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Piano:好きになってもらいたい!
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そしてライブ当日午前中、張り切って美容室に行き、長かった髪をバッサリとカットしてもらった。こういう髪型にするのは初めてだったので、違和感が拭えない。
カットしてくれた美容師さんも、
「長いより短い方が、お顔がすっきりしてていいと思いますよ」
なんて誉めらてくれた。中林さんも、気に入ってくれるだろうか――ドキドキしながら、ライブハウスに向かう。
「けん坊って、短髪の方が似合ってたんだな。さすが年上、伊達に年くってないわ」
俺を見た、まさやんの開口一番である。何かにつけて、どうしてか年上を非難することを忘れない。
中林さんのこともあるが、卒業していく先輩方をしっかり送り出すライブ。勿論、気合いは充分である!
「まさやん今日は全力で頑張るから、お互い悔いを残さないように弾けようぜ!」
「よし、全力で盛り上げよう! 俺達が楽しまないとお客もノれないからな」
お互いの背中を、渾身の力を込めて叩き合う。昔からの気合いの入れ方なのだ。
先輩方はもうステージにあがり、最後の挨拶をしていた。挨拶が終わったら俺らの出番。
いざ出陣!
まさやんの「イクぜ、お前ら」を合図に、派手なドラムソロから始まる。
視線を客席から感じて遠くを見てみると、後方の席から中林さんが足を組んでじっとこちらを見ていた。体にいらない力が入る。
中林さんを意識しただけで顔が熱くなり、心臓が破裂しそうな程にバクバクしてきた。
――どうしよう、体が思うように動かない……。
挙動不審な俺を見たまさやんは、わざわざ近づいてきて、俺の顎を強引に持ち上げる。何が始まるんだろうと顔を引きつらせたら。
「今夜、俺の愛でお前を狂わせたい……」
客席から「キャー」と言う悲鳴が聞こえた。
(o≧∇≦)o(o≧∇≦)o
そして客からは見えないように、俺の腹にボディブローをお見舞いした。
「いつも通りの演奏をしろ、大丈夫だ、落ち着け!」
痛みを堪えている俺に、こっそり助言をしてくれたまさやん。持つべきものは、やっぱドSな幼馴染……。
その優しさを噛み締めながら、お陰でしっかりと演奏ができた。
ライブ終了後、急いで観客席に行く。中林さんがそのまま、座って待っていてくれた。
「あのぅ、どうでしたか?」
恐る恐る聞く。もう心臓が口から飛び出してきそうな勢いで、ドキドキしまくってるよ。
「願いが叶うのかなえ、口に漢数字の十」
「へっ!?」
「ライブ良かったわよ、見ていて楽しかった」
ふんわりと俺に向かって微笑んでくれた。愛しいその笑顔を見た瞬間、思わず抱きついてしまう。
叶さんはそんな俺の頭を、思いっきりグーで殴りつけてきた。結構痛い……。
「こっちは名乗ってるのに、アナタはどこの誰ですか?」
ムッとしたご様子の叶さん。俺ってばずっと、名前教えるの忘れてた!
「やっ、山田賢一っていいます。賢一の賢は賢いっていう漢字で、一は漢数字の一です……」
「名は体を表すものなのに、全く賢さが現れてないね」
おどおどしながら伝えると、まさやん並みにザックリな事を言いながら俺の目の前に、紙切れ一枚を渡してきた。
「今日のライブのご褒美。しょうがないからメアド、教えてあげる」
「有り難うございます!」
思いがけないプレゼントだ――
もらった紙を、思わず抱き締めてしまった。
「この後用事があるから、もう行くね」
そう言い残し、ライブハウスをあとにした叶さんの後ろ姿を見送る。
名前だけじゃなく、メアドもGET! これって、期待してもいいのかな――?
そしてライブ当日午前中、張り切って美容室に行き、長かった髪をバッサリとカットしてもらった。こういう髪型にするのは初めてだったので、違和感が拭えない。
カットしてくれた美容師さんも、
「長いより短い方が、お顔がすっきりしてていいと思いますよ」
なんて誉めらてくれた。中林さんも、気に入ってくれるだろうか――ドキドキしながら、ライブハウスに向かう。
「けん坊って、短髪の方が似合ってたんだな。さすが年上、伊達に年くってないわ」
俺を見た、まさやんの開口一番である。何かにつけて、どうしてか年上を非難することを忘れない。
中林さんのこともあるが、卒業していく先輩方をしっかり送り出すライブ。勿論、気合いは充分である!
「まさやん今日は全力で頑張るから、お互い悔いを残さないように弾けようぜ!」
「よし、全力で盛り上げよう! 俺達が楽しまないとお客もノれないからな」
お互いの背中を、渾身の力を込めて叩き合う。昔からの気合いの入れ方なのだ。
先輩方はもうステージにあがり、最後の挨拶をしていた。挨拶が終わったら俺らの出番。
いざ出陣!
まさやんの「イクぜ、お前ら」を合図に、派手なドラムソロから始まる。
視線を客席から感じて遠くを見てみると、後方の席から中林さんが足を組んでじっとこちらを見ていた。体にいらない力が入る。
中林さんを意識しただけで顔が熱くなり、心臓が破裂しそうな程にバクバクしてきた。
――どうしよう、体が思うように動かない……。
挙動不審な俺を見たまさやんは、わざわざ近づいてきて、俺の顎を強引に持ち上げる。何が始まるんだろうと顔を引きつらせたら。
「今夜、俺の愛でお前を狂わせたい……」
客席から「キャー」と言う悲鳴が聞こえた。
(o≧∇≦)o(o≧∇≦)o
そして客からは見えないように、俺の腹にボディブローをお見舞いした。
「いつも通りの演奏をしろ、大丈夫だ、落ち着け!」
痛みを堪えている俺に、こっそり助言をしてくれたまさやん。持つべきものは、やっぱドSな幼馴染……。
その優しさを噛み締めながら、お陰でしっかりと演奏ができた。
ライブ終了後、急いで観客席に行く。中林さんがそのまま、座って待っていてくれた。
「あのぅ、どうでしたか?」
恐る恐る聞く。もう心臓が口から飛び出してきそうな勢いで、ドキドキしまくってるよ。
「願いが叶うのかなえ、口に漢数字の十」
「へっ!?」
「ライブ良かったわよ、見ていて楽しかった」
ふんわりと俺に向かって微笑んでくれた。愛しいその笑顔を見た瞬間、思わず抱きついてしまう。
叶さんはそんな俺の頭を、思いっきりグーで殴りつけてきた。結構痛い……。
「こっちは名乗ってるのに、アナタはどこの誰ですか?」
ムッとしたご様子の叶さん。俺ってばずっと、名前教えるの忘れてた!
「やっ、山田賢一っていいます。賢一の賢は賢いっていう漢字で、一は漢数字の一です……」
「名は体を表すものなのに、全く賢さが現れてないね」
おどおどしながら伝えると、まさやん並みにザックリな事を言いながら俺の目の前に、紙切れ一枚を渡してきた。
「今日のライブのご褒美。しょうがないからメアド、教えてあげる」
「有り難うございます!」
思いがけないプレゼントだ――
もらった紙を、思わず抱き締めてしまった。
「この後用事があるから、もう行くね」
そう言い残し、ライブハウスをあとにした叶さんの後ろ姿を見送る。
名前だけじゃなく、メアドもGET! これって、期待してもいいのかな――?
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