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闇-15
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3日後…アレックスの屋敷に仕立屋から大量の服や小物類が届いた。一部は明日になるらしい。
「アレックス様…こんなにたくさん注文していましたか?」
「おうよ。当たり前だろう、色に悩んだやつは同じ形で色の分だけ作ったりもしたからな!」
前回の既製品の分でもかなりの量になるのでドレスルームにしまえるのかと不安になる残りの3人だった。
「入らねぇなら、他の部屋を使っちまえよ。誰も使わねぇんだから。普通の女の子はこんぐらいは必要だろうが!」
大小の箱を抱えて一度、ツキヨの使う部屋のドレスルームにしまうが半分くらいしか入らなかったため、結局隣室のドレスルームにもしまうことにした。
「こんなにたくさん…あの、ありがとうございます。う、嬉しいです…」
少し気恥ずかしいのと困惑の入り混じった顔のツキヨは礼を言うがアレックスは顔をポリポリしながら「足りなかったら、言えよ」と照れくさそうに言う。
「しばらくは大丈夫だと思います」
ニッコリと否定をするツキヨだった。
「うーん。そうかぁ?なんかまだツキヨには足りない気がするんだが。
お、そうだ。知り合いが5日後に出発予定でエストシテ王国南部のオニュリ男爵領へに行くとかでツキヨの家のそばの街道を使うんだと。その時に手紙を渡してもいいって言っているから、親父に手紙が渡せるぜ!」
「まさか、そんな…お父様に手紙が出せるのですか!?」
信じられないと黒い瞳を大きく広げて驚く。
「おうよ。だから手紙を書いたら俺がそいつに渡してやるよ」
「あぁ!本当にありがとうございます!その方にも是非お礼を伝えてください!!」
あまりの嬉しさに思わずツキヨはアレックスに抱きついてしまう。
アレックスは石化した。
「はわ!失礼しました!嬉しくて思わず…すいません。申し訳ありません」
ツキヨは慌ててアレックスから離れて声をかけたが、レオが「ツキヨちゃん、放っておけば大丈夫だから、お父さん宛に手紙を準備しておいてね」と苦笑しつつアレックスの肩をトントンと叩く。
「あぁ。お。なんだ、レオか。今、死んだじいさんに会ったような気がするぜ」
「気のせいだろう」
あっさりといなすレオだった。
仕立屋から荷物が届き、アレックスは明日は外出だ!と息を巻くがレオに仕事があると言われてまた「ばーか!」「おっさん」「ばーか」「おっさん」の低レベルの争いが始まる。
ツキヨとフロリナで宥めつつ、仕事を一部放棄するとアレックスが決めた結果、外出は明後日と決まった。
そして「俺が服を選ぶ!!!」と宣言するが永遠に決まらない予感がするため、ツキヨはフロリナと「女の子同士で決める」と言うと敗北を認めた。
寂しそうなアレックスを魔鬼死魔無君が頭を撫でて慰めていた。
そのあと、ツキヨは部屋へ戻り父宛に何を伝えたいかいろいろ考えていた。
自分の現在はもちろんだが、元気なのか、ダンとルルーのことや仕事で無理をしていないか…便箋は100枚でも足りない気がした。
-----------------------
玄関前の車止めに黒鹿毛4頭とおしゃれなスカーフ巻いた屋敷の御者が主のお出ましを待っている。
そして、少し地味な馬車が止まっている…しかし馬車に施された真鍮の意匠や飾り房、車内の座席の座り心地や生地の手触り、車輪の頑丈さ…目立たないところで凝っているものがアレックスは好きなようだ。
「お館様、ツキヨ様。お待ちしておりました。本日は天気もよく素晴らしい外出日でございます」
御者は腰を折り挨拶をした。
「おう、今日もよろしくな」
「よろしくお願いいたします…素敵な黒鹿毛ですね」
今まで、馬の世話をしていたツキヨは何も躊躇うこともなく黒鹿毛4頭たちに近づいて首元を優しく撫でる…4頭ともご満悦な顔ですっかりツキヨに懐いてしまったようだ。
「ツキヨ様は馬がお好きですか?」
「えぇ、父も好きで…乗ることもできます」
「素晴らしいですね。ぜひ、今度厩舎へいらっしゃってください」
御者と馬の話が尽きない最中「ぅおぃ。ツキヨ、そろそろ行くぜ」とちょっと拗ねた声が聞こえた。
「では、近くお邪魔しますね」とツキヨはアレックスにエスコートされて馬車へ乗り込んだ。
窓を開けて「レオさん、フロリナ、いってきますね」と挨拶をすると笑顔で見送られて馬車はカラカラと石畳を進んだ。
「今度、厩舎へ行ってみるか。女の子はそういうのが嫌いだと思ってたぜ」
「家でも世話をしていましたが、動物としても好きですね。優しい顔が可愛いです」
窓から入る風も気持ちがよく、こちらに来てから初めての外出に心が躍る…ツキヨは毎年楽しみにしていた女子学校のピクニックを思い出した。
「ツキヨに渡すもんがあったんだ」
アレックスはグレーのベストの内ポケットからプラチナにサファイアと大粒のアメジストが嵌め込まれたバングルを取り出した。
今日のツキヨの空色のドレスに合わせたかのようなデザインだった。
「これは、俺の魔気が込めてある。王都の街は安全だが、人間がいると馬鹿なことをするヤツがいるのも事実だ。これをしていれば魔気を帯びているようになるから、まぁ、そうだ。お守りだと思っとけ」
細い手首にを手に取るとアレックスはパチリと金具を止める。
首元のサファイア、髪飾りの小粒のエメラルドと揃いで誂えたようにキラキラと手元で輝く。
「俺がいれば安全だけどな!ハハハ!」
ニカニカとアレックスは笑う。
笑うといつもより目立つアレックスの目尻の小皺や口元の笑い皺と一緒にツキヨも笑顔になった。
「アレックス様…こんなにたくさん注文していましたか?」
「おうよ。当たり前だろう、色に悩んだやつは同じ形で色の分だけ作ったりもしたからな!」
前回の既製品の分でもかなりの量になるのでドレスルームにしまえるのかと不安になる残りの3人だった。
「入らねぇなら、他の部屋を使っちまえよ。誰も使わねぇんだから。普通の女の子はこんぐらいは必要だろうが!」
大小の箱を抱えて一度、ツキヨの使う部屋のドレスルームにしまうが半分くらいしか入らなかったため、結局隣室のドレスルームにもしまうことにした。
「こんなにたくさん…あの、ありがとうございます。う、嬉しいです…」
少し気恥ずかしいのと困惑の入り混じった顔のツキヨは礼を言うがアレックスは顔をポリポリしながら「足りなかったら、言えよ」と照れくさそうに言う。
「しばらくは大丈夫だと思います」
ニッコリと否定をするツキヨだった。
「うーん。そうかぁ?なんかまだツキヨには足りない気がするんだが。
お、そうだ。知り合いが5日後に出発予定でエストシテ王国南部のオニュリ男爵領へに行くとかでツキヨの家のそばの街道を使うんだと。その時に手紙を渡してもいいって言っているから、親父に手紙が渡せるぜ!」
「まさか、そんな…お父様に手紙が出せるのですか!?」
信じられないと黒い瞳を大きく広げて驚く。
「おうよ。だから手紙を書いたら俺がそいつに渡してやるよ」
「あぁ!本当にありがとうございます!その方にも是非お礼を伝えてください!!」
あまりの嬉しさに思わずツキヨはアレックスに抱きついてしまう。
アレックスは石化した。
「はわ!失礼しました!嬉しくて思わず…すいません。申し訳ありません」
ツキヨは慌ててアレックスから離れて声をかけたが、レオが「ツキヨちゃん、放っておけば大丈夫だから、お父さん宛に手紙を準備しておいてね」と苦笑しつつアレックスの肩をトントンと叩く。
「あぁ。お。なんだ、レオか。今、死んだじいさんに会ったような気がするぜ」
「気のせいだろう」
あっさりといなすレオだった。
仕立屋から荷物が届き、アレックスは明日は外出だ!と息を巻くがレオに仕事があると言われてまた「ばーか!」「おっさん」「ばーか」「おっさん」の低レベルの争いが始まる。
ツキヨとフロリナで宥めつつ、仕事を一部放棄するとアレックスが決めた結果、外出は明後日と決まった。
そして「俺が服を選ぶ!!!」と宣言するが永遠に決まらない予感がするため、ツキヨはフロリナと「女の子同士で決める」と言うと敗北を認めた。
寂しそうなアレックスを魔鬼死魔無君が頭を撫でて慰めていた。
そのあと、ツキヨは部屋へ戻り父宛に何を伝えたいかいろいろ考えていた。
自分の現在はもちろんだが、元気なのか、ダンとルルーのことや仕事で無理をしていないか…便箋は100枚でも足りない気がした。
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玄関前の車止めに黒鹿毛4頭とおしゃれなスカーフ巻いた屋敷の御者が主のお出ましを待っている。
そして、少し地味な馬車が止まっている…しかし馬車に施された真鍮の意匠や飾り房、車内の座席の座り心地や生地の手触り、車輪の頑丈さ…目立たないところで凝っているものがアレックスは好きなようだ。
「お館様、ツキヨ様。お待ちしておりました。本日は天気もよく素晴らしい外出日でございます」
御者は腰を折り挨拶をした。
「おう、今日もよろしくな」
「よろしくお願いいたします…素敵な黒鹿毛ですね」
今まで、馬の世話をしていたツキヨは何も躊躇うこともなく黒鹿毛4頭たちに近づいて首元を優しく撫でる…4頭ともご満悦な顔ですっかりツキヨに懐いてしまったようだ。
「ツキヨ様は馬がお好きですか?」
「えぇ、父も好きで…乗ることもできます」
「素晴らしいですね。ぜひ、今度厩舎へいらっしゃってください」
御者と馬の話が尽きない最中「ぅおぃ。ツキヨ、そろそろ行くぜ」とちょっと拗ねた声が聞こえた。
「では、近くお邪魔しますね」とツキヨはアレックスにエスコートされて馬車へ乗り込んだ。
窓を開けて「レオさん、フロリナ、いってきますね」と挨拶をすると笑顔で見送られて馬車はカラカラと石畳を進んだ。
「今度、厩舎へ行ってみるか。女の子はそういうのが嫌いだと思ってたぜ」
「家でも世話をしていましたが、動物としても好きですね。優しい顔が可愛いです」
窓から入る風も気持ちがよく、こちらに来てから初めての外出に心が躍る…ツキヨは毎年楽しみにしていた女子学校のピクニックを思い出した。
「ツキヨに渡すもんがあったんだ」
アレックスはグレーのベストの内ポケットからプラチナにサファイアと大粒のアメジストが嵌め込まれたバングルを取り出した。
今日のツキヨの空色のドレスに合わせたかのようなデザインだった。
「これは、俺の魔気が込めてある。王都の街は安全だが、人間がいると馬鹿なことをするヤツがいるのも事実だ。これをしていれば魔気を帯びているようになるから、まぁ、そうだ。お守りだと思っとけ」
細い手首にを手に取るとアレックスはパチリと金具を止める。
首元のサファイア、髪飾りの小粒のエメラルドと揃いで誂えたようにキラキラと手元で輝く。
「俺がいれば安全だけどな!ハハハ!」
ニカニカとアレックスは笑う。
笑うといつもより目立つアレックスの目尻の小皺や口元の笑い皺と一緒にツキヨも笑顔になった。
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