貴方が残してくれたもの

Scarfaceキズアト

Scarface：突然の出逢い６

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「う～ん……」
　
　カーテンの隙間から、ちょっとだけ朝日が入り込み、ベッドで寝ている俺の顔を照らした。
　
　寝がえりをして、その眩しさをやり過ごしたら、自室のドアが開く音が聞こえたような気がしたが無視。どうにも体がダルくて、いうことをきかないから。
　
　昨夜あの後、引きずられる様に風呂場に連れて行かれ、丁寧に体を洗ってくれたのだが――

「髪が濡れると何か、雰囲気が違って見えるのな。すげーカッコイイ……」

　とワケの分からないことを言いながら、俺の首に両腕を絡ませて、キスしてきた昴さん。
　
　勿論拒否すべく、体を押し退けようと必死に抵抗したのは、当たり前のことなんだ。男同士、平気な顔してやることじゃねぇし。

「もう、本当に止めて下さい。こんなことをされ続けたら、嫌いになっちゃいますよ」

「あ？　お前、俺のことを嫌いになるのかぁ？」

「は、はい……」

「口ではそんな文句を言いつつも、こうしてイヤなことされてんのに、どうして勃起してるんだよ？　何で俺の中で、ビクビク感じまくったんだ？」

　三白眼を細めて俺を見つめる、その雰囲気の怖いこと！

　恐怖に言葉が出ず、逃げ場のない風呂場を、無駄にキョロキョロしてしまう。

「こらっ！　煽んじゃねぇって！」

「うっ！　煽ってませんっ！」

　昴さんの怒号に思わず、大きな声で答える。
　
　本当に煽ってるつもりは、全くといっていい程ないのに。

「怯えてるクセして、どこかに逃げ道がないか確認してる、しっかり者の竜生くん。そういうところが、俺を煽ってるんだよ」

「そんな無茶苦茶な……」

「お前のその希望を絶望に変える作業を、俺の手で喜んでしてやろうじゃないか」

　ひっと声にならない声で呟いた瞬間、俺の体を簡単に抱え込み、湯の張ってないバスタブへと押し込んだ。

「嫌いになれないよう、その体にキッチリ、いろんなことを教え込んでやる」

「そっ、それもヤクザ流の愛し方なんですかね？」　

　ビクビクしている俺を嬉しそうに見下ろし、舌舐めずりをした昴さんの姿は、根っからのドＳなんだなと思った。本当、何がきっかけでそのスイッチが入るのか、全然分からない。

「さっき喜んで、その身に受けただろ。今度は少し、趣向を変えようか？」

　言った傍からシャワーを勢いよく出して、俺の顔にぶっかける。

「わっ！　……何!?」

「言ったろう？　濡れたお前はカッコイイって。たまらないね、その姿……」
　
　そしてそのまま昴さんの手によって、いろんなことをされ続け、何度もイカされた揚句、ベットまで運んでもらった。
　
　故に体がダルくてしょうがない、瞼を開けるのも億劫なんだ。
　
　もう一度寝返りをしようと体を傾けたとき、足元から入り込んだ冷たい空気が、ひやりと肌を撫でた。次の瞬間、ずしりと重いモノが下半身を固定する。

「何なんですかっ、いきなり！」

　右手で布団をめくると、爽やかな笑顔の昴さんが、そこにいた。

「おはようのキスをしようと思ってな、竜生オハヨウ！」

「ちょ、たんま……どこにおはようのキスをしようとして」

「勿論、ココに決まってるだろう。朝なんだから」

　三白眼をふわりと細め、ソコを見つめると、いそいそ手に取る。

「やめっ、ん……」

「朝から元気ってのは、本当にいいことだなぁ、竜生」

「マジで勘弁してくれよ……」

「マジで勘弁は、お前の髪型だろ。寝癖、すごいことになってるぞ」

　昨夜腰が立たず、そのまま寝落ちしたので、しょうがないのである。その原因を作ったのは、昴さんなんだ。

「直してくるから、離して下さい」

「いいけど、濡らしたらそのまま襲うぞ？」

「襲わないで下さい」

「その髪型でヤル気半減したけど、今の言葉でヤル気回復した」

　ニヤリと笑い、俺の体に圧し掛かってくる。
　
　元々掴みどころのない人だけど、ヤル気スイッチの発動がイマイチ不明。
　
　結局朝から責められた俺は、ベッドから起き上がることが出来ず、昼過ぎまで寝込んでしまった。
　
　逆に昴さんは生き生きした様子で、いつも通り仕事に出勤。ヤクザの人って、超絶倫なのかな。




　それからというもの昴さんは暇があれば、俺の体に触れてくる。

「まんざらでも、ないクセに」

　とか何とか言いながらコトに及ぼうとする彼に、勿論全力で抵抗！
（けして非力じゃないんだぜ）
　
　しかしそれ以上の力をもって、やすやすと抑えつけられる。力以外にも、昴さんがもたらす技で、簡単に翻弄させられた。どうしようもないもどかしさに、手も足も出ない状態。

「ヤクザにケンカで勝とうなんて、百億年早いんだよクソガキが。それともそういうプレィで、俺を誘ってるのかぁ？」

　余裕綽々な大人の表情をして、俺を組み敷く昴さんに、為すすべがなかった。