完成をした。
これ以上もこれ以下もない、完璧なドレスだった。
「あたしが仕立屋として魂と気合と根性を入れまくったドレスよ。ツキヨちゃんが似合うのは当然だし、この未知の生地の存在をこの世に知らしめるのに相応しいものでもあると胸を張らせてもらうわ」
「これでツキヨは俺の婚約者だと…未来の奥様だと世界中に披露をするのにはこのドレスが必要だ。そして…それによって布が必要とされて、それが誰かの幸せになると俺は友達に約束をしている。このドレスなら絶対に間違いない!
エリザベス…リリアン…本当に忙しいのにありがとうな」
「あらぁん、アレちゃんからのお礼ならトマホークベーゼ一発でいいわよぉん」
「結局、それかよぉ…勘弁しろよ」
リリアンは深く頭を下げた。
こっそりと鏡でツキヨは照れ臭そうにお姫様のようにくるくる回っていた。
それをまたこっそりと見ていたフロリナは心の中でその姿を決して忘れることのないように萌えていた。
----------------------
お礼を伝え、各荷物を抱えたアレックスとツキヨ、フロリナはエリザベスの極太上腕二頭筋と大変豊かな胸筋に意識を失う寸前まで抱き締められて店をあとにした。
途中で、新しい菓子店で木の実の焼き菓子をお土産に購入をすると、ツキヨも嬉しそうな顔で買った菓子のことやフロリナから聞いた今評判の劇を観たいなどと話しながらゆるゆると馬車へ向かう。
「あー…フロリナ…ちょっと…」
「お館様、心得ております。ゲオルグ様にお会いしてきますのでお二人でお戻りください。お手を煩わす程ではございませんので」
「おう、頼んだぞ」
「はい。では、お館様、ツキヨ様。失礼いたします」
さっと音もなくフロリナは歩いてきた人の多い道を戻って行った。
「ちょっと忘れもんしちまって…」
「あら…大変ですね」
アレックスはツキヨの体を庇うように早々に馬車へ戻ると乗り込み屋敷へ向かった。
***
フロリナは雑踏を抜けて気配を追う…が、気配をここまで残すのは罠なのではないのかと疑うくらい雑な存在を町外れに追い込む。
気配は徐々に呼吸が乱れ、やがて1本の木の近くで止まるがフロリナは何一つ乱れていない。
適当な追跡技術を学んだ程度なのか目立たない服装の金髪の男と白髪交じりの男はハァハァと乱れた呼吸を整えながら腰に隠していた通常よりやや短めの剣を抜く。
「よう…お譲さん…追跡お疲れ様だな。ふぅ…さすがにおっさんの元にいるヤツだな。帰って追跡しましたぁってご報告してただいまーのご挨拶でもすんのか?」
「それとも、このまま木の栄養にでもなって屋敷に帰らないつもりかい?」
白髪の男がニヤリと笑う…二人組はフロリナを脅すように剣を見せつける。
「…いやぁ…ここでおいしくいただくのもいいかもしれねぇなぁ…」
金髪の男が下品な笑顔を見せる。
そろそろ夕方も過ぎ薄闇に包まれて周囲には人もいない…「こんな誰もいないところへわざわざ俺達をお誘いするんだから…何かいいお考えでも?」…とニヤニヤと白髪男が笑う。
キィン!と金髪の男が剣を横へ振るうがスルリとフロリナはかわす…そこへ白髪男が上段から剣を振り下ろすがざぁっと横へ転がり避ける。
「追跡のご専門は機敏だねぇ」
「さぞ、いい体なんだろうよ。堪んねぇなぁ」
二人組は同時に上下左右から剣を振るうが糸一筋も掠りもせずフロリナはしなやかに避け、落ちていた太めの木の枝で男らの剣を受け止めて、素早く後退をして距離を取る。
「お、やるじゃねぇか」
「そろそろ捕獲するか?」
枝から剣を抜く…
「捕獲…だけですか?危険な物や人物は滅殺が基本です。そのまま生存をさせることは機会を与えたままになるだけです」
薄闇に包まれたフロリナは小さく「神代の古武器…今、命を吹き返せ」とつぶやくと、両手がぼぅと光る…。
すると、この世界には有り得ないほど細かく複雑で奇怪な部品が組み込まれ、先端は細い筒状になっている黒鉄製のものが両手に握られていた。右手にあるのはフロリナの顔よりもやや大きめで、左手にあるのはそれよりもずっと長いものだったが、そもそもそれが武器なのかも不明だった。
「ち、だから魔族の相手は面倒くせぇんだよ…なんだよアレは…」
白髪の男は剣を抜いた枝をフロリナへ向かって投げつけた…フロリナは右手で握る部分がぽわんと光って小さな取手を人差し指でくぃっと引く…
パタタタタタタ!
と何かの発射音が連続で鳴り響くと枝はボロボロに成り果てた。
「これについて無駄な知的好奇心は持たないでください。このあとは必ず死ぬので教える意味が一切ありません…私の口角筋の無駄遣いです。どなたに雇われ、目的が何かを死ぬ前までで結構なので教えてください」
ぼぅ…と何かが充填されて右腕のものから同じ連続の発射音が木の枝に向かって発射されると、どさり…と大きな枝が二人組の目の前に落ちた。
「お二人は早いか遅いか…どちらがお好みですか?」
王冠自体は限りなく細く細く加工され華奢で軽量に作られている。左右は弓と矢を意匠としているがその合間にアクセントとして白真珠が儚げに飾られている…そして中央に燃えるような糸杉に極小のアメジストが埋め込まれ寸分の狂いもない真球の月色をした真珠を守るかのように包み、囲う。
紫の炎や真珠は…いつか…いつか…やがては消える。
ずっと…永遠はないけどただ無邪気に『あなたを守りたい』と騎士のように誓う。
「ふふん。アレちゃんとは付き合いが長いけど…こぉれぇはぁ…うっふっふっふっ…いやーぁん。あたしも恋がしたいわぁん゛!!!!」
独りで身を抱き締めるエリザベス…敗北を初めて知るかのように長椅子に突っ伏すフロリナ…リリアンは既に手遅れだったか鼻血を出してぶっ倒れていた。
ツキヨは意匠の意味はじわじわと身に沁みてくる…真綿のように首…ではなく背の高いアレックスが背中から大きな体で包み込む優しさと慈しみ、そして無限大の愛情が血道を通り全身を熱となって駆け巡る。
「ふぁっ!」
思わず現実に戻ったツキヨも顔を真っ赤にして変な声を出して、女子4人と一緒に血圧を測ることにした。
4人とも血圧が異常だった。
「ったくよぉ…レオのやつ今度こそ火山の噴火口のど真ん中で死闘決選してボコボコにしてやる…おぉ…エリ、待たせて悪かったなぁ。レオの野郎がよ…って4人で何やってんだ?」
アレックスが勝手知ったるなんとやらでツカツカと応接室へ入ると女子4人が「愛とはなんぞや」と語り合っていた。
念のため、リリアンは血圧を下げる薬草茶を淹れて飲んでいた。
「なんでもいいからよぉ…ドレス見せてくれよー。ドレスー!」
「アレちゃん゛は、うっさい゛!だまってろ゛!!愛よ!これは愛なのよぉ゛ぉ゛ぉ゛!」
「愛って…深いですね…リリアンさん、鼻血がまた…」
「フロリナさんって結構修羅場とかくぐっている感じがします…」
鼻血を押さえる。
「修羅場ならいいですが…血の海は少々…」
「おーい…ドーレースー…」
「うるさい!!」
「すいません」
しばらく、血の海の話について女子4人は熱心に聞いていた。
「あのー…ド…ドレス…は…いかかでございますかー?」
「アレちゃんいたの?!やだーん゛!早く言ってよぉ!」
「すいません…」
また小さく長椅子に座った。
「早速、完成したドレスに袖を通していただきましょうかねぇん」
女子4人で白い布に覆われたドレスを抱えて試着室へ入って行った。
さらさらとした衣擦れの音が聞こえる。
時折、調整をしているのかエリザベスの指示をする声が聞こえ、フロリナとリリアンが整える。
【やっぱり、俺はガキなのか…】
自らの体内で暴れる心臓の動悸に困惑する。
気晴らしではないが落ち着くためにテーブルの上の宝飾品を見つめ出来栄えに満足をして身につけたツキヨを想像をする。
【俺だけの月の女神…許された日だけに雲間からその身をこの世界に姿を現す…そして、俺だけの…】
「アレちゃぁん、お・待・た・せぇ」
試着室からエリザベスが出てくると、その後ろをフロリナとリリアンが介添えをしながらツキヨがそそと出てきた。
調整が終わり完成したドレスをまとい、エリザベスが各宝飾品で飾り立てる…すると月の女神がアレックスの目の前に姿を現した。
ドレスの輝く月色が王冠の土台となっているプラチナに反射をして金でもプラチナでもない…極めて稀な金属の色になる。
少し恥ずかしそうに俯くツキヨの頭が少しでも動くとキラキラと輝く。
「…似合う…ぞ」
褒め言葉を言うも、声は上擦って掠れていた。
「ありがとうございます…良かったです」
頬を薄紅色に染める。
ドレスをあれこれとエリザベスとアレックスが最終確認をしてツキヨに着心地を聞いては調整を行い…完成をした。
これ以上もこれ以下もない、完璧なドレスだった。
「あたしが仕立屋として魂と気合と根性を入れまくったドレスよ。ツキヨちゃんが似合うのは当然だし、この未知の生地の存在をこの世に知らしめるのに相応しいものでもあると胸を張らせてもらうわ」
「これでツキヨは俺の婚約者だと…未来の奥様だと世界中に披露をするのにはこのドレスが必要だ。そして…それによって布が必要とされて、それが誰かの幸せになると俺は友達に約束をしている。このドレスなら絶対に間違いない!
エリザベス…リリアン…本当に忙しいのにありがとうな」
「あらぁん、アレちゃんからのお礼ならトマホークベーゼ一発でいいわよぉん」
「結局、それかよぉ…勘弁しろよ」
リリアンは深く頭を下げた。
こっそりと鏡でツキヨは照れ臭そうにお姫様のようにくるくる回っていた。
それをまたこっそりと見ていたフロリナは心の中でその姿を決して忘れることのないように萌えていた。
----------------------
お礼を伝え、各荷物を抱えたアレックスとツキヨ、フロリナはエリザベスの極太上腕二頭筋と大変豊かな胸筋に意識を失う寸前まで抱き締められて店をあとにした。
途中で、新しい菓子店で木の実の焼き菓子をお土産に購入をすると、ツキヨも嬉しそうな顔で買った菓子のことやフロリナから聞いた今評判の劇を観たいなどと話しながらゆるゆると馬車へ向かう。
「あー…フロリナ…ちょっと…」
「お館様、心得ております。ゲオルグ様にお会いしてきますのでお二人でお戻りください。お手を煩わす程ではございませんので」
「おう、頼んだぞ」
「はい。では、お館様、ツキヨ様。失礼いたします」
さっと音もなくフロリナは歩いてきた人の多い道を戻って行った。
「ちょっと忘れもんしちまって…」
「あら…大変ですね」
アレックスはツキヨの体を庇うように早々に馬車へ戻ると乗り込み屋敷へ向かった。
***
フロリナは雑踏を抜けて気配を追う…が、気配をここまで残すのは罠なのではないのかと疑うくらい雑な存在を町外れに追い込む。
気配は徐々に呼吸が乱れ、やがて1本の木の近くで止まるがフロリナは何一つ乱れていない。
適当な追跡技術を学んだ程度なのか目立たない服装の金髪の男と白髪交じりの男はハァハァと乱れた呼吸を整えながら腰に隠していた通常よりやや短めの剣を抜く。
「よう…お譲さん…追跡お疲れ様だな。ふぅ…さすがにおっさんの元にいるヤツだな。帰って追跡しましたぁってご報告してただいまーのご挨拶でもすんのか?」
「それとも、このまま木の栄養にでもなって屋敷に帰らないつもりかい?」
白髪の男がニヤリと笑う…二人組はフロリナを脅すように剣を見せつける。
「…いやぁ…ここでおいしくいただくのもいいかもしれねぇなぁ…」
金髪の男が下品な笑顔を見せる。
そろそろ夕方も過ぎ薄闇に包まれて周囲には人もいない…「こんな誰もいないところへわざわざ俺達をお誘いするんだから…何かいいお考えでも?」…とニヤニヤと白髪男が笑う。
キィン!と金髪の男が剣を横へ振るうがスルリとフロリナはかわす…そこへ白髪男が上段から剣を振り下ろすがざぁっと横へ転がり避ける。
「追跡のご専門は機敏だねぇ」
「さぞ、いい体なんだろうよ。堪んねぇなぁ」
二人組は同時に上下左右から剣を振るうが糸一筋も掠りもせずフロリナはしなやかに避け、落ちていた太めの木の枝で男らの剣を受け止めて、素早く後退をして距離を取る。
「お、やるじゃねぇか」
「そろそろ捕獲するか?」
枝から剣を抜く…
「捕獲…だけですか?危険な物や人物は滅殺が基本です。そのまま生存をさせることは機会を与えたままになるだけです」
薄闇に包まれたフロリナは小さく「神代の古武器…今、命を吹き返せ」とつぶやくと、両手がぼぅと光る…。
すると、この世界には有り得ないほど細かく複雑で奇怪な部品が組み込まれ、先端は細い筒状になっている黒鉄製のものが両手に握られていた。右手にあるのはフロリナの顔よりもやや大きめで、左手にあるのはそれよりもずっと長いものだったが、そもそもそれが武器なのかも不明だった。
「ち、だから魔族の相手は面倒くせぇんだよ…なんだよアレは…」
白髪の男は剣を抜いた枝をフロリナへ向かって投げつけた…フロリナは右手で握る部分がぽわんと光って小さな取手を人差し指でくぃっと引く…
パタタタタタタ!
と何かの発射音が連続で鳴り響くと枝はボロボロに成り果てた。
「これについて無駄な知的好奇心は持たないでください。このあとは必ず死ぬので教える意味が一切ありません…私の口角筋の無駄遣いです。どなたに雇われ、目的が何かを死ぬ前までで結構なので教えてください」
ぼぅ…と何かが充填されて右腕のものから同じ連続の発射音が木の枝に向かって発射されると、どさり…と大きな枝が二人組の目の前に落ちた。
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