夢で逢えたら

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
69 / 74
貴方に逢えたから

13

しおりを挟む
「敦士は保身のためなら、なりふり構わないところは相変わらずだよな」

 高橋がクスクス笑うと中が締まって、敦士は感じずにはいられない。肩を竦めて快感をやり過ごすと、頬にそっと手が添えられた。

 触れられた頬の上から、高橋のあたたかい体温をじわりと感じた。しっかり瞳を開けて目の前を見つめる敦士の視線を受けて、優しげなまなざしが絡み合うように注がれる。

 添えられている手のひらが少しだけ動き、高橋の人差し指が敦士の耳の穴にすりりと触れた。それだけで、どうにかなってしまいそうだった。

「んっ……」

「いろんな意味でおまえよりも腐りきっていた俺を、疑うことなく好きになってくれたのが嬉しかった」

「健吾さん?」

「おまえの優しさは俺にとって、すごく居心地の良いもので、なによりも大切なものになった。これからも俺に、与えてくれるだろうか?」

 敦士が迷うことなく、イエスと答えようとした矢先に塞がれる唇は、さっきよりも熱い。躰をビクビク震わせることで敦士が感じていることが分かっているのか、高橋はさらに煽るように角度を変えて、細かいキスを繰り出した。

 慌てて高橋の肩を掴み、敦士は強引に押し倒して難を逃れる。

「ぉ、おい!」

 闇色のシーツの上にプラチナブロンドが扇状に広がり、窓から差し込む月明かりでキラキラ輝いた。

「優しさだけじゃなくて、僕の想いも受け止めてください」

「受け止めるさ。すべて受け止めて、俺のものにする」

 高橋の左右の膝裏を持ち上げて角度をつけるなり、何度も自身を激しく出し挿れして、ここぞとばかりに感じさせる。最近になって彼が感じる部分が分かったので、敦士はそこを狙って擦りつけた。

「敦士ん…っも…そこばかりっ、突っつくなっ……ふ、くぅっ」

 喘ぎながら躰をヒクつかせる高橋の言葉を無視した敦士は、これ以上抵抗できないようにすべく、両膝をぎゅっと抱きしめた。

「やめません。健吾さんが感じると僕も気持ちがいいんです。僕をイカせる寸前まで追い込む貴方を、たくさん責めてあげますよ」

「ハハッ、おまえの本気は怖いな。んっ…それこそ抱きつぶされそうだ。ぁあっ!」

 敦士がはじめて自分のすべてをぶつけた夜は、互いがクタクタになるまで行為が続行された。

 眠ったのは明け方近くになってしまったが、躰の疲れよりも心が満たされたお蔭で、ふたりそろって幸せを感じながら爆睡することができたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ふたり占め~イケメン双子に溺愛されています~

すずかけあおい
BL
平凡な男子生徒が、転校先で出会ったイケメン双子にふたり占めされる話です。 本編13話+番外編5話、1話完結タイプです。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

【完結】白い森の奥深く

N2O
BL
命を助けられた男と、本当の姿を隠した少年の恋の話。 本編/番外編完結しました。 さらりと読めます。 表紙絵 ⇨ 其間 様 X(@sonoma_59)

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...