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第八章「兄弟の愛と姉妹の絆」
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「わらわの王子様はどこじゃ! 一目でよいからアクセル様に会わせておくれ!」
「そんな悠長なことを言っている場合ではありません、姫様! 一刻も早くここから逃げなければ!」
親戚一同が集まる家族会議でよからぬ陰謀を盗み聞きしたセリルダは、領地の城砦からこっそり義理の妹ポリネシアを連れ出し、馬を駆って大急ぎで逃げ出した。
「人質を逃がすな! 追え、追え!」
血のつながった同門の兄弟たちが、鞭を打っては鞍を揺さぶって必死に追いすがる中、
「そんな激しい腰使いでは、すぐに尽き果ててしまうぞ」
セリルダは、曲芸のごとき見事な槍さばきでばったばったと敵を薙ぎ倒し、馬とともに障害物を飛び越え、次から次へと関所を突破していった。
「姉御や、なぜわらわを助けてくれたんじゃ? 同じ一族の父親や兄弟たちを裏切ってまで」
「私は、男というものが嫌いなのです。とくに、ああいう男らしくない男どもが」
ポリネシア姫は、この時まだほんのわずか九歳にも満たない年齢だった。
生まれつき舌足らずで発音がつたなく、しゃくに障るような鼻声だったものの、驚くほど物覚えがよく、当時すでに読み書きを含めていくつもの言語を習得していた。
大人さえ顔負けの人並み外れた才媛だ。
「何者だ! そこで止まれ、止まらねば矢を射るぞ!」
「控えおろう! これなるは皇太子アクセル殿下の許嫁、ポリネシア姫様である! 頭を下げねば首が落ちるぞ!」
こうして果敢にも単騎で戦場を駆け抜けたセリルダは、親兄弟を敵に回してエゼキウス王が率いる東軍の陣営へ加わった。
敵も味方もわからぬ合戦の最中、孤軍奮闘する女騎士と相まみえたセリルド家の当主マーセナルは、不覚にも涙で目の前が見えなくなり、思わず待ったをかけて降参したという。
「よくぞ裏切ってくれた、我が娘よ。これで当家の面目は保たれた」
「そんな悠長なことを言っている場合ではありません、姫様! 一刻も早くここから逃げなければ!」
親戚一同が集まる家族会議でよからぬ陰謀を盗み聞きしたセリルダは、領地の城砦からこっそり義理の妹ポリネシアを連れ出し、馬を駆って大急ぎで逃げ出した。
「人質を逃がすな! 追え、追え!」
血のつながった同門の兄弟たちが、鞭を打っては鞍を揺さぶって必死に追いすがる中、
「そんな激しい腰使いでは、すぐに尽き果ててしまうぞ」
セリルダは、曲芸のごとき見事な槍さばきでばったばったと敵を薙ぎ倒し、馬とともに障害物を飛び越え、次から次へと関所を突破していった。
「姉御や、なぜわらわを助けてくれたんじゃ? 同じ一族の父親や兄弟たちを裏切ってまで」
「私は、男というものが嫌いなのです。とくに、ああいう男らしくない男どもが」
ポリネシア姫は、この時まだほんのわずか九歳にも満たない年齢だった。
生まれつき舌足らずで発音がつたなく、しゃくに障るような鼻声だったものの、驚くほど物覚えがよく、当時すでに読み書きを含めていくつもの言語を習得していた。
大人さえ顔負けの人並み外れた才媛だ。
「何者だ! そこで止まれ、止まらねば矢を射るぞ!」
「控えおろう! これなるは皇太子アクセル殿下の許嫁、ポリネシア姫様である! 頭を下げねば首が落ちるぞ!」
こうして果敢にも単騎で戦場を駆け抜けたセリルダは、親兄弟を敵に回してエゼキウス王が率いる東軍の陣営へ加わった。
敵も味方もわからぬ合戦の最中、孤軍奮闘する女騎士と相まみえたセリルド家の当主マーセナルは、不覚にも涙で目の前が見えなくなり、思わず待ったをかけて降参したという。
「よくぞ裏切ってくれた、我が娘よ。これで当家の面目は保たれた」
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