7 / 58
叶side
5
しおりを挟む
常連客のサラリーマンからクリスマスプレゼントを無理矢理渡されそうになっているときに、偶然彼が傍を通りかかった。
目が合った瞬間、この場をやり過ごすアイデアを思いつく。こういう面倒な客には、視覚的対応で難を逃れるのが1番なんだ。
通りかかった彼を恋人に見立てて、すっぱり諦めてもらう作戦は思いの外、あっさりと成功した。
問題はこの後、彼に私のことを諦めてもらうにはどうしたらいいものか。
折しも今日はクリスマスイブ。偶然とはいえ出会ってしまったのだから、告白される可能性はあるかもしれない。
隣にいる彼の横顔を覗くと、鼻の下が伸びていた。牽制すべくアナタを利用しただけだからと、一応忠告をしてみる。
私には史哉さんがいるんだから無理なんだよ。
彼が告白してきたら言おう。
付き合ってる人がいます(既婚者だけど)
すごく好きな人なんです(どんなに好きでも、私のモノにはならないけど)
告白してくるであろうと心の準備しているのに、彼ときたら突然私の下の名前を聞いてきた。
自分の名前を名乗らんヤツに教えるわけがない!
「何でアナタに、教えなきゃならないの?」
「中林さんのすべてを知りたいんです」
私は押し黙るしかなかった。次に告白してくるだろうと予想できたから。
なのに彼から発せられた一言は、とても意外なものだった。
「結婚して下さいっ!」
告げられた言葉を聞いて、思わず息を飲んだ。
史哉さんからは絶対に出てこないであろう、その言葉――
史哉さんに言って欲しい言葉を、彼がすんなりと言ったのである。
そんな大胆な言葉を発した彼はというと、金魚のように口をパクパクするばかりでおかしかった。
溢れてきた涙を隠すべく、大笑いをした私。
さっきまで断ることを考えていたのだけれど止めにした。
無邪気な笑顔をする大胆な彼に、興味を抱いたから。
まだ名前も知らない、彼のライブに行ってみよう。
彼との付き合いはここから始まったのだった。
目が合った瞬間、この場をやり過ごすアイデアを思いつく。こういう面倒な客には、視覚的対応で難を逃れるのが1番なんだ。
通りかかった彼を恋人に見立てて、すっぱり諦めてもらう作戦は思いの外、あっさりと成功した。
問題はこの後、彼に私のことを諦めてもらうにはどうしたらいいものか。
折しも今日はクリスマスイブ。偶然とはいえ出会ってしまったのだから、告白される可能性はあるかもしれない。
隣にいる彼の横顔を覗くと、鼻の下が伸びていた。牽制すべくアナタを利用しただけだからと、一応忠告をしてみる。
私には史哉さんがいるんだから無理なんだよ。
彼が告白してきたら言おう。
付き合ってる人がいます(既婚者だけど)
すごく好きな人なんです(どんなに好きでも、私のモノにはならないけど)
告白してくるであろうと心の準備しているのに、彼ときたら突然私の下の名前を聞いてきた。
自分の名前を名乗らんヤツに教えるわけがない!
「何でアナタに、教えなきゃならないの?」
「中林さんのすべてを知りたいんです」
私は押し黙るしかなかった。次に告白してくるだろうと予想できたから。
なのに彼から発せられた一言は、とても意外なものだった。
「結婚して下さいっ!」
告げられた言葉を聞いて、思わず息を飲んだ。
史哉さんからは絶対に出てこないであろう、その言葉――
史哉さんに言って欲しい言葉を、彼がすんなりと言ったのである。
そんな大胆な言葉を発した彼はというと、金魚のように口をパクパクするばかりでおかしかった。
溢れてきた涙を隠すべく、大笑いをした私。
さっきまで断ることを考えていたのだけれど止めにした。
無邪気な笑顔をする大胆な彼に、興味を抱いたから。
まだ名前も知らない、彼のライブに行ってみよう。
彼との付き合いはここから始まったのだった。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
副社長と出張旅行~好きな人にマーキングされた日~【R18】
日下奈緒
恋愛
福住里佳子は、大手企業の副社長の秘書をしている。
いつも紳士の副社長・新田疾風(ハヤテ)の元、好きな気持ちを育てる里佳子だが。
ある日、出張旅行の同行を求められ、ドキドキ。
性欲のない義父は、愛娘にだけ欲情する
如月あこ
恋愛
「新しい家族が増えるの」と母は言った。
八歳の有希は、母が再婚するものだと思い込んだ――けれど。
内縁の夫として一緒に暮らすことになった片瀬慎一郎は、母を二人目の「偽装結婚」の相手に選んだだけだった。
慎一郎を怒らせないように、母や兄弟は慎一郎にほとんど関わらない。有希だけが唯一、慎一郎の炊事や洗濯などの世話を妬き続けた。
そしてそれから十年以上が過ぎて、兄弟たちは就職を機に家を出て行ってしまった。
物語は、有希が二十歳の誕生日を迎えた日から始まる――。
有希は『いつ頃から、恋をしていたのだろう』と淡い恋心を胸に秘める。慎一郎は『有希は大人の女性になった。彼女はいずれ嫁いで、自分の傍からいなくなってしまうのだ』と知る。
二十五歳の歳の差、養父娘ラブストーリー。
【R18】十六歳の誕生日、許嫁のハイスペお兄さんを私から解放します。
どん丸
恋愛
菖蒲(あやめ)にはイケメンで優しくて、将来を確約されている年上のかっこいい許嫁がいる。一方菖蒲は特別なことは何もないごく普通の高校生。許嫁に恋をしてしまった菖蒲は、許嫁の為に、十六歳の誕生日に彼を自分から解放することを決める。
婚約破棄ならぬ許嫁解消。
外面爽やか内面激重お兄さんのヤンデレっぷりを知らないヒロインが地雷原の上をタップダンスする話です。
※成人男性が未成年女性を無理矢理手込めにします。
R18はマーク付きのみ。
【R18】今夜、私は義父に抱かれる
umi
恋愛
封じられた初恋が、時を経て三人の男女の運命を狂わせる。メリバ好きさんにおくる、禁断のエロスファンタジー。
一章 初夜:幸せな若妻に迫る義父の魔手。夫が留守のある夜、とうとう義父が牙を剥き──。悲劇の始まりの、ある夜のお話。
二章 接吻:悪夢の一夜が明け、義父は嫁を手元に囲った。が、事の最中に戻ったかに思われた娘の幼少時代の記憶は、夜が明けるとまた元通りに封じられていた。若妻の心が夫に戻ってしまったことを知って絶望した義父は、再び力づくで娘を手に入れようと──。
【共通】
*中世欧州風ファンタジー。
*立派なお屋敷に使用人が何人もいるようなおうちです。旦那様、奥様、若旦那様、若奥様、みたいな。国、服装、髪や目の色などは、お好きな設定で読んでください。
*女性向け。女の子至上主義の切ないエロスを目指してます。
*一章、二章とも、途中で無理矢理→溺愛→に豹変します。二章はその後闇落ち展開。思ってたのとちがう(スン)…な場合はそっ閉じでスルーいただけると幸いです。
*ムーンライトノベルズ様にも旧バージョンで投稿しています。
※同タイトルの過去作『今夜、私は義父に抱かれる』を改編しました。2021/12/25
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる