闇より深い暗い闇

伊皿子 魚籃

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闇-11

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「魔気は人で言うと体力みたいなものです。
魔鬼死魔無君はアレックス本人も馬鹿力かつ魔気に関係なく無限大の力を持つため魔鬼死魔無君も少し対抗するため意思を持ち始めました。突然変異的なものなのですが、コレがアレックスを操るようなこともありません。主従関係のようなものですから、主が死ねばコレも死にます。
もちろんアレックスの怒りに触れれば魔鬼死魔無君のみを消し去ることもできます。アレックスはコレでなくても問題はないですし、少なくともコレはリスクの高いことはしません」
 魔鬼死魔無君は両手で○のサインを出した。
「アレックスと同じ変なものがあるという程度ですね。実体はなく触れることもできないので…なんか中途半端でウザくて面倒臭い…」
 レオに魔鬼死魔無君は中指を立てている。
「飼い主、何とかしろよ!」
「もう。しらねーよ」とアレックスが溜息をつくと、ツキヨに両手でハートマークを作ってからぞろりと消えてしまった。
 彼?は結構いい人?なのかもしれない。

「当然、魔気はツキヨちゃんにはないので、外見だけで魔族だ!なんて今は判断はできません。アレックスや私たち派手な髪色と瞳が既にいるのですから」
「『わからないから』外見のみで判断をしてしまう…」とツキヨは俯いてしまう。
「人は魔気を感じねぇんだよな。そんなの計るもんなんてねぇしなぁ。
結局、外見だよな。俺だって、こんなにナイスミドルで若いのに外見だけでおっさんて言わるもんな…」
 悲しそうな顔でアレックスも俯く。

 疲れているので誰も何も言わない。気持ちいい風が吹く。
 魔鬼死魔無君ものんびり寛いでいた。



「魔気は量の差で変わるのは力とか能力とか…?」
 紅茶を一口飲むとツキヨは何もなかったように聞く。
「おう、単純に量が多いほど強くなる。さっきのレオは魔気が多いから自己治癒能力で勝手に治るんだが、少ないと治すことはできないし各種族の特殊能力も低くなる」
「…2人は強いということになりますか」
「ん、まぁ。そういうことだな。な、レオ」ちらりとレオを見る「ハ、ハイ。ソウデスネ」
 …2人は紅茶をグイッと飲む。
「アレックス様も魔気が強いということはレオさんの実家のように相応な地位で陛下や高位な方たちと働いてるのですか?」
 ブホゥーーーッ!!とお互いツキヨにかからない方向へ紅茶を噴き出す。

「すいません。ちょっと掃除します…」と慌てて雑巾でレオが床を拭いた。
「そーだな、おう。そ、そりゃあ。仕事はチャントシテマスヨ。よくはたらくすてきなないすみどるだからな。こうていへいかもがんばっているしな。わははははは…。
おい、ツキヨは、こうちゃをのむか?」
「…あ、大丈夫です」

 天気も良く気持ちいい風が吹く。
 魔鬼死魔無君はひらひら佇んでいる。



「弱い人は、危険な生活をしているとかは…?」
「お、おう。…農業、畜産業で働いているんだ。それを他国にも輸出をしている。帝国でしか育たないから希少価値が高いたけぇんだ。だから給料も家も保障されて安全なんだ」
「王国は貧しい人は教会の施しや貴族の寄付はありますが…あまり継続的なものは少ないと思います」
 帝国は意外と生活の保障が考えられているとツキヨは感心する。
「魔気は同族でも突然強いのや弱いのが生まれたりもする。帝国は昔と同じで弱肉強食って不文律ががあるけど、俺はよぅ、弱い奴でも幸せに飯を食って生きていて欲しいんだよなぁ」
 ニカニカとアレックスは笑う。
 いつもアレックスはニカニカと子供のように笑う。喜怒哀楽の激しさは欠点でもあるがアレックスは誰かと一緒に喜んだり、怒ったり、泣いたりもできる…人にも魔族にも悪人はいるが、自分以上に相手を想うことができるアレックスに不思議な魅力を感じ始めていた。

 その日は、アレックスと食事をしながらレオ、フロリナも交えて王国や帝国のことや今流行していることなど話がつきない一日だった。
 結局、ツキヨの部屋はガラスなどが直せないので別の客間へ移動することになった。

 夕食後、ツキヨは浴槽にお湯を入れてもらい久しぶりに体をゆっくりと温まった。
 傷は痕もなく治り、あとは当初から一番ひどかった部分の打撲や足首の捻挫ぐらいで寝起きには何ら不自由がないくらいまで回復をしていた。
 湯から上がり、寝衣に着替えフロリナに髪の毛の先を揃えて欲しいとお願いをすると、肩より少し短いくらいに切り揃えながら「ツキヨ様の黒髪は本当に素晴らしいです。つやつやでキラキラしていて…とてもきれいですわぁ…明日の朝から少し丸い感じに整えて髪飾りとかつけて…私の方が楽しみになってきてしまいましたわ」とフロリナが年頃の顔つきに戻り、また流行や演劇の俳優の話などを鏡台前で話し込んでしまった。
「なんか、フロリナがいてくれて嬉しいです。長い間、縁遠い生活をしていたので…これからも仲良くしてください」少し高揚した気分でツキヨは笑顔でフロリナの手を取った。
「そんなツキヨ様…私はずっとツキヨ様の味方でございます。明日はおめかしをしてお館様をびっくりさせてしまいましょう!」
 ガッシリとフロリナは握り返して、アレックスの屋敷内にささやかな女子会ができた。

 そして、アレックスが破壊した前の部屋とほとんど変わらない広々とした客間のベッドで眠った。
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