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闇-26
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アレックスとマルセルはお互いにずぶ濡れのハンカチを見て、ニヤリと笑った。
「思うことはアレックスさんと同じですね」
「あぁ。いいじゃねえか。マルセル」
アレックスとマルセルはお互いに不思議な友情を感じていた。同じ方向を向いて、前に少しずつ進もうとする…同志として、友人として…そして…
「…糸を布にできたら、糸はマルセルんとこから仕入れる。栽培可能地域がここくらいだというのもあるが糸を作るのには領民を年齢問わずに雇用をする。あとは草をボーボー育てて糸にしてこっちに専売しろ。加工小屋が必要なら俺が資金を提供する。
織った布も専有販売で『帝国でしか織れない、売れない』になれば付加価値もつくし、お互いのところにいる困っているやつの懐も潤って万々歳だ」
マルセルも計画がまさにあと少しで産声を上げていくことを実感する。
「あと、マルセルは帝国内の金預け所に自分の預け口を作れ。
これは万が一、あいつらが金があることを嗅ぎつけたときに帝国内なら遠いうえに本人以外に出せないからな。
まぁ、この辺は軌道に乗ってからの話だ。今は織機を造ることと質のいい糸の生産性をあげることだな」
「それなのですが、領民で私の幼馴染の祖母が子供の頃に糸を撚っていたと…それで助言をもらったのです。今日、渡した糸はその助言を元に糸にしたものですが…今までの糸より何倍も素晴らしい質です。
これ以上に糸を撚って、生産性を向上させれば…誰もが納得するものができると思います!」
「そうか!期待してるぜ!」
お互いガッシリと握手をした。
悪ガキが秘密基地で親に内緒で計画を立てている…2人ともそんな笑顔だった。
「よし、そろそろ公爵様になって帰るぜ。また、今度はここの2人の娘のことで3日後に俺以外のやつも連れて来る。面倒臭いけどよろしくな」
溜息交じりにアレックスはアルフレッド様に姿を変えて結界を解く。
「ええ、かしこまりました。ぜひ、何もありませんがご友人も一緒に足を運んでください。馬のことについて侯爵から聞いた情報をもっと調べておきますので」
マルセルが書斎の扉を開けるとサッと扉から離れたマリアンナと娘たちは廊下に活けたままで枯れた花を持って、また活けていた。
「こちらこそ同じ趣味を持つ友人も楽しみにしていますのでご一緒しますね…それから奥様とお嬢様にもお会いできるのも最近は楽しいですから…【最近、心臓が痛いのは気のせいだろうか…俺も寿命かな】」
マルセルと階段を降りながらアレックスは後からついてきた3人へ微笑んだ【死んだ。あぁ、死んだ】
「ま、まぁ!!!そ、そんな!おほほほほ!!!」
「お母様、わたくしアルフレッド様と…こんなことになるなんて…やはり運命の女神様が…あぁ、愛の力の…云々」
「ミリアンは…ミリアンは…お会いできることだけで幸せでございますぅ~!」
扇子で階段の手摺りをバッシンバッシン叩いて、メリーアンはまた呪詛を口にし始めて、ミリアンはそのまま妄想の世界へ跳んで行った。
「では、また。失礼します…【帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい…】」
マルセルのみに挨拶をしてアレックスはカトレア邸を後にした。そして、暗がりで影に静かに潜った。
-----------------------
私室で出迎えたレオは開口一番「今夜は叫べるように結界を既に張っているけど…」とニヤニヤと言う。
眉間の皺が地獄の挟間の深さより深く、ご機嫌が斜めになりすぎて水平になったアレックスは「…ぁぁん?叫ぶ気力もねぇよ。今度はレオも行くんだからな!覚悟しろよ。楽しいぃぃぃんだからなぁぁぁ」と目が座っていた。
その夜、レオは悪夢にうなされた。
「アレックス様…なんか、お疲れでしょうか…顔色があまりよくないような」
朝、テラスで朝食を食べながらツキヨが心配そうに見つめている。
今日のツキヨは薄い黄色で胸下からのスカートは薄い布が重ねられているものである…しかし、そのドレスはアレックスが特に胸元を広めに作ったものだが、それをツキヨには誤魔化すように胸元に布製の愛らしい白い花の飾りがついている。
それを着たツキヨを見るとアレックスの魔気が充填されるのは何故なのだろうか。
「いいや、そんなことはないから。安心しろ。俺は…ツキヨの笑顔があれば元気になるからな!」
笑顔でアレックスがポンポンと頭を撫でると、ツキヨは赤い顔で「わ、私が元気の源なら良かったです!!」と言うが結局、恥ずかしいのか俯いてしまう。
「まだまだですね…攻めの一手が撃てない…のがこの勝負の分け目かと…」
「チッ、今までとは違う…あのおっさんは本来はあんな純情な訳がない、3桁だけど限りなく4桁に近い履歴があるんだぞ!」
戦況の読めないレオとフロリナは、もう一度賭けをし直そうかと相談をしている。
フロリナが花の香りのする新しい紅茶を淹れてくれたのをゆっくり飲みながら織機の話をする。
「織機の新しい情報が手に入って…これで織機がうまく造れるかもしれない。あと、これを見てくれ」
濃紺のベストの内ポケットから1束の糸をそっと取り出した。
「これは?絹…ですか?」
興味津々な様子でツキヨを糸を見つめる。
「いいや。これは…まだ開発中だからツキヨでも秘密だけどよ、これは絹じゃねえ。新しい糸なんだよ。
この間の織機でこれを織って布にしてえんだよ」
「絹よりも繊細で…色も黄金色だし質も全く違いますね…これを織るなら母の織機なら糸の強さなど細かい調整ができたはずなので…織れるかもしれませんね…。でも、これは織ったら絹よりも輝く素晴らしい布になりますね!!きっと、布ができたら女性は競い合うようにドレスを仕立てると思います!」
アレックスはツキヨの優しくて力強い言葉に心の底から励まされ、太鼓判を押されたように安心をした。
あれこれと動いている中で心の底に不安という澱が少しずつ溜まっていたのも事実でもある。マルセルもきっと同じだろう…今度会ったらこのツキヨの言葉を伝えることに決めた。
「おう。やっぱり絶対にいい布になるな。フロリナ、今はどんなドレスの色や形が流行っているんだ?」
「はい。お館様。本日はお時間があるようですので…お2人で帝都の洋品店へいくのはいかがでしょうか…先日のカフェも修理が終わったと聞きましたし…」
フロリナが動いた。
「思うことはアレックスさんと同じですね」
「あぁ。いいじゃねえか。マルセル」
アレックスとマルセルはお互いに不思議な友情を感じていた。同じ方向を向いて、前に少しずつ進もうとする…同志として、友人として…そして…
「…糸を布にできたら、糸はマルセルんとこから仕入れる。栽培可能地域がここくらいだというのもあるが糸を作るのには領民を年齢問わずに雇用をする。あとは草をボーボー育てて糸にしてこっちに専売しろ。加工小屋が必要なら俺が資金を提供する。
織った布も専有販売で『帝国でしか織れない、売れない』になれば付加価値もつくし、お互いのところにいる困っているやつの懐も潤って万々歳だ」
マルセルも計画がまさにあと少しで産声を上げていくことを実感する。
「あと、マルセルは帝国内の金預け所に自分の預け口を作れ。
これは万が一、あいつらが金があることを嗅ぎつけたときに帝国内なら遠いうえに本人以外に出せないからな。
まぁ、この辺は軌道に乗ってからの話だ。今は織機を造ることと質のいい糸の生産性をあげることだな」
「それなのですが、領民で私の幼馴染の祖母が子供の頃に糸を撚っていたと…それで助言をもらったのです。今日、渡した糸はその助言を元に糸にしたものですが…今までの糸より何倍も素晴らしい質です。
これ以上に糸を撚って、生産性を向上させれば…誰もが納得するものができると思います!」
「そうか!期待してるぜ!」
お互いガッシリと握手をした。
悪ガキが秘密基地で親に内緒で計画を立てている…2人ともそんな笑顔だった。
「よし、そろそろ公爵様になって帰るぜ。また、今度はここの2人の娘のことで3日後に俺以外のやつも連れて来る。面倒臭いけどよろしくな」
溜息交じりにアレックスはアルフレッド様に姿を変えて結界を解く。
「ええ、かしこまりました。ぜひ、何もありませんがご友人も一緒に足を運んでください。馬のことについて侯爵から聞いた情報をもっと調べておきますので」
マルセルが書斎の扉を開けるとサッと扉から離れたマリアンナと娘たちは廊下に活けたままで枯れた花を持って、また活けていた。
「こちらこそ同じ趣味を持つ友人も楽しみにしていますのでご一緒しますね…それから奥様とお嬢様にもお会いできるのも最近は楽しいですから…【最近、心臓が痛いのは気のせいだろうか…俺も寿命かな】」
マルセルと階段を降りながらアレックスは後からついてきた3人へ微笑んだ【死んだ。あぁ、死んだ】
「ま、まぁ!!!そ、そんな!おほほほほ!!!」
「お母様、わたくしアルフレッド様と…こんなことになるなんて…やはり運命の女神様が…あぁ、愛の力の…云々」
「ミリアンは…ミリアンは…お会いできることだけで幸せでございますぅ~!」
扇子で階段の手摺りをバッシンバッシン叩いて、メリーアンはまた呪詛を口にし始めて、ミリアンはそのまま妄想の世界へ跳んで行った。
「では、また。失礼します…【帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい…】」
マルセルのみに挨拶をしてアレックスはカトレア邸を後にした。そして、暗がりで影に静かに潜った。
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私室で出迎えたレオは開口一番「今夜は叫べるように結界を既に張っているけど…」とニヤニヤと言う。
眉間の皺が地獄の挟間の深さより深く、ご機嫌が斜めになりすぎて水平になったアレックスは「…ぁぁん?叫ぶ気力もねぇよ。今度はレオも行くんだからな!覚悟しろよ。楽しいぃぃぃんだからなぁぁぁ」と目が座っていた。
その夜、レオは悪夢にうなされた。
「アレックス様…なんか、お疲れでしょうか…顔色があまりよくないような」
朝、テラスで朝食を食べながらツキヨが心配そうに見つめている。
今日のツキヨは薄い黄色で胸下からのスカートは薄い布が重ねられているものである…しかし、そのドレスはアレックスが特に胸元を広めに作ったものだが、それをツキヨには誤魔化すように胸元に布製の愛らしい白い花の飾りがついている。
それを着たツキヨを見るとアレックスの魔気が充填されるのは何故なのだろうか。
「いいや、そんなことはないから。安心しろ。俺は…ツキヨの笑顔があれば元気になるからな!」
笑顔でアレックスがポンポンと頭を撫でると、ツキヨは赤い顔で「わ、私が元気の源なら良かったです!!」と言うが結局、恥ずかしいのか俯いてしまう。
「まだまだですね…攻めの一手が撃てない…のがこの勝負の分け目かと…」
「チッ、今までとは違う…あのおっさんは本来はあんな純情な訳がない、3桁だけど限りなく4桁に近い履歴があるんだぞ!」
戦況の読めないレオとフロリナは、もう一度賭けをし直そうかと相談をしている。
フロリナが花の香りのする新しい紅茶を淹れてくれたのをゆっくり飲みながら織機の話をする。
「織機の新しい情報が手に入って…これで織機がうまく造れるかもしれない。あと、これを見てくれ」
濃紺のベストの内ポケットから1束の糸をそっと取り出した。
「これは?絹…ですか?」
興味津々な様子でツキヨを糸を見つめる。
「いいや。これは…まだ開発中だからツキヨでも秘密だけどよ、これは絹じゃねえ。新しい糸なんだよ。
この間の織機でこれを織って布にしてえんだよ」
「絹よりも繊細で…色も黄金色だし質も全く違いますね…これを織るなら母の織機なら糸の強さなど細かい調整ができたはずなので…織れるかもしれませんね…。でも、これは織ったら絹よりも輝く素晴らしい布になりますね!!きっと、布ができたら女性は競い合うようにドレスを仕立てると思います!」
アレックスはツキヨの優しくて力強い言葉に心の底から励まされ、太鼓判を押されたように安心をした。
あれこれと動いている中で心の底に不安という澱が少しずつ溜まっていたのも事実でもある。マルセルもきっと同じだろう…今度会ったらこのツキヨの言葉を伝えることに決めた。
「おう。やっぱり絶対にいい布になるな。フロリナ、今はどんなドレスの色や形が流行っているんだ?」
「はい。お館様。本日はお時間があるようですので…お2人で帝都の洋品店へいくのはいかがでしょうか…先日のカフェも修理が終わったと聞きましたし…」
フロリナが動いた。
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