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Scarfaceキズアト
Scarface:貴方を守るために2
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昴は親父のことを、ぶち殺しそうな勢いで睨み倒した。
「ワザとだろ、この場に竜生を呼んだのは。俺の代わりにするのにさ」
「偶然だ、俺の腹が鳴っていたからな」
「ふざけんじゃねぇよ、長い付き合いしてんだから分かるって」
自分じゃ制御できない苛立ちを、デスクをガンガン殴ることによって表す。
このタヌキ親父と長いこと一緒に仕事をしてきたのだ、分かりたくなくても分かってしまう。
昴は両拳を、ぎゅっと強く握りしめた。
「いい面構えだ、そんなにシャムが大事か? 代わりはいくらでもいるだろう」
「竜生はこの世で、たったひとりきりの存在です。代わりなんていない――大事なヤツなんだよ! なのにっ」
「昴、俺にとってお前は、ひとりきりの存在だ。この組にとっては、かけがえのない大事な幹部なんだぞ。この違いが分かるか?」
諭すように言う親父の言葉に、下唇を噛んだ。
自分の立場を呪ったのは、いつ以来だろうか……。大切にしたいヤツが、掌からすり抜けていく、このイヤな感じ――
「早めに銃の扱い方教えておけよ、いつでも行けるようにな」
「……はい」
「遅くても、一週間以内に死んでもらうから」
「やめてくれ、そんな言い方……」
突きつけられた現実を見たくなくて、両目を閉じながら俯いて、やっと言葉にした。
……竜生が俺の代わりに、この世からいなくなる。好きなヤツがいなくなるんだ、胸が軋むように痛い、痛すぎる。
「ああ、済まない。消えてもらうが、正しいか」
もう何人も下の者を切っている親父は、心が痛むことはないのだろう。麻痺してるといってもいい。そうやって組を、どんどん大きくさせていったのだから。
そして組の繁栄に、俺自身も加担しているのだから同罪なれど――
組を守るためにこのまま大事な竜生を、犠牲にしていいのだろうか……
「お前、一時の感情に流されると、前みたいな失敗するぞ。常に冷静であれ」
「分かってる。親父の言うことを聞いていれば、間違った道に行かなくて済むしな。親父のお陰で、今の自分がいることが出来てる」
逆らいたい衝動に駆られたことが数回あったが、それでも最後は言うことを聞いていた。親父の信頼を、裏切りたくなかったから。今まで世話になっていたから。
だのにその親父が目の前で、俺の大事にしてるヤツに直接手を下したのだ。
「それじゃ俺も、仕事が立て込んでるんで、失礼します」
姿勢を正してから、ゆっくり頭を下げ、きっちりと一礼をした。
奥歯を噛み締め、顔を歪ませながら考える。
――このまま好きなヤツを、簡単に見捨てておけるような、冷淡な人間でいられない――
頭を上げた今は、この部屋に来たときと同じ顔をすることが出来た。
守らなきゃならないヤツがいる。
それだけでいつも以上に、強くなれる自分がいることに、ようやく気が付いたのだった。
昴は親父のことを、ぶち殺しそうな勢いで睨み倒した。
「ワザとだろ、この場に竜生を呼んだのは。俺の代わりにするのにさ」
「偶然だ、俺の腹が鳴っていたからな」
「ふざけんじゃねぇよ、長い付き合いしてんだから分かるって」
自分じゃ制御できない苛立ちを、デスクをガンガン殴ることによって表す。
このタヌキ親父と長いこと一緒に仕事をしてきたのだ、分かりたくなくても分かってしまう。
昴は両拳を、ぎゅっと強く握りしめた。
「いい面構えだ、そんなにシャムが大事か? 代わりはいくらでもいるだろう」
「竜生はこの世で、たったひとりきりの存在です。代わりなんていない――大事なヤツなんだよ! なのにっ」
「昴、俺にとってお前は、ひとりきりの存在だ。この組にとっては、かけがえのない大事な幹部なんだぞ。この違いが分かるか?」
諭すように言う親父の言葉に、下唇を噛んだ。
自分の立場を呪ったのは、いつ以来だろうか……。大切にしたいヤツが、掌からすり抜けていく、このイヤな感じ――
「早めに銃の扱い方教えておけよ、いつでも行けるようにな」
「……はい」
「遅くても、一週間以内に死んでもらうから」
「やめてくれ、そんな言い方……」
突きつけられた現実を見たくなくて、両目を閉じながら俯いて、やっと言葉にした。
……竜生が俺の代わりに、この世からいなくなる。好きなヤツがいなくなるんだ、胸が軋むように痛い、痛すぎる。
「ああ、済まない。消えてもらうが、正しいか」
もう何人も下の者を切っている親父は、心が痛むことはないのだろう。麻痺してるといってもいい。そうやって組を、どんどん大きくさせていったのだから。
そして組の繁栄に、俺自身も加担しているのだから同罪なれど――
組を守るためにこのまま大事な竜生を、犠牲にしていいのだろうか……
「お前、一時の感情に流されると、前みたいな失敗するぞ。常に冷静であれ」
「分かってる。親父の言うことを聞いていれば、間違った道に行かなくて済むしな。親父のお陰で、今の自分がいることが出来てる」
逆らいたい衝動に駆られたことが数回あったが、それでも最後は言うことを聞いていた。親父の信頼を、裏切りたくなかったから。今まで世話になっていたから。
だのにその親父が目の前で、俺の大事にしてるヤツに直接手を下したのだ。
「それじゃ俺も、仕事が立て込んでるんで、失礼します」
姿勢を正してから、ゆっくり頭を下げ、きっちりと一礼をした。
奥歯を噛み締め、顔を歪ませながら考える。
――このまま好きなヤツを、簡単に見捨てておけるような、冷淡な人間でいられない――
頭を上げた今は、この部屋に来たときと同じ顔をすることが出来た。
守らなきゃならないヤツがいる。
それだけでいつも以上に、強くなれる自分がいることに、ようやく気が付いたのだった。
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