闇より深い暗い闇

伊皿子 魚籃

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闇-31

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 体を薬湯でゆっくりと温めるとも解決した…ような気がして浴室から出た。
 フロリナは体を拭いて、着替えを手に取ると…柔らかい素材で汗もよく吸い取ってくれるお気に入りの湯上り用のナイトドレスがあった。フロリナの優しさに感謝をする。
 濡れた髪の水分を拭き取り、ルームシューズを履いてアレックスの部屋に戻った…ら長椅子に座っていた乙女おっさんが「きゃっ!」と顔を隠したまま、パタパタと浴室へ行ってしまった。

【私は一体…】
 ツキヨは体を見られたことよりも何故か乙女になってしまったアレックスの方が心配だった…がテーブルを見ると傷薬があったので痛みを感じた部分に少しずつ塗り始めた。
 レオのいつかの助言で「放っておいて大丈夫」というのを思い出した。


 アレックスは汚れた服を脱ぎ、熱いシャワーを頭から浴びて顔をガシガシと洗う。
【見てしまった…って俺は今まで女の身体なんて飽きるほど見てきたのに】とザブンと浴槽へ浸かる。
 華奢な体型に胸が豊かだとは知ってはいたが…股間に熱が滾る…自分のことが酷く醜く感じるが目に焼きついたツキヨの姿に興奮する自分も赦したかった。

 何よりも愛しく恋しいツキヨ…いい歳して興奮のままに貪るようなことはないが愛し過ぎてしまい…いや、むしろこんな日にそんなことを考えるのも…でも、俺が癒して…でも…だって…。
 とりあえず、一度冷静になろうとを宥めるように手をかけた。

【俺はガキか…】と大量の白濁液がシャワーの湯でドロドロと流れていくのを見てアレックスはさっさと体や髪を洗って、楽な室内着に着替えた。


 部屋へ戻るとツキヨは長椅子に座って飲み物を飲んでいた。 
 濡れた黒髪はツヤツヤと輝き、うなじには微かに汗が滲んでいた。暑いのか唇は少し赤みが増していて今飲んだもののせいか濡れている。
「アレックス様…ごめんなさい。すっかり寛いでしまって…」
 さっと立ち上がるとツキヨは頭を下げると同じ石鹸の香りが部屋に充満する。
「いや、いいんだ。俺もジタバタして悪かったし…その…風呂…で…すまねぇな…」
 右の手で頬をポリポリと掻いた。
「び、びっくりしたけど、大丈夫です。アレックス様は何か飲みますか」
 恥ずかしそうに微笑んだツキヨにより反省をした。

 テーブルには飲み物以外にも簡単につまめる物や干し果物、焼き菓子や木の実の菓子などもある…アレックスは奥の小部屋からボトルと薄いガラスが輝くグラスを2つ持ってきた。
「帝国の南部の方で採れる白ワインだ…すっきりしていて飲みやすい。こいつをツキヨと飲みたくなったぜ」
 ニカッと笑ったアレックスはボトルを抜栓してグラスへ注ぐ…白ワインの爽やかな香りが鼻孔を擽る。
 ぐらすをツキヨの小さな手に渡し、長椅子の隣に座る。
「もう、痛くないか?」
「そこにあった傷薬を塗りましたので大丈夫です」
「そうか…ん。いろいろ…悪かった…すまねぇな。でも、俺はツキヨを守るって決めたぜ」
 アレックスはツキヨの頬に軽く唇で触れてから「…俺の…愛する…ツキヨに乾杯だ」とグラスをツキヨに向けると「はい。私のアレックス様…乾杯…」と赤い顔でグラスを合わせ2人で一口飲んだ。
 口の中に白葡萄の甘酸っぱい味が広がる…清涼とも少し違う飲みやすさに驚く。
「おいしいですね。これは…干した果物が合いますね」
 ツキヨの声にのって白葡萄が広がる。杏の干したのをアレックスはツキヨに渡す…パクリとツキヨが噛むと杏すらも卑猥なものに見える。
「ん、うまいか?」
「はい!」
 アレックスは胡桃を口に放り込む「俺は塩味のものなら何でも合うと思ってるぜ」ともう一個落花生をコリコリと食べる。
「男の人は…甘いものよりそういったものがお好きですよね。スコーンは別腹ですか?ふふふ…」
 一口飲むツキヨの喉が小さく上下をする…少し頬が赤くなってはいるが酩酊している様子はない。
「スコーンは女ボスから取り上げられねぇように気をつけねえといけねぇな」
 ぐっとアレックスは残りを飲むとボトルの栓を開けてツキヨと自分のグラスにも注ぐ。
「スコーンだけは譲れねぇが…干したこいつは我がボスのだな…取引は完璧だ!ハハハ!」
 また干した葡萄と無花果を手に取りツキヨボス渡す取引
「ふふふ。ボスは優しいのですから!これは取引完了ですね」
 一口ごくりと飲むと少し濡れた唇のツキヨは細い手を伸ばしてザラッと木の実を何個か手で掴む…パラとアレックスの手のひらにのせる。
 落花生を1個摘むとアレックスは「優しいねぇ…」といいツキヨの口へ放り込み、また一口飲む。
 ツキヨはそっと隠し持っていた干し葡萄をアレックスの口へ放り込む…「お!」と驚くアレックスだがツキヨの柔らかいほほを摘み「干からびたもんよりも、俺はこっちがいいぜ」とカプと甘噛みをする。
 ペチとツキヨはアレックスの手を叩く「食べ物じゃありません」といい一口飲む。
 アレックスもぐっとまた飲む…「じゃあ、この頭からつま先まで甘い香りのするこれは何だ?ん?」と黒髪に顔を埋める…「私は…果物ではありませんよ」とそっとアレックスの体を押し返す。
 ボトルに残った分を2人のグラスに分けて注ぐ…「そうか…なんだろうな?」と一口飲んで微かに葡萄の香りがする低い声でツキヨの耳元で囁く。
「…ん…なんだと思いますか?」
 最後の一口を飲んだツキヨは艶のある唇でアレックスに問う。
「さぁ…なんだろうな…確認しねぇとわかんねぇよ…」耳を食む…が「やっぱり…わかんねぇな…この甘い生物…は。果物じゃねぇのは確かだ…」と言うとツキヨの顔を横に向ける「…なんでしょうか?ふふ…」と微笑むツキヨの唇を塞いだ。

「そうだな。ちゃんと調べねぇと…な…」
 さっきよりもぐっと強くアレックスは唇を塞いだ。
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