夢で逢えたら

貴方に逢えたから

11

「嫌です、抜かないでください。早くこれを外して――」

「それから？」

　高橋にさっきと同じ問いかけをされて、敦士はひゅっと息を飲んだ。

　望みを叶えたいと言ってくれた高橋に、自分の中にある気持ちを伝えたいと思ったのも束の間、敦士に燻る羞恥心がそれを押し留める。

　高橋は縛られた両手を差し出す敦士を見ながら、微妙に腰を上下させて、敦士自身を焦らしまくった。どう見ても腰紐を外す気がないのは、ずるそうに笑っている表情で分かる。

「健吾さん、意地悪しないでください」

「おまえが本音を言わないから、こうしているだけだぞ」

「本音って……」

「言っておくが、この体勢は俺だってつらい。理由は分かるよな？」

　切なげに細められる高橋の瞳が、敦士を欲しがっているように見えた。

「健吾さんも？」

「ああ。おまえの硬くて大きいので、俺の中を滅茶苦茶にしてほしい。見える形で、俺を求めてほしいんだ。愛してるってことを」

　敦士が返事をする前に高橋に塞がれる唇。痛みを感じるくらいに、唇が押しつけられた。

「ぅんんっ、くっ！」

　音を立てて出し入れされる舌を逃さないように、敦士はちゅっと強く吸った。それと同時に縛られた手で、高橋自身をぎゅっと握りしめる。右手の親指で先端部分を、いやらしく撫で擦った。

「ああっ」

　敦士は喘ぎ声と一緒に吐き出された空気もろとも、高橋の唇を塞いだ。侵入した口内に舌を差し込み、歯茎をなぞってみる。それに感じたのか、高橋の腰がずるりと下ろされた。

「あ、つし……」

　握りしめた高橋のモノを扱くと、そこで動きが止まることが分かったので、敦士は間髪おかず一気に腰を突き上げる。

「ぁうっ！」

　下から強引に突き上げられた勢いで、高橋が思いきりのけ反る。プラチナブロンドがふわっと舞ってから、はらはらと上半身を覆った。

「リアルでこれが見られるとは、思ってもいなかった」

　不意に敦士が口から出た言葉を聞いて、高橋が驚いた表情で見下ろす。呼吸をするように自然に呟いたそれは、考えもしないセリフだった。

「おまえ、なにを言ってるんだ？」

「やっ！　えっとそのぅ……。健吾さんがその姿でいるのをはじめて見てるのに、はじめてじゃない気がしたんです。それなのになぜだか、わけの分からないことを言っちゃいました」

（下から健吾さんを突き上げた姿勢のまま、しどろもどろに答える僕の姿は、傍から見たら滑稽だろうな）

「それだけ夢の番人だった俺の恰好が、おまえの中で印象に残っているんだろう。記憶がないはずだというのに」

　高橋は体重をかけて、ベッドに敦士の腰を押しつけた。ぐぐっと最奥に挿入される快感に、全身が蕩けそうになる。

「健吾さんの中、いつもよりすごく絞めつけて気持ちいいです」

「それはおまえのが、いつもより大きいからだろ。この姿に興奮しているのか、それとも――」

「それとも？」

　高橋は疑問を口にした、敦士の耳元まで顔を寄せる。その動きと連動して中がぎゅんぎゅん締まり、あまりの気持ちよさに、小さなうめき声をあげた。

「敦士がこんなちょっとしたことで、そんなに感じるなんて、夢の番人と浮気してる気分なのか？」

　目の前で嬉しそうに高橋がくすくす笑うと、耳にふわっと息がかかって、くすぐったかった。敦士は顔を背けるだけじゃなく、躰をよじってそれを退けようと試みる。

「こらっ！　動いて俺を感じさせようとするな」

「違いますよ。耳に健吾さんの息がかかって、くすぐったいせいで逃げただけで」

「いいわけはなしだ。まったく！」

　不敵な笑みを唇に浮かべた高橋は、プラチナブロンドを乱す勢いで腰を上下させた。ぬちゃぬちゃという卑猥な音が部屋の中に響いて、さらに感じてしまう材料になる。

「健吾さ……っ、そんなにしちゃ、うっ！　イキそうっ」

　敦士が躰を震わせながら訴えたら、高橋は動きを弱めてゆっくりと腰を下ろした。