22 / 150
闇-22
しおりを挟む
アレックスの前にマリアンナの娘、メリーアンとミリアンが淑女の礼らしきことをして自己紹介をして椅子に座った。
「ほほほ…お忙しいのに、申し訳ございません。娘が是非ご挨拶をさせてほしいとのことで同席をさせていただきましたの」
扇子でマリアンナはばっさばっさと仰ぎながら娘はどーのこーのと紹介をするがアレックスはニコニコしながらもほとんどを話を聞かずに【帰りたい】とレオに言霊を何度も送っていた。
「当代のマリスス公爵様は…その、ご子息、ご令嬢が多いと…アルフレッド様はご子息としては何番目になりまして?」とマリアンナはニンマリと聞いてきた。
マリスス公爵家はアレックスが適当に名乗ったのでは無く、エストシテ王国に実在する名門の公爵家でありながらも王国の影の実力者として君臨している家だ。
王家とも結びつきが強く、公爵家を叩けば人身売買や闇売春窟の経営など埃が大量に出てくるが誰も手出しができない。
当代のジョルジュ・ドゥ・マリスス公爵には妻以外にも女を囲い、庶子の数は両手足の指でも足りないとも言われている。
しかし庶子であっても見目が良い、身体が強い、学問が優れている…と判断されると実子として公爵家で育てているが、公爵は子供に無頓着で人数すら把握していない。そして、マリスス公爵家の子と名前を騙っても王都まで遠い田舎の弱小貴族が『アルフレッド』について正確に情報を得ることもほぼ不可能だった。
「私は男子としては3番目で全ての兄弟姉妹の中では9番目です」
当然マリアンナは男兄弟の上の方であれば公爵家を継ぐ可能性が高いと単純に考えるだろうと踏み、3番目と言えば母娘で目をキラキラさせてアレックスに愛想を振りまき、媚を特売価格で売る。
「まぁ、将来は公爵様になられる…素晴らしいですわねぇ…ほほほ…その時は当家の娘たちも是非ご一緒に隣に立たせていただく…なぁんて、おほほほほほほ!」
マリアンナは興奮をしてばっしんばっしんと扇子で長椅子を叩く…埃がほわほわと舞うのを見ると掃除の不得意なアレックスですら掃除をしたくなる。
「アルフレッド様、わたくし…その美しい空のような瞳、輝く黄金の髪を末永く見つめて過ごしていきたいですわ…」
頬を赤らめてメリーアンが語るがアレックスは背筋がゾクゾクしてきたため思わず【風邪をひいたかもしれない】とレオへ言霊を送った。
「わたくしは、アルフレッド様のお仕事を支える貞淑な妻として一緒に歩んで幸せな日々を送りたいですぅ…」
ミリアンも夢見る乙女のようなうっとり顔になる…アレックスは笑みを湛えたまま意識を失った…。
【帰りたい!】
外からキィキィと門が開く音にアレックスは気がついたが母娘は花嫁衣装の話で大盛り上がりで何も気にもしていない。
玄関でメイドが出迎えて「マ、マリスス公爵の息子さんがぁ旦那様に手紙を持って来て応接室に奥様と何かいます…ふあぁ…」と伝えると応接室へ静かに走る音が近づいた。
扉を叩く音がすると「あぁ、恐らく主人ですわ」とマリアンナが冷たく言うと「失礼いたします」ときびきびとした声がして扉が開いた。
「夜分にこのような所へ手紙を届けていただいたとお聞きいたしました。私はマルセル・ドゥ・カトレアでございます。男爵の爵位を王国より賜っております」
マルセルは一貴族の当主として美しい礼をしたことにアレックスも公爵家のものとして立ち上がりその礼に応える。
「私はアルフレッド・ドゥ・マリススと申します。女性のみで留守を預かっている中、申し訳ありません。旅の遊学中にある旅人より手紙を託されて訪問をいたしました」
脱いで置いてあった薄い毛織物の外套から、今は地味な封筒を取り出した。
「アルフレッド様、わざわざ届けていただきありがとうございます。早速ですが確認をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「いえ、実はその旅人より理由は不明ですが『カトレア男爵と2人きりで開封をしてほしい』と依頼をされています。私室などで私と開封をしてもらえればと思いますがいかがでしょう」
全員に貴公子スマイルをばら撒けば、地位と笑顔に逆らうものはなく「少々散らかってはおりますが私の書斎でよろしければ」とマルセルは案内を申し出た。
マリアンナたちは仕方がないとはいえ不満げだった。
手摺りにうっすらと埃のある階段を上りマルセルが2階の書斎の扉を開け、そっと火を灯しアレックスに椅子をすすめる。
「何もお構いをできず申し訳ありません」
明かりのせいでマルセルのやつれた様子がはっきりとわかる。
散らかっているとは言うが磨かれた机、きちんと畳んである膝掛け、書棚にきっちりと収められた書籍類を見てアレックスはやっと落ち着いた気持ちになる。
「いえ…お気になさらず…これが手紙です。恐らく驚かれると思いますが…」
地味な封筒を破くとマルセルもぎょっとしたが中から白地に葉の模様の入った封筒を出してマルセルに渡した。
「え…こ、これは?!『お父様へ』…この字は…え…ツ、ツキヨ?」
「シッ!お静かに…今から私のことも含め話します」
アレックスは靄に包まれて元の姿に戻り、目を見開き驚いているマルセルに静かに事情を話し始めた。
マルセルは目の前の銀髪で菫色の瞳を持つ男から話を聞き…そして、手紙を読んだ。
そして、ぽろぽろと涙を溢しながら静かに「あなたがアレックスさんですね…」と謝罪や礼が様々に入り混じった礼をした。
アレックスは何も答えずに嗚咽をするマルセルの言葉を待つ。
ポケットからきれいなハンカチを取り出してマルセルは顔を拭い一息呼吸をすると「お見苦しいところをおみせして失礼しました」と落ち着いた口調を取り戻した。
「俺はツキヨ…からの手紙を届けにきただけだから安心しろ」
いつもの低いアレックスの声が狭い書斎に響いた。
「ほほほ…お忙しいのに、申し訳ございません。娘が是非ご挨拶をさせてほしいとのことで同席をさせていただきましたの」
扇子でマリアンナはばっさばっさと仰ぎながら娘はどーのこーのと紹介をするがアレックスはニコニコしながらもほとんどを話を聞かずに【帰りたい】とレオに言霊を何度も送っていた。
「当代のマリスス公爵様は…その、ご子息、ご令嬢が多いと…アルフレッド様はご子息としては何番目になりまして?」とマリアンナはニンマリと聞いてきた。
マリスス公爵家はアレックスが適当に名乗ったのでは無く、エストシテ王国に実在する名門の公爵家でありながらも王国の影の実力者として君臨している家だ。
王家とも結びつきが強く、公爵家を叩けば人身売買や闇売春窟の経営など埃が大量に出てくるが誰も手出しができない。
当代のジョルジュ・ドゥ・マリスス公爵には妻以外にも女を囲い、庶子の数は両手足の指でも足りないとも言われている。
しかし庶子であっても見目が良い、身体が強い、学問が優れている…と判断されると実子として公爵家で育てているが、公爵は子供に無頓着で人数すら把握していない。そして、マリスス公爵家の子と名前を騙っても王都まで遠い田舎の弱小貴族が『アルフレッド』について正確に情報を得ることもほぼ不可能だった。
「私は男子としては3番目で全ての兄弟姉妹の中では9番目です」
当然マリアンナは男兄弟の上の方であれば公爵家を継ぐ可能性が高いと単純に考えるだろうと踏み、3番目と言えば母娘で目をキラキラさせてアレックスに愛想を振りまき、媚を特売価格で売る。
「まぁ、将来は公爵様になられる…素晴らしいですわねぇ…ほほほ…その時は当家の娘たちも是非ご一緒に隣に立たせていただく…なぁんて、おほほほほほほ!」
マリアンナは興奮をしてばっしんばっしんと扇子で長椅子を叩く…埃がほわほわと舞うのを見ると掃除の不得意なアレックスですら掃除をしたくなる。
「アルフレッド様、わたくし…その美しい空のような瞳、輝く黄金の髪を末永く見つめて過ごしていきたいですわ…」
頬を赤らめてメリーアンが語るがアレックスは背筋がゾクゾクしてきたため思わず【風邪をひいたかもしれない】とレオへ言霊を送った。
「わたくしは、アルフレッド様のお仕事を支える貞淑な妻として一緒に歩んで幸せな日々を送りたいですぅ…」
ミリアンも夢見る乙女のようなうっとり顔になる…アレックスは笑みを湛えたまま意識を失った…。
【帰りたい!】
外からキィキィと門が開く音にアレックスは気がついたが母娘は花嫁衣装の話で大盛り上がりで何も気にもしていない。
玄関でメイドが出迎えて「マ、マリスス公爵の息子さんがぁ旦那様に手紙を持って来て応接室に奥様と何かいます…ふあぁ…」と伝えると応接室へ静かに走る音が近づいた。
扉を叩く音がすると「あぁ、恐らく主人ですわ」とマリアンナが冷たく言うと「失礼いたします」ときびきびとした声がして扉が開いた。
「夜分にこのような所へ手紙を届けていただいたとお聞きいたしました。私はマルセル・ドゥ・カトレアでございます。男爵の爵位を王国より賜っております」
マルセルは一貴族の当主として美しい礼をしたことにアレックスも公爵家のものとして立ち上がりその礼に応える。
「私はアルフレッド・ドゥ・マリススと申します。女性のみで留守を預かっている中、申し訳ありません。旅の遊学中にある旅人より手紙を託されて訪問をいたしました」
脱いで置いてあった薄い毛織物の外套から、今は地味な封筒を取り出した。
「アルフレッド様、わざわざ届けていただきありがとうございます。早速ですが確認をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「いえ、実はその旅人より理由は不明ですが『カトレア男爵と2人きりで開封をしてほしい』と依頼をされています。私室などで私と開封をしてもらえればと思いますがいかがでしょう」
全員に貴公子スマイルをばら撒けば、地位と笑顔に逆らうものはなく「少々散らかってはおりますが私の書斎でよろしければ」とマルセルは案内を申し出た。
マリアンナたちは仕方がないとはいえ不満げだった。
手摺りにうっすらと埃のある階段を上りマルセルが2階の書斎の扉を開け、そっと火を灯しアレックスに椅子をすすめる。
「何もお構いをできず申し訳ありません」
明かりのせいでマルセルのやつれた様子がはっきりとわかる。
散らかっているとは言うが磨かれた机、きちんと畳んである膝掛け、書棚にきっちりと収められた書籍類を見てアレックスはやっと落ち着いた気持ちになる。
「いえ…お気になさらず…これが手紙です。恐らく驚かれると思いますが…」
地味な封筒を破くとマルセルもぎょっとしたが中から白地に葉の模様の入った封筒を出してマルセルに渡した。
「え…こ、これは?!『お父様へ』…この字は…え…ツ、ツキヨ?」
「シッ!お静かに…今から私のことも含め話します」
アレックスは靄に包まれて元の姿に戻り、目を見開き驚いているマルセルに静かに事情を話し始めた。
マルセルは目の前の銀髪で菫色の瞳を持つ男から話を聞き…そして、手紙を読んだ。
そして、ぽろぽろと涙を溢しながら静かに「あなたがアレックスさんですね…」と謝罪や礼が様々に入り混じった礼をした。
アレックスは何も答えずに嗚咽をするマルセルの言葉を待つ。
ポケットからきれいなハンカチを取り出してマルセルは顔を拭い一息呼吸をすると「お見苦しいところをおみせして失礼しました」と落ち着いた口調を取り戻した。
「俺はツキヨ…からの手紙を届けにきただけだから安心しろ」
いつもの低いアレックスの声が狭い書斎に響いた。
10
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる