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闇-14
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鈴を鳴らしたら、アレックスから解放されたフロリナが来てくれた。
何を聞かれたのか訊ねてみたが国家機密並の緘口令を出されていて教えてくれなかった。アレックス的には秘密にしたい乙女心があるようだった。
「ちょっと聞きたいのだけど…ここから王国へ…お父様へ手紙を出したいけどどうしたらいいのかと思って」
「手紙は…ゴドリバー帝国内では受付、配達をする通信文書局はありますが他国へ手紙を出すことは行ってはいません」
「そう…」
しばらく室内に沈黙が流れる…がフロリナが沈黙を破る。
「帝国にはエストシテ王国を含め他国を行き来している人間や魔族はいます。彼らに手紙を渡して目的の国に着いたら手紙を扱う公的な機関へ出してもらったり、あとは彼らの大半が商人なので宛先が実は知り合いだった…ということもあるそうです」
「可能性があるなら、やっぱりお父様宛に手紙を書いてみようかしら」
一筋の光明に賭けてみようとツキヨの目は輝いた。
「そうですね。私もお館様とレオ様にも聞いてみます。なんとかツキヨ様のお父様へ手紙を届ける方法を考えましょう!」
フロリナはツキヨにニッコリ笑顔になると、やはり今度は女子同士で便せんや封筒の今の流行りの模様などの話になったが、突然フロリナが「今度、お出かけする時にお館様とお探しになってはどうでしょう」と提案をしてきた。
「明後日に仕立屋が来るので…それが完成するのが最短で3日か4日くらいです。
それから予定次第ですがお出かけになるので…その間に手紙が届ける方法を探して出せばいいと思います」
ツキヨ目がより力強く輝いた。
--------------------
「手紙?あぁ。そうだなぁ…フロリナが言う方法がほとんだな。貴族だと専門のヤツらが届けるんだけどなぁ…普通に他国へ送るってぇなるとその方法だ…お!そっちの生地を見せてくれ!」
仕立屋が持ってきた生地を選ぶのは真剣だけど、手紙についてはやや二の次になっているようだった。
「ツキヨ様は色白でございますが、こちらの藍色もお似合いかと…絹でございますので艶やかさが少し大人の印象になりツキヨ様の雰囲気も変わられてよろしいかと」
「薄桃色のこちらは薄い生地ですので何枚か重ねてスカート部分を作ることになりますので豪華な半面、可愛らしさも残りますね」
仕立て屋は女性2人で来たが、デザインと生地はアレックスも選ぶということで生地をツキヨに当てて見比べたり、デザイン画と睨めっこをして真剣な討論をしていると応接間はあっという間に生地の海になってしまった。
若草色や萌黄色、浅葱色に赤紫色…薄い生地や透けているがレースがあったりなど…素材も絹も綿も麻もあり…凝り性なアレックスを入れたら半日は必要な状態だった。
「そんな短けえ裾なんて俺は許さん!!!」
「そんな薄い布なんて俺は許さん!!!」
「そんな胸元が広れぇのは俺は許す!!!」
「そんな布をリボンにして胸下で結ぶなんざぁ、俺は許さん…いや、許す!!!!!」
「そんな色はけしからん!!!!!屋敷の中で着るだけのヤツにするんなら俺は許す!けしからん!」
熱論が続くがツキヨの顔に疲れてが見えてきた頃にレオが休憩をいたしましょうと紅茶やお菓子を持って声をかけたときはレオが神様のように見えた。
休憩を挟み、また激論を交わして最後に話がまとまる頃は日が暮れていた。
いずれも高級品で大量発注を得た仕立屋は疲れた顔を一切見せずに、むしろほくほくと笑顔で帰って行った。
その後、夕食をアレックスと話しながら夕食を取り、湯に入ると疲れたのかツキヨは早々に眠ってしまった。
-------------------
「手紙かよ。親父のことは気になるよな。届けるのは俺でも構わねぇし…あとは家の場所だな」
アレックスは私室で濃い茶色の酒を口にする。人間から帝国へ献上された酒精の強い酒と聞いたが飲むと食後酒にもならないので、後で何かの料理に使うようにレオに渡そうと考えた。
おもむろにアレックスは立ち上がると自らの影にすぅっと身を投じ、そして再度すぅっと自らの影から現れた。
影から現れたアレックスは小花模様の壁や女性が好みそうな長椅子のある優しい色合いの室内にいる。
ベッドにはすぅすぅと寝息を立ててグッスリとツキヨが眠っていた。
夜目が利く菫色の瞳には色白の肌と黒髪。黒曜石のような瞳は瞼が大切に包んでいる。桃色の小さな唇はほんの少しだけ開いている…何か夢を見ているのか…アレックスは覗くこともできるが珍しく躊躇する。
長い時間生きてきた中でそんな気遣いなんて無かったなと苦笑する。
ツキヨに向けて燐光を放つ右手を翳す…魂に触れることなんて朝飯前だが何故か気恥かしさが伴う…魂からツキヨの屋敷の記憶を見つけて、場所を確認する。
ついでに父親や継母や義姉妹、実母も見た…ツキヨは母親似だと思わずニヤリとしてしまう。
「ん…」
翳していたただけの右手をサッと戻す。ツキヨはごろりんと横へ転がる…と掛け布もずれて背後が丸見えになる。
細い肩から腰へ流れるような曲線を描くとそこから丸いふくらみを帯びた臀部に繋がる太腿…アレックスも年甲斐もなく…まるでツキヨと同じ年頃の自分を思い出す。
そっと掛け布を手に取り整えようとするとツキヨがまたごろんと仰向けになり、ヒィッ!!!!と心の中で叫ぶ。
少し乱れた胸元や薄い腹…慌てて掛け布を優しくかけて息を飲み込む。
全てが砂糖菓子のように甘く感じる。下半身に熱が集まっていることがわかる。こんな感情に惑わされるのは一体いつ以来なのかすら記憶にない。
マシュマロのような頬にそっと触れる…何故か残るのは歓喜と罪悪感。
慌てて、また自分の影に身を投じた。そして、反省をした。
何を聞かれたのか訊ねてみたが国家機密並の緘口令を出されていて教えてくれなかった。アレックス的には秘密にしたい乙女心があるようだった。
「ちょっと聞きたいのだけど…ここから王国へ…お父様へ手紙を出したいけどどうしたらいいのかと思って」
「手紙は…ゴドリバー帝国内では受付、配達をする通信文書局はありますが他国へ手紙を出すことは行ってはいません」
「そう…」
しばらく室内に沈黙が流れる…がフロリナが沈黙を破る。
「帝国にはエストシテ王国を含め他国を行き来している人間や魔族はいます。彼らに手紙を渡して目的の国に着いたら手紙を扱う公的な機関へ出してもらったり、あとは彼らの大半が商人なので宛先が実は知り合いだった…ということもあるそうです」
「可能性があるなら、やっぱりお父様宛に手紙を書いてみようかしら」
一筋の光明に賭けてみようとツキヨの目は輝いた。
「そうですね。私もお館様とレオ様にも聞いてみます。なんとかツキヨ様のお父様へ手紙を届ける方法を考えましょう!」
フロリナはツキヨにニッコリ笑顔になると、やはり今度は女子同士で便せんや封筒の今の流行りの模様などの話になったが、突然フロリナが「今度、お出かけする時にお館様とお探しになってはどうでしょう」と提案をしてきた。
「明後日に仕立屋が来るので…それが完成するのが最短で3日か4日くらいです。
それから予定次第ですがお出かけになるので…その間に手紙が届ける方法を探して出せばいいと思います」
ツキヨ目がより力強く輝いた。
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「手紙?あぁ。そうだなぁ…フロリナが言う方法がほとんだな。貴族だと専門のヤツらが届けるんだけどなぁ…普通に他国へ送るってぇなるとその方法だ…お!そっちの生地を見せてくれ!」
仕立屋が持ってきた生地を選ぶのは真剣だけど、手紙についてはやや二の次になっているようだった。
「ツキヨ様は色白でございますが、こちらの藍色もお似合いかと…絹でございますので艶やかさが少し大人の印象になりツキヨ様の雰囲気も変わられてよろしいかと」
「薄桃色のこちらは薄い生地ですので何枚か重ねてスカート部分を作ることになりますので豪華な半面、可愛らしさも残りますね」
仕立て屋は女性2人で来たが、デザインと生地はアレックスも選ぶということで生地をツキヨに当てて見比べたり、デザイン画と睨めっこをして真剣な討論をしていると応接間はあっという間に生地の海になってしまった。
若草色や萌黄色、浅葱色に赤紫色…薄い生地や透けているがレースがあったりなど…素材も絹も綿も麻もあり…凝り性なアレックスを入れたら半日は必要な状態だった。
「そんな短けえ裾なんて俺は許さん!!!」
「そんな薄い布なんて俺は許さん!!!」
「そんな胸元が広れぇのは俺は許す!!!」
「そんな布をリボンにして胸下で結ぶなんざぁ、俺は許さん…いや、許す!!!!!」
「そんな色はけしからん!!!!!屋敷の中で着るだけのヤツにするんなら俺は許す!けしからん!」
熱論が続くがツキヨの顔に疲れてが見えてきた頃にレオが休憩をいたしましょうと紅茶やお菓子を持って声をかけたときはレオが神様のように見えた。
休憩を挟み、また激論を交わして最後に話がまとまる頃は日が暮れていた。
いずれも高級品で大量発注を得た仕立屋は疲れた顔を一切見せずに、むしろほくほくと笑顔で帰って行った。
その後、夕食をアレックスと話しながら夕食を取り、湯に入ると疲れたのかツキヨは早々に眠ってしまった。
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「手紙かよ。親父のことは気になるよな。届けるのは俺でも構わねぇし…あとは家の場所だな」
アレックスは私室で濃い茶色の酒を口にする。人間から帝国へ献上された酒精の強い酒と聞いたが飲むと食後酒にもならないので、後で何かの料理に使うようにレオに渡そうと考えた。
おもむろにアレックスは立ち上がると自らの影にすぅっと身を投じ、そして再度すぅっと自らの影から現れた。
影から現れたアレックスは小花模様の壁や女性が好みそうな長椅子のある優しい色合いの室内にいる。
ベッドにはすぅすぅと寝息を立ててグッスリとツキヨが眠っていた。
夜目が利く菫色の瞳には色白の肌と黒髪。黒曜石のような瞳は瞼が大切に包んでいる。桃色の小さな唇はほんの少しだけ開いている…何か夢を見ているのか…アレックスは覗くこともできるが珍しく躊躇する。
長い時間生きてきた中でそんな気遣いなんて無かったなと苦笑する。
ツキヨに向けて燐光を放つ右手を翳す…魂に触れることなんて朝飯前だが何故か気恥かしさが伴う…魂からツキヨの屋敷の記憶を見つけて、場所を確認する。
ついでに父親や継母や義姉妹、実母も見た…ツキヨは母親似だと思わずニヤリとしてしまう。
「ん…」
翳していたただけの右手をサッと戻す。ツキヨはごろりんと横へ転がる…と掛け布もずれて背後が丸見えになる。
細い肩から腰へ流れるような曲線を描くとそこから丸いふくらみを帯びた臀部に繋がる太腿…アレックスも年甲斐もなく…まるでツキヨと同じ年頃の自分を思い出す。
そっと掛け布を手に取り整えようとするとツキヨがまたごろんと仰向けになり、ヒィッ!!!!と心の中で叫ぶ。
少し乱れた胸元や薄い腹…慌てて掛け布を優しくかけて息を飲み込む。
全てが砂糖菓子のように甘く感じる。下半身に熱が集まっていることがわかる。こんな感情に惑わされるのは一体いつ以来なのかすら記憶にない。
マシュマロのような頬にそっと触れる…何故か残るのは歓喜と罪悪感。
慌てて、また自分の影に身を投じた。そして、反省をした。
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