闇より深い暗い闇

伊皿子 魚籃

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闇-50

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 ツキヨは豊かな胸筋の間に挟まれながら目を覚ました。体中がぎしぎしと軋み、重い。
 朝日の中、ぼんやりとどうしてこのような事態になったかと考えるが全裸でアレックスに抱きかかえられ、体が言うことをきかないと上手くまとまらない。

 1人で寝ていたはずなのに…。

 くかー…とアレックスは幸せそうに寝ている。
 忙しそうなときには眉間に皺ができるが、今はないのと見ると睡眠もも十分な様子だった。
ツキヨにしてみたら体力的に今にも二度寝してしまいそうな状態だが。

 …惰眠を貪るとは言うがそれに抗らうことができるのは魔族でも人でも少ないだろう。
 また、うとうと…とツキヨも眠ってしまった。

***

 アレックスはツキヨの豊かな胸に挟まれて目を覚ました。昨夜の苦痛が嘘のように体は軽い。
 昼前の陽射しの中、ここにいることが子供のように嬉しくなるが全裸で柔らかいツキヨの体を抱きかかえていると、仕事や難しいことは考えたくなくなる。

 口づけだけで寝るはずだったのに…。

 すぅすぅ…とツキヨは少し疲れた顔つきで寝ている。
 いつもは笑顔で年頃の女の顔をしているが、今は自身のせいとはいえ疲れて寝入っている様子だった。
アレックスにしてみたら体力的に今にもまた襲ってしまいそうだ状態だが。

 …惰眠を貪るという言葉には抗らうことができるのは魔人でも人でも少ないだろう。
 また、うとうと…とアレックスも眠ってしまった。


***
「んぁ…ん。お…結構寝ちまったな…」
「ふ…アレックス様…」
「よう、お姫様。おはよう」
 唇にわざとちゅっと音を鳴らして口づけをした。
「お…おはようございます」
「今朝も可愛いな」
 宝石以上に美しい菫色の瞳を輝かせ幸せそうに細める。
「まだまだ俺はツキヨが食べ足りないが…起きないとツキヨが死んじまうからな…」

 ぐぅー…

 ツキヨのお腹の虫が挨拶をした。
「ははは!」
 真っ赤になってツキヨは掛け布に潜った。
「ちょっとシャワーを浴びてくるが…一緒に浴びるか?」
 艶のある声が聞こえるが過去のアレックスの所業から全力で拒否をする。
「そーか。残念だな…少し待ってろよ」
 掛け布で丁寧にツキヨを包んで抱きかかえる。
「え…」
 そのまま浴室へ連れて行かれる…身の危険を感じる…。


 …。

 ザバザバ!と2人は普通に体を洗い、浴槽につかる。
ツキヨの部屋の少し小さい浴槽のため2人で余裕を持って入ることができない。それを理由にして正々堂々と抱きかかえられてるがアレックスから不埒な様子はない。
「ぷはーー!真昼間に風呂に入るのはいいねぇー!ふはー!」
 アレックスはただのお風呂大好きおっさんになっていた。

 ハーブの入った袋から爽やかな香りが疲れた体を包み込む。
「き、気持ちいいですね…」
 少し恥ずかしそうに答える。
「今度、外に風呂でも作るかぁ!楽しいぞー!!」
「か、考えておきます…」
 黒髪を一束手に取ると艶めく黒色に口づけた。

 アレックスの銀髪とは相反する色だがその身を闇より深い闇色に愛される身として絡め取り、この身に決して離れぬように結びつけておきたかった。
 そんな仄暗い欲望を振り切るようにアレックスは浴槽から出て立ち上がった。
「少し、ゆっくり入ってろよ。疲れさせた俺が悪いんだからな」
 恥ずかしそうに頬をぽりぽりと掻いてから濡れた体を拭いた。
「…はい」

 アレックスから遅れて浴室を出ると最近、薄い桃色の生地に張り替えた応接室の長椅子にアレックスはだらんと座っていた。
 テーブルには毎度お馴染みになってしまったが並んでいた。思わず頭を抱えたくなる恥ずかしさにツキヨは顔を真っ赤にした。

 そんな居たたまれなさは、冷たい果実水を口にするとすきっと消え去る。
 後は胃袋の指示に従うだけだった。

「あの…アレックス様。その…えーっと。昨日はどうして…こ、こちらへ…夜にお仕事がとは聞いていましたが…」
 今日は特別に紅茶に蜂蜜をいれて飲む。
「あ…あぁ。まぁ…厄介事が多くてよ…おう、ツキヨに会いたくなったんだ」
 珍しくアレックスは恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「なんか大変なんですね」
「おう。でも、ツキヨに会ったからもう元気だぜ」
 ニカニカと笑いながらツキヨの頭をぽんぽんと撫でる。


「元気が出たから…織機でも見に行くか!?実は…ツキヨ先生に…お願いがありましてよ」
 テーブルの下から箱を取り出してぱかっと開けて見せた。
「え?!?!これは?!あの…あの糸ですか?」
「おう。一番最初に布にするのに相応しい糸が紡がれたんだぜ!」
 艶やかな糸が月の色をたっぷりと纏い布になるのを今か今かと待っている。
「これをブラウンさんのおばあ様に…」
「そうだ。そのばあさんも楽しみにしているぜ!ちょっとしたら行こうぜ」
 それを待っていたかのようにフロリナが入室をしてツキヨの外出の支度をアレックスに邪魔をされながらする。

 フロリナに完璧に支度を整えられて、そのまま荷物を持ちアレックスの影移動でブラウンの丸太小屋へ向かった。

 ツキヨはアレックスの影移動に慣れてしまうのが恐ろしかった。
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