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第一章「絶倫王」
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「城門を開けよ!」
暴君ダリオンは、先帝アクセル一世が遺した愛馬にまたがり、閉ざされた城門の前で呼びかける。
「我こそは北征将軍ダリオンなり! 僭称皇帝オルスター卿を下して亡君の仇を討ち、勝利の凱旋に参った! 皇太子殿下への謁見を求む!」
春の訪れとともに山脈を越えて西方へ辿り着いたダリオン軍は、長蛇の列をなして民衆から喝采を浴びた。
皇太子アクセル二世が先んじて伝令を走らせ、要所に布陣してダリオン軍を迎え撃つように命じたものの、帝国各地の領邦を治める諸侯たちは、あえて見て見ぬふりをして素通りさせた。
もとはと言えば、これは御家騒動に端を発した内乱だ。命令に逆らえば敵と見なされ、かといって味方を攻撃するのも気が引ける。
今後の情勢がどうなるかわからない以上、下手に動くわけにはいかない。
「なぜだ、グリフィム先生! なにゆえ朕は皇帝に即位できぬ!」
賢者グリフィムはこの時、皇太子アクセル二世のお目付け役として帝都エルドランドの宮殿にとどまっていた。
「早まってはなりませぬぞ、太子。今この騒ぎの最中に、みずから皇帝へ即位しようものなら、玉座をめぐって争いが起こるは必定でござりまする」
エール帝国は、神権によって世俗の領主を統べる諸国家の連合体だ。
先祖伝来の領地は世襲であっても、皇帝の冠は女神から授かり、称号は民衆から与えられるものとされていた。
「まずは古式ゆかしき伝統にのっとり、評議会にはかって民衆の支持を得るのです。さもなくば、いくら正統な後継者といえども、皇帝として帝国を統治する資格はございませぬ」
皇太子アクセル二世は、いまだ成人を迎えていない幼君だった。
これまで多くの教え子を育ててきた賢者グリフィムも、男子に生まれども君主たるべき器にあらずと見抜いていた。
暴君ダリオンは、先帝アクセル一世が遺した愛馬にまたがり、閉ざされた城門の前で呼びかける。
「我こそは北征将軍ダリオンなり! 僭称皇帝オルスター卿を下して亡君の仇を討ち、勝利の凱旋に参った! 皇太子殿下への謁見を求む!」
春の訪れとともに山脈を越えて西方へ辿り着いたダリオン軍は、長蛇の列をなして民衆から喝采を浴びた。
皇太子アクセル二世が先んじて伝令を走らせ、要所に布陣してダリオン軍を迎え撃つように命じたものの、帝国各地の領邦を治める諸侯たちは、あえて見て見ぬふりをして素通りさせた。
もとはと言えば、これは御家騒動に端を発した内乱だ。命令に逆らえば敵と見なされ、かといって味方を攻撃するのも気が引ける。
今後の情勢がどうなるかわからない以上、下手に動くわけにはいかない。
「なぜだ、グリフィム先生! なにゆえ朕は皇帝に即位できぬ!」
賢者グリフィムはこの時、皇太子アクセル二世のお目付け役として帝都エルドランドの宮殿にとどまっていた。
「早まってはなりませぬぞ、太子。今この騒ぎの最中に、みずから皇帝へ即位しようものなら、玉座をめぐって争いが起こるは必定でござりまする」
エール帝国は、神権によって世俗の領主を統べる諸国家の連合体だ。
先祖伝来の領地は世襲であっても、皇帝の冠は女神から授かり、称号は民衆から与えられるものとされていた。
「まずは古式ゆかしき伝統にのっとり、評議会にはかって民衆の支持を得るのです。さもなくば、いくら正統な後継者といえども、皇帝として帝国を統治する資格はございませぬ」
皇太子アクセル二世は、いまだ成人を迎えていない幼君だった。
これまで多くの教え子を育ててきた賢者グリフィムも、男子に生まれども君主たるべき器にあらずと見抜いていた。
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