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闇-8
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「はっはっはっは…そんな、お嬢様。ご冗談を…はっはっは…」
アレックスの菫色の瞳は目が点になったまま、顔は引き攣っている。
「いえ、本当に。アレックス様は私を『人攫い』の犠牲者と考えているかもしれませんが、私は継母の手で人買いに金貨1枚銀貨5枚で売られました。王国ではごく一部と思いますが私のような容姿は今も蔑まされているのです」
ツキヨがすっかり固まってしまったアレックスを逆に心配していると「ふぇ~」と変な声とともにアレックスの意識が戻ってきた。
「お、俺たちですらこんな滅茶苦茶なカラーリングになってゲラゲラ笑いあっているのに人間は今もなのか?しかも、おふくろさんに売られたって…うぅっ…うぅっ…おめぇは苦労してんなぁ…うぅっ…」
今度はさめざめと泣き始めた。ツキヨは悪魔だ魔物だといってもこんなに喜怒哀楽があり人と変わらないということと、自己憐憫ではあるが自分にダンやルルーと同じ労わりの言葉をかけてくれることが救いだった。
トントン…「お館様、お取り込み中ではございますがお嬢様のお食事をお持ちいたしました」と扉の向こうから声をかけられた。
「うぅ…おう、入ってもいいぞぅ…うぅ…」
ポケットからハンカチを出してアレックスは顔を拭いて、ついでに鼻もチーンとかんだ。ツキヨは【やっぱり、おっさん?】と考えたが胸に収めた。
扉が開き、短髪で全体は金色だが一部が赤い髪で瞳が若草色の男性が静かにワゴンを押してアレックスのそばに止める。小さい鍋と食器、カトラリー、フルーツなどが揃っている。
「お館様…まーたですか。お嬢様、この方結構泣き虫でございま」「うるさい!レオ!馬鹿野郎!」と泣き腫らした顔でアレックスは言い返すが説得力はなかった。
「くっそー。レオ、もう置いたら帰れ!ばーかばーか!」「もう、帰るから知らないよーっだ!お嬢様、私はここのおっさん、いえアレックス様の執事兼古い友人のレアンドロ・トゥルナ・リゲルと申します。どうぞ、レオとお呼びください。また、ご用があれば私になんなりと申し付けくださいませ」「私はツキヨ・ドゥ・カトレアと言います」「ツキヨ様ですね、宜しくおねが…」「とっとと帰れー!なにが、おっさんだ!」「うるせー!では、ツキヨ様、失礼いたします」とヒュン!と扉から出て行った。
子猫と子猫の喧嘩を見たような気がしたツキヨだったが仲の良さは間違いないということは理解できた。
「まったく、レオのやろーめ。あいつはどうでもいいからな。さ、ツキヨ、飯だ飯」
大きな体を屈ませて鍋からおたまでスープを皿へよそう。具もたくさんで野菜もおいしそうな色をしている。
スープをよそったアレックスが「あ!」とツキヨを見る。
「悪ぃ。起き上がるのだめだったよな…」ポリポリと頭をかく。「いえ、大丈夫です」とツキヨは長椅子のクッションや他の枕をヘッドレストへ置いてもらう。
グゥグゥと鳴くツキヨのお腹。空腹が痛みより辛いため我慢をして少し体を起き上がらせたが…右手は包帯で巻かれていて左手も肩を固定していて上手く動かせなかった。
「…あーん」
低い声が言うには似合わない言葉が部屋に響く。この声の低さは呪術を使うときとかに似合う声だ。
ツキヨもそっと口を開けて湯気のたつスープや具を乗せたスプーンを口へ入れてもらう。
もくもく…と咀嚼する行為が随分久しぶりと感じる…ごくりと飲み込むとすべての栄養が五臓六腑へ沁み渡るのが分かる。そして、それが呼び水となりもっと食べたいと体は要求する。
「だ、大丈夫か?あまり無理すんなよ…」
「いえ、とってもおいしいです!たくさん食べたいです」とにっこりと笑顔になるとアレックスも安心したのか「そーか、そーか。飯が食えればすぐに元気になるぞ!」と大きな手で小鳥に餌をあげるようにツキヨに食べさせる。
「それ、くえー」「これ、くえー」「すごいぞぅ!リンゴがウサギさんだぞ!」「オレンジも甘いぞ!食え食え!」…「あの、アレックス…ご、ご馳走様でした」…「もっと食べないと死んじゃうぞ!」…「うー」…
…。
……。
………。
ツキヨの様子がおかしいことに気がついてアレックスはレオを呼ぶと「こんなにいきなり食べさせたらだめだろう!どこかのおっさんとは違うんだよ!」とツキヨにお腹に効くという薬草を煎じて飲ませてくれた。
「いえ、おいしいしお腹も空いていたので…すいません」とちょっとグフっとしながらツキヨが答える。
アレックスは暗い闇を纏い小さくなって部屋の隅っこにいる。
「ツキヨ様、しばらく放っておいて大丈夫です。あのおっさんのいつものことですから。長い付き合いであんなの1万回は見てます」
当初はお館様扱いだったが、これがレオの普段の様子らしい。
「でも、いい人なので仲良くしてやってください。あんな人だけど意外と心配性で泣き虫で優しいし。あ、怒ると怖いけど。
ツキヨ様は無理しないでしばらくは横になっていてくださいね。用があったらそこの鈴を鳴らしてください」
レオは人懐っこい笑顔でツキヨに言うとワゴンを押して部屋を出て行った。
お腹の具合も薬草茶が効いてきたのかだいぶ楽になっていた…1名はまだ闇に包まれている。心なしかさっきよりも小さくなっている。
つい、ツキヨもアレックスの様子を見て「ふふふ、アレックス様。そんなところで小さくなっていないで戻ってまたいろいろお話をしませんか?もう、良くなりましたよ」と優しく声をかける。
また、いつものニカニカした笑顔で戻ってきた。
アレックスの菫色の瞳は目が点になったまま、顔は引き攣っている。
「いえ、本当に。アレックス様は私を『人攫い』の犠牲者と考えているかもしれませんが、私は継母の手で人買いに金貨1枚銀貨5枚で売られました。王国ではごく一部と思いますが私のような容姿は今も蔑まされているのです」
ツキヨがすっかり固まってしまったアレックスを逆に心配していると「ふぇ~」と変な声とともにアレックスの意識が戻ってきた。
「お、俺たちですらこんな滅茶苦茶なカラーリングになってゲラゲラ笑いあっているのに人間は今もなのか?しかも、おふくろさんに売られたって…うぅっ…うぅっ…おめぇは苦労してんなぁ…うぅっ…」
今度はさめざめと泣き始めた。ツキヨは悪魔だ魔物だといってもこんなに喜怒哀楽があり人と変わらないということと、自己憐憫ではあるが自分にダンやルルーと同じ労わりの言葉をかけてくれることが救いだった。
トントン…「お館様、お取り込み中ではございますがお嬢様のお食事をお持ちいたしました」と扉の向こうから声をかけられた。
「うぅ…おう、入ってもいいぞぅ…うぅ…」
ポケットからハンカチを出してアレックスは顔を拭いて、ついでに鼻もチーンとかんだ。ツキヨは【やっぱり、おっさん?】と考えたが胸に収めた。
扉が開き、短髪で全体は金色だが一部が赤い髪で瞳が若草色の男性が静かにワゴンを押してアレックスのそばに止める。小さい鍋と食器、カトラリー、フルーツなどが揃っている。
「お館様…まーたですか。お嬢様、この方結構泣き虫でございま」「うるさい!レオ!馬鹿野郎!」と泣き腫らした顔でアレックスは言い返すが説得力はなかった。
「くっそー。レオ、もう置いたら帰れ!ばーかばーか!」「もう、帰るから知らないよーっだ!お嬢様、私はここのおっさん、いえアレックス様の執事兼古い友人のレアンドロ・トゥルナ・リゲルと申します。どうぞ、レオとお呼びください。また、ご用があれば私になんなりと申し付けくださいませ」「私はツキヨ・ドゥ・カトレアと言います」「ツキヨ様ですね、宜しくおねが…」「とっとと帰れー!なにが、おっさんだ!」「うるせー!では、ツキヨ様、失礼いたします」とヒュン!と扉から出て行った。
子猫と子猫の喧嘩を見たような気がしたツキヨだったが仲の良さは間違いないということは理解できた。
「まったく、レオのやろーめ。あいつはどうでもいいからな。さ、ツキヨ、飯だ飯」
大きな体を屈ませて鍋からおたまでスープを皿へよそう。具もたくさんで野菜もおいしそうな色をしている。
スープをよそったアレックスが「あ!」とツキヨを見る。
「悪ぃ。起き上がるのだめだったよな…」ポリポリと頭をかく。「いえ、大丈夫です」とツキヨは長椅子のクッションや他の枕をヘッドレストへ置いてもらう。
グゥグゥと鳴くツキヨのお腹。空腹が痛みより辛いため我慢をして少し体を起き上がらせたが…右手は包帯で巻かれていて左手も肩を固定していて上手く動かせなかった。
「…あーん」
低い声が言うには似合わない言葉が部屋に響く。この声の低さは呪術を使うときとかに似合う声だ。
ツキヨもそっと口を開けて湯気のたつスープや具を乗せたスプーンを口へ入れてもらう。
もくもく…と咀嚼する行為が随分久しぶりと感じる…ごくりと飲み込むとすべての栄養が五臓六腑へ沁み渡るのが分かる。そして、それが呼び水となりもっと食べたいと体は要求する。
「だ、大丈夫か?あまり無理すんなよ…」
「いえ、とってもおいしいです!たくさん食べたいです」とにっこりと笑顔になるとアレックスも安心したのか「そーか、そーか。飯が食えればすぐに元気になるぞ!」と大きな手で小鳥に餌をあげるようにツキヨに食べさせる。
「それ、くえー」「これ、くえー」「すごいぞぅ!リンゴがウサギさんだぞ!」「オレンジも甘いぞ!食え食え!」…「あの、アレックス…ご、ご馳走様でした」…「もっと食べないと死んじゃうぞ!」…「うー」…
…。
……。
………。
ツキヨの様子がおかしいことに気がついてアレックスはレオを呼ぶと「こんなにいきなり食べさせたらだめだろう!どこかのおっさんとは違うんだよ!」とツキヨにお腹に効くという薬草を煎じて飲ませてくれた。
「いえ、おいしいしお腹も空いていたので…すいません」とちょっとグフっとしながらツキヨが答える。
アレックスは暗い闇を纏い小さくなって部屋の隅っこにいる。
「ツキヨ様、しばらく放っておいて大丈夫です。あのおっさんのいつものことですから。長い付き合いであんなの1万回は見てます」
当初はお館様扱いだったが、これがレオの普段の様子らしい。
「でも、いい人なので仲良くしてやってください。あんな人だけど意外と心配性で泣き虫で優しいし。あ、怒ると怖いけど。
ツキヨ様は無理しないでしばらくは横になっていてくださいね。用があったらそこの鈴を鳴らしてください」
レオは人懐っこい笑顔でツキヨに言うとワゴンを押して部屋を出て行った。
お腹の具合も薬草茶が効いてきたのかだいぶ楽になっていた…1名はまだ闇に包まれている。心なしかさっきよりも小さくなっている。
つい、ツキヨもアレックスの様子を見て「ふふふ、アレックス様。そんなところで小さくなっていないで戻ってまたいろいろお話をしませんか?もう、良くなりましたよ」と優しく声をかける。
また、いつものニカニカした笑顔で戻ってきた。
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